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ITALY NEWS
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2007/6/29 



  イタリアの日本人
  GIAPPONESE IN ITALIA  


イタリアワイン専門家

「土着品種で知るイタリアワイン」を出版
中川原まゆみ
Ms. Mayumi Nakagawara



JIBO:プロフィールを教えてください。

中川原: 函館で生まれ、札幌で育ちました。東京で音楽制作プロダクションに勤務し、ミュージシャンのマネージメント、コンサート企画・ツアー、レコーディングなどをしていました。その仕事の関係で欧米への出張も多く、もともと趣味として料理が好きだったこともあり次第に出張の後、プライベートでイタリアに寄って郷土料理を食べたり、ワインを楽しむ機会を持つようになりました。最初にイタリアに来たのはワールドカップでイタリアが優勝した1982年ですのでもう25年前のことになります。ミラノからシチリアまでイタリア各地でワインを飲みにまわったりもしました。そのころはまだ、バルサミコ酢も乾燥ポルチーニも日本には入っていない時期で、少量日本に持ってかえると大変珍しがられました。

1991年に、それまで勤務していた事務所から独立して音楽プロダクションをつくり、ミュージシャンのマネーメントをしていましたが、料理とワイン好きがあいまって1990年代後半に東京の中目黒にエノテカオステリアの店をオープンしました。イタリアの家庭料理をベースとしたお店で、レシピはイタリアのレストランで、これはと思った店で厨房に入り込んで教えてもらったものがベースとなりました。食事は、私かもう一人いたコックかどちらかが作るという家庭的なお店です。一時は、昼は音楽、夜はお店という2足のわらじをはいた生活を経験しましたが、途中で音楽の仕事は閉じ、お店の仕事に専念しました。当時はイタリアから輸入されているワインも限られたものしかなく、自分でイタリアにきてはお店で使う程度のワインを自分なりにセレクトしては少量買い付けたりしていました。お店は順調でしたが、やはりイタリアでワインの勉強を本格的にしたいと思って、2001年2月にお店を閉めてイタリアにきました。

JIBO:プロフェッショナル・ソムリエの資格をお持ちとききましたが

中川原: トリノでイタリアソムリエ協会実施のソムリエのコースに通いました。最初の6ケ月間はトリノで集中講義を受け、その後、エミリア・ロマーニャ州 フォルリ・チェゼーナ県にあるバーニョ・ディ・ロマーニャBagno di Romagnaにある「リストランテ・パオロ・テヴェリーニ」でソムリエとして半年 間をインターン生としてつとめ、正式にソムリエプロフェッショ二スタの資格をとりました。

JIBO:現在のお仕事はどのような内容ですか。

中川原: ソムリエとして仕事を続けていくうちに、2003年からイタリア各地のワイナリーを訪れイタリアワインを日本の輸入元にご紹介する仕事をスタートしました。Microclima という会社をつくり、現在はイタリア人、日本人の各一名のスタッフかかえています。当初はレストランでソムリエとして金曜夜、土曜、日曜、と仕事をして、月曜から金曜午前中まではワイナリーをまわるという、これもまた「2足のわらじ」を履く生活をしていました。今はソムリエの仕事はしていません。また、ワインについての原稿執筆の仕事もしています。

現在、私のところで扱っているワイナリーは、北はオーストリア国境にあるアルト・アディジェから南はシチリアまで約15州、60社にのぼっています。これらの主なワイナリーとは日本市場輸出に関する独占契約を結んでいます。60社といっても年間1000本程度しか生産しない家族経営の小さなワイナリーもあれば、年間何十万本もの生産を行う大手ワイナリーまで様々です。
一方、日本側については東京、大阪、名古屋を中心としてインポーター8社ほどとおつきあいをしています。ワイン専門輸入会社もあれば食品一般、あるいはイタリア食材専門など分野はいろいろあります。


JIBO:イタリアワイン輸出のビジネスはどのようにすすめているのですか。

中川原:まず、ワイナリーの選び方ですが、自分でワイナリーを訪れてワインのテースティングを行い、これはと思うものを選びます。セレクトの決め手はワイン自体のクオリティ、価格、そして日本でのマーケタビリティ、市場性があるかどうかの3つがポイントです。それと、食品ですからワイナリーの衛生管理のレベルについても気をつけてチェックしています。
こうしてセレクトしたワイナリーを日本のインポーターにご紹介をして関心があるという場合は、価格、ワイナリーについての情報をつけてワインのサンプルをインポーターにおくって検討していただきます。これとは逆に日本のインポーターからこんなものがほしいというリクエストをいただいてマッチするものを探すこともあります。

日本側でサンプルを気にいっていただくと次は日本への輸出業務となります。ワイナリーと日本の輸入元の間に入って、ワイナリーに対しては日本への輸入のために必要な食品の分析表などの書類の整え方などの準備のサポート、さらに集荷からイタリア国内の配送、船での出荷から日本到着まで、すべてきめ細かくサポートするのも私どもの業務です。 ワインは生き物です。ワインはよい状態か否か、外見では判断できません。したがって日本の最終消費者に最良の状態でお届けするためには、どの行程も手を抜くことはできません。最も気を使うのは各地のワイナリーから港までワインを運ぶ運送トラックの温度管理です。もちろんワインやオリーブオイルなどの集荷専門の温度調整可能なトラックを使うのですが、実際に適温で配送されているか、集荷時間帯、運転手の氏名まで厳しくチェックしています。


