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ITALY NEWS

イタリア中小企業訪問
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2004/02/1 
 

イタリア中小企業訪問



Tasso Italia Covoni s.r.l.

環境にやさしい人力車(三輪車)タッソのサービスを提供




昨年9月、トスカーナ州のフィレンツエ市近郊スカンディッチという町に、人力車のメトロ(地下鉄)なるサービスが誕生した。
別に地下を走るというわけではないのだが、人力車が町を3つのラインに沿って行き来する。サービスは無料で、お年寄りや身体の不自由な人、あるいはちょっと買物にでかける人に使ってもらおうというのが目的だ。そして何よりも、タクシーのように排気ガスを出すこともなく、騒音もない、とてもエコロジーな乗り物なのである。この人力車、その名をタッソTASSO’と言う。日本の観光地で見かけるものと形はほぼ同じと思っていただければいい。少し違うのが自転車に乗って台車を引っ張るところだろう。今回は、タッソTASSO’のサービスを提供する会社Tasso' Italia Covoni s.r.l.の社長、ファブリツィオ・コヴォーニFabrizio Covoniさんにお話を伺った。

タッソは、中国の人力車をモデルに、素材や安全性の面で技術的に改良したものだ。自転車で台車を引っ張るが、スムーズな動きになるようつくられていて、想像するほど重労働ではない。電動式タイプのものもあり、女性でも運転できる。観光客を運ぶこともできるし、お年寄りが病院や買物に行く時に利用してもらったり、郵便や商品の配達・引き取り、見本市など車が入れないところでの利用、などなど使い方はいくらでもあり得る。タッソTASSO'という言葉は、Turismo(ツーリズム:町の中心地を観光するのに利用できる)、Ambiente(環境:大気汚染や騒音がない)、Servizi(サービス:例えばホテルのサービスに利用できる)、Sociale(社会:身体障害者やお年寄りに利用してもらえる)、Occupazione(雇用:若い人たちにタッソ運転手として働く機会を与えられる)の頭文字を合わせたものだ。

ファブリツィオさんがタッソのサービスを始めるべく会社を起こしたのは3年前。自転車愛好家の彼は、電気工学の勉強をし、自転車製造・サービスに携わっていた。タッソのアイデアは、自転車への、そして彼の生まれたフィレンツェの町への思いが一緒になって生まれた。「現在のフィレンツェの町はルネッサンス時代に作られました。当時は馬車が走っていて、そのため道幅は狭く、石畳の舗装です。これは実は自動車には適していません。そこで、フィレンツェの町にルネッサンス当時の雰囲気を作り出そうと考えるに至りました。狭い道を通ることができる小さな乗り物、そして馬の替わりが自転車です。」
最初は自身でタッソを製造することを考えたが、コストが割高なことがわかり、インターネットを通して人力車を作っている会社を探し、アメリカに見つける。アメリカや、ロンドン、ベルリンなどヨーロッパの町では人力車はすでになじみのある乗り物になっていた。ファブリツィオさんはこの会社にいくつかの改良を加えさせて、タッソを輸入する。

ところが、タッソのサービスをイタリアで始めるにあたっては困難があった。そもそも道路法でこの種の乗り物の存在が考慮されておらず、活動をしようにもそれをコントロールする規則がないのである。
とにかく関係当局からの許可を得なければならない、と考えたファブリツィオさんはまず、フィレンツェ市に「観光地を回るタッソ・タクシーサービス」のプロジェクトを提案する。しかし、「道路法85条で運転手付き人力車の利用というのは定められていない」と、却下される。
「タクシーとの競合になる、という懸念もあるようです。でも、タッソの走行範囲はせいぜい4〜5キロ。タクシーとの共存こそあれ、取って代わることはあり得ません。しかも、タッソが増えれば、それを運転する人が必要になり、若者の雇用を増やすことができます。」
フィレンツェでは試験走行も試みられたが、左派や右派、改革派など多数が「(台車を引っ張る姿が)植民地時代の労働者搾取を思い起こさせる」などと言って反対。賛成したのは、「自動車の大気汚染の問題を、一部分ではあるとしても解決することができる」とした緑の党だけだった。

他方で、環境にやさしいタッソを認める町も出てくる。パドヴァ、ヴェローナ、ミラノなどイタリアの50の町でプレゼンテーションを行ったところ、まっさきにフェッラーラが中心地で観光客を運ぶサービスを許可した。また、リヴォルノ、グロッセート、仏コートダジュールなどタッソを試みに取り入れるところがでてきた。「法律ではなく、”意志”の問題なのです。」とファブリツィオさん。
こうしてじわじわとタッソの良さが認められてくる中、昨年の9月、地元のスカンディッチで前述のタッソ・メトロサービスが始まった。ZTL(Zona Trafico Limitata:車両進入制限ゾーン)ならぬZCT(Zona Circolazione Tasso':タッソ巡回ゾーン)が設けられ、町を3つのライン(それぞれ地下鉄のように赤、青、緑線と名付けられた)、31の停留所に沿って走行する。人力車での人の輸送が道路法で定められていないため、サービスは無料。スカンディッチの市役所が全面的に支持し、UnicoopとCnaがスポンサーに付いた。
さらに、翌10月からは小学生達の登下校にもタッソが利用され始めた。イタリアでは、中学生になるまで親が車などで子供の通学の送り迎えをするのが普通だ。タッソ導入により、今まで親が送迎のために使っていた16台分の車の廃棄ガスが減ったことになる。
「冬の間はタッソのメトロサービスは休止していて、春(4月)から再開します。昨年9月から11月までの3ヶ月で約1,000人に利用してもらいました。スカンディッチはフィレンツェのそば人口約五万の小さな町なので、大成功だと言えるでしょう。」

Tasso Italia Covoni社は、その他に自転車や自転車競技選手用ウエアも販売する。また、トスカーナを自転車で回るツアーや、フィレンツェの町を自転車に乗って観光客に付き添うサービスも企画している。
最近は、道端に置くことができる自転車タイヤの空気入れステーションGonfiaの製造販売も始めた。Gonfiaには採光パネルが取り付けられていて、太陽光エネルギーで自家発電する、世界初のアイデア製品だ。

「私は26年前から柔道をやっています。柔道を通して、人間の考えとかそういったことも含めて私たちの周りにある資源をいかに利用するかということを覚えました。これがタッソ誕生を助けてくれました。
そして、フィレンツェの町で試験走行をした時、みんなタッソを気に入ってくれることがわかりました。タッソを街角で見かける人たちはみな微笑むのです。3年前に会社を起こしてここまでやってこれたのは、人々の笑顔があったからです。これは本当にエネルギーになります。」
「タッソのスローガンは、”ガソリン1缶の重さがあるけれど、20年使っても車20秒分の環境汚染もしない”です。人々は町の汚れた空気を吸うことにうんざりしているように思います。政治家は私達の健康のためには何もしてくれません。タッソはいつかもっと多くの人に利用してもらえるだろうと思っています。ただ、自動車が人々の生活に入ってくるまでに時間がかかったように、タッソにももう少し時間が必要でしょう。日本でもタッソが回るようになったら、本当に嬉しいですね。」

自らスカンディッチの町でタッソを運転するファブリツィオさん。タッソのメトロ・サービスは、彼の信念と温かい人柄があればこそ生まれたものだと言えよう。環境にやさしいこの乗り物を皆がもっと注目するようになる時、私達の町はもう少し変わってくるのかもしれない。   (K.Maruyama)




Tasso Italia Covoni s.r.l
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