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ITALY NEWS
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2007/2/28 



  イタリアの日本人
  GIAPPONESE IN ITALIA  


デザイナー

ミラノでファッション展示会UPSIDEを主宰
坪内 隆夫
Mr. Takao Tsubouchi



ミラノのトルトーナ通り一帯は、ショールームやモデルエージェンシー、ファッションショー会場などが集まる"デザインの中心地"。そのトルトーナ通り15番地にあるSpazio Magna Parsで、2月22日から25日の4日間、個性的な新進デザイナーの集まるインターナショナルなファッション展示会UPSIDEが開かれた。
UPSIDEは毎年2回ミラノファッションウィーク期間中に開かれ、今回で7回目。主催するのはミラノに長年住む日本人デザイナーの坪内隆夫さんだ。2004年2月に8人のデザイナーとともにスタートさせた。現在では出展ブランドは20以上、規模・内容とも回を重ねるごとに充実し、世界中のバイヤー等からの注目を集めている。
今回の日伊インタビューでは、このUPSIDEの主催者坪内隆夫さんに、トルトーナ通りにある彼のスタジオでお話をうかがった。

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JIBO:坪内さんのご経歴、イタリアへ来られたきっかけなどを教えていただけますか?

坪内:東京モード学園を卒業後、日本のメーカーで1年ほど働きました。その後、イギリスに1年間滞在し、英語を勉強しました。それから1989年にイタリアにやって来て、以来ずっとミラノで暮らしています。
なぜイタリアに来たかというと、「洋服をやるならイギリスよりもフランスかイタリア」と考えたからです。そして、「日本人があまりいないところで試したい」と思い、イタリアを選びました。

ミラノに来てからは、まず1年半から2年ほどイタリア語の勉強に費やしました。イタリアでは"コネ"がなければ仕事を見つけるのは難しく、そのためにまず言葉を勉強しなければならなかったのです。その後、デザイン事務所での仕事が見付かりました。本当は生地を使って物を作る方が好きなのですが、絵型を描く仕事でした。ここで1年ほど働いた後、以前に履歴書を配っていた先から声がかかり、ものづくりが出来ることから、そこに移りました。

2番目の事務所では2年ほど働きましたが、デザイナーが仕事を辞めることになり、私も別の仕事を探さなければならなくなりました。しかし、イタリアでは仕事を見つけるのはとても大変です。それならば、次の仕事を見つけるためにブランクを空けるより自分で直接やった方がいいのではないか、と考えました。
そこで、まずはウエディングドレスなどをデザインするコンサルタンティングの仕事をフリーで始めたのです。そして、96年にオーダーメイドの店を開きました。これは99年頃まで続けました。

JIBO:デザイナーとしての活動は日本でもできますが、なぜミラノでお仕事を続けてこられたのでしょう?

坪内:まず小さな頃から外国が好きだったことがあるかもしれません。外国に住んでみたいと思っていました。
それから、アパレル業界の体質の違いが挙げられます。日本では"営業"が主体となるのですが、イタリアでは"デザイナーが作ったものを売る"というように、ものづくりが主体です。従って、デザイナー側からすると働きやすい環境にあると思います。日本では雑誌などが作り出すトレンドが先にありきなのですが、欧州はそこまでトレンド一辺倒ではありません。

JIBO:外からイタリアにやって来て自分のお店を開くために必要とされることは何でしょうか?

坪内:コネと我慢だと思います。イタリアというのは特殊な国で、外国人はやりにくい面があります。特に洋服業界では知り合いを持ち、自分なりのイメージや付加価値を出していかないと大変です。私は自分から積極的にどこかに出かけるというタイプではないのですが、時間をかけて少しずつ知り合いを増やしてきました。


JIBO:UPSIDEをスタートされた経緯を教えてください。

坪内:先ほども言ったように96年にオーダーメイドの店を開きましたが、商品を1点作ってそれを自分の店で売るというのは効率が悪いことがわかり、99年に方針を転換しました。量を増やすため、色々な店にアイデアを出してオーダーをもらうようにしたのです。そういったことをしながら資金を作り、2003年に念願だった自分のコレクションを発表しました。リヨン、パリ、ニューヨークの展示会に出しました。

しかし、出展してみて気が付いたことがありました。展示会というのは参加費用は高いけれど、すぐにオーダーが来るわけではなく、オーガナイズがきちんとされていないということです。これは周りの参加者も同じ感想で、私は納得できませんでした。
当時、私はすでにこのトルトーナ通りのスタジオに移っていたのですが、ちょうどPITTIグループの展示会Whiteが近くで始まりました。2002年頃のことです。かなりの人がこのあたりを歩くようになり、注目されるようになりました。そこで、「人が集まるところにいるのだから、自分で展示会を開こう」と思いついたのです。新人が一人でやっても集客できないだろうし、経費の関係もありますので、声をかけて8人のデザイナーを集め、2004年2月に開催しました。この時のイベント名はOUTSIDEでした。

最初は自分のコレクションを出す必要性から始め、こんなに長く続けるつもりはなかったのですが、第1回目が出展者にも来場者にも評判が良かったため、もう少し大きくしてもいいかなと思うようになりました。そして、2回目には出展者が一気に26人に増え、現在まで続いてきたのです。名前も「勢いを付けよう」ということで途中からUPSIDEへと変更しました。

出展費用ですが、大きくなってくるとある程度のプレゼンテーションや宣伝をしないといけないため、昔よりは高くなっています。しかし、それでも他の展示会と比べると3〜4割は安い費用で出展可能です。


