0
ITALY NEWS
0
2008/01/31 




ヴィットリオ・ヴォルピ

第四回 シカタガアリマセン!

親愛なる読者の皆様 こんにちは。私の連載、興味を持って読んでくださっているでしょうか。ところで今回は、本日、日刊新聞Il Sole 24 Oreのトップページを飾ったニュースから始めたいと思います。なんと、イタリアでは約160万戸の住宅が「幽霊物件」すなわち、国家の正式書類に登録されていないことが発覚したというのです。この数字は現実にはもっと大きくおそらく200万戸の大台にも及ぶ可能性が高いようです。私自身、イタリア人ですし驚嘆することには慣れているはずの私ですらこのニュースには驚きました。どのようにすれば住宅や建物を誰にも知られないように建設することができるのでしょうか?市町村、都市、警察、産業省、土地台帳管理局、そしてさらに税務署(住宅建設にはお金がかかるはずですが)などにまったく関知されずにいることが可能なのでしょうか。もし、これらの住宅が正式に存在しないとすると、税金を払わず、また建築物の安全性基準も何もないことになります。いってみれば、一見するとまさに第三世界の事象となってしまいます。きちんと行政の機能している日本でこのようなこと起こるなんて想像できますか。

実際、このようなニュースを外国の人が読むと、イタリアは「大混乱」の国だと結論付けるかもしれません。この巨大な「水面下経済」、ルールを尊重しない国、国会制度民主主義が存在しない「組織されたカオス」の国、まさに「ベル・パエーゼ」(美しい国)と。

◆◆◆

上記のニュースに驚き果てたとは申しましたが、といってイタリアおよびイタリア人全体を「全面否定」するつもりはありません。このような深刻な欠点があるのは事実ですが同時にこれらの欠点を相殺する多くの長所も沢山あるのです。どの社会もよくも悪くも、結局のところ、良し悪しのバランスがとれているのです。

質問があります。この無秩序さはどこから来るのでしょうか。なぜ、このような放任主義、あるいは「いい加減さ」があるのでしょうか。イタリアもイタリア人も、システムとしても国民としても、「アバウト」でありきちんとしていないと判決を下すことができるのでしょうか。

◆◆◆

「私はイタリア人の最良の資質は何で、逆に最悪の資質は何だろうと自答することがよくあります。30年近く住み、実情をかなり知っている日本および日本人についても同じ問いかけをします。

コシガ元大統領はイタリア人についての最近のインタビューで最良の資質は「抜け目のないこと」といいました。私はこの定義に異議を唱えます。もしイタリア人が本当に「抜け目がない」のであれば、この国はもっとうまくいっていたでしょう。私の判断では「抜け目の無さ」は逆に最悪の資質の一つです。私としては、創造性、柔軟性、そして「国としてのシステムや組織の欠如」にもかかわらずちゃんと仕事のできることを、イタリア人の最良の資質と思っています。
イタリア人が仕事をしないというのは大きな嘘です。ちゃんと働くのです、ただ残念ながら、組織の混乱やカオスゆえに多くの問題が発生するため、その問題の解決に多大な労力を消耗しているのです。マイナスの資質の中にあげた「抜け目の無さ」は悪く働くと国家や公共の利益に対する感覚の欠如につながります。

それでは日本人はどうでしょうか?よい資質としては「真面目さ」、これは日本人が評価されたい資質のNO1でしょう。労働に対する高い倫理観、所属する組織に対する責任感、相互間の敬意など。一方、マイナスの資質は?その第一位は、自分自身や所属するグループを守る際の「原理原則の欠如」だと思います。 組織の「顔を救うために」という理由で行われた多数の受け入れがたい事件を思い出します。ミドリ十字事件はその一例です。真実を述べない、誰かを守るために嘘をつく、これは日本で見られる最も醜悪な点の一つです。

◆◆◆

イタリア流「何事も大体のところで片付ける安易な方式」この「大まかさ」「いい加減さ」がどのように機能しているのか、興味ある方も多いと思いますので、顕著な事例を紹介しましょう。同じような事例は毎日のように見つけることができましょう。

