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ITALY NEWS
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2001/07/01 


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G8 ジェノヴァ・サミット(主要国首脳会議)
苛烈な洗礼を受けるベルルスコーニ 新政権


佐藤 康夫

 





  ジェノヴァといえば、アメリカ大陸を発見したといわれるコロンブス (1451-1506)の名がまず思い浮かぶが、中世期にピザやヴェネツィアと越して繁栄し た歴史を誇る港町だ。現在も地中海で最も重要な港のひとつでありイタリアの主要工 業地帯でもある。いま、この人口六十四万の港町がG8を前に「熱い」季節を迎えてい る。

G8会場

 7月20,21,22日の3日間の会期中、ジェノヴァでは港、空港、鉄道駅が治安維持の ため閉鎖される。本会議場となるデゥカーレ宮は中世以来の旧市街にあり、迷路のよ うな路地に囲まれており、各国のシークレットサービスが呆れるほど警備の難しい建 物だ。数ヶ月前から近接地区にあるアパートが軒並み調査され、とくに疑わしいアラ ブ系移民や不法滞在者が洗われている。会場の宮殿を隔離させることが不可能なとこ ろから、旧市街の大半を閉鎖するレッドゾーン計画が実施され、通行証なしでは地域 内の移動は不可能となる。大型ゴミ収集器も撤去され200箇所で通路が遮断される立 入禁止区域内の住人は二万八千人。

 治安対策に六百億リラが投じられ、一万八千人の警察官や兵士が集められるのと並 行して、二千億リラをかけて市街の美化と改装が進められて来た。

G8反対派

 G8を「身をもって阻止するため、レッドゾーン(サミット会場となるデゥカーレ宮 周辺に設定された立入禁止区域)を突破する」と、グロバリゼーション反対派スポー クスマンが予告(5月26日)するなか、ジェノヴァ市では緊張が高まっている。緊張 が高まれば、各国代表団からは警戒態勢の一層の強化が求められ、その結果デモや集 会の禁止措置が予測されると、更にG8反対派の気勢が上がるという悪循環。

G8反対派は大雑把に環境派・左派・カトリック系とグループ分けがされるが、その 行動様式からは,WwfやGreenpeaceなどの穏健派・伝統的な平和団体などの非暴力主義 者・Tute BiancheやCobasと呼ばれる不服従抵抗グループ・僅かだが暴力的襲撃者た ちに区分される。 反G8のフォーラムには360に上る非政府組織(NGO)が参加を表明 しており, 欧州各国から20万人の市民・活動家がデモや集会に集結するものと予想さ れている。 集会には、南米の反政府指導者マルコスやノーベル賞受賞者のマンデー ラ、社会学者のセンなどの参加も予定されている。

人数として多いのはいわゆる「シアトルの民」と呼ばれる運動参加者。1999年シ アトルでのWTO(世界貿易機関)会議開催時に見られた若者達の反グロバリゼーショ ンの示威行動が世界的運動として発展、工場労働者からニューエコノミー従事者ま で、知識人や環境派、カトリック者とボランタリー協会員、主婦から各種社会センタ ーの青年たちまでを含む実に多様な階層を横断する運動に成長してきている。

 また、G8反対派とは言えないが、カトリックの国イタリアらしく「修道院を出てジ ェノヴァへ」と、貧者問題に取り組むカトリック宗教者たちが呼びかけ合って、G8会 期中、重債務貧困国の負債帳消しを要求して祈りと断食を予定している。

イタリア新政権

 イタリアでは、苛烈な選挙戦で国論が分断されるなか、5月13日の総選挙で中道右 派が勝利。「億万長者の首相が、ファシストやマフィア関係者を指揮するという欧州 でも最悪の右派政権の誕生」 (不服従抵抗グループ)と見るむきもあり、 選挙で敗 北した左翼の攻撃の矛先がG8に向けられても不思議はない。

 さらにベルルスコーニ伊首相は、就任早々ブッシュ米大統領の環境対策(京都議定 書離脱)やミサイル防衛構想に理解を示し、欧州列国とは一線を画すあからさまな親 米姿勢を打ち出し、草の根の平和主義者や環境派を逆撫で、反感をかっている。

 イタリアのルッジェーロ 新外相は、WT0の初代事務局長を務めた人物で、もと もと自由貿易とグロバリゼーションの熱烈な信奉者の一人。同氏は外相就任に当たっ て、「世界的商業は力関係に基づくのではなく、権利に基礎を置くもの」と、あらゆ る分野で進行するグロバリゼーションに不安を募らせる発展途上国の利益保護にも努 力する姿勢を示しているが、「シアトルの民」を納得させることが出来るか、甚だ心 許ない。

 サミットでの議題は、環境と共存する開発、安全な食糧生産と供給、貧富国間の諸 問題、中東問題など、どれも緊急かつ解決困難な課題である。そこへ環境と防衛問題 で欧州との対立を持ち込むブッシュ=ベルルスコーニ軸が登場、会議の成果が危ぶま れることになった。

 同時に、イデオロギーの時代は終焉したと言われるものの、世界は理想とイデアに 飢えているのも事実であり、非政府組織の「力の対立から変換の運動へ」の移行が望 まれているのも確かだ。

テロ対策

 「シアトルの民」の「武器」は、自分の体以外は、シュークリーム、紙のミサイ ル、赤ペンキスプレー程度のものだが、ドイツ情報機関によると イスラム原理主義 者のテロリストもG8攻撃を企図しているとされる。情報技術を利用しての攪乱や反 G8参加者に紛れて攻撃したり、遠隔操作による小型機の利用による爆発や 「KAMIKAZE 」(神風=自爆)攻撃が予測され、市内上空を監視する衛星だけでは事前 に捕捉することは難しい。

 内務相は「テロの危険」を書きたてるメディアにトーンダウンを求めたが、実際、 イスラム原理主義のテロの対象となる 米国代表団の危機感は強くその宿泊先はトッ プシークレット。米大統領は市内には宿泊せず、 米空母かピザの米軍基地からヘリ で往復することになる可能性が大だ。

 市内に五つ星ホテルはなく四つ星ホテルの2.411室が確保されているといわれてい るが、いまだに各国代表団や報道陣の宿泊先が不明で、最終的には5艘の客船が借り 上げられることになりそうだ。直前に到着する船は事前に検査する時間がなく、テロ の攻撃目標ともなりやすく参加国の不安は絶えない。

 この状況を憂慮してか、イタリア新政府は、先日突然、サミット前座の主要国外相 会議の会場をジェノヴァからローマに変更。サミット崩しの反G8のうねりの前に、ブ ッシュ米大統領とベルルスコーニ伊首相の国際的デビューに陰りが差してきたよう だ





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