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ITALY NEWS
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2010/9/30 


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イタリア<食>イベント・見本市事情
第2回 ピッツァに関する多彩なイベント


文/写真 山本薫

1.ピッツァ

世界中で愛されているピッツァ。オトナもコドモも大好き!

ピッツァはイタリアのナポリが発祥の地だといわれている。現在のピッツァに近い元祖ピッツァ「マストゥニコーラ」(ラード、バジリコ、チーズのみで作られたもの)が誕生したのは1660年頃。トマトを使った最初のピッツァ「マリナーラ」の誕生は1750年頃。ピッツァの代名詞とも言える「マルゲリータ」は1889年に誕生した。 
イタリアではピッツァに関するイベントや大会などが各地で開催されている。開催の意図や、ピッツァがこれだけ注目されて集客できるのはなぜなのか考えながら、各イベントについて主催者側・参加者側からの視点も含めて紹介していこうと思う。 
焼きたてのピッツァマルゲリータ

2.Pizza-Festivalと第9回ナポリピッツァ職人世界選手権: ナポリ近郊ノーラ

連載の第1回目でも少し話題に触れた、5月末にナポリ郊外のノーラで行われたナポリピッツァ職人選手権は「カプート杯」とも呼ばれている。ナポリの多くのピッツェリア、パスティッチェリアで愛用されている小麦粉を生産している「カプート社」。常に研究・分析を重ねて用途に合った小麦粉を作り出している製粉会社だ。

表彰式の前に参加者全員で記念撮影-写真:主催者より提供)  同選手権に優勝した牧島昭成さん

ナポリピッツァ職人組合が主催するこのピッツァフェスティバルは 5日間開催され、薪窯を備えた 15のブースには組合に加盟している有名ピッツェリア(ラ・スパゲッタータ、スタリータ、ソルビッロ、イル・プレジデンテ等)が並び、ここぞとばかりにお目当てのピッツェリアの味を一度に堪能することができる嬉しいイベントである。この期間中に開催される世界選手権は初日の2日間に行われる。もちろん真剣勝負の厳粛なものだが、場を盛り上げることは大得意のナポリ人、軽快なトークの司会やコミカルなミュージックが始終流れてお祭りのような大騒ぎである。

フェスティバルと世界選手権のスポンサーになっているカプート社のアンティモ氏に話を伺った。

<ピッツァがこれだけ有名になった理由は>

まずピッツァと言えばナポリである。他のピッツァにはないコルニチョーネと言われる縁の部分がふっくらして弾力がある(日本では「もちもち」といった表現が使われている)といった独特の特徴がある識別のしやすさ。モッツァレッラ、トマト、といったカンパーニア州の特産品を使っているという郷土性。少ない原材料で作られるシンプルさ、軽くて、健康に良いという点であろう。

カプート社のアンティモ氏や、ナポリの巨匠ピッツァイヨーロ達の話をまとめると

<つまりピッツァとは>

実はピッツァは庶民の食べ物であった。これ1枚で栄養もボリュームもある。貧しさゆえに生まれた食べ物である。こういった背景により庶民の間で大流行したこのピッツァ、なんと上流階級の貴族達にも大流行、しかし庶民と一緒に食べるなんてもってのほか、隠れてピッツァを食べていたそうだ。さらに驚くことにナポリのカポディモンテの王宮にはピッツァを焼く薪窯まで作られていた。ナポリを訪問したマルゲリータ女王が庶民の食していたピッツァを所望し、献上されたピッツァを絶賛したところからピッツァマルゲリータと呼ばれるようになったのは有名な話だ。ピッツァは歴史・慣習・文化を象徴、表現している。料理の背景には文化がある。この郷土料理ナポリピッツァは、申請から8年もの歳月を経たものの、晴れて2009年12月に「マルゲリータ」と「マリナーラ」がSTG(伝統的特産品保証)の認証を受けた。

<カプート杯という選手権は>

「ピッツァイヨーロ(ピッツァ職人)」が腕を競い合う選手権である。ピッツァはピッツェリアではなく、ピッツァ職人が作るものだ。職人の選手権を催すことで、ナポリピッツァの職人を応援し、職人の重要性を確認させる目的がある。国籍を問わず参加可能で、9回目になる今年は世界各国から150人もの職人が参加した。そのうち日本からは20人、フランスから7人、スペインから5人、アメリカらからは10人であった。メインのクラッシックSTG、クリエイティブ、メートルピッツァ、グルテン無し、アクロバット、フリースタイルの早伸ばし、大伸ばし等に部門が分かれており、メイン部門のSTGで優勝したのは日本人。名古屋のピッツェリアCESARIの牧島昭成さんである。感動的な瞬間を実際に体験することができた。

沢山のカメラマンが取り囲む中、競技中の牧島さん 仲間と優勝を祝して&今後の発展を祈って乾杯する牧島さん!