JIBO:新著『土着品種で知るイタリアワイン』についてご紹介いただけますか。

中川原:この本を出版しようと思った背景にはイタリアワインは種類が沢山あってゴチャゴチャしていてわかりにくいためになかなか好きになってもらえないという問題があると思ったからです。実際、イタリアにはワイン用ブドウの土着品種が一説では2000種以上あるといわれているほど種類が多く、こんなに沢山ある国は世界中、他にありません。フランスや他の国は大体7〜8種類で、どこも、シャルドネ、カベルネなどの国際品種と呼ばれているものなのです。そのため、他の国のワインに詳しい人もイタリアワインとなると非常にわかりにくいのが現状です。

したがって、ブドウの土着品種とワインの種類の関係をしっかりと把握できないと、イタリアワインを本格的に知ることはむずかしいのです。私自身も自分でノートをつくって参照していたのですが、両者の関係をわかりやすく説明する本があったら便利だと思いおもって一冊の本としてつくることにしたのです。事務所のスタッフにも協力してもらって2年半の年月をかけて執筆しました。

これらのブドウ品種は、紀元前5千年前頃にすでにイタリア各地に入り、通過して、今でもイタリア各地に根付いて残っているものです。ギリシャから入ってきたもの、アフリカ方面から、あるいは北方から入ってきたものもあります。やはり各地の土壌にあった品種が残っているのでしょう。イタリアの多様性を表現しているようで興味深い事象です。ただし、2000種とはいっても、中心となるのはほぼ50品種前後で、この100品種を理解していればイタリアワインについてはまず困らないと思います。ブドウはワインをつくる素材、すなわち原料ですから、ブドウの品種と栽培地域についての知識を持つと、できあがったワインへの理解が容易になります。

この本では、イタリアに根づいたブドウ土着品種の中から、主要100品種を選び、AからZの順に栽培地域地図、果房の特徴と写真、アルコール度数・pH・酸度、歴史、味わいの特徴、その品種で造られるワインの主なDOC,DOCG、別名・類似品 種などを解説し、代表的なワインをラベルとともにテースティングコメ ント、栽培・醸造データを掲載しました。さらに第二部として今申し上げた解説にでてきた地名の地図、DOC,DOCG,主なIGTの名前から、構成品種を調べられる索引、各ワインのヴィンテージチャート,用語解説などをつけました。日本でもワインの本は沢山出版されていますが、このようなアプローチのものは初めての本となりますのでお陰様で反応はいいようです。ソムリエの方やワインの販売などワインに関わっている現場の方々や愛好家の方々に、便利なガイドブックとして使っていただければ本望です。


JIBO:イタリアでワインビジネスをなさってのご苦労はどのようなことでしょうか。

中川原:やはり、ワイナリーの方から日本の市場に対して期待が大きすぎる、つまり過剰な期待をもつところが多く、対応に苦慮します。たとえばアメリカはイタリアワインの大きな輸出国ですが、日本やアジアのマーケットがいい、ときくと、アメリカと匹敵する大マーケットではないかとイメージをふくらませてしまう生産者が多いのですね。
もちろん日本市場も成長していますが、人口の面からも食文化の面からもアメリカ市場に匹敵する規模にはなりえない、そのあたりにブレーキをかけておかないとギャップが広がってしまいます。日本市場のむずかしさを指摘しても、「うちのワインは大丈夫、最高のワインだから」と思い込んでいるところがあります。この楽観的なところがイタリアのいいところとは思うのですが。

それと、これはワインに限らないと思いますが、日本人とイタリア人は仕事の進め方が違います。日本の方は仕事が速いし、細かいし、何事もきちんとしないと前に進めない。一方イタリア人は時間がルーズでアバウト。こまごまと気にしない。たとえば何時間醸造するかということでも、イタリアの人は、平気で「5時間か8時間」などといいます。日本の方は5時間と8時間では大違いで悩んでしまう。イタリア側にとっては5時間の場合も8時間の場合もあって当然ということなのでしょうね。


JIBO:このお仕事をなさってのやりがい、そして今後の抱負は?

中川原:私が関わって日本に入れたワインを、その経由をまったく知らない最終消費者の方が「あのワインおいしかった」といってくださるのを耳にした時、とても嬉しいですね。

今後は、イタリアワインを楽しく飲んでいただくための普及活動、執筆活動に力をいれたいと思っています。イタリアワイン全般の普及には何が必要で自分として何ができるかを考えています。



『土着品種で知るイタリアワイン』のご紹介

『土着品種で知るイタリアワイン』
著者:中川原まゆみ
発行 産調出版  2007年4月
価格:2600円+ 消費税 オールカラー、全303ページ。


(終わり)

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