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ITALY NEWS
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2002/10/01 



  イタリアの日本人
  GIAPPONESE IN ITALIA  

立元義弘氏
Yoshihiro Tachimoto


パナソニックイタリア株式会社 社長

 

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JIBO:入社されてからのご経歴を教えてください。

立元:1980年に松下電器貿易に入社、6年間欧州貿易を担当した後、1986年11月にパナソニックイタリアに赴任しました。今年でイタリア赴任16年目になります。当初はヴィジュアル・プロダクトのプロダクト・マネージャーとしてマーケティングを担当しておりました。90年に営業所の立ち上げのためにボローニャに一年間転勤いたしましたが、その後再びミラノに戻り主に営業を担当しておりました。2001年4月から現職につきました。

JIBO:イタリアに16年間…!海外赴任で一つの地にそれだけ長期に勤続されることは珍しいのではないでしょうか。

立元:そうですね。私は大学でイタリア語を専攻したということもあって、ゆくゆくはイタリアとのビジネスの関連で仕事をすることになるだろうということは考えてはおりました。ですので、イタリア赴任は本望といえば本望だったのですが… 結果的に今年で16年目になりました(笑)。

JIBO:すると、普段のお仕事もイタリア語でなさっているのでしょうか

立元:社内の公用語は英語ですが、イタリア人社員と個別にコミュニケーションする場合にはイタリア語でしています。

JIBO:パナソニックイタリアの沿革を教えて下さい。

立元:設立は1980年4月、今年で23年目になります。本社はミラノ、営業所がローマにあります。イタリアには生産拠点はありませんので、輸入販売が主なビジネスです。輸入先はヨーロッパを始めとして、日本、東南アジアなどです。主力商品は音響、映像関連商品、エアコン、通信関連商品などで、2001年度の総売上高は4億ユーロです。

JIBO:イタリアのマーケットには、なにかイタリア人らしいといえるような特徴はあるでしょうか?

立元:あくまでも私見ですが、良い意味で「ええかっこしい」イタリア人の国民性とでもいえるような傾向がマーケットにみられるように思います。具体的に言うと、「人の持っていないもの」、「人に見せびらかせるもの」が、他国と比べてイタリアでの売り上げがよいというケースが過去に何度かありました。例えばしばらく前の話になりますが、37インチの大型画面のテレビを売り出したとき、高価格であったにもかかわらず一番売れ行きが良かったのはイタリアでした。また、デジタルビデオを売り出したときにも、当時ビデオとしては破格の高価格でしたが、これもイタリアでの売行きが一番よかったのです。

JIBO:現在社員は何人いらっしゃるのでしょうか。

立元:従業員が200名、エージェントが100名おります。従業員は、9名が日本人駐在員で、あとは全員イタリア人です。当社は現地化を積極的に進めており、イタリア人のマネージャーも多数おります。結果的に社員の定着率も良好です。一方で日本人の駐在員数は当初と比べてほぼ半数に減りました。今後も現地化をさらにすすめていくために、イタリア人の管理職育成に努めています。

JIBO:社内に松下幸之助氏の経営理念が張り出されているのをお見受けしましたが、これはイタリア人社員の間にも浸透しているのでしょうか。

立元:創業者の志は松下電器の経営のバックボーンですので、社員教育・OJTなど、種々の機会にこちらの実態に適応させた形や例で社員に伝えるようにしております。また経営理念と申しましても、たとえば「社会の発展の役に立つ」や「お客様第一」など、普遍的なことですので、現地社員にも非常にすんなりと受け入れられているようです。

JIBO:最近とくに力を入れられているのはどのような分野でしょうか。

立元:フラット管テレビ、プラズマディスプレイテレビ、液晶テレビ、DVD機器などのデジタル技術関連の映像、音響製品です。これら当社のコア・コンピタンスである商品の売上げをいかに伸ばしていくか、ということです。もう一つはソルーションビジネスの拡大です。これは官公庁や法人市場向けですが、主にコピー機、ファックス、などのビジネスドキュメント関連、またはセキュリティ関連の分野で、個々のお客様のニーズにあわせ、システムの構築からシステムアップ、メンテナンスまで、総合的なシステムソルーションを提供しています。これまで銀行や、最近ではバチカンにも納入しました。

