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ITALY NEWS
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2009/7/31 




ヴィットリオ・ヴォルピ

第12回 バカンス、Vacanze, 夏休み

偉大な経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスが何十年か前にイタリアと日本について書いたコメントに私は大きな衝撃を受けました。ガルブレイスはイタリアと日本は、「釣鐘型の正規分布図」上にプロットすると一番末尾に位置してしまう、なぜなら両国とも非常に特異な特色を持つ国であるからだと指摘したのでした。これほど的をついたコメントは後にも先にもないといえましょう。というのは、両国の行動様式は常に、他国の行動様式と大きく異なっており、かなり「アブノーマル」なのです。いわゆる「論理」や「常識」からは多くの場合外れていて、理解するのが非常に難しいことが多いのです。そのため表面的な評価をしてしまうリスクも大きいのです。

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現在の経済不況を例にとってみましょう。この数十年で最悪、いいえ、おそらく戦後最悪といえる不況を経験したといえましょう。2002-2007年の好ましい経済成長を記録した後で、 2007年末頃から始まった非常に深刻な経済不況です。これに90年代初頭に日本で経験した事象とも酷似した「サブプライム」問題という金融危機の勃発が加わりました。サブプライム問題が経済不況に重なり、その結果は非常に深刻なものとなりました。世界中の銀行システムは危機に陥り、銀行は融資を中止し、そのため、すでに不調だった経済は、経験したことのないほどの深刻な危機を引き起こす結果となったのです。

まさにこの面でもイタリアと日本の特異性が示されることになりました。たとえば、イタリアと日本の銀行は、他の工業先進国と比べると今回の金融危機から受けた打撃は比較的少ないものでした。それはなぜ?と聞きたくなることでしょう。おそらく、日本については、金融システムが外国からかなり孤立しているからだと私は思います。一方、イタリアはといえば、銀行システムが非常に保守的で、一口でいえば遅れていたためでしょう。いずれの理由にしても、結果として他の国々と比べ、イタリアと日本の場合、小口預金者がこの金融危機から受ける痛手が比較的少なくてすむことになったのです。

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しかし、それ以上に本当に皮肉なのは、イタリアでは誰もが経済不況の不満をいいつつも、人々は例年にもましてバカンスに出かけることでしょう。これは矛盾することではありませんか? 実際、テレビではこの7月末の時期に、昨年より多い3000万人がバカンスに行くと報じています。 有名なバカンス地で高級ホテルの予約を試みてください。予約ができないのです! 7月・8月には、イタリア人のバカンスに加えて、まさにイタリアの美しさを楽しみにやってくる大勢の外国人旅行者が加わります。毎年5000万人がこの「ベル・パエゼ」(美しい国イタリア)に観光のためにやってくるのです。驚異的な数字です。ヴェネツィアのような都市には、内外から実に2000万人以上の旅行者が訪れるのです。

イタリア半島が訪れる人々に信じられないほどの恩典を提供していることは疑う余地がありません。イタリアは、旅行者に対し、西洋美術傑作の約60%を保障しています。何千もの教会、芸術作品、博物館・美術館、広場、史跡などをイタリア半島至るところに見ることができます。もし友人が、何を見たらいいだろうとたずねたとしたら、私は、答えに困ってしまうことでしょう。ヴェネツィアを推薦するとなると、同じ地域でパドヴァ、ヴィチェンツァ、ヴェローナ、トリエステ、ウーディネ、ラヴェンナなどを忘れることはできないですから。

そして、豊かな芸術文化に加えて、イタリアは気候がよく、見事な海岸、多様な風土、美味な食品、ショッピングなどを提供します。そしてイタリアは南北2000キロもの長さがあり、かくも多様な歴史を誇る国なのです。ここには、フェニキア、ギリシャ、アラブ、ノルマン、トルコ、スペイン、フランスなどほとんどすべての地域から征服者としてこの地にやってきました。それぞれの民族が、それぞれの文化をもたらしました。日本人と同様、イタリア人はそれらを取り込みましたが、地域の強い独自性を維持したのでした。日本人と同様、イタリア人は他の民族すべてから文化を吸収しましたが、どの民族によっても変わることはありませんでした。侵入者たちのほうが「イタリア化」せざるをえなかったのです。その結果、地域ごとに美味で強い独自性を持つ料理を誇っているのです。イタリアでは食事で嫌な経験をするのは難しいのです。あったとすると、運の悪い人といわざるをえません。

