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2000/3/1

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地域に根ざすブランド作り


デザイナー    水 ともこ


EC統合にともない、ヨーロッパ全体のグローバル化が進む一方で、個性の 存続という観点から、各国のナショナリズムが強く唱われるようになってき た。イタリアも他のヨーロッパ諸国と同様に国のアイデンティティー、さらに はそれぞれの地方の特色をいかに打ちだしていくかが大きな課題となってい る。

このような、ヨーロッパの流れの中で、地域に根ざしたブランド作りを推 進しようとしている地方少なくない。食品関連においては、以前よりシャンペ ン、ワイン、各種チーズなど、その地方の風土を活かした製造方法により、ブ ランド化が一般的になっているものも多くある。  今回は北イタリア、ヴェ ネト州の一部で、推進されている「ブランド作りプロジェクト」にスポットを あててレポートした。

ヴェネト州はパダナ平野の北東に位置する人口 約 440万人, 総面積 18,377・の州で、州都はヴェネツィア、そのほかベッルーノ、パドヴァ、ロ ヴィーゴ、トレヴィーゾ、ヴェローナ、ヴィチェンツァの7つの県からなって いる。ヴェネツィアを代表として、ヴェローナ、パドヴァなど芸術、歴史的遺 産もあり、観光においてもイタリアでは重要な州である。都市国家時代も含 め、長い期間貴族社会が続いた社会制度はヴェネト州に限らず、他の州におい て、今も多方面で大きく影響を残しており、イタリアの社会構造を知る上で、 重要なポイントの一つとなっている。特にヴェネト州においては、この貴族の 末裔が地元の職人企業を支えているといっても過言ではない。イタリアはヨー ロッパの中においても、小さい企業(職人企業:総労働者数18人以下)が国全 体の企業規模の大部分を締めているのが現状であるが、その中でも特に集中し ているのがヴェネト州およびイタリア北東部の州である。

このように、地理的、歴史的、伝統的など、さまざまな特徴のある州の都 市、ヴィチェンツァにあるヴィチェンツァ県職人協会(Associazione Artigiani della provincia di Vicenza)が中心となり進められているプロ ジェクトを紹介したいと思う。 現在押し進めているプロジェクト『バッサー ノ家具』の商標化は、その地方の特徴的な産業分野の製品に対して、ワインや チーズに原産地明記のマークがあるように食品以外の業種にも原産地商標を付 けるというプロジェクトである。

もともと、貴族の荘園地帯であったこの地方は伝統的に家具職人が多く、バッ サーノ独特の家具スタイルが生まれたところでもある。現在もこの地方の家具 製造者の中にはバッサーノスタイルを守りながら製造を続けている工房もある が、近年の家具業界の大型機械化や大量生産化によって、表面的には似たバッ サーノ家具が廉価で売られている。そのため、伝統家具は減産に追い込まれ、 作り手も減っていき、さらなる、コストアップに繋がるという状況を問題とし てとらえ、似て非なる製品から生産者と買い手を保護しようというところから 生まれたプロジェクトである。

それでは、買い手をどのように保護するのかと いうと、伝統に裏付けられている製品は材料の厳選、技術の積み重ねのために 他の量産品と比較すると多少高くなってしまう。しかし、文化も含めた品質 は保証されている製品であるということを明らかにする「印」を付けることに より、「消費者にも一見してそれと分かり、特性を理解した上で買い求めるこ とができる。」と関係者は語っている。また、このブランドが市場に定着すれ ば、おのずと『バッサーノ家具』の知名度も上がり、ゆくゆくは職人の人材確 保にも役立つのではないかという、協会の期待も含まれている。 このプロジェクトは、 98年から進められ、今は調査、企画段階は終え、書類 上の手続きの段階入っており、公的な承認を待つばかりとなっている。

