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ITALY NEWS
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2004/07/01 



  イタリアの日本人
  GIAPPONESE IN ITALIA  

協和発酵イタリアーナ
Kyowa Italiana Farmaceutici s.r.l.
喜多野  誠一氏
Seiici KITANO
ジェネラル・マネージャー




JIBO:これまでのプロフィールを教えてください。

1963年、大阪の生まれですが、小学校を卒業してからは東京で育ちました。1986年に早稲田大学法学部を卒業後、協和発酵に入社しました。最初の配属は医薬事業本部です。

なお、当社の医薬品というのは、医家向けの医薬品、つまりお医者様の処方がないと買えない薬品を製造販売しております。次に大きい事業部門はバイオケミカル部門です。アミノ酸が中心、医療用途では、栄養補給の点滴剤に使われ、更に工業用途、そして健康食品や、一部には化粧品などにも使われています。また、化学品部門と酒類食品部門があります。酒類食品部門では調味料、イーストなどの発酵製品を主に食品専業メーカーに供給しています。

私は、医薬事業本部に配属後、本社内の法務部国内、同海外、海外企画、)などを転々とした後、1996年にバイオケミカル部門に移りました。ここではアミノ酸を中心として、世界への輸出を担当しました。
そして、1998年にミラノに赴任しました。

JIBO:イタリアでの御社の沿革をお話ください。

協和発酵イタリアーナは、1982年に設立されていますので20年以上の歴史を有することになります。最初は医薬品の販売拠点として機能していました。日本で製造している抗がん剤の販売がスタートでした。この抗がん剤は、40年以上も前に当社で開発されたものです。欧州では主に膀胱がんの治療に使用され、20世紀を代表する抗がん剤の一つであり、現在でも日本はもとより海外で広く使われているものです。その後、91年からはバイオケミカル事業の商品としてアミノ酸の販売を開始しました。

弊社はヨーロッパでは、英国、ドイツのデュッセルドルフ、イタリアに会社を設立しております。英国では抗がん剤を中心とした医薬品の販売と同時に新規化合物の臨床開発業務を行っています。ドイツではアミノ酸事業が中心です。一方、イタリアでは、今申し上げたように、医薬品とバイオケミカルの両部門を展開しております。

イタリアに会社を設立した理由としては、弊社ではもともと、イタリアで発明された抗がん剤、これも20世紀を代表する抗がん剤として長く使われているものですが、これを、ファルマイタリア・カルロエルバ社から輸入して日本で販売していました。
そのビジネスで縁のあった人物を責任者として迎えイタリア法人をつくり、今度は当社で開発した抗がん剤を、イタリアへ輸出してイタリアで販売しようということになったのです。

このような経緯で、イタリア法人が発足したため、協和発酵イタリアーナはイタリア人GMのもと、全員イタリア人スタッフにより約15年間、運営されてきました。その後、売上規模も大きくなり事業規模も拡大したため、1998年にはじめて、日本から私が派遣されたというわけです。日本人として赴任するのは初代になります。とはいえ、現在、協和発酵イタリア-ナの社長は、ドイツ法人の日本人社長が非常勤で兼務しています。そして副社長も以前から勤務しているイタリア人です。私は、ジェネラル・マネージャーの役割を担っています。


JIBO:現在の体制・活動内容はどのようなものでしょうか

イタリアーナ社の体制としては、社員はオフィスが14名で、2人が倉庫にいます。医薬品本部、バイオケミカル部門、総務部門に各一人の責任者を配置しています。売上規模は、2003年末 は約3100万ユーロで、この数年は、3000万―3500万ユーロのレベルが続いています。

事業内容としては、現在ではアミノ酸を中心としたバイオケミカル部門が売上の85%と大きなウエイトを占めています。用途としては、先ほども申し上げたように、点滴用として医薬品メーカーに販売されているほか、健康食品用としての営業にも力をいれています。たとえば、アミノ酸をある比率で配合すると有酸素運動時に体脂肪を燃やし、筋肉増強する機能があり、日本では弊社のアミノ酸を使用した健康食品が市販されています。イタリアではまだこの種の健康食品が販売されていませんので、今後の市場開拓にむけて取り組んでいます。

製品の物流については、医薬品の製品の保管と配送を専門にやっている業者がありますので、医薬品物流についてはすべて委託しています。アミノ酸については自社で倉庫を持ち管理しています。いずれにしても、医薬品もアミノ酸も、温度や湿度などに関し、安定性にすぐれたものだけをこちらでは扱っています。

