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ITALY NEWS
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2002/06/01 


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ベルルスコーニ首相と「利権矛盾」問題


森泉 あやみ





イタリアの現首相、シルヴィオ・ベルルスコーニは、民放3局の所有者である。この事 実は、情報の多元性を妨げる危険をはらんだものであるが、2002年2月、下院ではつい にフラッティーニ法案が可決された。野党中道左派連合が「サルヴァ・ベルルス コーニ」(ベルルスコーニを助ける法)と呼んだこの法律第1707条(特に第2項)は、事実 上、ベルルスコーニ首相の現在の立場を認めるものとなる。

ベルルスコーニ第一次政権の発足した8年前、1994年より、下院では、「国民の利権追及を託され た首相が民放3局を所有している限り、個人的利潤追求と無縁であるはずがないので はないのか」と議論されてきたが、左派政権時代にも、この「利権矛盾」を解決する法案 は通過しなかった。今回の第1707条第2項は、内閣に入閣した者は「個人企業を単に有 すること、あるいは企業の株式を所有することは、利権矛盾を構成する要因ではない」 と断言した。つまり企業所有者てあっても、その経営に直接係わらなければ、一切問題は ないのである。実際、ベルルスコーニは、かなり前から、所有権と経営権を分けており、 フェデーレ・コンファロニエーリをメディアセット社社長に任命している。

野党にとって、この法律は、矛盾を矛盾ではないと認めた「レッジェ・トルッファ」(国 民をだます法律)であり、下院での票決の時も野党議員は退場している。野党によれば、第3者 を介している場合でも、防衛、エネルギー、広告業、ジャーナリズム、および全国的規 模での放送事業に関わっていれば、「利権矛盾」は存在するのである。また、政府の要 職と公的、私的職務との間の「利権矛盾」を監視するのは、アメリカの影響を受けて 発足したオーソリティーという監査委員会であるが、この機関には、直接的な制裁権は 今のところない。「オーソリティーは、直接的な制裁権を持つ独立機関として、この問題を 審議し、正当な解決方法を打ち出すべきだ」というのが、野党の言い分である。

国営放送RAIの行方

中道右派連合の新政権発足後、上院下院両議長によりRAIの新しい役員が任命された。5 人のメンバーのうち3人が、与党中道右派(うち1名は「北部同盟」代表者)、2名が 野党代表者である。役員会には、RAIの政治的方針を設定するための人選が行われてお り、必ずしも放送業界に詳しいメンバーが選ばれるとは限らない。メンバーのうち、 会長には、憲法裁判所議長であった法学者アントニオ・バルダッサッレが選出された。 2002年3月、役員会は予想されていた通り、RAI新総局長にアントニオ・サッ カーを抜擢。サッカーはRAIDUE(国営放送第2チャンネル)副局長、RAIUNO(国営放 送第1チャンネル)局長、マーケティング部局長などを務めていた。

2002年4月には大議論の末、国営放送RAI3局、および各局の報道局 局長が役員 会により任命された。以下、局長名とその簡単な略歴を上げておく。

RAIUNO局長:ファブリツィオ・デル・ノーチェbrp> トリノ出身の放送ジャーナリスト。RAIUNO特派員として戦地に赴き、視聴者にとって なじみの顔となる。1994年には、下院議員として当選(フォルツァ・イタリア)。その 後、RAIUNOニューヨーク特派員としてRAIに復帰。局長との衝突の後、「リネア ・ヴェルデ」(イタリア各地の名所、特産物紹介番組)というドキュメンタリー番組 のレポーターとなった。

RAIDUE局長:アントニオ・マラーノ
衛星放送STREAM代表取締役。1994年に下院議員当選(北部同盟)。ベルルス コーニ第一次内閣時代には郵便通信省政務次官。

RAITRE局長:パオロ・ルッフィーニ。
パレルモ出身のジャーナリスト。ナポリの『マッティーノ』紙、ローマの『メッサッ ジェーロ』紙を経て、1996年に国営ラジオ報道局長、1999年にはRADIOUNO(国営ラジオ 第1放送)局長となる。

結果として、RAIの図式は以下のようになる:

RAIUNOは、フォルツァ・イタリアが中心勢力となり、北部同盟は「人前に出しても恥ず かしくない」マラーニを立てることによって、RAIDUEを手にする。国民同盟は、主要ポス トを得ることはできなかったが、RAIDUE報道局局長には、国民同盟と深い関係にあるマ ウロ・マッツァが抜擢された。

中道左派は、RAIDUEとRAITRE(国営放送第3チャンネル)双方を手に入れることを長い 間望んでいたが、今回はRAITRE局長とRAITREの報道局局長のポストのみで満足せざるを 得ない。RAITREは、開局した当時から野党左派の「砦」なのであるが、それを堅固なも のとし、全国をカヴァーしているRAITRE地方局は今回「自由の家」に連合しているカ トリック系政党のものとなった。

2002年5月現在、番組編成に関しては、まだ変化は見られない。新しい政治的図式 によりRAIがどのように変わって行くか、また北部同盟の影響などが、どのような番組 に具体的に反映されるのか、これらは9月になれば明確になるであろう。



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