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ITALY NEWS

イタリア中小企業訪問
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2003/02/1 
 

イタリア中小企業訪問



Messina

仕立て紳士靴屋




カフェ、アートギャラリー、骨董屋などが石畳の細い通りに並び、どことなくボ ヘミアンな雰囲気のただようミラノのトレンディ地区、ブレラ。仕立て紳士靴専 門の靴屋、メッシーナはここブレラから程近い、それでいてちょっと下町的な情 緒の残る静かな通りにひっそりとある。
6畳ほどの小ぢんまりとした、しかしワイン・レッドで統一されたシックな店内 を抜けるとその奥に、4畳ほどもあろうかと思われる、小さな仕事場がある。ご 主人のガエターノ氏、息子のジュゼッペ氏、そしてガエターノ氏の奥さんの三人 で切り盛りする、イタリアの伝統的な職人工房だ。
ここでガエターノ氏とジュゼッペ氏は靴作りにあたる手を一瞬も休めることな く、インタビューに答えてくれた。


ガエターノ氏はシチリアのカターニア生まれ。やはり靴職人であるお父さんの元 で靴づくりを始めたのは、なんと7歳の頃。しかし17のとき、靴作りではなくボ クシングをやるために、故郷カターニアを離れミラノに来た。 ボクシングに見切りをつけ、当時ミラノで随一と言われた仕立て靴屋の店で修行 を積み始めたのは21のとき。この仕立て靴屋の親方ダガダ氏は、やはり靴職人と しては伝説的なローマの故ガエターノ・ガット氏の義理の兄弟であった。ここで 10年間、「良い靴を作るための多くの秘訣を学んだ」後、30数年前に独立、現在 の仕立て靴屋をかまえた。

メッシーナの靴は、すべて手作り。昨今は仕立ての靴、ハンドメードの靴といっ ても、労力や時間を節約するために、部分部分では機械が使われたり、縫う代わ りに接着剤が使われたりということが普通だそうで、メッシーナのようにすべて の作業を手で行っている靴屋は今となってはイタリア全国でも2〜3店しか残って いないそうだ。そのようにして作られる靴は、サイズの採寸、木型作り、そして 靴として完成するまで、45時間ほどかかるという。つまり毎日9時から6時までか かりっきりで働いたとして、一週間はかかる計算だ。とはいっても、今靴をオー ダーしても1週間後にできあがってくるというわけではなく、とくに最初の一足 を作る場合には、仕上がりまで約5〜6ヶ月かかるそうだ。なにせ二人の職人の手 でやっているので、そういうペースになる。


一人前の靴職人になるには、どれくらいの時間がかかるものなのか?そんな問い に65歳になるガエターノ氏は、「この仕事はいつになったって一人前になるって ことはないよ。自分だって今だに学習途上ってとこさ」。顧客には靴にはうるさ い愛好家が多い。それらの顧客からのフィードバックに、または新しい足型に遭 遇するごとに、新たなことを学ぶ日々なのだそうだ。


客とは自然、長年の付き合いになる。中にはダガダに靴職人として勤めていた頃 からの客もいる。フィレンツエから長く通い続けるある客には、これまで、なん と通算100足以上の靴を作ってきたという。そこまではいかなくても、一人の客 に30〜40足作ったり、あるいは一家全員の靴を作るなんていうことも珍しくない そうだ。顧客リストには著名な財界人もその名を連ねる。客は口コミで広がり、 今ではドイツ、アメリカと、国境を越えて客がやってくる。

良い靴とは、履き心地がよく、頑丈で、かつ美しくなければならないが、さらに 手入れさえ怠らなければ、時がたつにつれ、新品のときよりもさらに美しさが増 すという。客がメンテナンスのために持ち込む履きこなされた中古の靴に、とき どき我ながら惚れ惚れしてしまうこともあるそうだ。

ガエターノ氏、そしてジュゼッペ氏が靴作りの作業に向かう木の机の上には、所 狭しと、実にさまざまな道具がならぶ。ペンチ、はさみ、とんかち、そしてさま ざまな形・大きさのナイフ類…いずれの道具にもかなりの年期が入っており、そ れぞれが、長い年月のみが生み出すある種の存在感をはなっている。「中には 100年現役の道具もあるよ。今では作られていないものも多い。だから皆、宝も ののように使っているんだ」とガエターノ氏。道具だけではなく、それらを手入 れする職人、たとえばナイフやはさみを研ぐ職人なども、今となっては腕のいい 人がいなくなってしまった。「仕立ての靴を作るといっても、簡単な時代ではな い。仕立ての靴職人という職業自体、いつまで存続しうることか…」。 ガエターノ氏のところにも、これまで若い人が弟子入りをしたいと来たことが あったが、何もできないうちから「給料はいくらもらえるのか?」などと聞いて くる。徒弟奉公など、今の若い人には到底無理な話なのだ。 かくいうジュゼッペ氏も、最初からお父さんの後を継ぐつもりではなかったとい う。学校を出て、他の仕事をしたあとに、21歳で靴作りを始めた。「靴職人と は、本当はもっと若い頃から始めないと難しい職業。


でも、今はそうは言っても 学校にも行かなくちゃならないしね。自分も実際にやってみるまでは自信がな かったんだ。忍耐力と、いい靴を作ることへの情熱がなければ到底できない仕事 だね。父の元にこれまで19年間靴作りに携わってきたけれど、まだまだ学ぶべき ことは山ほどある」とジュゼッペ氏。

ガエターノ氏のお父さんは80歳になるまで現役の靴職人で、毎朝7時きっかりに 工房に出ていたそうだ。「この仕事は手を使うし、客との会話もあるし、おかげ で脳細胞がおとろえる暇がない。自分も、まだまだこの通り、元気一杯さ」。
ガエターノ氏の活躍、まだまだ期待できそうである。

 
 

MESSINA
Via A. Volta, 5
20121 Milano
Tel 02/29002505


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