お得意さんは、イタリア企業やイタリアの病院です。ですから、営業は、通常は営業責任者にまかせていますが、ここぞという時は、私もいくようにしています。順調にいっているときは、彼等にまかせています。

JIBO:アミノ酸事業に力を投入されているようですが。

アミノ酸については、新製品の提案ということで、イタリアの医薬品、健康食品メーカーなどに営業開発をしています。また、アミノ酸については、近隣のスペイン、ポルトガルそして、イタリアの得意とするエジプト、イスラエルなどのエリアもイタリアでカバーしています。そのため、日本からイタリアに製品を輸入しストックを持ち、これらの国に供給しています。日本からそのつど輸出するのではスピーディに対応できませんから。


JIBO:イタリアの医療制度や医薬品業界についてはどのようにお考えですか。

イタリアの医療制度については、個々の医師の技量や水準は高いものがありますが、医療制度全体としてまだ成熟したものではないと思います。特に、医療機器が古く最新のものがまだあまり採用されていません。特色としては、医薬分業が徹底しているという利点がある反面、薬局が保護され過ぎているという印象を得ています。

イタリアの医薬品業界は、上位をほとんど世界の超大手多国籍企業に席巻されており、現在国際レベルでは、イタリア発の医薬品というのはほとんど開発されていません。

先ほど申し上げたイタリアで開発された抗がん剤ですが、これは20世紀を代表するものです。この開発方法は、目の前にある癌細胞を殺すということに集中して開発されたもの。ゼロからスタートして、白紙の上にその点にだけ集中して開発された。それ以前の開発手法に捕らわれない、独創性に優れた製品です。ただ、医薬品に求められる他の機能を或意味度外視して開発された為、副作用があり、投与量に制限があります。
一方、日本やドイツ人のアプローチは違う。それまでの抗がん剤開発の経由を踏まえて、研究していくので、独創性には必ずしも優れていない場合もあるが、開発の効率は良い。無駄がない。また、バランスの取れた製品を開発できる。ただ、現在および、今後の薬品開発システムを考えると、イタリア的なアプローチが成果をあげる余地は少なくなっているように思われます。


JIBO:イタリアで仕事をされて感じられることは

結果が最後までわからない。ビジネスがうまくまわっているかどうかなかなかみえないということを強く感じます。たとえば、認可がとれるといっても、結局最後までたたないとわからない。先がみえない。日本では「フタをあけてみるまでわからない。」という表現をよく使いますが、イタリアでは蓋を開けた程度では何もわからない。底の底までさらってみないとわからない。結果を完全に確認できて初めて最後によかったなと実感がきます。

この国の人たちは芸術家肌といえると思います。個性の強い人たちが多く、なかなか組織で動くにはむかない。この根が深いと思います。教育でも統一性がないのでしょうか。知識水準もまちまちで、解釈にもばらつきがある。組織全体に一定のレベルがない。ですから日本からの戦略を理解させれうのにとても時間がかかります。

また、イタリアの外や世界の出来事に対する関心が低いと思います。世界の中で自分たちがどうみられているかなど関心もない。日本とは極端に違いますね。
ただ、模倣を嫌いオリジナリティを重んじるのはいいのですが、それが足かせとなっている。他の優れたやり方をとりいれていこうという気がないのはどうかなと思います。日本のビジネスマンの場合は、中間層でも、知識として吸収しようという姿勢が旺盛にある。そういう人をこちらでは余り見かけない気がします。

まあ、問題はいろいろありますが、イタリアは市場規模も大きく、市場としての魅力は高いものがあります。

JIBO:イタリアで仕事をされて困ることはどのようなことでしょうか。

抗がん剤にしても他の医薬品についても、当社では、イタリア全国、北から南まで約700の医療機関にサプライしております。抗がん剤については、医者も効能についても副作用についても承知していますし、扱いやすい商品ということで広く使われています。納入先は大半が癌センターや公立の大手総合病院となります。実は、ここで大変困るのは、納品した製品に対する支払いサイトが非常に長いことです。この業界では平均して請求書発行から支払いが300日ほどといわれています。先日も新聞にこの点については記事が掲載されましたが、なんと、支払いに最長600日かかるということでした。弊社では、専任の事務職員を使って支払い催促をするなど、方策をとり、業界平均300日のところを、280日程度に短縮していますが、それでも期間が長すぎて頭の痛い問題です。
これは、弊社の努力でどうにかできる問題ではなく、イタリアの医療制度全体にかかわる問題で、とにかく、事務処理の遅さには、お手上げです。
こういう状態は、日本に説明してもなかなか理解してもらえません。こういう状況があると、正直いって、医薬品市場に進出するのを躊躇する企業が多いのではないでしょうか。


