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ITALY NEWS
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2002/11/01 



  イタリアの日本人
  GIAPPONESE IN ITALIA  

米田 純三氏
Mr. Junzo Yoneda


Marubeni - Itochu Tubulars Europe Plc
ミラノ支店長 

 

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JIBO:入社されてからのご経歴を教えてください。

米田:74年に伊藤忠商事に入社、以後、今日に至るまで鉄鋼部門の鋼管の営業の仕事に携わってきました。具体的には石油やガスを運ぶパイプの輸出です。クライアントは海外の石油・ガス会社、またはパイプを敷く工事会社です。
海外駐在はリビア、ミラノ、アブダビを経て、今回のミラノ駐在で4度目です。
前回のミラノ駐在時は84年から91年まで7年間おりました。今回は99年に赴任しましたので、現在で丸三年になります。
昨年10月に伊藤忠商事と丸紅の鉄鋼部門がそれぞれ本社から独立合併し、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社として新スタートしたと同時に現職につきました。
伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社では鋼管部門を世界的に運営していくために、海外を大きくアメリカ、ヨーロッパ、東南アジア・オセアニアの三つのコア地域に分け、それぞれの拠点に設立された現地法人がプリンシパルとしてビジネスを行っています。当社Marubeni - Itochu Tubulars Europeはそのヨーロッパ拠点にあたり、本社はロンドンにあります。

JIBO:ミラノに二度目のご駐在ということですが、具体的にはどのようなお仕事 の関連なのでしょうか。

米田:イタリアは昔からペトロケミカル産業が発達しており、ENI(炭化水素公社)の傘下にはガス公社SNAM、エンジニアリング会社Snamprogetti、工事会社SAIPEM、石油会社AGIPなどがありこれらの会社は皆パイプの重要なクライアントです。イタリアのペトロケミカル産業は世界的にも存在力が大きく、例えばSAIPEMは海底パイプライン敷設の技術力においては世界でナンバーワンを誇ります。
今回の駐在は、ロシアからトルコまで約400キロにわたり黒海の海底をクロスしてガスをパイプラインで供給するプロジェクトにおいて、パイプラインを建設するSAIPEMより約4億ドルにおよぶパイプのサプライ契約を受注しましたので、その契約のフォローが主目的でまいりました。これは三井物産、住友商事、伊藤忠商事の三商社が共同で受注した案件ですが、幹事役が伊藤忠で、私が代表としてほぼニ年間におよぶサプライ契約のフォローをしておりました。当契約は約一年前に完了し、現在はその後新しく受注したAGIP向けのサプライ契約を履行しています。

日本で作られたパイプはマレーシアで内・外面に防錆用の塗装を施された後、最終仕向け地まで輸送されます。日本のパイプメーカー、マレーシアの塗装業者、またはリビアやロシアのガス公社などを始めとするパイプラインのプロジェクトオーナーとの交渉のために年間の四分の一ほどは出張しています。

JIBO:日本の鋼管は国際的にかなりの競争力があるのでしょうか。

米田:日本製の鋼管は非常に品質が高く、そのクオリティーは世界一です。クライアントにも、日本製のパイプといえば安心感を持ってもらえます。たとえば黒海横断パイプラインプロジェクトは世界で初めて2000メートル以上の深海にパイプラインを敷くものですが、海底の泥に硫黄のような腐食力の高い物質が多く含まれているために、これまでに誰も作ったことがないような、厚く、耐蝕性の高い特殊パイプが要求されました。そのような難しいパイプを敷設するにあたり日本のすぐれた鋼管技術が認められ、新日鉄、日本鋼管、住友金属、川崎製鉄の4 社の鋼管メーカーが製造しました。

JJIBO:最近とくに力を入れられているのはどのような分野でしょうか。

米田:現在中近東、アフリカ、カスピ海沿岸等々、パイプラインの案件が目白押しです。それらのほとんどのプロジェクトにAGIP、SNAM、Snamprogetti、SAIPEMなどのイタリアのエネルギー関連の会社がからんでいます。彼らが案件を受注するとなれば、われわれにとっても大きなチャンスですので、実現に向けて動いているそれらのさまざまなプロジェクトの進捗状況を常にウオッチしながら、いかにクライアントを満足させるパイプのサプライができるかと、積極的にビジネスを仕掛けています。

パイプは大きなプロジェクトにかかわる商品ですので、ビジネスも必然的に長期的な視野にたったものになります。通常、契約受注にいたる2〜3年前からプロジェクトを追い始め、どのようにしたらクライアントのニーズを満たせるのか、案件ごとにスタディをしながらクライアントに提案していきます。例えば、ファイナンスをつけたほうがいいのかとか、プロジェクト全体のコストを下げるために通常12メートルもののパイプを3〜4本つなげてサプライしようか、とか。実際 に買ってもらうまでにとにかくいろいろと動かないといけないビジネスです。

JIBO:ガスや石油は現代の生活になくてはならないエネルギーですが、それらが消費者の手に届くまでには、実はいろいろなご苦労があるのですね。ちなみにわれわれが普段台所で使っているガスはどこから来るのでしょうか。

