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ITALY NEWS
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2001/08/01 


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血塗られたG8  ジェノヴァ・サミット  


佐藤 康夫

 





7月20日から3日間G8の会場となった北伊ジェノヴァ市では、首脳会議と並行して、会議の基調ともいえる諸分野での欧米先進国主導のグローバル化に反対(貧者や弱者にも目配りのある、より公正なグローバル化を要求)する市民の大規模な抗議行動が展開された。

この種のデモは1999年米シアトルでの世界貿易機関(WTO)閣僚会議への抗議の包囲行動を起点にしているところから、NGOなどの反グローバル化行動常連参加者は「シアトルの民」とも呼ばれる。  今回ジェノヴァでは、このデモ参加者の一部が治安警察と衝突 、サミット初の死者を出す不幸な結果となった。

●「戒厳令」下のジェノヴァ

G8本会議場・首脳宿舎周辺は「レッドゾーン」に指定され、域内に通じる道は200箇所あまりで高さ6mもの金属製フェンスで遮断され、治安維持を理由に港、空港、鉄道駅も閉鎖された。域内の住民2万8千人や商店・事務所で働く人々も、通行証なしでは「レッドゾーン」への出入りは不可能となった。

生活の不自由や騒乱の危険を予測してか、ジェノヴァ市民の多くは、会議が週末にかかることもあり、近郊の丘陵部に「疎開」し、商店もシャッターを降ろした市内中心部は警備と報道関係者を除くと人影が絶えた。治安対策には600億リラが投じられ、1万8千人の警察官や兵士が全国各地から動員され、装甲車・放水車や馬にプロテクターを着けた騎馬警官も配備された。

今回、中南米の軍政を想起させる「戒厳令」のように厳しい警戒体制がしかれた背景には、市民の行動が、個別の要求デモから先進国の戦略の根幹である市場などのグローバル化に対する異議申し立て、さらには、先進国のみでの首脳会談そのものを否定する抗議デモへと急速に変質してきている事実がある。実際に昨年9月の国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会、今年4月の米州首脳会議、6月の欧州連合(EU)首脳会議と、一部で暴徒化も目立って来ていた。

さらに過激派やテロリストの襲撃まで危惧され、欧州連合は事前に、過激デモ封じ込めのために危険と思われる活動家たちの情報交換を決めており、英独仏などの情報機関との緊密な連携のもとに対策が練られてきた。

「シアトルの民」の「武器」は自分の体以外は、シュークリーム、紙のミサイル、赤ペンキスプレー程度のものだが、イスラム原理主義者などのテロリストが情報技術を利用しての攪乱や反G8参加者に紛れて会場を攻撃したり、遠隔操作による小型機の利用による爆発や「KAMIKAZE 」(神風=自爆)作戦まで予測され、市内上空を監視する衛星に加えて、地対空ミサイルまで用意された。

同時に、G8開催直前まで、イタリア各地で銀行や国際的な企業の事務所などが何者かに襲撃されたり、警察や放送局に爆弾小包が送られ負傷者を出すなど、緊張感が高まっていた。緊張が高まれば、各国代表団からは警戒態勢の一層の強化が求められ、その結果デモや集会の禁止措置が予測されると、更にG8反対派の気勢が上がるという悪循環に陥っていたとも言える。

●反グローバル化の流れと主体

成り立ち
反グローバル化の動きは、1999年のケルン・サミットで途上国の債務帳消し要求を実現した抗議行動から、同年シアトルでのWTO閣僚会議へと、市場優先のグローバリゼーション(地球化)に反対の立場をとるNGOが増えて来たことで激化し、今回サミットでは首脳会議そのものを否定する反G8の流れが定着した。

反グローバル化の流れを加速した一因に、インターネットで流された米市民運動家ラルフ・ネーダーの「WTOをなぜ開かせてはいけないか」と題したメッセージが上げられており、これを発端に数百のNGOが連携するなど、インターネットの果たしている役割も見逃せない。

