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ITALY NEWS
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2001/05/01 
 
  イタリアの日本人 
  GIAPPONESE IN ITALIA  

小南 重治氏
Shigeharu KOMINAMI


Makita Spa  (マキタ(株))
代表取締役社長

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JIBO:プロフィールを教えてください

小南:大阪外語大学のイタリア語科在学中に、同科の同級生からマキタという会社が、イタリア語科卒業者 を求人していることを教えてもらったのが入社のきっかけです。それならと思って応募し、1973年 4 月 に(株)マキタ (当時社名:マキタ電機製作所)に採用されました。

最初は、東京支社輸出課に配属されました。1年後の1974年 4月大阪支社輸出課に転勤。そして、 1975年 3月イタリア販売現地法人 Makita SpA にアシスタントマネージャーとして出向しました。そ の後、81年末、ローマ支店設立準備のため、ローマ支店に移った後、1983年 6月Makita SpA社代表取 締役に就任、現在に至ります。 75年にイタリアに来て以来、今年で、26年になります。こんなに長くなるとは当初思ってもいません でした。

JIBO:御社についてご説明ください。

小南:(株)マキタは、1915年 3月に、電動モーター製造会社として名古屋で創業されました。 その後、モータ-類だけではなく、完成品メーカーになりたいという経営者の強い意志で、1958年よ り電動工具(電動カンナ)の製造販売を開始しました。電動カンナでは日本産の第一号とされていま す。90年代にドイツ製の園芸工具メーカーを買収し、園芸工具のジャンルにも進出しました。現在 は、電動工具、園芸工具、エアー工具の製造販売メーカとして、活躍しています。現在、本社は、愛 知県安城市にあります。

日本の電動工具市場では、当社がシェアートップメーカーとなっています。電動工具は、プロ用とDo it yourself の両市場がありますが、弊社はプロ用市場にしぼっており、世界レベルでは、プロ用の 電動工具に限ると、第二位のシェアを持っています。DIYの分野では、最近、中国製の安価な製品 が入っており、市場に危機感を与えています。プロ用は、まだ中国製の進入は少ないのですが、弊社 製品のまったくの「ニセモノ」もでてきていて、頭を悩ましているところです。

弊社グループの従業員数は約 8,000名 (内日本国内 3,000名、海外 5,000名)で連結売上高は約 1, 500億円強です。 海外生産工場は、カナダ、米国、ブラジル、英国、ドイツ、中国 の 6ヶ所にあります。海外販売法 人は70年のマキタ米国を皮切りに、71年フランス、72年英国、73年 オーストラリア・カナダ、74年 にオランダとイタリアに現地法人を開設し、現在は、世界主要国に34社程あります。

JIBO:イタリアの会社について概要や仕事内容を教えてください

小南:イタリアマキタは、1974年 4月に電動工具等のイタリアでの販売会社としてミラノに設立されまし た。

75-76年当時は、弊社製品は価格競争力が強くありました。また、こちらのメーカーも、あまりアグ レシッブではありませんでした。品質的にもプロむけの商品でシェアを伸ばしました。その後、こち らのメーカーも価格的に競争力を持つようになってきました。

弊社の場合、製品は輸入に頼るという性格上、リラ安、円高となると、価格的には弱い部分がありま す。そのため、当社はプロ用の市場をターゲットとしている為、価格訴求型ではなく、商品の質と サービスで商売することを基本方針としています。プロの方は、毎日使う道具ですので、信頼感が大 切ですし、必ずしも価格ではなく、修理やサービスの質がものをいいます。それに応え得る製品の開 発・生産・販売・アフターサービスに絶えず注力してきた事と顧客(販売店)との信頼関係を大切に してきた事とがイタリアで成功した大きな要因と思っております。

弊社の製品のセールスポイントはというと、技術的には、バッテリー型、つまり充電型の電動工具を 早くから市場にだしたことだといえましょう。20年前からコードレスの電動工具をを発売しており、 現在では、30%近くをしめています。嬉しいは、イタリアの見本市会場で、ブースやスタンドの設営 作業をみていると、業者の方々、ほぼ全員が、弊社のコードレス工具をつかっていてくださることで す。

大事にしているのは、プロのユーザーの方に新しい製品や技術についての実際に触れてみて知ってい ただくことです。その上でも、見本市出展は大変重要です。毎年10月にボローニャで開催されるSAIE に出展しています。プロの大工さん、建設業者、水道工事関係、販売店などの方が主なビジターで す。

