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ITALY NEWS
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2002/04/01 


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イタリア眼鏡産業の現状について

福井県ミラノ事務所
駐在員 小野田謙一







2002年5月3日から7日まで、ミラノの国際見本市会場で、眼鏡製品を中心とした国際見本市「MIDO」が開催される。昨年の実績では、出展企業数1,265社(うちイタリア国外約60%)、期間中のビジター数約4万人(うちイタリア国外約50%)、述べ121ヶ国か参加する、質的にも量的にも世界最大の眼鏡見本市である。ちなみに、日本の福井県からはおよそ50社約250名がこの見本市に出展する。

なぜ、イタリアが世界の眼鏡製品の中心になったのか、そして今後もこの傾向が続くのか、日本での最大の眼鏡産地をほこる福井県のミラノ事務所の駐在員としては、その業務の大半をその傾向のウオッチに費やしている。今回はその中で収集した最近の動きについてとりまとめ、イタリア眼鏡産業の現状について大きな傾向をお伝えしたい。

1. イタリアは世界の眼鏡産業の中心

イタリア国内の眼鏡関連企業数は約1,410社(Anfao取りまとめ)。240社は会社形態。残り1,170社は個人事業所。約80%がベッルーノ地域(ベネチアから北およそ1.5時間)に集積している。かつての欧州における眼鏡産地といわれた、ドイツのラーテナオ産地や、フランスのモレ-、オヨナックス産地が壊滅に近い企業数の減少を考えれば、21世紀において、これだけの企業集積を誇る地域は欧州では存在しない。また、新興勢力の中国、香港、台湾を除けば、日本の福井県の約800社の集積と比較してもその量的な存在感は圧倒される。参考に、製造品等出荷額で当事務所が把握している数字は以下のとおり。

製造品出荷額19961997199819992000
フレーム1,5001,550 1,670 1,570 1,650
サングラス9009508708701,385
小計(十億リラ)2,4002,500 2,540 2,4403,035

輸出19961997199819992000
フレーム1,1871,2321,2931,2151,323
サングラス7137206907311,295
小計(十億リラ)1,9001,9521,9831,946 2,618

輸入19961997199819992000
フレーム182195 210 220 290
サングラス107 137 155 208 304
小計(十億リラ) 289 332365428594
(出展Anfao)

 次にマーケティングの対象について説明したい。ミラノをベースに活動するパンビアンコ・コンサルティングがまとめた統計資料によれば、現在、眼鏡産業の世界市場規模は約14兆リラ と推定される。大まかな捉え方としてはサングラス市場は4兆リラ、一般めがねは10兆リラ。特徴は高級品、低級品が成長し、中級品は伸び悩んでいること。うちイタリア産の眼鏡は約3.4兆、24%のマーケットシェアと推定される。しかし、重要なのは、この中のハイエンドユーザーの市場規模は約1.4兆リラ。うちイタリアは1兆リラ、約71%のシェアを持つと報告され、2000-2001年にはこの傾向が拡大しているとまとめられている。

- 世界全体 イタリア  %   
高級品 1,400 1,000 71%
中高級品 2,100 1,400 67%
中級品 3,500 850 24%
低級品 7,000 150 2%
合計 14,000 3,400 24%

つまり、イタリア眼鏡産業の特徴は、高付加価値製品を大量に世界中に輸出しているということが伺え、この傾向が昨今加速していることが理解できる。

2.イタリア眼鏡産業の最近の動き

  最近相次いで、イタリア眼鏡産業の大手の2001年の決算内容が発表されているので、いくつかを紹介する。

ルクソッティカ社
眼鏡業界における、世界的なリーダー企業であるルクソッティカ社の、2001年の売上高は26.8%の成長を記録し、2000年の24億1,600万ユーロから、30億6,500万ユーロへと躍進した。レオナルド・デル・ベッキオ氏に率いられた同社は、2001年3,160万個のフレームを販売、純利益は、総売上の10.3%で、対前年比23.9%増の3億1,640万ユーロだった。一株あたり利益は、0.70ユーロで、2000年の0.57ユーロから23.6%増となった。

ご存知のように、ルクソッティッカ社はBulgari,、Chanel,、Ungaro、 Emporio Armani、Giorgio Armani,、Moschino,、Ferragamo、Tacchiniほか13のライセンスを保有、また独自ブランドを全世界向けに販売、2001年にはレンズクラフタ-に続き、サングラス・ハット(眼鏡の大手チェーン店)をグループ参加におさめ、全米に二千五百店舗以上を有している。決算発表時にベッキオ氏は、「レイバンのときにはっきりしたように、今回もまた、当初の計画よりも早く、我々は統合に成功しそうである。」と鼻息は荒い。

サフィーロ社
サフィーロ社とクリスチャン・ディオールとのライセンス契約が2008年まで更新された。 このパートナーシップは1996年(オーストリアのカッレラ社買収後)から開始され、サフィーログループのコレクションに貢献した。合意内容には、技術的に優れた工場に製造を集中させる条項を含んでいる。ヴィットリオ・タバッキ同社社長は「モード界の先を読んだコレクションを成長させる5年間になる。」とコメントを発表している。シドニー・トレダーノ/クリスチァン・ディオール社長は、「97年よりクリスチャン・ディオールブランドは大きく変化し、コレクションの成功は彼らの創造力の頂点である眼鏡製造部門までも影響を与えた。来年度はメンズの眼鏡製造に着手する予定。」と語る。メンズコレクションの発表は2002年終わりの予定。

