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ITALY NEWS
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2003/09/01 


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ミラノサローネで友達づくり



 日原佐知夫(工業デザイナー)



私は静岡を拠点に活動しております。静岡は、駿府城築城の職人が江戸時代から 残り、鏡台作りから現在の家具インテリア製品の産地を形成して来ました。活気有る 産地に多くのデザイナーが集まり、インハウスを合わせると100名を超えるデザイナー が活躍しております。私も、その活気に誘われて住み着いた一人です。
 バブル景気後に独立し、経済低迷・縮小傾向が進みなんとなく“夢”を見られな い状況を感じ、これから数十年間のデザイン活動のヒントを探しに2000年に初めてミ ラノサローネを訪れました。


【ミラノサローネ:Salone Internazionale del Mobile/国際家具見本市サローネ】

40年以上の歴史が有る世界最大級の家具インテリアの展示会。メイン会場のフィエ ラ(FIERA)の総面積は48万平米、26のパビリオンに約2000社が参加。
来場者は、世 界145カ国から17万人以上。ジャーナリストも60カ国から3000人以上が取材に訪れ る。 市内展は100カ所以上で開催される。

cosmit/サローネを主催する企業 http://www.cosmit.it



 ミラノサローネは単なる家具見本市で無く、街中を巻込んだデザインイベントで ある事に衝撃を覚えました。そしてデザインがその原動力になっていることに感動し ました。活き活きとデザインを楽しみ、そして、スタイリッシュに商売している姿に 憧れを覚え、“見学している場合じゃ無い、自分が発信する側に成りたい!世界のレ ベルで自分はどう評価されるのかを感じてみたい”と強く思い、出展を決意しまし た。

参加したのは、『サローネサテリテ』というイベント会場で、メイン会場/フィ エラの9号館で開かれます。他の25のパビリオンは企業が商談を行う場であるのに対 し、 サテライトは若いデザイナーが試作品を持ち込みデザイン提案をする場所です。実 際にメーカーのプロデューサーが商品化できるデザインをピックアップしに来場する 企業にとっても見逃せないビジネスの場所です。

2001年を準備期間にあてて初回の挑戦は、まさに手探りでした。何一つ知らない事 ばかり。事前審査がある事を聞き驚いている有り様。審査通過を知らされた時は、 喜びよりも不安の方が大きかったり。海外との交渉、試作、プレスキットの作成、輸 送、搬入、展示、期間中の対応、などなど山積み状態。出展経験者やミラノ在住の友達 にでクリアすることが出来ました。

会場での様子は?と言いますと、場所が悪く人通りが少なかったので作品を多く の人に見てもらおうと!スタンドは、留守番に任せ、キャスター付の椅子Amenboや Solaを連れてお散歩しながら通行人や同じ出展者にプレゼンテーション!実際に座って もらったり、カードを手渡しスタンドに誘ったり・・・。会場中を自分のスタンドに 使ってしまいました。
毎日お散歩したので次第にエスカレート、乗ったり、滑ったりの 『世界初!お散歩パフォーマンス』に発展。スタンドに戻ればカーペットに座り込 み“ジャパニーズスタイル”と言いながら“車座”でパスタにワインとやりたい放 題。

最初周辺のスタンドから奇異な目で見られていましたが、最終日には、周辺のスタ ン ドもカーペットの上に・・・。2002サローネサテリテで一番たくさんの友達を作っ たのは、間違い無く私です。同じ志を持つ連帯感、イタリアの明るさ、本当に楽しい 時間でした。会期中は、お祭り騒ぎ楽しくて楽しくて! 初年の成果は?とい居ますと・・・、アビターレ初日の新聞でサテライトの注目 作品に取り上げられたりデザインレポート賞にノミネートされたりとメディア的には 大成功。しかし、本来の目的のクライアント探しは、うまく行きませんでした。出せ ば必ずメーカーに製品化されるだろうと言う自負もありました。幾つかのオファーは 有ったものの、現実はそんなに甘いものではありませんでした。