JIBO:UPSIDEへの出展デザイナーを選ぶポイントを教えてください。

坪内:どちらかと言うと若手デザイナーを選ぶようにしています。と言っても"学校を卒業してすぐ"といった人ではなく、ある程度の経験を経て独立した人を中心にしています。だいたい30歳以上の人になります。

また、日本の繊研新聞とUPSIDEで"交換デザイナープログラム"を組んでいます。今年の1月に東京で開かれた繊研新聞主催のIFF(インターナショナル・ファッション・フェア)にUPSIDE側からVERIBEAというブラジルブランドを紹介する会社が参加しました。一方、今回のUPSIDEにはIFFに出展した日本のOBSTINACYが招待されました。日本人にはあまりない雰囲気を持ち、それを大切にしたブランドです。日本ではかなり良いお店に入っていて、伸びてきています。彼らにとっては、海外に出ることで日本のお客さんに宣伝になります。それに、海外までやって来るバイヤーは目の肥えた人も多いのです。洋服というのは特にイメージに左右されますから、付加価値を付けるために大事だと思います。


JIBO:今回のUPSIDEの特徴を教えてください。

坪内:今まで出展デザイナーは30人前後でしたが、今回はセレクションを厳しくし、20ブランド余りとしました。その代わり、選りすぐりの質の高いものになっています。やはり、イベントの規模よりも質が大事だと思います。


JIBO:今回は洋服やアクセサリーだけでなく、自然化粧品のDR, HAUSCHKA(ハウシュカ)が入っているのが意外な感じがします。

坪内:洋服というのはライフスタイルを提案するものだと思います。ライフスタイルという大きな枠で見れば食事だってファッションの一部です。洋服だけとは考えていません。ハウシュカもライフスタイルを提案する企業であり、化粧品屋だけでなくブティックなどにも製品を入れていきたいという意向でしたので、私達のやりたいことが一致しました。


JIBO:UPSIDEに出展したいと考えている日本の方へのアドバイスをお願いします。

坪内:ヨーロッパのマーケットは小さく、入っていくのは大変だと思います。日本は大きなチェーン店が多いですが、こちらは小さな店が多い。従って、海外の展示会に出ても、大きなオーダーはなかなか付きません。ですから、こちらで出展しようとする人は、日本である程度の仕事をしていて、体力的にしっかりとオーガナイズできるようでないといけません。一回出てやめるというのはあまりよくないので、続けていかなければなりませんから。

また、こちらで仕事をするにあたって気をつけることとして、日本と比べると支払いが悪いという点があります。特に外国だと手が届きにくい面もあるので、製品を渡す前にお金はちゃんともらったほうがよいと思います。例えば、オーダーをもらった時点で前金を受け取る、そして納品の時に残りを受け取るようにした方がいいでしょう。

出展したいという人とは事前にきちんと情報交換します。無理して参加しても得るところはないからです。出展費用が比較的安いと言っても、現在はユーロ高ですし、日本からの交通費もかかります。


JIBO:最後に、今後の抱負を教えてください。

坪内:UPSIDEと自分のコレクションを作るのと時期が重なるため、現在は自分のものづくりはしていません。しかし、ロスタイムだとは思っていません。UPSIDEをオーガナイズすることで色々な人と知り合うことができますし、展示会の回を重ねることで信頼も出てくると思います。その上でいずれは自分のものを出していければと考えています。

私は現時点ではむしろオーガナイズ業務やアシスタントとして提案するような形で活動したいです。UPSIDEを始めたことで、デザイナー業だけに集中していると見えなくなってしまうことが、第三者の目で見えるようになりました。間違っていたことなども見えてくるのです。ですから、私のような"洋服も作れるオーガナイザー"というのは、出展者にとってもメリットになるのではないでしょうか。

また、展示会というのはある意味無責任なところがあります。もちろん多くのバイヤーが来るように私も動いているのですが、普通に展示会をやっているだけではなかなかお客さんは買ってくれません。そこで、私のスタジオを他のデザイナーのためのショールームとして利用し、個人的にバイヤーとのつながりを作ろうと考えています。展示会を見るだけで終わってしまうのではなく、私のコネや経験などを活かし、ショールームを通して売っていく。「この人が評価するなら間違いない」という信頼関係を作っていけるよう、ショールームに力を入れていきます。

これには、常に新しいものを求める日本サイドのバイヤーにデザイナー情報を提供するエージェント的な役割も含んでいます。イタリアだけでなく外国のデザイナーも紹介したいと思っています。イタリア市場には合わないという人もいますので、そういったデザイナーは日本に紹介することができます。デザイナーにとってはこれまで以上に販路が広がるので、両者にとってメリットとなります。

ですので、今のところはUPSIDEを大きくするつもりはなく、むしろ質を高めていく方針です。そして、もっと新しいブランドが世の中に出ていけるよう、出きる限りの努力をしていきたいと思っています。そのために、UPSIDEだけでなくショールームやエージェント活動を通して、日本の店とのつながりをこれ以上に深め、参加ブランドの洋服が何シーズンも待たなくても短い時間でお店入るように働きかけていこうと思っています。

UPSIDE MILANO ITALY
Takao Tsubouchi
Via Tortona 15
20144 Milano
Tel: 02 8373034
Fax: 02 8373034
E-mail: takao@upsidemilano.com
URL: http://www.upsidemilano.com/


(終わり)

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