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ITALY NEWS
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2000/07/01 


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イタリア・テレビ事情入門 (2000年6月現在)

ドキュメンタリ制作/リサーチ    森泉文美





1)イタリア人とTV

イタリア国民とテレビとの出合いは日本より1年遅れの1954年のことである。 テレビはイタリアにおいて非常に重要な役割を果たした。1950年代当時、ラジオ、新聞もなく、義務教育制度の発達していなかった地域(特に南部イタリア)にテレビが登場したことにより、イタリア語標準語の普及と民主化が進められた。

日本の場合、NHKの創立に合わせて民放各局が誕生したが、イタリアの場合、チャンネルは国営放送のRAI(Radio Televisione Italiana)のみであった。1961年にRAI第2放送、1977年にはRAI第3放送が開設され、全国をカヴァーする民放が誕生するのは80年代に入ってからである。カラーテレビは1977年に導入された。現在イタリアには約250万台のテレビがあり、各家庭に1台ないしは2台ある計算になる。

視聴時間数は毎年増加の傾向にあり、1999年、Gpf and Aの統計によると全国民のうち、40%以上が3時間以上の視聴をしているという結果が発表されている。 衛星放送の加入者は年々増加の傾向にある。現在主用なプラットフォームはTELE+(アナログ放送)D+(デジタル放送)の2社であり、TELE+加入者は約148万人、D+加入者は100万人以上である。

2)国営放送3局vs民放3局の二極構造

ヨーロッパ諸国では一般的にテレビは政権の直接的、あるいは間接的な統制を受けてきた。現在イタリアの国営放送の統制権は内閣ではなく国会にあり、役員を任命するのも国会である。国営放送第1チャンネル、RAIUNOはキリスト教色が強く、第2チャンネルRAIDUEはより一般的なチャンネル、第3チャンネルRAITREは主に地方ごとの放送を目的としている。

1970年代に入り、民間放送に関する規定が定まらないままイタリア各地でローカル局が開局された。1980年代にはシルヴィオ・ベルルスコーニのフィニンヴェスト社(現在メディアセット社)が全国局CANALE5(カナーレ・チンクェ)を開局し、モンダドーリ社のRETE4(レーテ・クワットロ)とルスコーニ社のITALIA1(イタリア・ウーノ)を吸収した結果、RAI国営放送3局対民放3局の二極体制ができあがった。 CANALE5は家族向けの一般局、RETE4は中高年層向け、ITALIA1は若年層向けのチャンネルである。

1990年のマンミ法によりこの二極体制は合法化され、アメリカのシステムに習い、国会の統制を受けないオーソリティ(監査)制度が設けられた。

1995年には映画配給,制作会社チェッキ・ゴーリがTELEMONTECARLO(テレ・モンテカルロ) とVIDEOMUSIC(ヴィデオ・ミュージック)を買収し、三極体制の建設を目指したが現在のところ、占有率は5%に満たない。1996年、Fininvest社では大幅な改革が行なわれ、イタリア及び外国の投資を受けたMEDIASET社を創立し、株式市場に上場された。

尚、国民はRAI国営放送受信料の支払いを義務付けられているが、日本のNHKとは異なり、収入の約50%は広告費によってまかなわれている。(国営であるため一応CM枠は限られている。)そのためMEDIASET民放3局との視聴率競争はかなり激しいものとなっており、プライム・タイム(20:30-22:30)の番組の占有率が民放の裏番組をはるかに超えた場合、RAIのニュース番組でそれが発表されることがよくあるほどである。

3)局ごとの占有率

占有率、視聴率の調査はAuditel社によって行なわれている。全国5000世帯に8000台のメーターが設置され、約15,000人(4歳以上)の視聴状況が記録されている。

1999年の全日、プライム・タイムの占有率は以下の通りである:

全日

1)国営放送RAIUNO 22.8%
2)CANALE5 21.2%
3)国営放送RAIDUE 15.7%
4)ITALIA1 11.5%
5)RETE4  9.9%
6)国営放送RAITRE  9.1%
7)TELEMONTECARLO 2.2%

