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ITALY NEWS
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2003/09/01 



  イタリアの日本人
  GIAPPONESE IN ITALIA  

馬本昌典氏 
(Masanori UMAMOTO)


ダイキンエアコンディショニング イタリア社
代表取締役社長

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JIBO:イタリアは6月から、歴史的「猛暑」が続いていますが、御社の業績も「絶好調」のようですね。

馬本:お蔭様で、猛暑のおかげで、非常に好調です。 昨年4月にミラノに赴任したのですが、昨年6月も猛暑でしたので、2年続きで業績は順調です。皆から「お前がきてから、暑くなった」といわれたりして恐縮しております(笑)。

JIBO:プロフィールを教えてください

馬本:兵庫県、明石市の生まれです。同志社大学工学部卒業後、1983年にダイキンに入社しました。ダイキンを選んだ理由は、それほど有名でなくてよいから、大阪に本社がある地元のメーカーがいいと思ったからです。松下など超大企業に入ると、歯車で終わってしまいそう。ほどほどの規模で、そこそこ自由がききそうと思った次第です。

大阪本社に入社し、海外本部に配属されました。メーカーに入って海外で仕事をするのが希望でした。すでにメーカーが商社を経由しないで直接海外進出する傾向が強まっておりましたので、私にも海外で働くチャンスがあると思いました。

海外本部では、技術部門に配属されました。海外大型ビルの空調関係の技術サポートや見積などに従事しました。ちょうどそのころ、弊社で開発した新しいビル空調システムを海外に出すプロジェクトチームのメンバーになりました。これは、水を使わなくてビル空調ができる画期的な新製品でした。したがって、工事が簡単ですし、水漏れの心配もありません。このプロジェクトで、ヨーロッパ、アジア各国を全部まわる仕事をさせてもらいました。成果も大きく、この経験は、私にとって非常に有意義だったと思っています。

1996年1月に、初めての海外赴任として、ベルギーのダイキンヨーロッパ本社にマーケティング部長として赴任しました。初の海外ということで、張り切ったのですが、ヨーロッパ本社の仕事は、本社の海外本部の仕事と似ていて、今一つおもしろみがない。それで、もっと最前線の現場で働きたくなり、会社に希望をだしたところ、ダイキンフランスの社長として派遣されることになりました。1998年6月のことです。37歳の時です。

このダイキンフランス社というのは、当時、なかなか大変な状況にありました。
1992年に現地総代理店を買収してダイキンフランス社を設立していたのですが、フランス人社員からの反発も大きく、私が赴任するまでの6年間にすでに4人の日本人社長が交替していました。98年6月に赴任し、99年1月から正式に社長となりました。

赴任早々、まず、フランス各地に10ケ所あった営業所をまわってみると、どの営業所もひどい建物で、荒れ果てていました。会社名の表札もはがれていたりして、みじめなものでした。コスト削減ということで投資を徹底的に控え、人の採用もしていなかったのです。営業所に旧式のパソコンが1台しかないような状況でした。

これではいけない、社員のモラルもさがってしまっていると考え、私は、営業拡大路線をとりました。本社を含め全ての営業所を移転・あるいは拡張し、情報化投資も思い切って行いました。そして、新な人材を積極的に採用し、赴任当時、125名だったところ、4年後には、総勢185名になりました。同時に、効率化をはかり財務体質も改善しました。例えば自己資本率は13%から32%にアップし、無借金経営となりました。売り上げも倍となりました。運もよかったと思います。98年にフランスに赴任したのですが、99年の夏はとても暑かったのです。

私の任期は5年でしたので、最後の1年は、のんびりさせてもらえるかとおもっていたところ、2002年の2月1日、イタリアの現地総代理店を買収するから、誰かを送りこまなければならないということになって、私がゆくことになりました。フランスでは前任の社長たちが苦労された後に、私はおいしいところをいただいた観がありましたが、今度は、先輩方の苦労を私がする番となったわけです。

同年の4月3日にミラノに一人で乗り込んできて、4月末に買収が完了し、5月1日に正式に社長となりました。それまでのオーナー社長は年齢も80代となっていて身内に適当な後継者もないため、売却を決心したようです。なお、ちょうど2001年の夏は冷夏で売り上げが15%減となっていたためため、買収額も下り、絶妙のタイミングで買収できました。

JIBO:ところで、イタリアの空調設備市場の特色は?