一方、同じ地方の一職人企業が自社ブランド製オリジナルの製品を展開しよ うと考えている。現在、この企業は生産の70%を卸売り業者からの受注に頼っ ている。この場合、生産卸売り価格が業者から指定されてしまうので、材料や 人件費が値上がりしている近年、必然的に、自分たちの利潤に食い込ませて対 応せざるおえない。よって、生産量の割には利潤が目減りしているのが現状で ある。そのために、「自社ブランドを展開することは必然的な流れである。」 と企業は説明している。自社ブランドの場合は販売権をもっている代理店にわ ずかな%をマージンとして提供すればいいし、直販することもできる。同業者 の中には自社ブランド作りで成功した、小さいメーカーの例もいくつかあると 聞けば、ブランド作りにもおのずと力が入る。

幸いにも、イタリアは国際本市に世界からバイヤーが集まり、上記のような個 性的でやる気のあるメーカーが市場に出ていける機会が数多くある。さらに、 この工場の場合、アッセンブリーのみの工場ではないので、材料である材木か ら塗装前の下地仕上げまで、自社でのコントロールが可能であり、よって品質 には自信を持っている。しかし、製造面でのノウハウの蓄積はあるものの、デ ザイン、販売に関しての不得意な分野の問題をどのように解決していくかが、 重要なポイントとなる。この場合、イタリアの企業では良く行なわれている、 外部の専門家との契約によって、解決されることが、一般的である。また、同 様なブランド作りの別企画として、同業者間でそれぞれが得意としているアイ テムを作り、それを一つにまとめ、ブランドとして売り出すというプロジェク トもある。

たとえば、同じデザインシリーズのリビング用の家具の中で、箱物 の得意なメーカーは飾り棚や食器棚などを担当し、脚物の得意なメーカーは椅 子やテーブルを担当する。この企画の特徴は、一社で全てを作る場合におこり がちな、工場の規模、設備投資、品質管理などのいろいろな問題に対して、す でに、各社がノウハウのある分野での分担製作ならば、その問題も少なくな る。また、重要なポイントとなるデザイン面のコントロールさえ充分できれ ば、宣伝費用なども参加企業で分割して、一社にかかる負担を少なくすること ができる。しかし、このアイデアは中心になる組織形態がまだはっきりしてい ないので、現在のところ具体的には何も動いていない。

一方、ヴェネツィアではヴィチェンツァの『バッサーノ家具』ブランド作り と類似した動機からブランド作りをしようと話しが進められている。近年、ム ラーノ製のガラス製品とは似て非なる安いガラス製品が、一部のアジアから大 量に輸入され始めた。今では、ヴェネツィアで販売されている50%近くのガ ラス製品が、アジアなど製造コストの安い国からの輸入品である。残念ながら 観光客はそうとは知らずにヴェネツィアの土産ものとして、その類似品を買っ ていく。

この企画の推進の中心になっているのが「プロモヴェトロ」というガ ラス協会である。 同協会は類似品を買った消費者からの苦情も多く受け、現 在推進している原産地表示のための『ムラーノ印』ブランド登録の企画を進め るに至った。後継者問題も絡み、このブランド作りはムラーノの技術とイメー ジを守るための重要な懸案の一つである。このブランドは伝統に支えられたム ラーノ産ガラス製品にのみ与えられるもので、この表示があることにより消費 者も製品がムラーノ製であることがはっきり分かるとともに、品質の保証とも なる。協会のさまざまな企画の中の一つであるこのプロジェクトは、今のとこ ろ草案段階で具体的にはまだ動き出していない。

イタリアにおけるブランド作りは、ヴィチェンツァやヴェネツィアの例から も分かるように、県や市からも賛同を得て公的なブランドとして発足させるこ とを考えているところが、特徴的である。何れの地方団体も、今やイタリアの 特色になってしまった、のんびりとした時間感と官僚主義に抵抗しつつ、自分 達の郷土の伝統をアイディンティティーとしていかに残していくかについて努 力し始めたところである。

(本文は1999年9月 発行のジェトロミラノレポート「北イタリア職人企 業の挑戦」の 一部を抜粋、修正したものである。)

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