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ITALY NEWS
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2009/11/30 




ヴィットリオ・ヴォルピ

第13回  中国と日本の旅から戻って

この2週間、中国と日本を旅行して、ちょうどイタリアに戻ったところです。旅行から戻ってきて、今回の旅行で見たこと理解したことについて「考えを整理する」のにとても時間がかかったと告白しなければなりません。

相変わらず「組織されたカオス」としかいえない国イタリアを後にし旅行にでかけたわけですが、イタリアは機能するものは何一つない国にみえます。特に、司法機能に代表される「システム機能障害」の深刻度は悪化するばかり。新しいタイプの民主主義、いってみれば新聞やTVなどによる「メディア民主主義」が横行しています。 すなわち、TVに出る内容すべてが現実のことであると誰をも信じさせる世界の中で我々は生きているのです。これ以上の誤りはありえないでしょう。機能障害、数々のトラブル、TV討論番組の中で毎日が進んでいきます。昨夕のTVでは、クリスマス休暇は「すべて予約満員」の見通しといっていました。TVによれば実に1700万人が海へ、山へ、エキソティックな海岸へと旅たつというのです。貧窮を無視して。確かに、月末の支払いをするのが困難である世帯数は大変増加しています。サブプライム問題は他国に比べ被害は小さかったとはいえ、不況はイタリアでも大きな打撃を与えました。世界一の高級品生産国であるために世界不況により激しいダメージを受けました。消費は減少し、販売は停滞しています。しかし、回復の兆しがそこかしこに見え始めているようです。

政治の世界では、ベルルスコーニ首相に対する攻撃が悪化するばかりで、メディアによると、この問題がイタリアの最重要課題になったかのようです。市民が現実に直面している問題になると、重要でないかのように議論は精細を欠いています。何もかも、意気消沈してしまうことばかりですが、総体としては、住み心地はまあまあです。

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私の最初の訪問先は中国でした。近年私が訪れたのは、上海、南京、広東などに集中していたため、この数年、首都北京を訪れていませんでした。そのため、北京は大変化を遂げたという印象を受けました。把握できないほどの大都市です。超モダンな道路、あらゆる種類の高級品店、効率よい地下鉄など。自転車はほとんど消えてしまい大きくてーそして公害をだすー自動車にとって変わっています。北京には500万台の車が走り、毎日、何千台もの新車が登録されています。一瞬の間、「不思議の国」にたどりついたアリスのように感じました。進歩は莫大なもので人類歴史上、類稀な凄い事が起こっていることを証言しています。これほどの成功や進歩がある一方で、その影には、まだまだ貧困、困難、サバイバルの最低レベルという問題も消えてはいません。とはいえ、ケ小平による改革開放政策により中国が得たダイナミズムは成功しました。(「黒い猫でも、白い猫でも、鼠を捕るのが良い猫だ。」)。

世界経済グローバル化は、中国経済発展を著しく助けました。中国製品への市場開放、そして中国への外国資本の開放は、眠る巨人を動き出させる爆薬ガスの役割を果たしました。労働の尊重を基盤とする儒教文化や社会道徳はその規模でも大きさでも歴史上前例のない現象を創ることに貢献しました。

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私が中国を旅行する上で得な事の一つは漢字の読み方を知っているため何が語られているか概略を理解することができることです。店舗の活動内容、道路標識など基本的な事柄です。今回の旅行で感傷的になったのは中国で現在もその貢献が高く評価されているイタリア人のイエスズ会士、マッテオ・リッチの墓を訪ねることができたことです。リッチは、イタリア・ルネッサンス時代の最高峰の科学を中国宮廷にもたらしたことで中国にとって重要な友人と遇されています。彼の墓は中国共産党の幹部養成所本部の庭園内にあり、文化革命時においても他の63名のイエスズ会士の墓とともに大切に維持されていました。

私は、日本企業にとっても、近くにこのような大規模なビジネス・チャンスのあることは幸運であると思います。このように巨大な中国市場に対し、日本の企業家は多種多様なオファーができることでしょう。大変大きなオポチュニティといえましょう。私の次の目的地は東京でした。ここの空気はまったく異なるものでした。