馬本:イタリアは、ヨーロッパでは一番大きな空調市場となっています。イタリアは、「暑い」地域にあり、人口も5800万、所得水準も高い。われわれは、1200億から1300億円程度の市場規模とみています。第二位がスペイン、3位イギリス、4位はフランスです。これら4ケ国で、ヨーロッパ市場の約70%をしめています。

イタリアの空調メーカーとしては、ディ・ロンギ社が代表的ですが、業務用分野でも数社、地場の主力メーカーがあります。アメリカのメーカーもイタリアに製品工場を置いています。イタリアの空調市場には、イタリアおよびヨーロッパ、アメリカ、日本、中国、韓国など、あわせて64社などのブランドが割拠しており、非常に競争の厳しい市場です。日本の空調市場では、すでに淘汰されていて全体で16社が競争している状況ですので、これと比較してもいかに、多数の企業が入り乱れて競争しているか、ご理解いただけるでしょう。

家庭用マーケットは大きくて、全イタリアでの普及率(一台でもある家庭)は15%程度と推定されています。日本の30数年前と同程度のレベルです。普及率が15%を超えると、ぐんと普及が加速されると期待しています。

JIBO:ダイキンイタリアの業務内容は?

馬本:ダイキンイタリアでは、エージェント制をとっており、エージェントは全国に38社あり、総勢スタッフは200名ほどになります。ダイキン自体の社員は私が赴任した際は78名でした。現在は、125名です。

弊社では、空調設備の販売からアフターサービスまでを行っています。分野は家庭用、業務用、工業用の3分野、すべてをカバーしています。先ほど申し上げたように、イタリアの家庭用市場は、ドングリの背比べ状態です。ダイキンは、家庭用市場において台数ベースで12%程度、金額ベースでは約15%シェアを握っておりトップです。私どもの営業方針は、「安売りはしない」と言う事です。価格は業界の中で最も高いレベルですが、高品質、高級イメージを強く押し出すことで販売を伸ばしております。

お蔭様で、広告代理店の知名度調査によると、ダイキンの知名度は5年前、8%であったものが現在は44%とアップしています。これは、例の「ラクダマーク」広告のおかげのようです。このマークについては、私自身、あまり好きでなく、好き嫌いはあるようですが、知名度を上げるには圧倒的な役割を果たしたようです。

業務用は、店舗、レストラン、事務所などで使用される機器では約20%のシェアを取っております。ただ、劇場、会議場、ホテル空間など大型施設類の空調、これは冷凍機を用いるのですが、この分野ではイタリアのメーカーが圧倒的な強さを誇っていて、弊社は残念ながら、2%と低い数字にいます。これら全部を含めて、業務用でもトップで、金額シェアで約14−15%程度とみています。

JIBO:現場の営業や据付はどのようにおこなっているのですか。

馬本:営業は、各地域ごとのエージェントを使っています。そして、全国の販売・据付工事店を通して、ユーザーへの製品の販売・取り付け工事、メンテなどを実施してもらっています。したがって、エアコンの据付工事を行うスタッフの教育は非常に重要です。お蔭様で、販売が急速に伸びているのですが、設備工事のスタッフが足らない状況です。エアコンは、据付工事が非常に大切で、配管内部に水滴がつくだけで、壊れる原因となります。そのため、据付スタッフの研修を重視し、年間約4千名の教育を行っております。

機械が故障しても、修理が迅速に行えるよう勤めていますが、国柄もあり、日本のように、何もかもきっちりとはなかなかいきませんが。

JIBO:今年は、需要の急増に、在庫が追いつかない状況のようですが

馬本:売り上げ規模は、2002年には1億5200万ユーロが、2003年には、2億ユーロに達する見込みです。特に今年は、年明け早々から、需要の急増に対して、モノが無い、在庫が追いつかないという、予測をはるかに超える嬉しい「誤算」となりました。

