|
シルク織物やネクタイ・スカーフの生産で有名なロンバルディア州コモにあるALVISI e ALVISI社は、手書きデザインが主流であった同地域で、80年代後半から、デザイン制作にCAD等情報機器を本格的に導入したデザイン事務所として知られる。
同社は、父親が地元の織物工場数社で織物工場長を歴任し、小さいころから織物になじんで育ったフルビオ・アルビージさんと、姉のルチアーナさん姉弟が共同で25年前に始めたジャガード織の先染め生地デザインスタジオ。姉のミラノ工科大学建築科卒のルチアーナさんが、主としてトレンドリサーチやカラー研究など純粋クリエイティブ面を扱い、フルビオさんが具体的なデザイン開発や技術面を担当している。仕事の中心はインテリア向けテキスタイルのデザイン。ソファーやベッドカバー、壁紙などのデザインが中心で、幾何学模様、エスニッック調デザインが得意だ。
1987年からCADを本格導入。クライアントは、地元コモ、ヨーロッパ、日本などのインテリア用ファブリックメーカーや、インテリア製品メーカーだ。コモを中心に約100社の会員企業を持つイタリア・テキスタイルデザイナー協会会長でもある。
「最初の原画は手で書くので手書きで描ける力がないと話しにならない。後は、すべてコンピュータにインプットし、デザイン展開を行い、織機にかけられるフロッピあるいはインターネットを用いて、モデムでクライアントに納品している。コンピュータは水彩画や油絵などと同様ひとつのテクニック。機械を使うことで失うものは何もない。」「グローバル化、情報技術の革新でコモのテキスタイル・デザイナーの世界にも急激な変化が押し寄せており、大きな転換期にある。本当の技術革新・インターネットなどによる変化はまだ夜明け段階。これからが情報革命の本番。デザイナーの分野も多くのシナリオをかえる。」と語るフルビオ氏。
「第一に、顧客の範囲が、地元企業、アメリカ、日本、ヨーロッパ各国に加え、アジア諸国、トルコ、南米等新たな国々がコモのデザイン力に興味を示している。さらに、CAD等情報技術の導入で仕事内容が大きく変わりつつある。機器の活用によるコスト減は、コモのクリエイティビティをこれまで対象とならなかった中級品にまも発揮することが可能となってきている。」「このような市場の広がりは、我々にとって大きな好機であるが、世界レベルの競争も激化していて、コモのデザイン事務所の間でも激しい淘汰が始まっている。独自の特徴をださないと生き残りも難しくなってきている。」
「競合は世界中からあらわれれる。テクノロジーは誰でも使えるからだ。しかし、クリエティビティやテースト、テキスタイルの企画デザインについては、イタリア、特にコモが重要な位置を占めつづけていることに疑問をいだいていない。我々には、コモで活躍してきたデザイナーのすべてを育ててきた国立絹織物高校があるから。これは世界に一つしかない」と言い切るフルビオさんだ。
同氏自身が同校繊維科出身。数年前、国立の同校が予算不足でコンピュータなどの導入が遅れ、繊維産業の新しいニーズに追いつかなくなった現実をみて、地元の産業界とテキスタイルデザイナー達の力を集めて、母校の活性化をはかるための財団設立に大きな力を発揮した。さらに、デザイン科や繊維科の5年間のカリキュラムを終えた卒業生むけに最新技術強化の特別コースや、繊維企業やデザイン事務所へのインターン制度設置のために積極的に走り回った。140年にわたって、同校がコモで果たしてきた歴史的な役割と実績を熟知し、新しいビジネス環境の中で人材教育の伝統を新しい形で伝承していくことに身をもって打ち込んでいるからこそ、でてくる発言であろう。現在、同スタジオには、同校の卒業生8名が働いている。
「繊維産業の生産地域が広がり、それらの地域でつくられた製品が国際市場に輸出されている。生産地域は世界に広がっていっても、メディアの発達で、望まれるテーストは、ヨーロッパ感覚だ。新しい市場の消費者も結局は、ヨーロッパスタイル、特にイタリア感覚のテーストを求めている」
姉と弟、得意分野を出し合い、若いスタッフとともに、コモの新しい形のデザイン事務所として今後も挑戦を続けていくにちがいないだろう。
|