JIBO:初代の日本人としていらしたわけですが、いかがでしたか

ここに日本人がきたことで、本社もイタリアに対する理解が深まったと思います。また、最初の日本人なので先入感なしに、事実をそのままにみることができるので、恵まれていたと思います。

日本とカルチャーが違うので、理解するのに時間がかかります。日本人が間に入って調整しないと、両者にとってとてもわかりにくいことが多い。
たとえば、こちらには、在庫管理という発想がほとんどない。商品がなくなってから、注文して補給する。このイタリア法人でもかなりそういう状態でした。私も、日本にいる間はそのあたり、よくわからなかったのですが、イタリアにきてみると、日本的なコントロールがされていませんでした。それで、在庫管理をして、無くなる前に早めに補給するということを徹底するようにしています。

ただ、イタリアではお店のタナから物がなくなってからはじめて注文をする。どの店でも、それが当たり前なので、消費者もそんなものと思っている。「在庫が切れた」「今注文したところだ」といえば、そんなものかということで通る。イタリアだけでなくその他のヨーロッパ諸国でもかなり似たような環境のようです。ですから、消費者は、いつも在庫がある状態というのが存在することなど考えたこともない。別の見方をすれば、「アローワンス」が広いということになるのでしょうが。

同じことは、製品の欠陥やトラブルにもいえるでしょう。弊社は製造業なのでPLに敏感ですが、イタリアでは、PL訴訟などきいたこともありません。欠品率も高いので、いってみれば、互いにアローアンスが高いということなのでしょうか。

その半面、こちらの人は、前例のないことをやる能力はとても優れていると思います。想定外のことが起こっても、パーツが抜けていても決して立ち往生しない。決断、行動が早い。

社内の会議でも、資料を事前に用意して、目を通してから、会議に臨むということはない。その場でぶっつけ本番。
やはり、風土の違いということを強くかんじますね。

JIBO:プライベートな生活はいかがですか。

家内と4歳になる長男の三人家族に日本から連れて来た猫2匹です。
長男は出産は日本ですが、ずーっとミラノ育ちということになります。現在は、近くにあるモンテソーリの幼稚園に通わせています。ここは教育方針としてもイタリア語のわからない外国人も受けて入れてくれています。日本人は他に3歳の女のお子さんが1人だけ通っています。この9月で通園2年目になります。最初はイタリア語がまるでわかりませんでしたが、現在では、幼稚園ではイタリア語で話しています。両親との会話は日本語だけです。日本語とイタリア語の違いは理解しているようです。また、幼稚園では、英語の先生もいるので、英語という別の体系があることも把握しているようです。とても子供を大切にしてくれていて、息子も元気に通っていますので、この幼稚園にいれてよかったなと思っています。

この国でいい点は、子供に優しい国だということです。動物にも優しいし、素晴らしい面だと思います。"Amore"などと子供を呼んで子供を心から可愛がっている。外国人にもわけへだてないし、子供を大切にしてくれます。この点はとても気に入っています。

JIBO:夏休みはいかがお過ごしですか

会社は、毎年8月には真ん中2週間をクローズとしています。社員は、その前後に交代して2週間程度休暇をとりますので、都合、4週間は夏休みとなります。
とはいえ、私は、赴任後はじめての夏は、会社は2週間休みだったのですが、1週間は会社にきました。ところが、弊社の顧客、メーカーも工場はストップしていますから、電話もなく、何もなく、仕事にならない。それで2年目からは私もいさぎよく、イタリア風に夏休みをとることにしました。

イタリア各地は大方旅行しましたし、近くのスイスやオーストリアにもいきました。今年の夏は、南イタリアのカラブリアに行く予定です。海がとてもきれいなので4歳の子供が砂浜で遊ぶのにぴったりのようですのでとても楽しみです。やはり、今は、休暇はゴルフに行くより、子供と一緒に遊んでいたいですね。


(終わり)

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