エスプレッソ誌は、「シアトルの民」のその他の「主導的」人物として、多国籍企業のバイオテクノロジーの利用に反対する米知識人Jeremy Rifkin、新技術の環境と人体への安易な利用に反対する著名な米言語学者のNoam Chomsky、 多国籍企業の労働搾取に抗し世界貿易ガラス張りを主張する米労働運動家Ron Judd、1994年からInternational Forum on Glovalisationのリーダーとして世界の主要なエコロジストを結集する米経済学者Vandana Shiva(インド人)、文化を均一化する多国籍企業、とりわけマクドナルドの敵として有名なフランス農民労組のリーダーJose' Bove'、多様な分野で大資本と対立するテキサスの「カウボーイ」Jim Hightowerなどを上げている。

その他にもNaomi Klein(著述), Manu Chao(音楽), Julia Hill Butterfly(環境保護)なども、それぞれの分野での活動で反グローバル化のシンボル的存在となっている。

組織と行動様式
若者達の反グロバリゼーションの示威行動として始まった「シアトルの民」も、いまや世界的運動として発展し、工場労働者や労組活動家からニューエコノミー従事者まで、知識人や環境派、カトリック者とボランタリー協会員、主婦から各種社会センターの青年たちまでを含む、実に多様な階層を横断する運動に成長してきている。反グローバル化の意図のみで結ばれる運動には、統括する上部組織は存在しない。

今回のジェノヴァ・サミットを機に形成された「ジェノヴァ社会フォーラム」(GSF)も緩いネットとして機能しており、暴力の否定を共通点とする700もの国内外の団体が名を連ねている。

ラ・レプブリカ紙によれば、反対派は環境派・左派・カトリック系と大別され、平和主義者として括れば、カトリック各派の他、非宗教団体や緑の党や共産党再建派(元共産党左派)などの政党をも含み、フランスを中心に世界三十カ国に広がるNGO「ATTAC」、ラテンアメリカで公正な貿易を求める運動体なども含まれる。GSFには他にも、アイルランド労働党、スペインのIzquierda Unidaや南伊のRete No Global(ノーグローバルネット)なども加わっている。

その行動様式からは WwfやGreenpeaceなどの穏健派、伝統的な平和団体などの非暴力主義者、Tute Bianche(「白いつなぎの作業服」をユニフォームにしている)などの不服従抵抗グループ、僅かだが暴力的破壊主義者たちに区分される。

この中、不服従グループがG8を「身をもって阻止するため」、攻撃的武器を持たずに立入禁止区域である レッドゾーンへの「理論的」進入を予告(5月26日)していたが、実際には生卵やニンニク、風船だけが、ゾーン突破に成功するに止まった。

また、G8反対派とは言えないが、カトリックの国イタリアらしく「修道院を出てジェノヴァへ」と、貧者問題に取り組むカトリック聖職者たちが呼びかけ合って、G8会期中、重債務貧困国の負債帳消しを要求して祈りと断食が行われた。

過激派
最後に上げた破壊主義者グループは、GSFのネットの外にあり、二つに色分けされる。ブルー組は、グローバル化のシンボルである銀行やマクドナルドの支店を破壊するいわゆる単純な「ガラス割り」グループ。フランスのCasseur、イタリア各市の社会センターの一部、アナキストの一部もこのグループに属する。

黒組は最も過激なグループであり大半は外国から遣ってくる。今回のジェノヴァでの騒乱を引き起こしたのもGoteborgで大暴れしたBlack bloc(全身黒衣を纏うところからtute nere(黒のつなぎ作業服)と通称される)。彼らは資本主義の象徴である銀行・保険会社、高級車を好んで破壊する過激なアナキストたちだ。 他の反体制過激組織としては、squatter, punkabestia(パンク過激派), 北欧反帝国主義者などが上げられる。

イタリア内務省によれば、これら過激派の大半は、英国、フランス、スペイン、ドイツ、オーストリア、東欧、米国、カナダ、オーストラリアからやって来ており、その数二千とも五千ともいわれ、 彼らは反グローバル化の流れの最も暴力的な部分を代表し、デモでは火炎瓶と鉄棒を持って警官と衝突、規定の戦略や主張はなく「破壊のための破壊」を繰り返す。

イタリアでは、ミラノやトリノのアナキストグループ、アレッサンドリアのアナキスト・パンク、ボローニャの過激左派グループがマークされており、ローマやナポリでも少人数のグループが流動的な動きを示し今年のナポリで開催されたGlobal Forumで警官隊と衝突している。

ドイツには、Fels(ベルリンのアナキスト)、Widerstand International(「国際的抵抗」トロツキスト)など最も過激で暴力的なグループが存在する。英国で最も過激なグループClass Warは、ラディカル・パンクの2000人規模の組織と見られている。