一方、園芸・農機具関連では、やはり、ボローニャで開催される見本市EIMA(農機具・トラクター) に出展しています。

従業員 76名 (2001年 4月現在)。日本人は、私と若いスタッフが1名の計2名です。売上高(年 商)は約 1050億リラ です。

JIBO:25年間の仕事をふりかえって

小南:私が赴任したのは、設立後1年たたない75年春です。会社の設立は、今申し上げたように74年です が、実際に活動が始まったのは75年に入ってからです。私自身、大学卒業後、わずか2年の日本での 職場経験でイタリアに赴任したことになります。

大学の4年先輩が社長で、営業や経営全般をみており、私はそれ以外のオペレーティブな面での社内 の体制づくりに走り回りました。そのため、赴任早々、スタートから何からなにまでやらなければな りませんでした。イタリアの事情になれない、まだ25歳の私には大変でした。輸出入事務、入出荷管 理、棚卸、在庫管理、アフターサービスで機械の修理までこなしました。日本で修理についても研修 を受けていましたので。

今思うと、すべてゼロから作り上げる事に関与できたのは、大変な勉強になり、そういう機会を与え られたのを大変有り難く思っています。その後も弊社では、現地法人ではトップと若いスタッフが日 本人という日本人二人体制が概ね、とられていますが、最近だと、体制も整備されていて楽な反面、 若いスタッフがこういう経験ができないのは残念な気もします。

私が社長に赴任したのは、83年6月ですが、その最初の決算で、損失をだしてしまいました。折りし も、リラ安が進み、日本からの輸入コストはあがってしまった時期で、為替差損を計上し、赤字決算 ということになってしまいました。社長になってしょっぱなのこの結果で、大変苦しい思いをしまし た。

経営改善のため、社内のリストラを決行し、自分で立ち上げたばかりのローマ支店を早々に閉鎖とい う決心をしました。5-6名の従業員を解雇せねばならず苦しい決断でしたが、黒字にするには、採ら ねばならぬ処置でした。我々の規模の会社では、支店を持たなくても、本社を拡充すれば充分と判断 し、本社屋をそれまでより大きなスペースの所に移転し、拡充するという政策をとりました。その後 は、お蔭様で順調で、90年末には、自社屋を建設するまでに至りました。

JIBO:営業やアフタ-サービスなどの体制は

小南:弊社の製品は、主として、ウテンシレリアUtensileria、 フェラメンタFerramenta と 呼ばれる金物 工具専門店で販売されています。

現場での営業活動は、主力の電動工具については、現在は全国に25名いる地域別のレップ (Rappresentante)と呼ばれる契約制営業マンにまかしています。当初は、南部はレップにまかし、イ タリア中部、北部は自社セールスマンをつかっていました。しかし、今申し上げた1985年のリストラ の時期に、社内営業マンを廃止し、すべてレップ体制に変更しました。 日本の方は、本社が統括する自社セールスマンに比べ、契約的なレップに営業をまかすことに不安や 驚きをを隠さない方が多いのですが、イタリアの事情を考慮すると、レップをうまく使うことが得策 とこれまでの経験から確信しています。

第一には、こちらでは優秀な営業マンほど、社員としてではなく、独立して、「レップ」として自営 業として働くことを望む体質があります。小さくても自分が大将であることを好むのです。そして、 レップは、仕事に強い誇りを持っています。

確かに、レップの場合は、弊社だけではなく、他企業のレップもしていますので、(商品分野は別で すが)うちだけにエネルギーを注いでくれるというわけではないという欠点があります。しかし、経 験が豊富であり、地域の販売店などお客を知り尽くしているという大きな長所があります。

第二に、そして何よりも大事なのは、自社セールスマンの場合は、自分の会社の都合で動きますが、 レップの場合は、お客さんを第一に仕事をすることです。レップの財産は地域の販売店です。信用を なくしたら、すべてをなくすことになりますから、メーカー側のエゴが通用し難いとも言えます。長 い目でみて、お客さんのためになる仕事を、彼らはする必然性があるわけですから、会社側として も、地域地盤を持っている信頼のおけるレップに働いてもらうことは、地域での信頼を獲得する上で 大きな力となります。 なお、現在のレップの6-7割は創業以来からの人で、元、弊社のセールスマンだった人も少なくあり ません。定着率は非常に高くなっています。

さらに、イタリア中に保証修理などのアフタ-サービスを行う契約修理店が140ケ所、又サービス ディーラーが500軒近くあります。

JIBO:現在、力をいれておられることは何ですか

小南:1999年 4月に子会社としてギリシャに販売会社(Makita Hellas S.A.)を設立しました。現在はそ の組織・営業基盤の確立と発展に力をいれています。最近、弊社グループでは、比較的マイナーな市 場(国)については、近くの主要現地法人が支店や子会社(親会社から言うと孫会社)を設立する等 して、販売網を強化するという方法も採られています。