ヨーロッパでは、来年1月から、オゾン層を破壊する冷媒を使用する機種の販売が全面禁止となります。そのため、年頭から、早期販売ということで、キャンペーンを張って、他社に先駆けて、オゾン層を破壊しない新冷媒の新型機種をこの年明けから売り出しました。他社の出足は遅かったため、環境対応でリーダー的存在としてのびることができたと思っています。そのため、今年1月―3月の3ケ月間で、前年同期比の2倍以上(台数ベース)という売り上げを記録しました。

そして、この6月からの猛暑です。われわれとしては供給責任がありますので、3月と6月に生産拠点のタイからイタリアまで、「ジャンボ機」を何台も飛ばして空輸することで、急場をしのぎました。消費者の方々からの急増する需要を、各地のエージェントががんばって吸い上げてくれているのですから、このニーズに応えるための費用です。

JIBO:営業は絶好調、何もかも順調のようですが、イタリアでビジネスをしていてお困りになることは何でしょうか。

馬本:一番頭が痛いのは、やはり、販売店からの支払い回収のサイトが長いことでしょう。通常90から120日となっていますが、ともかく、支払いが遅い。なかなか払ってくれない。弊社では、3回督促しても支払わなければ、法的手段をとることにしています。一度、こういうルール違反をした販売店は、前払い入金などをしないと製品は卸しません。そして、現金支払いのインセンティブ強化などあらゆる方策をとって、弊社では、支払い平均サイトを約95日にまで、短縮していますが。商習慣というのはむずかしいですね。

JIBO:フランス、イタリアでお仕事をなさって、感じられることはどのようなことでしょうか。

馬本:経営上で問題と思うのは、両国ともですが、ミドルマネージメントがほとんど存在していないこと。トップマネージメントと一般社員という二極構造で、両者の距離も待遇もあまりにもかけ離れています。経営幹部の給料と一般社員の給料では雲例の差がある。

しかし社員の質という面ではイタリア人やフランス人も日本人もあまり変わらなくなっているという感じもしています。私が鈍感なためもかもしれませんが。いずれにしても人種による差は少なくなっているのではないでしょうか。欧米の人間は、プレゼンが旨い、明るい、外交的、日本は几帳面だが内向的で話しベタというようなステレオタイプの対比がありましたが、両国で仕事をしていると、このような差はあまり感じません。

JIBO:プライベートな生活はいかがでしょうか。

テニスやスキー、ゴルフなど楽しんでいます。
家族は、家内と、中学三年の長女と、中学1年の長男の4人家族です。上はインターナショナルスクールで、下は日本人学校です。

生活は正直、なかなか大変ですね。ビザの問題にも苦労しましたし、イタリアに住んで、感じるのは、食事はいいけれど、住環境がよくないということ。急にきて家探しには、非常に苦労しました。家や設備が古いわりに、値段が高い。現在の家にもあまり満足していません。ブリュッセル、パリと比べてもミラノは相対的に住宅の値段と質の割合がよくないと感じています。

もう一つミラノに住んでの悩みは、蚊が多いこと。蚊によく刺されて、スゴク腫れてしまう。どうしてこんなに多いのでしょうか。まったくお手上げです。それにとっても暑いですし。

(終わり)

6月から猛暑が続き、ミラノの気温がついに気温観測史上、最高温度を記録した8月5日、ミラノ市内のダイキンイタリア本社をお訪ねした。予想通り、猛暑のおかげで売上は絶好調。うらやましい限りである。 お話の中で特に印象に残ったのは、「社員の働き方は、国や人種による差は少なくなっているのでは」というくだり。前任のフランスでもここイタリアでも、買収前からの古い企業体質の変革に体当たりで取り組み、業績をあげてきた方だからこそ、言える発言ではないか。前例にとらわれない行動派国際ビジネスマンの新しいタイプを、馬本氏の姿勢に感じた。聞き手:JIBO編集部 大島悦子

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