●反グローバル化運動の主張

ジェノヴァには欧州各国を中心に約20万人の市民・活動家がデモや集会に集結した。多様な団体・個人からなり主張も均一なものではないが、参加者の目標は大まかに以下のような項目に纏められる。

先進主要国を中心に押し進められて来ている規制緩和による競争促進、人や物や情報の移動を完全に自由化し、地球規模で唯一の基準・価値観として市場メカニズムを浸透させようとするグローバル化に反対する。なぜならば、このようなグローバル化は強者と弱者、富者と貧者の格差を一層拡大し、社会・文化の多様性を抹消し、地球的規模での自然の破壊をもたらすという批判が根底にある。

国際的貿易での新しいルールの確立:
-途上国が市場に自らの産物を対等な価格で供給できるよう障壁を排除・農産物の価格安定のための生産と流通を統制するメカニズムの創設。
-全ての購買者が明確な条件のもとで自由に購買出来、全ての生産者が自らの生産物を販売する可能性が与えられる真の意味での自由市場の創設。
-金融と税制上の「天国」を告発し即座に具体策を講じる。不正資金のマネーロンダリングや野蛮な投機のための税制的特権を提供する国をリストアップして公表する。
-投機のために利用される資金の国際的な移動を困難にする税(Tobin Taxを例とする)を創設する。
-労働は生命と生活の尊厳を維持する道具である。労働での搾取を排除する国際的法規の改良と適用。
-京都環境議定書の速やかな発効。
-多国籍企業にみられる企業の独占的地位の排除。
-情報産業での独占を排除し、情報の自由を市民に保証する。
-貧しい国での疾病克服のために保健分野での公的研究に財政援助する。
-エイズ治療のための医薬品の生産と供給に努め、貧しいアフリカの国の市民にも手の届くものとする。
-貧しい国でも購入可能なコストで医薬品を生産・供給する規則を制定し、知的財産権の改革を進める。

●デモ行進

19日は、五万人が参加し平和なデモ行進が続けられ、警察との衝突もなかったが、20日は、自主労組などを中心としたストとデモ、tute biancheなど非服従グループのデモが行われた。約七万人が参加したといわれるこの日のデモは、時間が経つに連れて過激派(Black bloc)が火炎瓶や石を投げ挑発。それに対して警察が催涙弾や放水で応酬する形となり、間に挟まれた一般デモ参加者にも200名以上の負傷者を出した。

暴徒化したデモの中に取り残された警察のジープが包囲され襲撃を受け、パレルモから動員され市内の地理にも明るくない警官(半年前に配属された20歳の召集兵)は恐怖に駆られ消化器を投げつけようと迫る青年カルロ・ジュリアーニ(23歳)を車上からピストルで射殺した。この模様はロイター通信のカメラマンによって撮影されており、翌日の新聞・テレビを通じて世界中に惨劇が伝えられることになった。

21日は平和な国際的大規模デモ行進となるはずであったが、十五万人を集めたデモ行進は、又しても過激派と警察との乱闘となり、巻き込まれた市民たちのなかから前日を上回る負傷者を出した。

またデモ参加者の証言では、両手を上げる無抵抗の青年男女にも警察は容赦なく警棒で殴りかかり負傷者を増やすことになった。デモ参加者や報道陣の証言では、警察は過激派が市街の商店などを破壊し続けるのを放置しておきながら、一般のデモ隊列に過激派を押しやり、隊列内から行われる過激派の火炎瓶や投石を契機に、警察はデモ隊全体に攻勢をかける形となった。

また、ラ・レプブリカ紙は「(過激派と思われる)黒装束の数人が警察の車から降りて来た」というデモに参加した神父の証言を載せ、ウニタ紙はpressと文字の入った黄色いチョッキをきた人物が警察装備のピストルに似たものをもって写っている写真を掲載し、デモの記録映画を撮影中の映画監督も「過激派が警官と親しげに話している姿」を目撃したと証言している。警察と過激派の謀略説を唱えるわけではないが、今後、青年射殺事件の調査とともに、多くの疑問点が解明される必要が出てきたのも確かだ。