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イタリア人は、経済危機にもかかわらず、例年以上に休暇を楽しんでいると、上記に述べました。さらに、ある特定の人たちは他の人たちに比べ、より多くの休暇を享受しているのです。常軌を逸しているケースもあります。昨日、新聞で、もともと働き者として有名というわけではありませんが、イタリアの検事や判事たちが年間51日の休暇を享受し、週末などを加えると、1週間で4.2日しか働かないことになると報じていました。そのため、訴訟案件一つを終了するのに平均8年以上もかかっているのです。本当に信じられないことです。ですから、イタリアで裁判所に行く必要ができたら、「人間辛抱が肝心・・・・」 しかしイタリアのもう一つのパラドックスは、それにもかかわらず、毎日が進んでいくことでしょう。何があろうと、イタリアではまったく動じることなく、人々はいいお天気やバカンスを楽しんでいるのです。

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イタリアを訪れたいと願う日本の友人の皆さんへのアドバイス。 まず第一は、可能であれば7月と8月を避けましょう:この時期は人が多すぎ、料金も高すぎます。そして訪れる場所はどこも混乱しています。イタリア旅行は楽しみどころか、苦しみになってしまうでしょう。 4月、5月、6月そして、9月10月に是非いらしてください。ずっと楽しいはずですし、そしてなにもかもずっと安いです。

第二には、価格には注意をして、ごまかそうとする人がいたらすぐに抗議してください。最近、テレビでは外国人がどのように扱われているか様々な取材をして放映していました。レストランやその他の場所で、料金が2本建てになっているところも多々ありました。外国人用と、料金にウルサクすぐに抗議するイタリア人用の2種類の料金表です。外国人につけこみ「ボル」ことは大変嘆かわしいことであり、大多数のイタリア人は忌み嫌っています。このようなことは、外国人が同等にそして正直に扱われている日本では決しておきません。
それと、もし望むのであれば、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアなどの大観光地と同じように興味深い他の場所も是非訪れてください。 これら大観光地には、美しいものの精神に直接触れるためではなく、「フィレンツェに行ってきた」と友人たちに語るためだけに訪れる観光客も大勢いますから。

シチリアであれば、シラクーサやノート。プーリアであれば、トラーニ、バルレッタ、フォッジャ。トスカーナのシエナやアレッツォ。クレモーナ、マントヴァ、トレヴィーゾ、マロスティカ、ベルガモ、そしてブレーシャなど。つまり、イタリアやその文化を、よりゆったりと、そしてエコノミーな価格で、そして文化的により深く、理解を深めることのできる多数の素晴らしい土地があるのです。大観光地を訪れたいのであれば、土曜や日曜は避けて、週日に行きましょう。 京都を訪れる際と似ています。金閣寺や平安神宮、そして清水寺だけではないのです。訪問客は少ないものの文化的には同様に興味深い場所、大勢の人が訪れない素晴らしい場所が何百もあるのです。

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最後のおすすめ。 私自身も恥ずかしく思いますが、イタリアでは否定的な経験をすることもあるに違いありません。金を巻き上げようというずるい人がいるのも事実です。でも、大多数のイタリア人は善良な人々であり、毎日の生活の中で自分の義務を果たし、そして外国から来る方々をもっと理解したい、必要があれば手助けをしたいと望んでいることを、忘れないでください。特に、日本人は大変尊敬されています。 したがって、楽しい旅行を! そして幸運を! 是非イタリアを楽しんでください!

(翻訳:JIBO 編集部)



◆執筆者プロフィール
ヴィットリオ・ヴォルピ Vittorio Volpi
Chairman Parallels Consulting

ミラノカトリック大学経済・商学部卒業。その後、世界的に事業展開する大手銀行数社に勤務し、日本滞在歴は30年に及ぶ。日本滞在中は日刊全国紙「コリエレ・デッラ・セーラ」に日本の政治、社会、経済についての多くの記事を寄稿した。
世界有数の規模をもつ金融グループUBSに勤務し、UBSイタリアをChairmanとして統括した後、2008年4月Parallels Consulting SAをルガーノに創立しChairmanとなる。一方でイタリア有数の日本研究家という顔も持つ。
主な著書に「日本よ敵か見方か − イタリア人の見たニッポン」(日本経済評論社)「日本がいま、やるべきこと」(新潮社)、「賢者の営業力」(PHP研究所)などがある。

ヴォルピ氏の最新刊のご紹介
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