デ・リーゴ社
2001年グループ売上高は10.7%の成長で、5億500万ユーロに到達した。積極的な生産活動強化、及び、特に高額商品部門において達成された、卸売り販売量の増加が反映されたものであると、同社は分析している。さらに、2000年第一四半期以降の、アイウェア・インターナショナル・ディストリビューションや、プラダとのジョイント・ベンチャーによるに貢献を謳歌している。また、2000年2月に買収した、スペイン・マーケットにおけるリーダー的チェーン店を展開するジェネラル・オプティカの貢献もあるだろう。デ・リーゴによる矯正用眼鏡フレームの総販売量は、対前年度比5.7%増で、570万3,000個となっている。一方、サングラス販売量は7.9%増で、2000年には53.4%だった総売上に占める割合を、54.5%まで伸ばしている。

マルコリン社
2001年マルコリン社は対前年比24%増である総売上3,050億リラを達成した。主要因は、昨年2月に行なったCreativeppticsの買収である。それによって、アメリカ・マーケットにおける、新たな拡大強化に成功した。つい最近終了した事業年度は、マルコリンのポートフォリオの強大化を明らかにした。同社のポートフォリオには、もともと、D&G(2001年マルコリン売り上げの33%を占める)、クロエ、ロベルト・カヴァッリ、リプレイ、フォルナリーナ、ミス・シックスティなどがあるが、それらに加えて、自社ブランドとして同社売り上げの15%を占めるCebeもあるのだ。最近では、The North Faceとの合意、カバー・ガール及びモンブラン・ブランドの眼鏡販売のための、プロクター&ギャンブルとの合意などが重要である。しかしながら、それだけではない。今年度は、新たにサングラス及び矯正用眼鏡フレーム生産のため、Costume Nationalと契約が交わされることとなっている。発表は年末に予定されている。

と、大手4社はイタリアを中心としたブランド戦略から、もう一歩踏む込んだ、小売流通戦略や、J&V戦略によりいまや破竹の勢いである。特に、各社の売上高の構成を分析すると明らかにサングラス需要がそれぞれの売上に大きく貢献していることが伺える。長年、眼鏡製品を医療器具の一部と捕らえてきた日本、ドイツと比較すると明らかにモーダ商品への脱皮が伺え、新しい産業を誕生させたかの勢いがある。9月の米国の同時多発テロの影響で一時は売上が減少したが、2002年に入り勢いが戻ってきた。5月開催のMIDOに向け新製品投入を着々と進めていることが伺える。

一方、中小零細企業の現状はどうかというと、90年代の勢いを失い低迷しているというのが実情であろう。 最も衝撃的だったのは、3月8日から眼鏡産地内で開催される予定であった、オプトマック2002がキャンセルされた。これは、同展示会への参加申し込み企業が激減したことが主な要因であるが、予想以上に深刻な不況の結果、また地域における眼鏡業界の活力が衰えてきたことの結果と考えられる。

手工業組合のアンジェロ・マンフロイ氏によると、「地域の大部分は何とか生き延びているが、従事者数はおよそ半減しており、事業主は既に下請化していて、技術はあっても情熱を失っている。中小企業の間で、新たなマーケットを見出そうとする動きはなく、大企業のマーケットやその注文を待っているだけである。90年代半ばには、イタリア産地に大ブームがあったので、多くの会社が、新しい技術導入や拡大のために、銀行から借り入れを行なった。現在、そのつけを払っている」とコメントしている。

そして、追い討ちをかけるように、最大の輸出先の米国において、米国FDAの規則が一部改正され、今後同国向けの輸出に際しては、米国内にエージェントを設けることが義務付けられた。

新しい規定は、サングラス及び矯正用眼鏡フレームの、アメリカへの輸出を規制するものである。同国のマーケットは、輸出向けイタリア眼鏡製品の3分の1超を占めている。同然、この措置は、中小零細企業にとっては多額のコスト負担を強いられることになり、現在その動向は余談を許さない状態である。

彼らにとっても、MIDOは生成線である。イタリア国内マーケットは大手企業により市場参入が大変難しいため、世界中からバイヤーが集まるこの5月の見本市に向けて準備をすすめている。しかし、現実には年々、イタリア産地からの参加企業が減少している。

3.まとめにかえて

以上、最近のイタリア眼鏡産業の現状を大まかに記述したが、最初の質問に戻り、個人的な意見としては、イタリアは大手企業を中心として、今後も眼鏡製品の中心であろうし、今後数年はこの傾向が続くと考えられる。ただし、産地を形成しつづけることができるかと言う質問には疑問が残る。ほんの数年前まで、ベッルーノ地方には、眼鏡業界の全ての製作工程を分割して行なう企業がそろっていたが、今では、崩壊を開始したかのようである。産地にはR&D機能は放棄され、清算会社や、業務内容を変えた会社によって捨てられた、大量の中古機械がどんどん売り出されているという声を聞く。現在、産地内では他分野への技術シフトを目指す企業も出現しだした。ただ、ご周知のようにイタリア企業のしぶとさは定評があり、またユーロのトレンド変化に合わせよみがえることも大いに予想される。

2002年のMIDOは5月4日〜7日の4日間、ミラノの国際見本市会場で開催される。 眼鏡製品は@ファッション性、A機能性、Bマテリアル性、Cデザイン性の4つがバランスして初めて世界にアピールできる製品化が可能であり、トレンドの浮き沈みで一喜一憂するより着実なビジネスを実行できる余地がかなりあるという言葉を信じつつ、国産眼鏡製品を応援したい。


執筆者紹介
小野田謙一氏は、現在ミラノジェトロ内にある福井県ミラノ事務所の 駐在員としてご活躍中です。同事務所についてはインフォメーション(日伊関連機関 ― イタリア国内 )をご覧ください。 



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