22日未明、GSFの本部として提供されていた学校(夏期休校中)で家宅捜査が行われた。過激派を幇助しているとの疑いで、その場に居合わせたデモ参加者らを、警官らが無差別に襲撃し、多くの負傷者を出した。逮捕者は93人にのぼり、火炎瓶や鉄棒などが押収された。

23日、内相は下院においてジェノヴァでの青年死亡事件を始めサミット3日間の治安警備報告を行った。レッドゾーンの警備は万全で首脳会談は成功したと評価し、過激派を糾弾しながら同時に他のデモ行進参加者との区別は困難とし、さらに平和なデモの組織者であるGSFなどが過激派を容認し助けていたとの見解を表明した。

野党は、過激派の取り締まりが不十分で、市民の平和な示威行為の権利が保障されなかったこと、500億リラとも推定される物理的被害を出し安全な市民生活が守られなかったことなどを理由に政府の失策を糾弾し、即座に内相の辞任を要求、国会内に調査委員会を設置するよう提案した。

内務省発表のデーター(23日現在):
逮捕者288人(内女性67)/負傷者231人(警官94,デモ参加者121,ジャーナリスト16)/予審判事の尋問を終えて釈放された逮捕者123人/国境で追い返された者2.093人(国境警備のため一時的にシェンゲン条約を凍結)/ジェノヴァ警備に当たった召集兵の割合27%(治安対策に不慣れな召集兵を起用したことに批判が出ている)/ジェノヴァで行動したBlack blocの人数5.000人(米国情報筋)

24日、警察の不意打ちの家宅捜査や内相の発言に反発するGSF参加者たちに一般市民が加わってミラノ、ローマなどで抗議行動が続けられている。警察の過剰な警備やその逸脱行為に対して、英独仏のマスメディアはイタリア政府の対応を厳しく批判した。

●ベルルスコーニ政権とG8

ベルルスコーニ首相は、サミット終了後の内外記者会見において、真っ先に、メディアが今回のサミットの第一のメッセージとして「騒乱と混乱」を打電したことに遺憾の意を示した。彼は「自分がメディアを通じて発したかったのは、彼自身が率先して行った社会的諸勢力(労組・企業家・聖職者)や途上国(アフリカを中心に)との対話にも熱心な首脳たちの姿であり、弱者貧者にも配慮する刷新されたサミットの様相だった」と述べた。

首脳会議自体の成果については、首相の自画自賛とはほど遠い、手厳しい評価が各国紙誌などから出されている。実際、環境から平和問題まで、意見の対立する重大項目には触れずじまいの「無駄な会議」となったからだ。このサミットの不調は、なによりもブッシュ米大統領が「私の仕事は米国を代表することに尽きる」と国益優先の姿勢に終始し、会議の調整役がいなくなったことに起因している。

国論を二分する形で誕生した右派政権のベルルスコーニ伊首相は、就任早々ブッシュ米大統領の環境対策(京都議定書離脱)やミサイル防衛構想に理解を示し、英国とともに、欧州列国とは一線を画すあからさまな親米姿勢を打ち出し、草の根の平和主義者や環境派を逆撫で、反感をかった。

またルッジェーリ新外相は、WT0の初代事務局長を務めた人物で、もともと自由貿易とグロバリゼーションの熱烈な信奉者の一人。同氏は外相就任に当たって、「世界的商業は力関係に基づくのではなく、権利に基礎を置くもの」と、あらゆる分野で進行するグロバリゼーションに不安を募らせる発展途上国の利益保護にも努力する姿勢を示しているが、具体策に乏しく「シアトルの民」を納得させることが出来るか、甚だ心許ない。

更に、「会議の外」でも、たとえ過激な行動をとっていたとはいえ一人の青年が警察官に射殺され命を落としたことで、今回のサミットは完全な失敗に終わった。会議場周辺を閉鎖隔離することで会議の安全を保証することは出来たものの、物理的被害はともかく、市民の示威行為の自由も、その市民の身体的安全さへも保証出来なかったことへの責任は大きく、今後のサミットの在り方についての議論とともに、国内外での政府への批判は避けられまい。

●ジェノヴァの主役たち

このジェノヴァ・サミット期間中の主役は、G8の首脳とその多数の随行員と護衛官、反グローバル化の平和なデモ参加者と黒装束のBlack blocと呼ばれる過激派、警察と軍の警備陣、それに数多くのメディア関係者であった。

