0
ITALY NEWS
0
2001/02/01 


zoom-up

イタリアにおける移民問題(後編 その1)

佐藤康夫 (ローマ在住)  





イタリアにおける外国人

◎定着する外国人居住者

総数
1999年末現在、内務省が外国人に発給した有効滞在許可証総数は1.251.994。これを基準にしたISTAT(統計局)などの推計によると、149万人の外国人がイタリアに滞在居住していることになる。その数はイタリア総人口57.612.615人(1998年)の2%を越えるが、フランス(約7%)などと比べると、まだその比重は大きなものとは言えない。

出身国
外国人居住者の出身大陸別では、欧州39.9%、アフリカ28.5%、アジア19.2%、アメリカ12.2%、大洋州0.2の順となり、地域別では、東欧391.991人、北アフリカ 275.971、統合欧州(EU)173.487、極東146.909、南米122.511、西アフリカ105.980、インド大陸99.990、北米59.589の順位となる。 国別ではモロッコが174.324人と最も多く、アルバニア137.748、フィリピン72.595、セルビア+モンテネグロ65.091、ルーマニア61.428、アメリカ合衆国56.606、中国56.059、チュニジア52.412、セネガル44.521、ドイツ42.093、スリランカ35.535と続く。

居住地域
1999年現在、北伊53.6%、中伊29.4%、南伊11.5%、島嶼部5.5%の順に外国人居住者が多く、イタリア20州のなかでは北伊のロンバルディア(21.2%/316.341人)、中伊のラツィオ(17,7%/263.207人)、北伊のヴェネト、エミリア・ロマーニャ、中伊のトスカーナ 州に外国人が集中していることが知れる。1990年度の集計では中伊に41.4%(北伊37.5%)が集まっていたが、90年代を通して北伊居住の外国人数が162%(全国平均+91%)増加、州ではヴェネト州(+250%)ロンバルディア州(+171%)に外国人が集中する傾向が見られ、順位が逆転した。

居住外国人の対イタリア人住民比率(全人口対比2.6%)で見ると、中伊4%、北伊3.1%、南伊島嶼1.2%となり、州別ではラツィオ州5%、フリウリ、トレンティーノ州が、それぞれ3.7%と全国平均値を上回っている。

南伊の外国人構成の特徴は、アフリカ人を中心にEU域外の外国人の比率が93.1%(全国比88.4%)と高いこと。州別では、カラブリア州(95.2%)、シチリア州(94.3%)、プーリア州(94.2%)にEU域外の外国人が集中している。

外国人居住者の中で女性の比率が高い地域は中伊で、ラツィオ州(50.7%)、モリーセ州(50.4%)と外国人の過半数が女性で占められる。

長期滞在居住者
他の西欧諸国への移民の「渡り鳥の通過地点」、一時的に滞在する「腰掛け労働者のプール」と言われてきたイタリアだが、近年、定住を目的とする移民の対象国にもなってきた。

1999年末現在、住民登録をしている外国人総数は1.270.563人。5年以上イタリアに滞在する外国人は421.723人、10年以上の滞在者は 262.836人で、それぞれ外国人居住者の33%と23%を占める。98年度と99年度の5年以上滞在者数を比較すると28.8%の伸びが記録されている。その中で女性が四割を占め、イタリアでの定住が家族単位で進んでいることが知られる。

5年以上滞在者数ではモロッコが57.614人で13.8%を占め、米国(30.177人)、チュニジア、ドイツ、フィリピン、セネガル、セルビア+モンテネグロ、アルバニア、スイス、英国の順となる。10年以上の滞在者数では同じくモロッコが39.540人(15%)、次いで米国(24.133人)、セネガル、チュニジア、ドイツ、スイス、フィリピン、英国、フランス、スペインと並ぶ。

◎ 増加する移民女性

●国連の世界的統計では、1965年から1990年に掛けて世界の女性の移民は、3500万から5700万と62.8%増加し(男性移民は4020万から6260万と55.7%増加)、今後、移民が定着していくなかで家族形成・社会生活への同化の過程で果たす女性の役割を考慮すると、労働力としての男性移民と同じように女性移民に注目する必要がある。また、とりわけ若い女性移民の場合、忌まわしい売買の犠牲となることも多く特別の配慮が望まれる。

1999年末現在の外国人滞在者総数の46%が女性。前年度と比較して0.8%の減少が見られたが、これは1999年度の移民正常化措置によって滞在を許可された既住移民の71%が男性であったために生じた一時的現象である。1999年 新規入国者だけをみれば、 1994年には35.8%であった女性移民の増加傾向は続いている。

