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ITALY NEWS

イタリア中小企業訪問
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2005/4/1 
 

イタリア中小企業訪問


Azienda agricola Barbinicia

ピエモンテ州のバイオな養蜂農家





今回お話を伺ったアンドレア・ラッフィネッティAndrea Raffinettiさんは、ピエモンテ州アスティ県モンバルドーネで、バイオの承認を得た農家を一人で営んでいる。養蜂場を持ち、蜂蜜など主に蜜から採れる生産品を販売している。養蜂を始めて5年、30代前半の青年だ。
海抜500メートル、20ヘクタールの敷地内には養蜂場の他、とうもろこし畑、薬草畑などがあるが、ほとんどは栗の木などが生い茂る森。ランガ・アスティジャーナと呼ばれるこの一帯は、ワイン産地の近くにあるもののワイン畑はなく、人々から見放された野生の森がそのまま残っている。

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養蜂の仕事
養蜂の仕事は蜂の飼育から始まる。アンドレアさんが所有する養蜂箱の数は60(一つの箱の中には女王蜂を中心に約三万匹の蜂がいる)。プロの養蜂家としてはあまり多くない。「一般的には500〜600箱所有するのが普通です。しかし、そうなると"工業化"してしまい、早く大量生産はできても、細かな配慮が行き届かなくなります。私は自分一人のペースで仕事ができる数に抑えています。」

冬の間、蜂はずっと箱の中にいる。女王蜂を暖めるため、周りの蜂たちは四六時中身体をこすり合わせているのだそうだ(外は寒くても箱の中は37度に保たれるらしい!)。
春になるとアンドレアさんの仕事が始まる。まずは、それぞれの箱から少しずつ蜂を取りだし、いくつかの別の新しい家族をつくる。そうして、新しい家族が越冬のために蓄える蜜をアンドレアさんは採っていく。蜜貯蔵場所が空になれば蜂たちはまたせっせと蜜を集める。従って、春から秋にかけてそれぞれの時期の花の蜜を収集することができる。アンドレアさんのところでは4種類。5月頃はアカシアの花の蜜、続いて栗、ラベンダー、そして9月頃にはミッレ・フィオーリと呼ばれる花の蜜だ。
集めた蜜は敷地内の小さなラボラトリーでデキャンターし、汚れを分離、瓶詰めする。法律に従ったバイオロジカルな作業であり、例えば他の蜂蜜と混ぜ合わせたり、結晶化するのを避けるために沸騰させたりしない。時間が経って蜂蜜が結晶化するのは自然の成り行きであり、そうならないものは蜂蜜本来の成分を失っているそうだ。 「例えば、醗酵を避けるため蜂蜜の水分は22%以下と定められています。私のように自分一人でやっている者は、水分が蒸発するまで待つことができますが、大規模な生産者だとそんなのんびりとしたことはできないので、乾燥機などを使うことになります。」
その他に、エッセンスオイルとして使われるタイムやラベンダー、薬草なども生産している。これは30の農家が集まる協同組合で製品化される。
販売は、ミラノやアスティの町にある自然食品を扱うお店が中心だ。蜂蜜は種類にもよるが、平均1キロ10ユーロくらいで販売している。

養蜂を始めるきっかけ
アンドレアさんが養蜂を始めたきっかけは何だったのだろうか?
「私はミラノ出身で、大学では政治学を学びました。でも、一般的な内容を勉強しただけで、大学を終えて、"では何をすればいいのか"という状況でした。
この辺りにはもともと家族の家があり、居心地の良い好きな場所だったのですが、母親に「蜂を飼ってみたら?」という考えが浮かんだのです。そこで、養蜂家のためのコースに通ってみたところ、すっかり熱中してしまった、というわけです。私に養蜂の話をさせ始めたら、何時間も続きますよ。」

コースを終え、まずは1箱の蜂の飼育から始め、3箱、9箱と増やしていった。その後、ピエモンテ州政府を通じてEC(旧欧州共同体)に事業計画等を提出、融資を求めた。これが承認され、ECからの資金で養蜂箱を60箱まで増やし、ラボラトリーを設置、トラクターなど畑作業に必要なものも揃えた。

「現在も新たな承認を待っているところです。でも、養蜂箱を増やすのは100箱まで。というのも、ある養蜂家のところで実習したことがありますが、700箱所有する大きなところで、仕事は流れ作業的、FIATで働いているような感じでした。私はあくまでも質を求め、数は増やしません。」

今後について
養蜂は100箱まで。しかし、今後の展望は続く。
「今プロジェクトしているのは、ある特別な種類のとうもろこしの粉の生産、販売です。とうもろこしは現在では標準化され、世界中どこでも同じものになってしまいましたが、私は知り合いと一緒に、第二次大戦以前にピエモンテ州からリグーリア州、トスカーナ州にかけて生産されていたオット・フィーレという品種の種を手に入れることができました。絶滅しかかっている品種で、見かけは悪いし、生産性も低いのですが、とても美味しいポレンタが作れると言われています。」
さらに、昨年11月にはりんご、なし、桃の木を植え、果樹園を作った。これらも、現在では一般に売られていない古いイタリア特有の品種のものばかりなのだそうだ。

「農業というのはその地域の歴史と結びついていて、そこが私の好きなところです。特にスローフードの本拠地のあるピエモンテ州は農業生産品に非常に注意深い地域です。
しかも農業にはたくさんの発展の可能性があると思います。"これも植えられる"というアイデアが次々と出てくるのですが、休みもとらないといけないし、あえて自分を抑えています。
確かに天候に左右されるし、とうもろこしの実がならないかもしれない。投資です。でも、農業はかつての実践的なものから理論的なものへと近代化しています。農業にたずさわる若者は増えてきています。」

販売方法についても将来のビジョンがある。
「将来的には生産者と消費者が直接結びつくような販売方法にしていきたいと思います。両者が近づくことで価値が出るわけです。実際に私の仕事の内容を見てもらって、買ってもらう。
また、近くにロッカヴェラーノという町があるのですが、そこに珍しい山羊のチーズなどを売っているお店があり、そういった希少価値の品を作る生産者と一緒になって小さな店を開きたいと思っています。」

最後に良い蜂蜜をつくるのに最も大切なことは何かと尋ねてみた。
「蜂にとっての環境でしょう。つまり、たくさんの種類の野生の花が咲いているかどうかです。多くの人が私のつくる蜂蜜を誉めてくれます。でも、5年しか養蜂をやっておらず、間違いもしでかす私が特に優秀だというわけがない。唯一考えられる理由が、蜂にとっての環境が良い、ということなのだろうと思います。」

蜂に刺されてショック症状で救急病院に行ったこともある、と笑いながら話してくれたアンドレアさん。今もミラノによく戻ってくると言う彼は、一見すると農業をやっている人という雰囲気は全くない。しかし、養蜂はパッシオーネ(情熱)だと言い、大量生産、標準化を追い求めず、地域の歴史にこだわった産物を大事にしていきたいと活き活きと語ってくれる姿に、これからのイタリア農業の在り方のヒントが隠されているように思った。   (K.Maruyama)



Azienda agricola
Barbinicia
Mombaldone (Asti), 14050
tel:(+39)347-7754225
e-mail:barbinicio@tiscali.it


 

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