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ITALY NEWS

イタリア中小企業訪問
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2000/08/01 
 

イタリア中小企業訪問

Scuola Vela e di Navigazione Sabaudia

広告会社経営からヨットスクール開設へ
車椅子利用者も操縦可能

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ルイジ・ザンボンさんとガブリエッラさんご夫妻は2年前の1998年、ミラノで30年近く経営してきた広告PR会社の活動を縮小整理し、イタリア中部、ラティーナ県のサバウディアに生活と仕事の拠点を移した。長年の夢だった帆船ヨットスクールを開設するためだ。スクールは、チルチェオ国立公園内のパオラ湖の湖畔にあり、ティレーノ海とも古代ローマ時代からの運河でつながっている。静かな海で練習をした後、すぐに、海に出られるため、ヨットスクールとしては理想的な立地といえよう。

「ここに以前から別荘を持っていて、いつも夏や休日に来ていました。1981年から5年ほど、夏の間だけ、趣味というか楽しみで、ヨットスクールを開講したこともあります。ヨットは幼いころから常に私の夢でした。ほかの活動も仕事もそれなりに素晴らしいけれど、私にとっては、ここで、海のそばでヨットとともに生活することとは、とても比較になりません。妻のガブリエッラも、私と知合って以来、海とヨットに夢中になりました」と語る夫のルイジさん。「私も、すっかりこの土地にほれ込んでしまって、これまでの夢を形にしたのです」というガバウリエッラさん。

この学校の目的は、すべての人に、ヨットと海への愛情を広く伝えること。コースは月曜から金曜までの週日コース(5日間)と週末コース(3日間)。クラスは、基礎コース、専修コースから、航海免許取得コースまで。5日間コースの場合は、最初の3日間は、コーチが一緒に乗り、後半の2日間は、生徒だけで独力で操縦する。もちろん、近くを先生の乗ったヨットが伴走する。最終日は、生徒間のレガッタが行われる。初めてヨットに乗った人も5日間で、ヨット操縦ができるようになる。

当スクールの特色は、身体にハンディキャップを持つ人を対象としたコースを開いていること。そのため、車椅子利用者が、完全に独力で操縦することの可能な世界で唯一のヨットを企画開発した。「Tornavento(トルナヴェント)」号という名前の10メートルのヨットだ。

「車椅子利用者でも、腕を使えるのなら、大きなヨット帆船を操縦できない理由がどこにあるのだろうか。徹底的に設備を整えれば、普通の人と同じように操縦できるはず」強い信念で、夫妻の試行錯誤が始まった。デッキからヨットに車椅子でそのまま乗れるよう、タラップは幅広にとってある。船底に車椅子のまま降りれるよう水力式リフトをつけた。トイレもキッチンも寝台も車椅子のまま、アクセスできる。特別製の取っ手など一つ一つに、数々の工夫と経験が積み込まれている。これで、車椅子のままで、すべての操縦を完全に独力で行える。「単独航海」も可能だ。

同夫妻にとって、何よりも嬉しいのは、たった5日間のコースに通うだけで、受講生がヨットを自在に操縦するのをみること。生徒が車椅子利用者の場合は嬉しさもひとしおだ。「これまでの生徒のうち、最も優秀だったのは、アッズラ・チャーニさんというカービン射撃のイタリアチャンピオンの女性だ。彼女は、車椅子で講習に参加し、ヨット操縦を完全にマスターした。ヨットを大好きになって、よくここにきてトルナベント号で一回りしている」という。

「バリアーフリー」のヨット作りになぜ、ここまでこだわるのだろうか。ルイジさんの答えは、明確だ。「ヨット航海の唯一のバリアーは、海そのものがつくるバリアーなのです。海の怖さの前には、すべての人間が同様に「ハンディキャップ」をもっているといえます。車椅子のある無しは関係ないのです。海という大きな「壁」の前で、優秀な船乗りになるよう、この学校で一生懸命教えていきたい」 祖父も叔父も父親も、皆、海軍の将校というベネツイアの旧家の出身、筋金入りの海の男、ルイジさんの言葉だけに重みのある発言だ。

次の課題は、"トルナベント号"のように車椅子で操縦できるヨット帆船を何艘かつくること。「もっと多くの人が、バリアフリーのヨット乗りを実現できるようにしたい。資金援助をしてくれるスポンサーを募集中です」というご夫妻だ。わずか2年間の活動ながら、湖畔の老朽化した建物をアットホームなヨットハウスにつくりかえ、ヨット好きが集まる拠点に変えた。さらに、夫妻の活動に刺激を受け、ヨットスクールを核とした地域活性化の動きも進んでいる。今後の発展が楽しみだ。


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