首脳会談の成果については、すでに述べたが、華麗な表面と空疎な内容・恥じ入りたくなるほどの僅かな具体策(エイズ基金)が特色で、これまでのサミットのなかでも最も低いサミット(頂上)であることは明白である。会議の外の「騒ぎ」にも、シラク大統領を除いて、首脳たちは冷淡で傲慢な態度をとり続けた。

市街戦の専門家Black bloc、反体制の彼らにとってG8は単なる口実に過ぎない。首脳達が貧者に多少の関心を示したとしても、彼らの破壊のための破壊行動は変わらず、市街を破壊し、警察と衝突することでメディアの関心を集中させ楽しむのだ。武器は現場で調達し、デモ大衆を分裂させ、紛れ込み、大衆を暴徒化させるといわれる。今回、大衆デモ行進全体を暴徒化することには失敗したが、他の目標はすべて完遂した。

警備陣は、まずこのリストアップまでされたグループであるBlack blocの狼藉を未然に阻止出来なかったことで汚点を残した。サミット参加国の警察は国際的に連携しており、国境でか、市の入り口でか、予防措置として彼らを押し止める可能性は充分にあった。彼らが市内に入ってからも、レッドゾーン警備に手を取られ、市内の他所での配備に抜かりがあった。更に、市街破壊・略奪を続ける彼らを逮捕し損なった警察は、少なくとも老若男女から構成される平和なデモ行進を彼らの暴力から保護すべきであったが、これもなされなかった。

むしろ警察は、Black blocがデモ隊列に紛れ込んだのを待つかのように、驚くほどの激しさでデモ隊全体に攻撃をかけたのだ。予防戦略の完全な失敗に関して、警備の指揮者たち、更には政治指導者の責任が問われることになろう。また警察が、未経験の青年警察官を「市街戦」最前線に送ることや、暴徒鎮圧に、シアトルでのようにゴム弾ではなく、実弾を使用したことも非難の対象になっている。

ベルルスコーニ首相自身は三回も現場を視察し、警備陣と会合していた。もっとも、彼の関心はG8を完全に隔離防御することであり、バルコニーなどの鉢植えの花やアパートの窓下の下着などの洗濯物を「整備」させる以外は「外界」には無関心だったようだ。

GSFに結集するデモ参加者は、過激派と警察官と両方から攻撃されながらも、全体として冷静に示威行動を続けたと言える。同時に、GSFの代表 アニョレット(Vittorio Emanuele Agnoletto)は、デモ行進を過激派から保護するための組織的サービスが欠けていたことを認めた。また、青年が射殺された翌日のデモは、同じような事態になることが容易に予測されたことから中止すべきであったとの声もある。NGO非政府組織を含めて「力の対立から現実的な変換の運動へ」の移行が望まれており、今後「イタリア社会フォーラム」として継続される運動の在り方が問われることになるだろう。

死者と多数の負傷者を出したサミット騒動で、直接の責任はないものの、もっともダメージを受けたのは、今回の会場であるジェノヴァ市(左派市政)を選択し、現在の警察幹部を指名した前中道左派政権の中核、左翼民主党かも知れない。ジェノヴァでの反G8デモに参加するかどうかで最後まで党内調整ができず、意見が二分したままサミットを迎え、左派勢力の信頼性を大きく傷つけることとなった。党の支持者を分裂させる混乱の中で、シンボルである樫の木を自ら切り倒す自殺行為が進行しているとも言える。万年野党の共産党を脱皮して政権を担当するまでに「成長」した党が、一端野に下った場合、大衆抗議行動にどのように対処するのか 難題が残された。

また、カジーニ下院議長も指摘するように青年層の間で憎悪が痼りとなって残ることも懸念される。警官もデモ隊もともに明日の世界を担う青年たちが圧倒的多数を占めているからだ。「暴力は暴力を呼ぶ」とはよく言われる。Black Blocに対抗して、GSFや共産党再建派(元共産党左派)などを中心に"Red bloc"(エスプレッソ誌)が生まれることもあり得る。言葉から血へと、誰も欲しないにも係わらず、全員の激烈な競い合いによって生まれてくるのが「ファシズム」だからだ。

この状況の中で、今回のサミットの「闇」のすべてを解明するために、真実の証言者としてマスメディアの果たす役割は更に一層重くなって来ていると言えるだろう。





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