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2000/2/1

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イタリア地域経済通信



パヴィア市
環境番付 全国NO1都市へ


石橋 典子


photo 1.イタリア環境対策番付発表

昨年1999 年11月末、イタリアの環境監視組織(ボランティア団体)であるレーガ・アンビエンテから、イタリア全国主要103市の環境番付が発表された。それによると上位5位は、1位がパヴィア、2位がベルガモ、3位がコモ、4位がクレモナ、5位はボローニャ。1‐3位はロンバルディア州の市が独占し、ベルガモ市とコモ市は前年と同位、パヴィア市は何と9位から1位に上昇した。クレモナ(4位)、ブレーシャ(6位)、ソンドリオ(7位)、レッコ(11位)は前年に比べて上位に進出、一方、同州の州都であるミラノ(73位)、そしてヴァレーゼ(58位)、ローディ(36位)、マントヴァ(30位)は前年よりも順位を落とした。

順位上位にロンバルディア州の市が多いのは、その他の州に比べて、経済的に豊かである事に加えて、市民の環境に対する意識の高さ、行政面で環境改善努力がなされたためであると考えられる。しかし、喜ぶのは早いのであって、一位のパヴィアは100点満点のところ69点、ミラノは46点であるから、調査団体は、将来的にもっと環境改善の余地があると指摘している。

反対に最下位から順にみると、ラティーナ市、続いてレッチェ市、ヴィボ・ヴァレンティア市、トラパニ市などの南イタリアの市が目立つ。また、マントヴァは昨年の1位から30位に転落した。それはひとえに、住民の水使用量が1日当たり781リットルと多すぎるためであった(ちなみに最も水を節約したのはアレッツォ市の175リットルである)。

パヴィアが1位になった要因として、団体は以下の点をあげている。大気汚染モニターの効果的な設置および上下水道の浄水システムが十分機能していること。公共交通機関の市民による利用が近年高くなったこと。ごみの分別収集の増加率が高いこと。緑地が多く、車両進入禁止地区面積が多いこと。さらに1992年にブラジル、リオデジャネイロの国連環境開発会議で採択された環境保護についての行動計画「アジェンダ21」にいち早く参加したこと。

2.環境審査基準の概要

さて、レーガ・アンビエンテが発表したこの調査「Ecosistema Urbano(都市の生態系)」とは、詳しくは、同団体が毎年各市から提供されるデータに基づき、イタリア環境研究所の協力によって行っている、今年で6回目を迎える環境調査のことである。今回、各県の中心都市である103の市を対象に、市へのアンケートや直接のインタビュー、その他の統計資料に基づく42のパラメーター、合計で4万データをもとにして分析が行われた。

今回の調査に使われた環境審査基準は18項目。そのうち、市から提供された1998年のデータは以下の13件。
1) 大気汚染モニター(市の規模に応じたモニター設置が基準に沿った数あるかどうか)
2) 大気中のNO2濃度(年間または1日の平均値)
3) 大気中のCO濃度
4)水質(水道水中のmg/l NO3 平均値)
5)水道水消費量(一人当たり供給量リットル/人/日)
6)浄水設備(下水の何パーセントが浄水施設で処理されるか)
7)ごみ生産量(都市ごみ一人当たりの生産量kg/人/年)
8)ごみ分別収集(全体のごみに対する分別の%。ただし大型の廃棄物を除く)
9)市民100人あたりの自動車台数
10)公共交通機関(本数/住民数/年、ただし都市の規模によって評価基準は異なる)
11)歩行者専用区域面積(u/住民一人当たり)
12)自転車用道路(m/住民一人当たり)
13)緑地面積(住民1人当たり有効緑地面積、公園と保護領域は除く)。

これらに加えて、
14)石油使用量報告書(1997年)から「燃料消費量(1人当たりのガソリン、ジーゼル消費量)のデータ」
15)電力会社ENELの1998年のデータから「電力消費量(1人当たりの電力消費量kWh)」
16)工業基準証明ISO14000を有する企業数
17)「アジェンダ 21」と呼ばれる環境対策取り組みへの市の参加の有無
18)Istatイタリア統計局1995年のデータから、呼吸器疾患とガンによる死亡率(住民1万人あたりの件数)

