JAPAN-ITALY Business On-line
0 BUSINESS ON-LINEITALY NEWS

SPECIAL

1999/10/1

BACK NUMBER


ZOOM-UP 


イタリア・サッカービジネスから学ぶ

―Jリーグ発展への6つの提言

前ジェトロ・ミラノ・センター所長  桜井悌司


日本では、Jリーグの危機が叫ばれている。一方のイタリアは、世界に冠たるサッカ−王国であり、数年前にプロリ−グが始まった日本と同等に比較するのは問題があろうが、それでも大いに学ぶべき点が多いと思われる。以下、イタリアのセリエAの動向に基づき、6つの提言を行いたい。

提言1 年間通し券の普及を図ること

イタリアのセリエAには、Abbonamentiと呼ばれる年間通し券があり、これを購入するとセリエAのホーム試合17試合(セリエAのチ―ム数は18)をいつも同じ席で観戦できる。金額は、チ−ムによって異なるが、ACミランの場合、スタジアム正面スタンドが、224万7000リラ、その対面が112万4000リラ、一番安い席は、20万4000リラである。(1リラは、約0.07円)年間通し券を購入すると、1試合あたりの値段は1回券のほぼ半分になる。セリエAのチ−ムのAbbonamentiの販売状況をみると、驚くべきことに、全体の収容能力の47.5%がすでに売れていることになる。

ここで注目すべきは、下記の2点だ。第一の点は、イタリアのサッカ−チ−ムは、あくまでも地域に密着していることである。98年にセリエAに昇格したサレルニタ−ナ(今年は再度セリエBに降格)は、地元民の絶大なる支援を受け、37894席の内、72.1%が販売済みなのだ。その他にもパルマ、トリノ、ヴィチエンツア、ボロ−ニア、フィレンツエ等も地元に密着しており、地元民の強いサポ−トを受けている。 第二の点は、これらのチケットを購入しているのは、ほとんどすべてが個人ということだ。Jリ−グの合理化が話題になっているが、サポ−タ−の役割は、熱烈に応援することもさりながら、極力多くの年間通し券を購入することにあることを忘れてはならない。

イタリアでは、サッカ−の試合は、原則1週間に1度日曜日に行われる。日本では水曜日と土曜日の2回であるが、1週間に2回サッカ−を見られる人は少ないので1回にしたほうが、年間通し券も購入しやすいのではないかと思われる。年間通し券の販売を増加させ、スタジアムを可能な限りフアンで埋めるようするのが発展のカギなのである。

提言2 スポンサ−を広く募りかつ大事にすること

Jリ−グも大口スポンサ−の撤退により、リストラや合併を余儀なくされている。セリエAの主要チ−ムのスポンサ−をみると、ユニフォ−ムに名前の入る公式スポンサ−から、小口のスポンサ−にいたるまでいろいろあるが、総じて数多くのスポンサ−を集めるべく努力をしている。スポンサ−になると各種の出版物に名前が出てくる。また、試合終了後の監督や選手へのインタビュ−はスポンサ−名が入った看板の前で行うようになっている。グラウンド内のバックネット裏には、二重のたて看板があり、数秒毎に8-10のスポンサ−名が出てくるものもある。

セリエAには、外国の著名選手が、たくさん登録されており、世界でも注目されているので、ソニーやナイキといった世界的企業がスポンサ−になっている。Jリ−グも日本企業のみならず、日本市場の魅力に着目する多国籍企業にもアプロ−チすべきであろう。また、特定の1試合のみ協賛するマッチ・スポンサ−というシステムもある。チ−ム経営者としては、大口スポンサ−のみならず、小口のスポンサ−も数多く集めることが必要である。また、集めたスポンサ−に対しては、できるだけ報いる努力をすることも大切である。

提言 3 監督、選手、審判を評価するシステムを確立すること

イタリアの月曜の新聞のスポ−ツ欄をみると、前日の試合の詳細を報道するのみならず、各選手、監督の成績を10点満点で採点している。また日曜の夜のサッカ−番組を見ると、審判のジヤッジを評価、分析する番組を見ることができる。判定が正しかったかどうかを、スロ−モション、繰り返し、逆戻しを多用し、微に入り細に入り、ゲストの選手、監督、評論家等が議論するのである。 このようなシステムは、将来における、日本のサッカ−の発展に大いに役立つことになる。なぜなら、第一に、選手、監督、審判のすべてが、毎試合、手を抜く事無く懸命にプレイすることになるし、それぞれの技術向上に寄与するからである。第二に、サッカ−ジャ−ナリズムの発展にも役立つ。第三に、ファンの立場からすると、このような採点方式により、サッカ−の奥深さを知る事ができるからである。

しかし、このような評価、採点システムを確立するにあたっては多くの困難がある。まず、サッカ−ジャ―ナリズムの協力が不可欠だ。新聞のサッカ−欄のスペ―スやテレビのサッカ−番組の拡大が必要となる。また、各選手や監督の活動、審判の判定を分析し、採点をつける能力のある担当記者の育成も必要だ。さらにサッカ−選手出身の解説者のみならず、サッカ−に造詣の深い知名人の登場も期待される。現在の日本のサッカ−事情からみるととても無理かも知れないが、将来の発展を考えた場合、関係者が協力して実現に向けて努力すべきであろう。