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日本では「悲観論」が蔓延していました。あらゆるレベルで絶対的な「悲観主義」をみました。世界不況、強度の円高、弱い内需が、悲観主義の空気をつくりそれがすべてに伝染していました。ここで私は、イタリアと日本間の文化的な相違点を見つけました。コップに半分水の入っているコップをみると、イタリア人にとっては「半分も入っている」コップとなります。ところが日本人にとっては「半分しか入っていない」コップとなります。イタリア人はどんな時でも常に一抹の楽観主義を持ちひやかしをいったりすることができます。日本人は何でも「非常に真面目にとらえて」しまいます。そして情感に過度に流されてしまいます。

私は大切な友人、グレゴリー・クラーク教授を敬愛を持って思い出しました。彼は日本人のもつ感情的な面、それと、抽象的なものや形而上学的なものと共存したり、知的に思索することが難しいことを常に強調していました。日本は「具体論」、プラクティカルなこと、すなわち実現できることが勝利を謳歌しています。俳句の世界さえもその傾向があります。日本の俳人は、自分の世界を自分が現実に生きている世界の中にとどめ、その境界から外にはでません。このように現実論優先でかつ感情に流される姿勢は、「豚インフルエンザ」のような危機の瞬間に機能します。万人に打撃を与え、理性の領域を逸脱させる大流行病です。

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日本人の悲観主義は正当化できるでしょうか? 一部はその通りです:確かに日本が直面しなければならない困難な問題や深刻な構造的問題はいくつもあります。

たとえば、人口学統計学的には将来は否定的です。自由移民が禁止されているため、日本の人口は20-30年後には相当に減少することでしょう。2050年には日本の人口は1億人以下になるという思い切った推計もあります。高齢化により2020年には、年金生活者一人を4人ではなく2人で支えることとなるでしょう。
財政赤字は巨大です。GDPの約200%にも及びます。世界最悪です。内需は脆弱です。日本人はお金を使いません。 必需品から贅沢品への出費という西洋社会では誰もが経験した消費パターンの転換を日本人は経験しませんでした。「アリとキリギリス」政策を続けてきました。新政権も同様です。ユートピアや大衆人気主義の詰まった「マニフェスト」をベースとし、内需という本質的な問題に真正面から対応していません。日本は豊かな国です。14兆ドルもの個人資産があり、その50%がキャッシュなのです。日本の政治は、この深刻な大課題に正面から取り組む政策をとる勇気を持ちませんでしたし、今回の政権もその気配はみえません。

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すべてが本当です。心配すべきことは山ほどあります。しかし、親愛なる日本の友人の皆さんへ。コップの「半分も入っている」部分を見てはどうでしょうか。日本は豊かな国であり、近隣に大成長するダイナミックな国々囲まれていますから、投資や輸出など巨大なチャンスに満ちています。本当に取り組めば内需を拡大することもできますし、蓄積された巨大な貯蓄を活用して、日本の国は日本がこれまで以上に繁栄することを支えるあらゆるオポチュニティを持つことができるはずです。しかし何たることでしょう。今は、日本文化の持つ感情的な面そして理性に欠ける面が大手をふるって、誰もが泣いています。本当は笑わなければならない人たちまでもが。

幸いなことに年末ももうすぐです。忘年会、新年会、お正月。これらのお祝いで、美味しいお酒を少し飲むと、理性を回復し、ネガティブな思考を多少は先送りできるのではないでしょうか。少しは「積極論」があってもいいのではありませんか。 

(翻訳:JIBO 編集部)



◆執筆者プロフィール
ヴィットリオ・ヴォルピ Vittorio Volpi
Chairman Parallels Consulting

ミラノカトリック大学経済・商学部卒業。その後、世界的に事業展開する大手銀行数社に勤務し、日本滞在歴は30年に及ぶ。日本滞在中は日刊全国紙「コリエレ・デッラ・セーラ」に日本の政治、社会、経済についての多くの記事を寄稿した。
世界有数の規模をもつ金融グループUBSに勤務し、UBSイタリアをChairmanとして統括した後、2008年4月Parallels Consulting SAをルガーノに創立しChairmanとなる。一方でイタリア有数の日本研究家という顔も持つ。
主な著書に「日本よ敵か見方か − イタリア人の見たニッポン」(日本経済評論社)「日本がいま、やるべきこと」(新潮社)、「賢者の営業力」(PHP研究所)などがある。

ヴォルピ氏の最新刊のご紹介
賢者の「営業力」
日本進出の成功例、宣教師ヴァリニャーノの教え

(イタリア語原題 「Marketing Mission」)
ヴィットリオ・ヴォルピ著 
大上順一 訳
発行:PHP研究所
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内容
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