一般に欧州やキリスト教圏からの移民では女性の比率が高く、途上国やイスラム圏からの移民に男性の比率が高いと言える。 この違いは、後者の移民男性が定住後、家族を呼び寄せることで埋まりつつある。また途上国からの移民では40歳以降の年齢層で女性の比率が高くなっている。

女性移民数が50%を越すのは全国22県:北伊(ソンドゥリオ、ジェノヴァ、ラ・スペツィア、フェッラーラ、ポルデノーネ)、中伊(フィレンツェ、テルニ、アンコーナ、アスコリ、リエーティ、ローマ)、南伊(キエーティ、テーラモ、アヴェッリーノ、ナポリ、カンポバッソ、イゼルニア、ブリンディジ)、島嶼(カターニャ、エンナ、オリスターノ、サッサリ)

●移民女性の出身大陸別では、南北米大陸からの移民に最も女性の比率(69%)が高い。ドミニカ共和国からの移民100人中86人までが女性である。北米大陸、とりわけ米国移民の間でも65%が女性である(NATO関係者は滞在許可を必要としないため、実際の男女比との差異が生じている)。女性の比率が八割を越える南米の国としては他にアンティグア、バルブーダ、キューバなどがある。ラテン・アメリカからの移民に女性が非常に多い理由は、彼女らがイタリアにおいて家庭労働協力者(女中)の仕事を得やすく、また文化的にも類似性があり社会生活に同化し易いためと見られている。

次いで女性の比率が高い移民出身地域は、大洋州で54.6%。欧州からの移民は男女比率がほぼ均衡している。EUだけで見ると女性は60%を占める。一方バルカン半島諸国からは移民男性の比率が高く、また欧州中東部などからは女性の比率が高い。

旧ソ連邦のアジア地区諸国、フィリピン、タイなどのアジア諸国からの移民にも女性が圧倒的に多い。反対にインド大陸からの移民では、男性が大半を占め(67.6%)、パキスタン、バングラディシュなどは男性移民が80%を越える。

アフリカ大陸からの移民中の女性の比率は29.6%と低い。例外的にカーポ・ヴェルデェ、エリトリア、エチオピアからの移民は7-80%が女性で占められる。アフリカ北部と西部からの移民は大半が男性であり、とりわけセネガル(7.1%)、アルジェリア(11.9%)はもっともイタリアへの移民女性の少ない国となっている。

女性の移民を難しくしている一因には、北アフリカなどに多いイスラム教国出身の移民にとってカトリック社会に適応するのが容易ではないこと、また、同時に受け入れ側社会の無関心・搾取・暴力的対応なども上げられている。

◎単身者から家族持ちへ

●戸籍上の身分形態
1996年ディーニ政権下での正常化措置を境に、それまで滞在目的の60%以上を占めていた「労働」が減少し始め、「家族合流」が増加していく。90年代を通して、単身・独身者移民が減少し続けており、単身労働者として入国した男性が、安定した就業・生活環境を確保することで配偶者や扶養家族を呼び寄せたり、イタリアで結婚したりと、家庭形成の過程に移行した。 1999年、初めて外国人居住者中の家族持ち・既婚者数(48.6%)が単身・独身者数(46.4%)を上回った。

地域別では北伊に家族持ちが多く、中伊では単身者(54%)が目立ち、特にローマ県は60.2%が単身である。中伊では、北伊のような安定した雇用先が少なく、家族生活に適した条件が得難いことに帰因する。南伊では既婚者・子持ちを合わせて過半数を超えるが、駐留NATO軍属家族が多数含まれていることを考慮する必要がある。

移民の流れのダイナミズムを理解する上で、新規入国者の市民的身分(独身・単身 ・既婚・離婚・子持ち独身など)を観察することは、社会的共生・同化の過程・段階を知る貴重な指標となる。

●異民族間の婚姻
移民先で他国籍のパートナーと結婚する移民も増加しており、異民族間婚姻者の抱える問題が社会的に表面化するとともに、とりわけイタリア人市民と外国人との婚姻形態、そこから派生する複雑な文化的諸問題の研究が進められて来ている。

もっとも、すべての問題が異なる宗教を持つことに起因するわけではない。異民族間婚姻で離婚例の多いのは、宗教的には類似するイタリア人とアメリカ人のカップルだが、社会的にはカトリックとイスラム教徒間の婚姻がもっとも注目されており、カトリック司教会の「不安」材料ともなっている。

