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2000/2/1

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分権化とメトロポリタン計画
ーボローニャ県の事例を中心にー


金沢大学 経済学部 教授
佐々木雅幸


今、イタリアではバッサニーニ法の施行に伴い、これまで中央政府の権 限であった 産業政策などが州政府とコムーネに委譲されつつあり、分権化の流れが急 速に進行し ている。ユーロ導入に代表される本格的なグローバリゼーションの時代を 迎えたこの 時期に「国民国家」が退場し、もともと中世に「都市国家」の伝統を持 ち、各地域の 多様性と自治を特徴としてきたイタリアの行政システムが再びローカライ ズしていく ことは、とても興味深い現象である。

すでに、地方行政システムの面では1990年の法律142号「新地方自治 法」によっ て、ローマ・ミラノ・ナポリ・ボローニャなど8都市を対象に大都市圏に 特別行政体 を置くことが決まっており、今回の分権改革は名実ともにイタリアにおけ る「都市の 世紀」の再来を意味することになろう。  小生が滞在しているボローニャは積極的に分権改革に取り組んでいるの で有名であ る。そこで、大都市圏(メトロポリタン)計画の現状を知るべく、ボロー ニャ県 (Provincia)知事であるビットリオ・プローディ氏Vittorio Prodiと、 直接計画を 担当しているピエロ・カバルコリ氏Piero Cavalcoliに計画の目標と現状 を尋ねてみ た。

プローディ氏はEU委員長であるロマーノ・プローディ氏(前首相、元ボ ローニャ大 学経済学部長)の兄で、物腰の柔らかい紳士である。氏によればボロー ニャのメトロ ポリタン計画は、人口約40万人のボローニャ市を中心として面積 3,700km,人口95万人 を計画対象としており、「グローバル・コンペティションとサステナブ ル・ディベ ロップメント」を念頭において構想を検討中とのことであった。  彼は特に、グローバル・コンペティションの荒波に耐えられる都市のイ ンフラスチ ラクチュアの整備として、欧州新高速鉄道に対応する駅舎の改築、主要国 際空港とし ての充実、見本市会場の拡充などを挙げた。

他方、地球環境保全型の地域開発であるサステナブル・ディベロップメ ントに関し てはカバルコリ氏からは以下のような説明を受けた。

南にアペニン山脈、北にポー川、東にアドリア海に面する湿地帯に広が るこの地域 の都市政策の中心テーマは歴史的に水の管理問題であった。すなわち、古 代ローマ人 達がアドリア海に臨むリミニからポー川低湿地帯をミラノ方面を目指して 北西に進ん だとき、馬に水を与えるために20km毎に都市が出来たということで、水の 確保・利用 (利水)とその排水・汚染が歴史的に問題であったとのことである。

1700年代には水利用のインフラストラクチュアとして繊維産業の発展の ために街中 に運河(用水)が開削され、水車で紡績機を回転させ、「シルクの都市」 として栄え た時代を迎えたが、1950年以降、地域の基本問題を忘れて都市の発展が続 いてきた。 そのため、例えば1955年から95年までの40年間に透水量は10倍になり、 排水のために 3倍のエネルギーを要するようになったのに、あいかわらず50年前の計画 で排水して いるところに問題があり、地下水のくみ上げによる地盤沈下で、堤防が弱 くなり、洪 水の危険性が増しているというのである。このため、治水が最重要課題と なってい る。

また、治水政策とともに交通問題が深刻となった。1970−80年代にパッ ケージング バレーとして有名な産業地区の発展と分散化(郊外化)により、都市中心 部に立地し ていた工場は地価と税金の安い郊外に土地を求め、工場・設備の更新によ り爆発的に 成長を遂げ、周辺のコムーネも税源(不動産税)が豊かになるので企業進 出を歓迎し た。この結果、中心市であるボローニャ市の人口は1935年に25万人であっ たものが 1971年には50万人と一旦集中が進んだが、再び1998年には38万人に減少 し、近年は都 心空洞化の傾向にあり、公共交通機関よりもマイカーによる通勤が一般化 してしまい 慢性的な交通渋滞を招いてしまったという。

そこで、メトロポリタン計画では広域的な水の管理と緑地の配置、交通 機関の整備 とコムーネ間の財源調整を重点的にとりあげ、地球環境保全を足元から進 める「ロー カルアジェンダ21」の実現を目指し「都市生活の質」を高めるための広域 的な環境管 理計画がメトロポリタン計画に求められているというのが計画担当者の考 え方であ る。

つまり、ややもするとグローバル・コンペティションの掛け声で地域開 発に走るコ ムーネをメトロポリタン計画によって規制し、サステナブル・ディベロッ プメントに 導こうとしているである。このように、一見するとグローバル・コンペ ティションと サステナブル・ディベロップメントの2つの課題は相対立し、矛盾した要 素をメトロ ポリタン計画の中に持ちこもうとしているようである。

また、中央政府が定めた法律では州に計画作成権限があるが、この州で は県 Provinciaにそれを委ねている。だが、メトロポリタン計画の担当部局は 州政府とコ ムーネの中間にあり、現在は制度的にも中途半端である。

以上のように、メトロポリタン計画は分権化の焦点として位置付けられ てはいる が、それが実体化するにはまだまだ時間が必要に思われる。今後も折に触 れて、計画 の進行をウオッチングして行きたいと思う。

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