もう一つ強化しているのは、色々とあるプロ市場(ニッチを含む)に更に細かくアプローチできる体 制造りです。

弊社は電動工具の総合メーカーですが、電動工具といっても、建築、木工、石工、金工、工場用工 具、自動車板金修理など、いくつもの分野に細分化されます。それぞれの小さな分野でも強いメー カーになることが大切だと思っています。それには、広く浅くということではなく、それぞれのプロ 市場において、深く掘り下げて入っていくことが必要であり、そのマーケットごとの必要に応じての 製品開発もかかせません。また、今ある製品でもアプリケーションを別途つくっていくことも必要で す。そうして開発した個別の特化した工具やアプリケーションを今度は、最終ユーザに知ってもらう ためのアプローチも大切です。

最近、特に力をいれているのは、工場用の工具です。これらは、従来のような地域の工具専門店など のルートでは対応できません。工場用のアプリケーションモデルを開発し、工場のオフィシャルなサ プライヤーになる必要があります。それには、工場の生産技術部門にアプローチし、調達部門を通し て発注してもらわなければなりません。最近はフィアットなどの自動車やトラックメーカーの工場に も使ってもらえるようになっています。

新しいアプリケーション等を、日本本社にもフィードバックしています。 ともかく、ニッチ市場や、中国メーカーなどとの差別化の為には、ユーザニーズに対するきめ細かい 対応ができること、深い専門性が必要となっています。

JIBO:イタリアで仕事をして難しさを感じている点は

小南:人を使う難しさというものをとくに感じています。従業員がそれぞれに遣り甲斐を持ってやれる会 社・職場作りを目標にしているのですが、これがなかなか難しく、世界中の企業の永遠のテーマと思 われます。とくに個人主義の強いイタリア人社員間の仕事上での確執やセクショナリズム等、もっと もこれは日本でも同じかもしれません。自分の与えられた職責は非常に大切にするのですが、なかな か全体をみれないところがあります。イタリア人は自分の意見をはっきり言うのは良いが、他人の意 見を良く聞かず、感情的になり易い事が欠点。 イタリア人は自分や自分の部署の利害を優先する傾向が強く、社内部門間の協調が欠け易い。会社の 会議でも、なるべく社員に話させるようにしていますが、いろいろな意見がでるばかりで、なかかな かまとまりません。まあ、イタリア人の場合は、考えをはっきり言ってくれる点分かりやすいとも言 えますが。

JIBO:やりがいを感じられるところは

小南:日本の企業の一販売子会社ですが、細かい事には口出しをしない親会社の企業風土みたいなものが有 り、良いと思った事は失敗をあまり恐れずにやれる環境に遣り甲斐を感じています。また、それだけ に経営トップとしての責任の重さも認識しております。

本社との関係は、現地法人によく任せてくれていると思います。そもそも、最初は、外国のことは、 行って頑張れば何とかなるという姿勢でした。考えてみれば、設立当初は、社長も30歳そこそこ、私 も20歳代でした。こんな若いので大丈夫かと思っていたことだと思います。現在も、あまり細かい事 は言われません。ありがたいことだと思います。

JIBO:イタリアでの生活について

小南:74年に結婚し、早々にイタリアへの赴任となりました。家内は、当初は、環境は違うし、夫は会社で 走り回っていて、一人でさびしい思いをしたと思いますが、その後は、問題なく生活を楽しんでくれ ています。子供はいませんが、赴任早々、犬を飼い、1990年に天寿をまっとうするまで、14年半、家 族の一員となりました。 夏休みは会社は2週間しまりますので旅行やドライブなどを楽しんでいます。

私は、スキー、テニス、ゴルフ等、いずれもイタリアに来てから始めましたが、日本におれば、こう はいかなかったと思います。スキーは1978年から始め、やみつきになりました。一方、テニスは、 1984年からで、家内と二人で始めました。日曜は毎週、テニスをしています。ゴルフは比較的遅いの ですが、3年程前に本格的(?)にやるようになりました。これも家内と一緒です。したがって、土曜は ゴルフ、日曜はテニスで汗を流すというのが週末のライフスタイルです。 いずれにしても、短い人生、エンジョイして過ごす事にしております。個人あっての仕事、それがこ ちらの生活で学んだことです。

(聞き手 大島悦子)




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