気付いた事は、家具産地静岡もイタリアも同じだと言う事です。同じように家具 を作り、展示会をしてお客さんに見せ、注文を取り、製造し、販売する。イタリアと 言うとアバンギャルドなメーカーだけが目立ちますが、本質は、同じビジネス(商 売)の上にあると言うことです。「イタリアは、全く違うモノづくりをしているんじゃ ないか?」と勝手に思っていましたが、モノづくりの根っ子の部分は一緒なんだと参 加してみてわかりました。

メーカー名をブランドに押上げる役割をデザインが果たし、ターゲットの絞り込み と自社の方向性をしっかりと見極めるプロデューサーが存在する。違いが有るとす れば、マーケットを世界に持っている事と、自分達の作ったものを自信を持ってア ピールするパワーがほんの少しだけ強いだけだとおもいました。

今年のサローネは、あの楽しさとの再会が何よりの目的でした。(目的がデザイ ンを売る事から友達を作る事に変わってしまいました。)
"Monaka"という新作を出品 しました、"Monaka"は『座ぶとん』と『西洋の椅子』の中間の“座具”で、ステンレ ス製の3次元フレームをベースにラタンを巻込んでいます。金属を使いながらも、冷 たさや硬さを感じさせない。ぶつかっても痛く無い!和菓子の様な椅子です。造形 は、回転体の外周を波形に切り、1つの回転体から全く同じ2個の形状を取り出してい ます。
お散歩パフォーマンス第2弾!。昨年以上のインパクトの為に回転体でなけれ ばならなく成ったのです。キャスターを使わないお散歩の手段は、『回転体』以外に 有りませんでした。私と同じように2年連続しての参加者が約1/3くらい居て“今年 は、このパフォーマンスか!”と彼等の反応も上々でした。ライバル達の新作も力作揃 いで『俺も頑張るぞ!』と思わせてくれました。

(お散歩パフォーマンス第2弾は、2日目に『ここはあなたのスタンドではありま せん。お家に返りなさい!』とMさんに優しく言われ、永久に出来なくなりまし た。)

フリーランスになって10年が経ちます。家具、機械、遊具などの製品デザインを 中心に活動してきました。近年日本のモノづくりは他のアジア地域に移行して来てお り、その関係で海外の工場でのデザイン作業が増えてきております。ものづくりの国境 が消えた事を実感しています。

パリ展をはさみ2度のミラノサローネ出展で多くの友達と出逢い、多くの事を体 験しました。ミラノサローネはデザインが新しい市場を切り開く原動力になる事と、 デザインの楽しさを改めて教えてくれました。新たなデザイン行動の必要性とビジネ ス成功の為の方法が少しずつですが見えて来ました。いま出来つつあるネットワーク が5年10年経った時事を考えるととても愉しみです。今後も、積極的に行動を起こ して世界中の友達とモノづくりを楽しんでいきたいと思います。

写真説明(上から)1.国際家具見本市サローネ
2,3 MONAKA
4.仲間達!
5.日原佐知夫のスタンドの様子
6.お散歩途中友人との再会


筆者プロフィール

日原佐知夫/Sachio Hihara〈工業デザイナー〉
1964年山梨県生れ。日川高校卒。創デザインオフィスを経て1993年に"創造意匠"を 設立。2002年、2003年とミラノサローネに連続して出展。2003年パリ国際家具/ DESIGN LAB出展。ミラノサローネDESIGN REPORT AWARD 2002ノミネート品"Amenbo"がモナコ近代美術館のコレクションに認定される。現在は富士山を越え!静岡市を拠点に活 動中。サローネサテリテ2004参戦予定。

住所:静岡市新通1丁目5の6
1-5-6 Shintori SHIZUOKA 420-0065 JAPAN
電話:+81(0)54-652-0057
fax:+81(0)54-652-0058
E-mail:hihara@sachio.jp
Web:www.sachio.jp
www.japandesign.ne.jp/HTM/MATES/welcome.html


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