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ITALY NEWS

イタリア中小企業訪問
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2000/10/01 
 

イタリア中小企業訪問

Bottega dei coltelli di Scarperia srl

伝統的手工業を現代的センスで再構築
6人の若者が「小刀」工房を結成

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フィレンツエ市の北27キロに位置するスカルペリアScarperia市の一帯は、16世紀以降、ナイフ、はさみ、包丁など、刃物類製造の手工業が栄えた地域。当時は、フィレンツエとボローニャを結ぶ街道沿いにあったため、人の行き来も盛んで、スカルペリアの刃物作りも発達した。1538年には刃物職人組合も結成され、当時のイタリア国外でも高い評価を受けた。18世紀半ばに、フィレンツエ・ボローニャ間を結ぶ新しい道路が出来たことで、スカルペリアは、主要街道からはずれる結果となり、手工業も一時の活気を失ったが、現在まで、手作りの小刀やナイフ作りが伝統手工業としてわずかながら残ってきた。

この街に、今、新しい動きがおこっている。20代、30代の地元の若者6人が、スカルペリアの伝統的な刃物づくりを現在に再興しようと、99年末に、コーペラティブ(協同組合)の形で「スカルペリア刃物工房」を結成し、新ビジネスをスタートさせたのだ。会長のパオロ・ヴィニーニさん以下、結成パートナーの六名とも、フィレンツエ県が、スカルペリア市役所や地元の刃物業者の協力を得て開講した「スカルペリア小刀製造講座」に参加した仲間だ。この講座は、地域内の伝統手工業を再評価・伝承することで、地元の若者に新たな仕事の場を与えることを目的にフィレンツエ県が推進している地域活性化政策プロジェクトの一環にある。

「96年から3年間、この講座に参加して、古くからの刃物作りと、新しい時代の市場での技術やマーケティングを学びました。小刀づくりのおもしろさにとりつかれ、コース参加者の仲間と工房を設立しました。地域にある小刀づくりの古くからの技法を伝承し、新しい「小刀」を創りたい。そして、地域の伝統的手工業を改めて世に発信し たい」と設立の抱負を語る会長のパオロさん。

工房は、企画研究のスタジオと生産作業場、歴史的な資料を集めたミニ博物館と、研修ルームからなる。スカルペリアの伝統的な「小刀」の特色は、すべて手の込んだ高価な一点ものだ。素材は、柄の部分には、牛や水牛や羊、鹿の角をナイフで加工したり、刻みをいれてつくる。木はツゲの木を用いる。イタリアを始め、ヨーロッパでは、古くから、この種のナイフ類の愛好者やコレクターが存在し、小さく特殊ながら、奥行きの深い市場が存在するという。

会長のパオロさんは、理工系高校卒。企業の営業マンの経験をいかして、広報や渉外関係、特に、支援してくれている地元行政との関係を一手に引き受けている。副会長のジャコモ・チェッキさんは、フィレンツエ大学建築学部の学生で小刀の設計デザインに情熱を燃やしている。一方、生産のチーフは、アグレスティ・ロレンゾさんで、地元の小刀メーカーで14年の経験あり、小刀製作のすべての工程を熟知しているベテランだ。ルーカ・アッテャオーリさんは元々、音楽学校出身で豊かな創造性に富む。「小刀文化」に魅せられたピエロ・カルタさんとともに、小刀製作に従事している。紅一点のピエランジェラ・ディ・ダニエルさんは、企業会計、総務などの経験者で、オフィスワークを受け持っている。

イタリアで初めての「小刀」作り学校工房ということで、地元の市役所を始め、トスカーナ州、フィレンツエ県などからの関心も高く、様々な支援も受けている。そのおかげで、欧州連合から奨励基金を受けることもできた。「我々の活動の中に、由緒ある"スカルペリア"の名前と伝統的物作りを再興するツールがあるとみてくれている からだと思います」きっと、他の地域にも実現可能なモデルになる可能性をみているのではないでしょうか」

パオロさんたちが現在、最も力をいれているのは、多くの若者に、この伝統的製法を実際にみてもらい体験してもらう教育研修事業だ。これまでの歴史を伝え、現在の状況も紹介する。「こうして伝承されてきた技法が、今日でも、文化的、職業的に大きなやりがいのある様々な仕事をつくりだしていることを子供たちにわかってもらう ことが我々の目的です」そのために実施している地元の中学校や高等学校の生徒を対象とした「刃物づくり研修講座」は好評だ。地元の地方自治体からの評価も高い。

順調な滑り出しとはいえ、問題も少なくない。現在の問題としては、「正直なところ、地元に以前からある小刀メーカーとの関係は必ずしも簡単ではありません。彼らのメンタリティは古くて、実際につくっている製品も非常にコマーシャルベースのもので、我々のねらう伝統に根ざしかつ、質の高い製品とはコンセプトが違う」当初意 図した、既存のメーカーと彼らの新しい試みの相互協力というのは、簡単ではなさそうだ。

「行政や多くの人たちの支援でここまできました。今、大事なのは、第一に、我々が、専門技術をみがき、真剣にこの仕事を進めていることを具体的成果をもって理解してもらうこと。そして、この伝統的技法を決して消滅させないで、現代に通じるものとしてよみがえらすこと。これが目的です」今後進めていきたいのは、国内他地域あるいは、外国で同様な伝統的手工芸をいかした仕事に携わる人々との積極的な情報交流などをすることだ。いうまでもなく、コープという組織形態は、広義の意味で法人組織の一形態。事業として成立させなければならないのは、一般企業とかわりがない。それには、「オリジナルな製品、質の高い製品をつくること。我々一人一人がこの手工芸に対して持っている情熱をベースに高いイメージを発信すること」が肝心だ。販売対象は、世界中の小刀愛好家やコレクター。インターネットでのオーダーメード小刀の販売も、もちろん予定にはいっている。


Bottega dei coltelli di Scarperia srl
Viale Giacomo Matteotti 84, 50028 Scarperia (FI)
Tel 39-055 8468268
Fax 39-055-8431470
e-mail:bcoltelliscarperia@tin.it


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