何年か前のことです。フィレンツェ近くのスーパー刑務所から何名かの受刑囚が脱獄したことがあります。このようなエピソードは他でも起こりえることでしょうが、これほど並外れたレベルではないでしょう。殺人犯の宣告を受けた囚人を含む4名が逃げ出し、警察が事件発生の原因について大掛かりな調査を行いました。普通の刑務所ではなく「スーパー刑務所」、つまり、脱獄を不可能とするあらゆるシステムを備えた刑務所での事件なのです。

調査の結果明らかになったのは
―受刑囚は窓枠を切断する道具を所持していた。窓から地上に降りるためのシーツがあった。刑務所を囲む塀の下にスプーンで穴を掘った。(鉄筋コンクリートの壁ではないのか?)人員不足が理由で刑務所の塀に警備員が配置されていなかった。最後の落とし穴は、警報が機能しなかった。どのように「機能しているか」を示す大きな事例といえましょう。

もう一つの深刻なエピソードはリナーテ空港でプライベート機と路線航空機が衝突し100名以上の犠牲者をだした大事故の話です。この衝突事故は霧により発生したものですが主な原因は管制塔のミスによるのです。滑走路上の信号が機能せず、二機に対して衝突の危険を知らせる電気設備が稼動していなかったのです。要するに、今回もまた「いいかげんさ」ゆえに起こってしまった悲劇なのです。 「今日のところは様子を見よう、明日は明日」という感覚、つまり、「今度、いつか。。」といってそのままにしておく。
◆◆◆

つまるところ「何事も大体のところで片付ける安易な方式」という責められるべき、傲慢な姿勢が存在するのです。私は日本語化している英語である「アバウト」という言葉が気に入っています。日本では誰かを「アバウトな人」「口半分」と言うとき、信用のおけない人ということになります。 一方、イタリアではその逆に「おおまかな人、いいかげんな人」は結局のところ「生き延びれる人」なのです。多くのやるべき事柄から「しなくても」すむことを探し出し、最大限の手抜きをして平気なのです。なぜなら、やるべきことを全部きちんとするのは、時間の無駄だと考えるからです。

私は個人的にこのような「いい加減さ」を我慢できません。目的達成のために、最短の近道ですませようという人を許せません。しかしイタリアでは、残念ながら、本日のIl Soleが報道してように、このように考えてない人が多数いるのです。ではどうしたらよいのでしょうか? 「ショーガナイ」「シカタガアリマセン」 (どうしようもありません)

(翻訳:JIBO 編集部)



◆執筆者プロフィール
ヴィットリオ・ヴォルピ Vittorio Volpi
Chairman, UBS Wealth Management Italy 

ミラノカトリック大学経済・商学部卒業。その後、世界的に事業展開する大手銀行数社に勤務し、日本滞在歴は30年に及ぶ。日本滞在中は日刊全国紙「コリエレ・デッラ・セーラ」に日本の政治、社会、経済についての多くの記事を寄稿した。
現在、世界有数の規模をもつ金融グループUBSに勤務し、UBSイタリアを統括している。一方でイタリア有数の日本研究家という顔も持つ。
主な著書に「日本よ敵か見方か − イタリア人の見たニッポン」(日本経済評論社)「日本がいま、やるべきこと」(新潮社)、「賢者の営業力」(PHP研究所)などがある。

ヴォルピ氏の最新刊のご紹介
賢者の「営業力」
日本進出の成功例、宣教師ヴァリニャーノの教え

(イタリア語原題 「Marketing Mission」)
ヴィットリオ・ヴォルピ著 
大上順一 訳
発行:PHP研究所
定価:1400円 プラス消費税
至難のミッションである日本へのキリスト教の布教は、いかにして成し遂げられたのか。
16世紀の偉業と現代企業の成功例・失敗例から学ぶ、国際マーケットを制するための絶対法則。

内容
1.日本、中国、インドが欧米を上回る日   2.アレッサンドロ・ヴァリニューノ   3.修道士たちはいかにして成功したか   4.ビジネスパートナーとしての日本人   5.アジア市場を研究し、理解する   6.アジアで働く   7.「グロカリゼーション」の実現   8.アジアでの成功は世界での成功を保証する


トップへ  

www.japanitaly.com