0
ITALY NEWS
0
2001/05/01 


zoom-up



ミラノ: デザインの首都 
MILANO: CAPITAL OF DESIGN ミラノサローネ


天野 忠夫 (Studio TAD 代表 )

 





ファションのミラノコレクションと並ぶ、世界中に有名なデザインのイベントがミラノ国際家具見本 市(通称ミラノサローネ)だ。

今年は4/4-9に照明のユーロルーチェと併催。出展社は約2,500社、内650社はイタリア外。 約17万人の来場者は140カ国にもわたりオリンピック並みだ。生産のほぼ半分を輸出しているのが納 得できる。イメージのみでなく、ビジネスも世界一のレベルと量で、この業界の世界のトップらしく 家具は8%、照明器具はなんと25%も輸出が伸びている。

この一週間は新聞、TV等マスコミもこぞってサローネ特集。家具産業は機械、繊維、に次いでこの 国で三番目に重要な産業。いかに、この見本市がこの国にとって重要かを示している。 毎回ながらレベルの高さ、種類の多さ、見せ方の上手さには驚かされる。

見本市 全体を眺めてみると、主要メーカーはほとんどが4、50年代のエッセンスのあるソフトでシン プルな「レトロ-フューチャー」が主流。「ミニマリズム+ZEN」もまだまだ多い。(日本人の考える 「禅」ではなく、欧州人の感じる「ZEN」)。

そして、カラフルなカラーが久しぶりに帰ってきた。トレンドカラーはズバリ、オレンジ色。 約130のブースに若いデザイナーと約20のデザイン学校がひしめく、サローネ・サテリテは様々なス タイルのプロトタイプのみが並び、活気に溢れている。半分以上が外国人。今回、「元若かった」私 と母校ムサビもここサテリテに初参加。マスコミやメーカーなどから予想以上のコンタクトがあり、 まさに「サローネ効果」。同会場内での「iMade展」は有名な製品を切断し、使用されている素材の 秘密を惜しげもなく次の時代を担う若いデザイナーたちにあかし、今回も見本市の人気の一つ。

フオーリ・サローネ 見本市会場をでると、市内のショールーム、ギャラリーなどで展示会(フオーリ・サローネ)はます ます増えて、なんと200以上ある。すべてを見るのは全く不可。 地元イタリアからは、ほとんどのトップデザイナーが参加。 他にオランダからは、ドローグデザイン、イギリスからはロン・アラッドがミラノ最高のマルコーニ 画廊で、ドイツからは、インゴー・マウラー、フランスからは、P.スタルクが参加、と欧州のトップ クラスが自主的に、一同に揃うのはサローネだけであろう。このイタリア外の参加が特に増えてい る。まさにインテリア誌のコピーの通り「MILANO: CAPITAL OF DESIGN 」。実質、世界最大のデザ インイベントとなっている。

その中から、まずは、歴史のあるトリエンナーレでの「Made in Italy?」展。デザイン、ファション のみならずピィツァ、パスタも紹介する一風変わったデザイン展。 旧工場跡地のスーパースタジオ ピューでは、斬新なデザインで有名なカッペリーニ社をはじめ、約 25の展示会と見本市会場に劣らぬレベルと規模になってきてる。また、この辺一体はポルタ・ジェノ ヴァ駅裏側のちょっとトレンディーな地区。アルマーニ テアトロ(ANDOTADAO設計)も、すぐ隣に 来年完成予定、向かいはイタリアデザイン博物館予定地。

プラダ財団は、レム・クールハースによる世界6カ所の現在進行中の自社の実験的なショップと社屋 のプロセスや、実物の一部分を展示。斬新な「アートとテクノロジーの融合」の実践を紹介する、巧 みなイメージ戦略。賢いお金の使い方に羨望の的。 このようにサローネは家具業界にファション、アートも加わり、ますます「デザイン−文化」のイベ ントとして広がっている。

世界中から集まってくるデザイナー

この世界的デザインの発信地にはまるで磁石に吸い寄せられるように、世界中からデザイナーの卵が 集まってくる。 ちょっとしたデザイン事務所には必ず外国人が働いているし、ステージと呼ばれている、インター シップ希望の学生も欧州中から来る。(私の事務所にすら打診がある、、、) イタリアンデザインの秘密 このイタリアンデザインの秘密は何かと言うと、基本的に各社、他社とは違う物を作るというオリジ ナリティーを大切にし,競争心,プライドがとても高い。そのためにはトレンドを超えたデザイナー の感性と、それを先見性のある直感力で判断する経営者と、何としてもそれを作り出す技術者との見 事な三角関係。 ここではまだ、建築とデザインが細分化されてなく、私が師事したボス達も建築,デザイン、グラ フィックを行っており,お陰で私もプロダクト,インテリア,環境計画,グラフィックへと広がっ た。また,デザインには頭と手だけでなく,情熱がいかに大切か知らされた。 さらに、基本的にロイヤリティー契約なので目立っても、売れない商品では困るので当然、皆、真剣 そのもの。

自分の心に素直に従って生きる イタリア人は人生を楽しむ天才だと言われるが,私には彼らが単に「自分の心に素直に従って生きて いる」に過ぎないことが分かってきた。これが良きにつけ悪しきにつけ「イタリア的」と呼ばれてい るゆえんであるが,古今東西すべてのクリエーティブ活動の源でもある。ポストモダン運動が花開い たのも,ストイックなモダンデザインのみではこの国のデザイナーの本心をカバーできなかったから である。フリーランスが多いのもデザインだけの事ではない。国家統一もたかだか100年ちょっと前 で,各自治体はみな独立心,競争心が強く、たまたま総称を「イタリア」と呼んでいるに過ぎない国 だからであろう。

アイデンティティは 世界のデザインシーンをリードしているイタリアではあるが、一部のトレンド予想のとおり、ファ ションの流行がその後、デザイン業界に移行するというアメリカ生まれのマーケッティングが力を得 てきたことと、有名大御所デザイナーを起用するメーカーが増えてきたことを危惧する。この国独特 の「カオス的」社会から次世代のデザインが今後も生まれて来るのか少し気になる。 研ぎすまされた感覚に支えられたオリジナリティーのあるデザインのみが世界へのメッセージであ り,それが文化でありプライドになり、アイデンティティだとこの国は教え続けてくれた。


天野忠夫 Tadao Amano 氏のプロフィール

プロダクト・インテリア・環境・グラフィクデザイン、 デザインコンサルタント。

56年山梨県生まれ。
78年武蔵野美術短期大学 専攻科 卒
87年渡伊。建築家A・マンジャロッティ氏に師事。
89年よりフリーランスデザイナーとしてミラノに Studio TAD 設立

クライアント:
ローゼンタール(独)、ミッソーニ(伊)、ルクソッティカ(伊)、 三菱テレコム ヨーロッパ(仏), YKK AP(日)、クリナップ(日)etc.

受賞歴:
国際オフィス家具コンペ「TRAU 1991」第二席(伊)
国際陶磁器コンペ美濃’86 審査員特別賞(日) 等

作品は、デザインミュージアム ロンドン等美術館で展示され、 デザイン雑誌等に掲載されている。

その他に美術大学等の講演や日経デザイン誌に執筆等の活動。

写真(上から)
Molteni社:トレンドカラーのオレンジを使ったソファー。
Kartell社:植木鉢型の屋外用イス。
天野氏のサローネ・サテリテ出品作。:DNA light, EL table, EL kakejiku (発光するELフィルムを使用)





トップへ  

www.japanitaly.com