米田:イタリアのガスはアルジェ、ロシア、北海からのものです。アルジェからのガスは地中海を横断するパイプラインを通ってきます。これは20年ほど前に実現されたプロジェクトで、日本からもパイプが納入されています。
ガスを直接消費地までパイプラインで運ぶ方法以外に、ガスをマイナス200度以下の温度に下げて液化した上で、冷凍船で消費地まで輸送し、消費地で再び気化して使用する、という方法があります。例えば現在日本で使われているガスはほとんどがこの方法で輸送されたものです。ただし、液化プラント、冷凍船の建設費、輸送費、気化プラントの投資コストを考えると、2000キロ程度までの距離であれば、パイプラインを建設したほうがコストが安いと言われています。
現在サハリンから日本までの2000キロの行程にパイプラインを敷いてガスを運ぶプロジェクトが計画中で、これには伊藤忠/丸紅グループも参画しています。

JIBO:イタリアでビジネスをなさっていてとくに感じられることはありますか。

米田:われわれのクライアントは半官半民、または元国有の大会社です。イタリア国内でも自国の官僚組織の硬直性、非効率性、腰の重さに対してはしばしば自己批判がなされますが、その官僚的な組織とのやりとりに苦労することが少なくないのは正直なところです。
複数の事業主体がかかわる大きなプロジェクトでは、誰も予想をしていなかった事が起きることが多々あります。とくに今回の黒海を横断するプロジェクトでは、これまでに前例のないサイズ、重さ、素材のパイプを扱いましたので、溶接またはその他の局面で想像もしなかったようなトラブルが生じました。このようなトラブルをいかに解決していくかがプロジェクトを成功に導くための重要な仕事ですが、その際にクライアントが非常に硬直的であったり、決断をなかなかとらなかったり、ということがあると、プロジェクトの遅延を始めとする新たな問題を引き起こしかねません。したがって、ややもすると責任の所在が不明確になりがちで、機敏な対応に欠ける大組織を相手に、問題の発生および対応策に対していかに柔軟に対応し、Timelyな結論を出してもらうかということにかなりのエネルギーを費しました。
また西欧で契約社会というのは当たり前の話ですが、一旦トラブルが発生すると、日々の口頭でのやり取りで済むような話にいたるまですべてを文書化しておかないと後になって問題が生じかねないほど徹底しており、ずいぶんと神経を使わされることもあり ました。

JIBO:イタリア人は概してフレキシブルで大まかである、という一般論がありますが、官僚組織となるとやはりまたカルチャーが違うということですね。

米田:そうですね。仕事を通して「イタリアの知らなかった一面を見た」という気がしています。それでも、仕事の上ではやりとりでいろいろと苦労したクライアントと夜一緒に食事をする機会があると、当たり前ですが、そういう席では彼らはとても感じの良い、ごく普通のイタリア人なのです。仕事は仕事、プライベートはプライベートときちんと分けるイタリア人らしいところですね。ですので、彼らとスムーズに仕事をしていくためには、官僚的な組織の商慣行、組織内のロジックなどについてこちらが事前によく理解した上で日常の業務を進めていく必要があるということを改めて実感させられました。

JIBO:こちらでの生活はいかがでしょうか。

米田:イタリアには通算10年の滞在になりますので、もう第二の故郷のようなものです(笑)。家族は妻、社会人の息子、娘、そして犬がおります。先ほども申しましたが、年の四分の一は出張、そして残りの四分の一は来客で私は家にはほとんどおりませんし、妻は年老いた犬の世話もありますので、今回は単身で赴任しています(笑)。
週末は出きる限り一日はゴルフに行くように努めています。ゴルフの腕のほうはなかなか上達せずフラストレーションを感じるのですが、ミラノから車で一時間ほどのゴルフ場から壮大なアルプスの山々を間近に眺めることができ、また、きれいな緑に包まれて、非常に気持ちの良い時間を過ごせます。食事は和食党です。出張、来客をのぞくと一週間のうち1人で食事できるのは一度くらい。そういうときには、行きつけの日本食レストランに行って和食をつまみます。

こちらでの生活が長くなりますと、イタリア人の当然いい面も、よくもない面も見えてきます。とんでもない個人主義に苦労させられることもありますが、ひとりひとりが自分というものをしっかり持っていて、かつ素直に自分を外に出せるのは、日本人にないイタリア人の良さではないでしょうか。
短所をみていやがったり嘆いたりするのではなく、彼らの長所をしっかり両目で見て、イタリアを好きでいられるようにと日々心がけています。これは仕事においても同じことが言えると思います。外から見て、「イタリアが好きで、がんばっているな」ということが伝わってくれば結果も違ってくるのではないでしょうか。好きにならないと、いい商売もできないということかもしれません。

(終)

鋼管の営業という、とても商社マンらしいお仕事をなさっている米田さん。年間 の四分の一は出張というハードワークをたんたんとこなされているのは、学生時 代、ご出身である北海道で何本の指に入ったという軟式テニスで培われた体力が ベースにあるのでしょう。「好きにならないと、いい商売もできない」という言 葉が印象に残りました(JIBO編集部)。

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