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ITALY NEWS

イタリア中小企業訪問
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2003/03/1 
 

イタリア中小企業訪問



Cartotecnica Locatelli

紙製品加工




イタリア経済の中心、ミラノ。ミラノ市の周囲には、ミラノ経済の一部としてミ ラノ市と常に連携して発達してきたhinterlandと称される郊外地域が広がってお り、それら郊外の38の市も含めてGrande Milano(ミラノ圏)を形成している。 今回訪問した紙製品加工業のCartotecnica Locatelli社(以後ロカテッリ社) は、このミラノ圏を構成する、ミラノ市から北西14キロのロー(Rho)市にあ る。

ロカテッリ社の業容は主にバインダー、本や百科事典のハードカバー、CDケース に使われる厚表紙の製造、およびそれらの製本だ。ハードカバーは板紙をベース に、クライアントが要望する素材(紙、布、皮、合成皮革)に表紙を印刷して作 成する。
クライアントは中小の製本業者。もともと、ロカテッリ社の業務は製本会社の仕 事の一部であった。が、出版される本の四分の三がペーパーバックである昨今、 中小の製本業者にとってハードカバーの製本設備への投資負担は決して軽くな い。そこで、印刷業者、または出版業者から受ける注文のうちハードカバーの分 に限っては、ロカテッリ社のようなハードカバー専門の業者に外注するのだそう だ。「中小の製本会社と当社のような専門業者の利益が一致した結果の協業で す」と、社長のジュゼッペ・ロカテッリ氏。


もともとイタリアは出版、印刷、製本業がヨーロッパの中でも非常に強く、フラ ンス、ドイツ、イギリス、アメリカで出版される本の多くが、とくにフランスの 場合は全体の8割もがイタリアで印刷、製本されるそうだ。ミラノのあるロンバ ルディア州だけでも製本関連だけで60社、さらに印刷の分野になると数え切れな いくらいの業者がいる。つまりそれだけ競争が激しくもあるわけで、その結果国 際的な競争力も高くなる。
イタリアのこの業界における特徴は、そしてそれはまたイタリア経済全般にわ たって言えることでもあるが、ほとんどが従業員20人未満の中小企業によって構 成されているということ。この特徴は、同時にフレキシビリティという、イタリ アの強みでもある。たとえば千部だけでも、すぐにでも製本を請け負ってくれる 会社が少なくとも20社はある。一方、パリには製本会社が大手一社しかなく、千 部単位の製本を依頼しても鼻先で笑われてしまうそうだ。

ロカテッリ氏自身、当初は製本会社に勤めていたが、会社の閉鎖と同時に約35年 前に独立。最初は日々小さな仕事をこつこつととりながら、地道に苦労を重ね、 今日に至った。現在従業員約20名、三千平米ある本社兼工場で年間二千万部を生 産する。経営は自身と奥さんの二人であたる。「当時だからこそ独立もできまし たが、今だったら決してそうはいかなかったでしょうね」。今日、業務は高度に 専門化、生産技術も高度化し、35年前と比較すると設備コストが極端に増加し た。環境関連の規制も増えた。今日、ゼロから始めるのは不可能に近いという。

ロカテッリ社の強みは、第一にフレキシビリティ、第二に品質。フレキシビリ ティという点では、マーケットの要請にほぼ即答、クライアントのオーダーから ほぼ24時間以内に納品できるそうだ。クオリティの面では、客から注文を受けた 担当者が必ず直接品質をチェックする。この二つの点が競争の激しいマーケット で生き残っていくための決定的な要素だという。その二つの点をクリアした上 で、「お客さんも自分も儲けが出るような値段で提供すること」。

しかしながら、今後の話になると、厳しい表情で次のように語った。「中小企業 にとってより難しい時代になるでしょう。イタリアでも、長期的には《集中》の 方向にものごとが動いています。マーケットで競争力を維持するには、常により 大きな資本力を必要とする時代です。そのためには経済的のみならず政治的なサ ポートも必要になります。経済の構造がよりアメリカ的になるということなので しょう。例えばスーパーマーケットにしても年々大きい資本の巨大なスーパー マーケットが進出してきています。このような経済に移行する結果、われわれが 何を得、何を失うのか、立ち止まり、反芻する必要があると思うのですが、現代 世界は我々に一瞬たりとも立ち止まる時間を与えてくれません。世界の趨勢を形 成する大きな船に乗り遅れてしまえば、敗北者になってしまいます。私のこのよ うな予想が間違っていることを願うばかりですが…」。


ロカテッリ氏はCNA(イタリア中小企業/職人企業連合)のロー地区の会長でもあ る。CNAは平均3〜5人の従業員規模の小企業の連合組織で、ロンバルディア州 で5千、全国では約2万5千の中小企業が加盟している。地区→県→州→国という ピラミッド型の組織で、底辺から吸い上げた声をまとめ、経済、税制、法律、年 金、等、幅広い分野で政府と交渉する。「イタリアは工業連盟(Confindustria: 日本の経団連に当たる)と労働組合の二大利益団体の声だけが大きく、政府が 我々中小企業に十分耳を傾けてくれるというわけではありません。実は中小企業 はイタリアのGDPの55〜60%もしめているのですが、そのわりには発言力がな いのです。しかし《トライする》ことは決して悪いことではありませんので、こ うして活動しています」。

ロカッテリ夫妻の20代の息子さん、お嬢さんもロカテッリ社で働いている。「子 どもたちが私たちが築いてきたものを継ぐという道を選んだのは、私たちにとっ て非常に嬉しいことでした。彼らはまだまだ学習途上ですが、仕事を通じて彼ら の人生に必要なさまざまな経験を積んでいくことでしょう。もうこれからは彼ら の時代ですので、彼らがどうしたらいいか、考え、決めていくでしょう」。

グローバルな問題意識を視野に据えながら、日々の経営に真摯に向かうロカテッ リ氏。いつまでも、氏のような強い倫理観を持つヒューマンな中小企業経営者が 活躍できるイタリア社会であって欲しいと切に感じた。

 写真(上から)
1.工場内の様子
2.完成した本。下は百科事典の表紙
3.ロカッテリ夫妻
 

Cartotecnica Locatelli s.a.s.
Via Magenta, 77
20017 Rho, Milano
Tel.(39)02/93507306または 02/93507314
Fax.(39)02/93507322


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