1996年のデーターによると、異民族間の婚姻数は約1万組。その内7.254組がイタリア男性と外国人女性、2.621組がイタリア女性と外国人の婚姻である。この中には外国での婚姻や同棲は含まれていない。 イタリア男性の相手としては、東欧、中南米、アジアの順に多く、国別ではポーランド、ブラジル、ルーマニア、元ユーゴ、ドイツの女性が多い。イタリア女性の新郎には、EUに次いで地中海沿岸アフリカ諸国、南北米の男性が好まれ、国としてはモロッコ、米国、ドイツ、チュニジア、英国の順となる。

1991年の国勢調査では、イタリア人と外国人のカップルは6万3千組(パートナーがイタリア市民権を獲得したカップルは含まれない)であり、パートナーの過半数は先進国出身者である。外国人同士のカップルは29.837組(その内、国籍の異なる外国人同士は11.5%)。大まかな推定によれば、現在160.000組のミックス・カップルがおり、その内カトリックとイスラム教徒のカップルは15.000組とされる。

イタリアは伝統的にカトリック国であるが、イタリアに滞在する外国人の約半数は異教徒である。当然、ミックス・カップルの婚姻にも影響を与えることになる。ISTATによれば、例えば1995年では27件の婚姻のうち一つがミックス婚であり、13件の別居離婚のうち一つが外国人が関係していることになる。つまり結婚が失敗する率はイタリア人同士の婚姻よりも二倍も高く、外国人パートナーとの出会いが旅行など偶然の機会に多く、年齢差や信仰の差も影響していると思われる。

●カトリック社会のイスラム
イスラム教は、イタリア社会が直面している多宗教社会の一面を示しているに過ぎない。しかし、婚姻に関して言えば、イスラム法の女性・婚姻の規定、その宗教的慣習(イスラム法では、夫にのみ離婚の権利があり、男性は異教徒との婚姻もできるが、女性には許されない。また子弟の教育権は独占的に夫に属する)が、西欧の男女平等を基礎とする社会のメンタリティーとは大きく異なり、深刻な問題を生み出している。

もっとも、移民生活によって変化がもたらされることもあり、他の西欧諸国と同様、イタリアでも二世、三世となった時点では、自身の宗教的帰属を社会的文脈のなかで捉え、少数派としてイスラムを生きる安定した居住者となり、市民権を取得することにもなろう。

近年、イスラム教徒の女性が、禁じられているのもかかわらず、カトリック教徒と結婚する例が増えており、イスラム世界の大きな変化を象徴している。

●移民子弟と文化的自己同一性
イタリアで生まれた移民同士の子弟、両親か片親と一緒に入国した子弟、異民族間カップルの子弟などを持つ家庭が増えつつある。家庭を両親の生まれた国の文化を子弟に伝承する場と捉えるならば、別の文化圏で生まれた子供、異なる文化圏に属する両親を持つ子供を対象とする場合、その文化伝承の作業は格別困難なものとなる。

両親ともに移民か、一方の親がイタリア人であった場合、伝統的な家庭を特徴づける文化的一貫性に欠けるため、イタリアで成長する子供は時に複数の文化・慣習の間で方向を失い、子供の社会参加が不完全・不備・不適切なものとなることが指摘されている。 その影響は就学初期から認められ、子弟が家庭内で受けるものと外部社会から受けるものとの齟齬(二面性)に直面することで文化的指向性を喪失し、様々な対立や非適応を生み出す。

この混乱は両親がそれぞれ異なる宗教・文化圏に属する場合、一層強まる傾向がある。両親は、適切な教育方針を採用できない場合、共に相容れない規範(母親と父親の役割分担が異なるイスラムとカトリックの例)を 子弟に伝承するというリスクを冒すことになる。両親の選択は、両義的(どっちつかず)で矛盾した教育方針の間で揺れることになるか、いきおい一方の文化の記憶や帰属を抹消する形の同化を指向する例もある。

勿論、両親が日常的な様々な場と不断の決断選択を通して、異なる文化の間に断絶も距離も生まずに、子弟のために複数の帰属性と諸関係を構築する努力も続けられている。 多民族社会にあって、子弟の教育過程において家庭は戦略的重要性を持っていると言える。

◎年少者と学校教育

外国人年少者総数を把握することは、年少者が一般に両親の滞在許可証に記載さ れ、独自の証書類を持たないことから容易なことではない。 ISTATの推計によると2000年度は229.851人で前年に比べて40.000人以上増加し、外国 人居住者の18.1%を占めるまでになっている。さらにイタリアで生まれた移民新生児 数だけを見ると25%と急速に増加している。98-99年を対比すると北伊で30%以上も年 少者が増え、中伊+18%、南伊+29%となっている。