JIBO:世界的な景気の低迷が長引いていますが…。

立元:残念ながらイタリアも例外ではありません。販売が伸びないので、価格競争が激しくなっています。その結果、たとえ販売数を維持しても単価が下がっているために売り上げは下がります。新商品、新ビジネスを伸ばしていくことによって、その部分を補い、また全体として業績を伸ばしていくように努めています。

JIBO:イタリアでビジネスをなさっていてとくに感じられることはありますか。

立元:一番大きく感じるのは、日本人とイタリア人とのコミュニケーション方法の違いです。これはイタリア人に限らず欧米人に一般的にある傾向なのかもしれませんが、とにかく議論好きで、自分の意見を強く主張します。最後まで人の話を聞かずに自分の意見をさしはさむこともしばしばで、これまで何度「最後まで話を聞いてくれ!」と懇願したことでしょうか(笑)。この、彼らのコミュニケーションの仕方に適応するまで少し時間がかかりました。

もう一つ感じるのは、日本人とイタリア人の柔軟性と時間に対する感覚の違いです。日本人はとにかく最初に計画をきっちり立てて、その計画通りに正確に物事を進めていきます。一方、イタリア人はその反対で、最初にすべてを計画することなく、ものごとを進める中で、諸状況にフレキシブルに対応していきます。ふたを開けてみれば双方の仕事の結果は同じか、またはイタリア人の仕事の結果のほうが創造性が高いという点でより素晴らしい、ということもあるのですが、日本人としては、イタリア式の仕事の進め方にはらはらさせられることも少なくありません。かといって、イタリア人に日本人の仕事の進め方を押し付けても受け入れられません。創造性と柔軟性を求めるイタリア式の仕事の進め方と、日本の計画・管理式の仕事の進め方のバランスをうまくとりながら一緒に協働していくことが常に求められると思います。

また、実際こちらで仕事をする中で、イタリア人はビジネスにおいてもヒューマンな要素をとても大事にするということを感じています。たとえば大きな商談がまとまったときなど、直接プロジェクトにかかわっていなくても、イタリア人スタッフは非常に喜んでくれます。そのようなとき、成功を共に、心から分かち合うことのできる仲間であると実感します。

JIBO:イタリアでの生活はいかがでしょうか。

立元:食べ物も美味しいですし、楽しく生活しています。ただ、ふだん家で食べるのは和食ばかりです(笑)。家族は妻と二人家族です。妻もこちらでの生活をエンジョイしています。休日は日帰りでコモ、レッコなどに行き、二人で山歩きをして過ごすことが多いです。ミラノは1〜2時間で山にも海にもいけますので、そういう点では恵まれていると思います。 夏休みはドロミテ山群に二週間滞在し、きれいな空気をたっぷりと吸い、雄大な景色を楽しんできました。ドロミテには4、5年前に一度訪れてからその魅力のとりこになり、以後毎年夏はドロミテで過ごしています。 16年間の滞在中、イタリアはほぼ全州を訪れました。ご存知の通り、イタリアは各州、各町それぞれが非常に個性的で、どこに行っても楽しむことができますが、個人的にはシチリア、または中部の田園風景の美しいトスカーナやウンブリア、そしてなんといってもドロミテがおすすめです。 イタリアは日本人にとって非常に親近感を持てる国ですが、国と国との付き合いはまだまだ少ないように感じています。今後、二国間の付き合いのパイプがより太くなっていくことを期待しています。これはもちろんビジネスもそうで、イタリアのマーケットのポテンシャルはまだまだあると思いますので、今後ますますがんばっていきたいと思います。

(終)

「創造性と柔軟性を求めるイタリア式の仕事の進め方と、日本の計画・管理式の仕事の進め方のバランスをうまくとりながら一緒に協働していく」には、相手のことを理解しようとする謙虚さと、こちらを理解してもらうための努力が必要。16年という長きに渡るイタリア駐在にもかかわらず、非常にソフトで奥ゆかしいのは、立元氏がつねにそのような努力をされているから、とお見受けしました。(JIBO編集部)

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