提言4 テレビ放映のメリットとデメリットを十分に検討すること

テレビの放映とサッカ−人気の上昇とは、大いに関連すると思われるが、スタジアムへのファンの動員との関連では、微妙なところであろう。諸外国の例をみると、多分、客足の減少につながるのかもしれない。 セリエAの場合、すべての試合の生中継はペイTVによって行われている。このペイTVは衛星デジタル放送で、すべてのチームについて、アウェイの試合のみ(前述のAbbonamentiでスタジアムに行く人向け)または、ホーム+アウェイの全試合といった多様な選択肢で加入が可能である。一方、一般のチャンネルでの生中継はなく、試合終了後のサッカー専門のニュースの時間などで試合の模様が放映されるたり、サッカ−専門番組の中で試合の分析がされる。

イタリアのサッカ−界のテレビ関連の収入は、97-98年シ−ズンの場合、一般テレビから1504億リラ、ペイTVから966億リラ、その他742億リラで合計、3212億リラとなっており、大きな収入源となっている。日本の場合、入場者を増やすという観点からすると、テレビ放送をやめるか、試合が行われる地域を除いた地域の放映しか認めないか、スタジアムが相当いっぱいになった時だけ放映するか、ペイTVに絞るか等の選択になろう。

提言5 サッカ−くじをJリ−グの人気上昇に役立てること

日本でもようやくサッカ−くじが行われるようになった。イタリアにおけるサッカ−くじの販売状況は、97年の統計で、トトカルチョ(13の試合の勝ち負け、引き分けを当てる)が2兆1030億リラ(1577億円)、トトゴ−ル(ゴ−ルの多いチ―ム)を当てるが、1兆6860億リラ(1265億円)で、イタリアで販売されている富くじ購入額全体のそれぞれ9.9%、7.9%を占めている。まさに、イタリアのサッカ−人気は、トトカルチョやトトゴ−ルに密接に結びついていることが理解できる。値段はいずれもミニマムで1600リラ(150円)である。

97-98年のシ−ズンには、トトカルチョとトトゴ−ルの収益の内705億リラが、セリエAの18のチ−ムに平等に39億1700万リラが配られている。これも台所の苦しいチ−ムには大きな救いとなろう。したがって、日本の場合もサッカ−の楽しみを大きくするために、サッカ−くじに気軽に参加するといった形にもっていくべきだろう。

提言6 選手、監督、コ−チには必要な投資を惜しまないこと

リ−グについての昨今の報道をみると、横浜マリノスと横浜フリュ−ゲルスの合併吸収等チ−ムの合理化、ドウンガ、ジョルジ−ニョ選手、日本人有名選手等との契約解除にみられるようなJリ−グに対する興味を失わさせるような一連の動きがみられる。現在、全収入に占める選手、監督に対する報酬の割合をみると、イタリアは、56%、英国は、47%、フランスは、57%、ドイツは、54%となっており、いずれも選手に対する投資額は、チ−ム経営者にとって 頭痛の種である。

セリエ Aの収支をみると、96-97年のシ−ズンで利益を出しているのは、ピアチェンツア、ヴィチェンツア、ナポリ、ユベントス、ロ−マくらいで、我々が良く知っているACミラン、パルマ、インテル等は、大幅な赤字なのである。98年にラツイオは、イタリアチ−ムとして初めて証券市場に上場した。97-98年の売上高は、1217億リラ、選手等に対する支払い額は807億リラ、収益は、65億リラと滑り出し上場であるが、必ずしも予断は許さない。

セリエAの動向をみていると、選手に金をつぎ込めばつぎ込むほどチ−ムは、最初は赤字になるが、徐々に赤字幅が縮小していくような傾向がみられる。良い選手を獲得すれば、たちどころにAbbonamentiの購入数が増加することになる。例えば、ロナウドやロベルト・バッジオ等を擁するインテルの97-98年の数は、47630枚であったのが、98-99年には、なんと58410にまで売り上げが伸びたのである。イタリアのサッカ−チ−ムの発想は、先行投資型であり、@良い選手との契約、A人気上昇、B収入増、C赤字減少、Dさらに良い選手の獲得―――という好循環期待型の経営方針なのである。

日本のJリ−グの人気が沸騰した最大の理由は、世界から著名なサッカ−選手が日本に集まり、日本のファンの前ですばらしいプレイを見せてくれたことにある。その結果、サッカ−のおもしろさを多くの日本人が理解した結果、ファンが急増したのである。Jリ−グのチ−ムの経営者としては、目先の赤字を何とか解消したいということであろうが、現在の発想では、イタリア型とは反対に、@良い選手がとれない、A人気下落、入場者減少、B経営悪化、C良い選手がさらにとれない−といった悪循環型に陥る可能性がある。したがって、Jリ−グの経営者に対しては、日本のサッカ−の将来を思い、短期的な発想ではなく、中長期の観点にたって、Jリ−グ全体を盛り上げるような方策を考えることを期待したい。

 
TOP
BACK NUMBER

ご質問・ご意見は/e-mail:jdesk@japanitaly.com
www.japanitaly.com
(C)JAPANITALY.COM S.r.l-Milano All right reserved.