国営放送総合占有率: 47.6%
MEDIASET総合占有率: 42.6%

プライム・タイム(20:30−22:30)

1)国営放送RAIUNO 24.7%
2)CANALE5 21.3%
3)国営放送RAIDUE 15.2%
4)ITALIA1 12.0%
5)国営放送RAITRE  9.6%
6)RETE4  8.3%
7)TELEMONTECARLO 6.4%

国営放送総合占有率: 49.5%
MEDIASET総合占有率: 41.6%

国営放送は歴史も古く、サッカーの試合、サンレモ音楽祭など重要な番組が多いため、特に中高年層の強い支持を得ている。また広告の量も民放に比べて少ないことも人気の理由となっている。過去10年間の間、RAIは常にMEDIASETをリードし続けている。

4)番組事情

番組のスタイルはニュース番組を除けばRAIUNO、RAIDUE、および民放CANALE5とそれほど区別がつかないのが実情である。画面下に局のロゴが入っているのでかろうじて分かる程度である。

番組編成は日本のものとそう変わらず、デイ・タイムは主婦、中高年向けの生活情報番組、料理番組、トーク・ショー、ソープ・オペラ、ドラマや映画の再放送が中心である。プライム・タイムの番組は2時間枠の番組が多いが、これは1999年代前半まで映画の放送が主だったからである。現在はドラマ、ヴァラエティー番組、サッカー試合中継が中心となっている。深夜番組は情報番組、ドキュメンタリー、お笑い番組、映画、外国ドラマ、若者向けの実験的な番組が主である。

●ニュース番組
ニュース番組(30分)の時間帯はイタリアの食生活に合わせ、お昼のニュースは12:30、13:00開始が主である。夜のニュースは20:00、20:30開始が普通である。国営放送のニュース番組は政治的なニュース、民放は社会的なニュースを中心に制作されている。RAIUNOのニュースはキリスト教的な視点を大切にし、法王のニュースを毎日伝えている。

●ヴァラエティー番組
ヴァラティー番組も主要なものは2時間枠が基本であり、日本のヴァラエティー番組と比べると編集された部分が最小におさえてあり、生放送でなくともリアルタイム性を重視している。フォーマットは様々であるが、番組が始まると同時にスタイルのよいダンサーたちが華麗な踊りを披露し、司会者による導入部分も長々と続く。構造的には日本と同様にスタジオ+VTRの二元形式が定着している。

ジャンルはリアリティー・ショー、ゲームもの、クイズ番組が中心で、日本で現在流行している生活情報ヴァラエティーというジャンルに当てはまる番組はRAITREをのぞけば今のところまれである。

ヴァラエティー番組のフォーマットは特にオランダなどからの輸入ものが多い。日本からは日本テレビの「クイズ・ショー・バイ・商売」/ Quizzone、TBSの「幸せ家族計画」/Forza Papa'(頑張れパパ!)などのフォーマットが購入され、イタリアナイズされた状態で(ダンス部分の追加、1時間枠から2時間枠への適応など)放送された。

●イタリアの「お笑い番組」
CANALE5のStriscia la notizia [月―土20:30-21:00]は日本流で言うと「ぼけとつっこみ」の二人組の司会者による、ニュースの直後に生放送されるニュース 風刺番組である。クリエーターはCANALE5の「視聴率男」、アントーニオ・リッチである。番組のテンポは生放送とは思えないほどこきみよく、VTRの編集も非常に凝っている。司会者はシーズンごとの入れ替え制であり、エツィオ・グレッジョなどのスターを生み出した。

ITALIA1のMai Dire Gol [月22:30-23:30] はサッカー試合シーズンに放送される、30代前半までの若年層に人気のあるコント番組である。もともとは土日に放送されるサッカー試合を素材にしたお笑い番組であったが、最近は様々な人気キャラクターを排出するコント番組の形式をとっている。キャラクターたちは画面には決して現れない司会者たち(この番組のクリエーターでもあるジェラッパス・バンドのメンバーたち)とかけあいをし、画面にダイレクトにしゃべりかけるのが特徴である。この番組のおかげでお笑いタレントのアルド、ジョヴァンニとジャーコモという三人組の人気が爆発し、彼らを主人公としたコメディー映画は2本とも大ヒットしている。