年少者は多様な文化環境で生活する新しい市民の原型を形成する。この点で教育 分野における配慮は決定的とも言える重要性を持っている。 同時に、年少者にまつわる深刻な問題も避けられない。その一つが、両親など保護者 なしで不法入国する年少者の問題だ。入国場所の警察に保護され、当該する自治体首 長に預けられた年少者の数は1999年末現在3.059人に上る。この現象は、1998年40号 法によって不法入国年少者の国外強制退去が禁止されたことを悪用し、外国人の親が 年少者だけをイタリアに不法入国させ、その闇動労を収入源とする忌まわしい戦術を 採用することから一層拡大してきた。これらの年少者の将来は、司法的問題を加え て、極めて不安定なものと言える。

外国から入国する女性年少者では、とりわけイタリア内外の犯罪組織の餌食になる 例が目立つ。40号法では、これらの女性が売春を止め、「ひも」を告発することを条 件に滞在許可を与えることも規定しているが、施行状況は警察毎に異なり、調査・裁 判も遅れており、女性たちは不安な日々を送っている。移民の売春女性の大半が、自 らの意思ではなく、とくに年少者の場合は籠絡、誘拐され競売に掛けられ、脅迫や暴 力のもとで売春を強いられ、奴隷的境遇に落ち込んでいる例が少なくない。

●公共教育における多様性
イタリア人夫婦の小産傾向が進みイタリア人学童・生徒が減少し、一方、年々流入 する若い移民の子弟の就学者は増加の一途を辿っている。89/99年度就学期では、 85.000人以上の外国人子弟が就学し、次年度では100.000人に達することが予想され ている。両親の出身地域別に見ると、六割が欧州域外の生徒となる。国立・私立・市 立を合わせた幼稚園・小中高校の生徒総数に占める外国人児童の割合は1.09%(国立 の小学校で最も高く1.52%)。移民学童・生徒の五分の一が幼稚園、三分の二が小中 学校の義務教育機関に集中しており、高校は一割となっている。この事実は、移民の 定住・家族形成が最近の傾向であり、両親が比較的若く幼児を抱えており、共働きの ため幼年者を幼稚園に預ける必要があることを示している。

移民子弟就学者の90%は北・中伊に集中しており、南伊では安定した就業が困難な ことから家族持ちの長期滞在には適さず、単身者の季節労働や闇労働が支配的なこと を裏付けている。州別ではロンバルディア、エミリア・ロマーニャ、ヴェネト、ラツ ィオ、ピエモンテ、トスカーナの順に移民就学者が多く、11県が2.000人を越す学童 ・生徒を抱えている。ミラノ県には10.000人(県庁所在地ミラノ市に三分の二が集 中)、ローマ県には7.100人(四分の三がローマ市に集中)、トリノ県には3.800人 (市内に四分の三が集中)の子弟が就学中。一方、ブレシャ、ヴィチェンツァ、ヴェ ローナ、モデナ、トレヴィーゾ、ベルガモ県など全域に企業など就業先が分散する県 では、同時に移民就学者も県内各市に万遍なく見られることになる。

移民就学者の絶対数も増加しているが、問題なのは学級でのイタリア人学童との比 率である。移民学童が50%を越えるケースは小学校で4件、高校では1件報告されてい る。ローマとミラノでは、就学移民の子弟の間で136に上る民族的出自を記録し、慣 習・文化的差異の共存から言語問題まで、共同生活・勉学両面で適任の教師を確保す ることが大きな課題となっている。

出身国別に移民就学者を見ると、EU域外欧州(アルバニア、元ユーゴ難民を含む) が32.541人、アフリカ(三人に二人はモロッコ人、エジプト、チュニジア、ガーナ、 ナイジェリア、セネガル、ソマリアなど)が25.616人、アジア(中国、フィリピン、 インド、パキスタン、スリランカなど)14.204人、南・北米(ペルー、ブラジル、エ クアドール、コロンビア、アルゼンチン、チリ、サルバドール、米国など)9.681人 となり、アジア地域からの学童が対前年比34.84%の伸びを示し注目されている。

 大学に関しては、高校以下の教育機関で見られる爆発的な増加の現象はなく、 70-80年代の3万人をピークに、近年2万人台に落ち着いて来ている。四人に一人が医 学部を専攻し、なかでも自国の大学が入学者数制限をしているギリシャからの学生が 8.000人登録されている。もっとも人気のない学部は農学部・獣医学部で、他の各学 部にはほぼ均等に学生が就学している。

(以下3月1日号に続く)




トップへ  

www.japanitaly.com