これら18の基準は、大きく3つに分類する事ができる。 1)住民の活動により生じるもの(水道水、燃料、電力の消費量。生活ごみ排出量。自動車数)
2) 環境汚染の度合い(スモッグ、騒音、水道水汚染、呼吸器疾患)
3)市政による環境改善対策の度合い(ごみ分別収集、公共交通機関、浄水施設、緑地面 積、遊歩道、汚染モニター設置、企業による環境管理)。

そして、これらの基準各々についても、103市の順位が発表された。

3.パヴィア市の環境行政

さて、総合評価で一位になったパヴィア市の近年の環境行政はどのようなものであったのか。市議の環境担当参事であるアンジェロ・ゾルゾリ氏に、最近パヴィア市が行った行政措置について伺った。

パヴィア市の人口は約7万6千人。周囲に豊かな緑の自然が残るティチーノ川のほとりに栄えた歴史のある小都市である。ティチーノ川に沿って広がる広大な自然公園の面積を除外しても、緑地面積は市民1人あたり23u。パヴィア市には4つの市営公園があり、公園の緑の充実と川沿いの緑地面積を増やすプロジェクトには国、欧州、市の予算から合計で約80-90億リラが充当されている。

さらにパヴィア市が特に力を入れているのが水質汚染対策。下水道の浄化は100%。つまり、市内のすべての下水道を現在3つの浄化設備に集めて浄化した後、ティチーノ川へ流している。さらに浄化過程で生じる泥を集めて肥料とする会社へ販売している。上水道については36個あった井戸を8つにまとめ、さらにそれを2ヶ所の浄水センターへ送りこみ、ほとんどミネラルウォーターと同じ位、きれいな水道水を供給しているという。また、ごみ処理については、1996年には7%であったごみの分別収集を1999年には25%まで引き上げた。全体の約35%を占める生ごみについては、今までリサイクル処理が出来なかったのでやっていなかったが、今年の1月から、試験的に一部でリサイクル処理を実施し、問題が無ければ全面的に生ごみリサイクルを開始する予定である。そうなればごみの分別収集は60%まで上がるだろうということだ。

大気汚染検査のほかに、騒音対策も来年から取り組み、まず住宅地域と工場地域の騒音基準を設けて、新たな工場設立の際に騒音対策を義務づける予定。交通規制については公共交通機関の充実と有料駐車場の設置により、旧市街地への一般自動車進入を制限。さらに興味深いのは、携帯電話会社数社と、来年10月から、特に学校と病院の周囲には携帯電話用のアンテナを設置しない事、設置には市長の許可が必要、電磁波の強度の上限(6V/立法メートル)を設けるという合意を取り付けた。企業のISO14001及びアジェンダ21への取り組みにも積極的であり、経済促進と環境保護の間の妥協は必要であるが、企業の努力を応援しようと、今まで環境省、工業省と合同で42のプロジェクトに520億リラ予算を充当した。

ゾルゾリ氏が3年前に就任した時は職員1人、予算は9千万リラしかなかったが、今は20人以上のスタッフになり、200億リラ以上の投資を行える様に変わったという。「しかし、4月の市議会選挙で継続できるかどうかが問題。3年間休み無しで働いてきたから、次の選挙で市長続投が決まれば、もう少し落ち着いて長期的なプロジェクトに注力できるのだが…。それでも今回の調査で1位になったのは大変うれしい」と話してくれた。

4.歩行者にやさしい小規模都市

パヴィアはミラノの南約35kmに位置する、古代ローマ時代からの重要な都市。小規模ながら6-8世紀にはロンゴバルド王国の首都として最も栄えた。さらに12-13世紀の自由都市時代を経て、14世紀にはミラノのヴィスコンティ家の支配下でパヴィア大学を中心として学問の中心としても栄え、今も学生の町として知られている。

実際にパヴィアの中心を歩いてみると、大学が市の中心にあり、徒歩か自転車に乗っている学生や市民の姿が多い。目抜き通りを縦横に走るバスのほかには、車の姿はほとんど見当たらない。旧市街地内で車両の進入が制限された区域には信号が一つも無いのであった。住みやすい街とはパヴィアの様に半径1kmの中心街に役所、大学、オペラ劇場などが一通り揃っていて、商店街も充実し、歩行者に優しい小規模の街のことではないかと思った。


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