●サンレモ音楽祭:イタリアの紅白
サンレモ音楽祭は2000年2月に第50回目を迎えた。5日間にわたって放送されるこのコンクールは日本の紅白歌合戦に匹敵する華やかな大イヴェントである。

第50回目の司会者にはパヴァロッティ、お笑いタレントのテオ・テオーコリ、司会者のファビオ・ファーツィオ、アシスタントには女優のイネス・サストレが起用された。2夜目の占有率は54.9%(約918万2千人)、音楽祭をコメントするその後のトーク番組は45.9%をマークした。第50回には国連書記長が登場し、イタリアの首相に貧しい国々の借金を無効にするよう、呼びかけ、話題となった。

コンクールはすでに活躍中の歌手/グループを対象としたチャンピオン部門(16人参加)と若者を対象とした公募部門(18人参加)の2つの部門に分かれている。審査は専門家による審査委員会と視聴者たちの評価の集計によって行なわれる。

●国産フィクション(ドラマ):黄金時代に突入
プライム・タイムは1990年代半ばまではヴァラエティー番組と映画の放送が中心であったが、現在はドラマ枠がヴァラエティーのそれをはるかに超え、同じ時間帯に多い時には三つのドラマが並ぶケースが2000年に入りはじめて見られた。

イタリアのテレビドラマは映画制作会社によって映画的手法とフィルムを用いて制作され,大スターを起用するのが普通であったため、映画並みの製作費用を要した。そのため国産のドラマはまれにしか放送されず、しかも前後篇ものが主であった。

1998年に入り、国営放送RAIの受信料の20%、広告収入の10%が国産、およびヨーロッパ諸国制作のドラマに当てられるようになり、制作費増加によりドラマ制作が活発化した。また複数のENGカメラによる低コストの制作技術がようやく適用されるようになり、イタリアドラマ制作現場に一種の革命をもたらした。

●''Fiction seriale'': 連続ドラマ*
ソープ・オペラ(帯ドラマ・一回24分)
1990年代半ばには国営放送RAITREがオーストラリアの制作会社、Grundyよりソープ・オペラ)のフォーマットを購入し、Un posto al sole(日の当たる所)の制作を開始した。作業分担,綿密なスケジュールに沿った大量生産に基づく「産業的」な制作方法は今まで「芸術性」にこだわり過ぎてきたイタリアでのドラマ制作に改革をもたらしたと言ってよい。

Un posto al sole [月‐金20:30−21:00] はかなりの成功をおさめたため、1999年にはデイ・タイムからプライム・タイムへの昇格を果たした。RAIに続き、CANALE5ではVivere (生きる) [月‐金14:10-14:40] というソープ・オペラを1999年より制作。その人気はVivereの前に放送されるアメリカのソープ・オペラBeautifulをついに超えた。

●ウィークリー・ドラマ(週単位の連続ドラマ・一回50分)
RAIUNOではスペインより購入されたフォーマットに基づいてイタリア向けに制作されたファミリー・ドラマ、Medico in Famiglia(ホーム・ドクター)が大ヒットし、プライム・タイムのドラマにもENGカメラを利用して制作されたドラマがよ うやく一般化された。

●''Fiction seriale''の特性
イタリアの連続ドラマは現代イタリア人の日常生活を映し出すかがみのような役割を果たす、という方向がとられつつある。

たとえばVivereの場合であるが、高校生の卒業試験に合わせて登場人物たちもそれを受ける、イースターの時期であれば、人物達もそれを祝うなど、なるべくイタリア人の生活のリズムに合うよう構成されている。社会的現実とも波長の合った脚本は、ディスコでのエクスタジー服用死亡事件など、似たような事件の発生を予告するようなものとまでなった。

●*スペシャル・ドラマ*
ENGカメラによるドラマは映画的手法を用いた前後篇中心のスペシャル・ドラマの制作にとってマイナスになるどころか、かえって制作意欲を刺激する結果となった。 国営放送によって制作された、ブティックに勤務する女性たちの私生活を描いたommesse(女性店員)は、本放送、再放送ともに大成功をおさめた。

映画的手法を用いたイタリアのドラマの中で国際的にも評価されているのは、毎年アメリカやドイツなどと共同制作される聖書物語である。イースターの時期にはキリスト受難の物語、あるいは旧約の物語を題材にした前後篇物が国営放送と民放 の両方で放送される。クリスマスの時期も同様である。

2000年のジュビレオ年には数多くの宗教的主題のドラマが放送されている。昨年福者に列せられたパードレ・ピオ(キリストの聖痕を受けたと言われているイタリアのカプチン会僧侶)の物語は民放CANALE5の歴代視聴率のトップクラスに入った。

5)制作会社と局との関係

番組の制作は局制作、制作会社制作、制作会社と局の共同制作など、形式は様々である。

主要な制作会社は約20社ほどであり、その中でも生存競争はかなり激しいものである。制作会社は局と対等な関係を保っていると言ってよい。

国営放送に売れなかった企画が民放に買われる、あるいはその逆のケースもあり、ドキュメンタリーのジャンルを除けば、国営放送と民放とでは(日本のNHKと民放との間に見られるような)番組のスタイル、方針などの厳密な違いはそれほど意識 されていないという結果になる。

一時間のドラマ制作費はフィルムの場合だと6億リラから10億リラ(外国との共同制作の場合は10億リラを超える)、ENGカメラによる場合は上限がだいたい6億リラほどである。

イタリアのドラマを視聴していて、CMを挿入するタイミングが計算されずに制作されるているのが気になるが、これは制作会社と局との連動が不足しているからではない。イタリアでは時間帯ごとに挿入してよいCMの量が(局の人間にも説明できないほど)複雑な法律によって定められている。その上、生放送番組が多いため、レギュラー番組でも放送開始時間がずれたりするなど、かなりフレキシブルな番組編成が行なわれているため、否応なく生じてしまう一種の現象といってもよい。

よって番組を制作する際、CMが具体的にどこに挿入されるかは全く予想できないのであり、ドラマでもクライマックス部分を利用してザッピングを防ぐなどの工夫はイタリアにはあまり見られない。

6)パーソナリティー

司会者は元アナウンサー、ジャーナリストなど出身は様々である。ドラマ俳優は演劇界出身の人が中心で、日本のフジテレビでのように局が将来のドラマの主役を育てる、というシステムは確立していない。

お笑いタレントはキャバレー(日本で言えばレストランと寄席を合体させたようなもの)出身が多く、例えばミラノの「ゼーリグ」というキャバレーは何人もの有名なコメディアンを輩出し続けている。

イタリアでは司会者業を除き、例えばサッカー選手が引退後タレントになったり、俳優がコメディアンに転じたりなど、芸能界の職業ジャンルを軽く飛び越えるという傾向はあまり見られない。

歌手がドラマ主役を演じ、成功をおさめた例として有名なのはジャンニ・モランディであるが、こうした例は日本でのように一般化していない。

有名な芸能人がヴァラエティー番組のコメンテイター、クイズ番組への参加をあまり好まないのは、なるべく今まで築きあげてきたイメージに傷を付けたくないからである。数年前に放送された「クイズ・ショー・バイ・商売」のイタリア版でも、有名な出演者の確保に苦労したと言われている。

イタリアのテレビ界でも外国人タレントが出てくる時代となり、RAITRE(現在RAIDUEに移動)のサッカー試合観戦ヴァラエティーQuelli che il calcio…(サッカー試合の裏番組として多大な成功をおさめている番組)では、日本人の「サーノ」(サノ・タカヒデ)がレギュラーとして出演している。

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以上、日本人視聴者としてイタリアのテレビを見ていて気になる日本のテレビ事情との違いなどを中心にイタリアのテレビ事情の説明を試みた。

大まかに言えば番組編成、ジャンルや趣向、制作方法などはアメリカや日本とそれほど大きく異なることはないのであるが、毎年サッカーのヨーロッパ杯の時期になると、イタリア人にとってテレビの第一の用途は何よりもまずサッカーの試合 観戦なのだなあと、つくづく思うのである。




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