牧島昭成さんに話を伺った

<世界各国から150人もの参加者>

ナポリピッツァ職人世界選手権(カプート杯)には、2007年から今年の2010年まで4年連続出場し、2007年は特別賞、2008年は外国人部門準優勝、2009年STG部門3位、2010年はSTG部門で優勝。今年は世界各国から参加した150人もの強豪職人が腕を奮った、その中での優勝である。

牧島さんは、今回の優勝について喜びと共に外国人でも認めてくれたナポリの人々にも感謝し、ナポリピッツァを普及していくための使命感・責任感を強く感じているという。

<世界のナポリピッツァ大使>

早い・安い・上手い の三拍子揃ったナポリの大衆食ピッツァを日本に広める牧島さんの活動が認められ、今年「世界のナポリピッツァ大使」に任命された。活動内容は、ナポリピッツァの正当価格ではあるが、日本では破格の350円のピッツァを販売、無料でピッツァ職人の技術動画を配信するなど幅広く普及活動を行っている。

<イタリアでのフェスティバルや大会への参加は>

参加することで現地のピッツァ文化に触れたり、マエストロ職人と共に普及活動をしたり、職人として本来あるべき姿を探求できるいい機会である。また、実績を残すことで、周囲の反応は大きく変わるという。現に、昨年の3位と今年の1位では反応は倍以上で、選手権後は連日各メディアから取り上げられ、店の前は長蛇の列ができて目が回るほど忙しい毎日をおくっている。常に前進を続ける牧島さんのさらなる今後の活躍が大いに期待される。

3.Pizzafest(ピッツァフェスト): ナポリ

2008年まで開催されていたフェスティバル。ドイツのオクトーバーフェストにちなんで命名された。真のナポリピッツァ協会が主催していた大規模なイベントだ。協会には日本、アメリカを始め多数の海外支部があり、日本からも支部として参加していた。代々続いていたフェスティバルは開催されなくなったが、ナポリピッツァの普及活動は相変わらず積極的に行われている。実は、2003年の第8回目のフェスティバルの際に偶然会場にいたのだが、その時今大会初の外国人優秀賞を受賞したのが大西誠さん(現・「サルバトーレクオモ」)であった。

4.Pizza World ギネス世界記録巨大ピッツァマルゲリータ: ナポリ

2004年ピッツァワールドというイベントの際に、巨大ピッツァマルゲリータのギネス記録への挑戦が行われた。ナポリ市、ナポリ県、カンパーニア州、商工会議所、ナポリ工業・職人組合の支援を受けて造られた巨大な薪窯は通常の窯と同じ材質・製法で作られるが規模が違う、メインスポンサーの製粉会社サンフェリーチェから提供された小麦粉を使って臨んだそのピッツァは、原材料:小麦粉38.6kg、トマト22.5kg 水牛のモッツァレッラ32.2kg、水25リットル、オイル2.5リットル、酵母、塩、バジリコ。生地の重さは124kg。このために特別に作られた巨大な薪窯で焼きあげられたマルゲリータピッツァは直径5.19mもあった。

花吹雪のようにバジリコを撒き散らすピッツァイヨーロ達 写真右:いよいよ窯入れ)写真  (両写真とも主催者より提供)

総勢17人のマエストロ職人達によって作られたこのピッツァ、生地を伸ばす様はとてもピッツァ生地とは思えない、なんとか伸ばし終えた生地にトマトソースを塗り、モッツァレッラとバジリコを両手で撒き散らす様は圧巻であった。焼き上げられたピッツァは2000人ものイベント参加者、ピッツァ関係者、ジャーナリストなどに無料で振舞われた。ギネス記録はまだ破られていないそうだ。企画者曰く、この挑戦によってナポリが特産品によってイタリアだけでなく世界中から注目されたことは誇りに値する。ギネスピッツァに参加した職人は口を揃えて、ピッツァ作りは愛情・情熱・幸福だと語っている。

5.ギネス世界記録巨大ピッツァフリッタ: ナポリ 
 

2007年にはナポリでピッツァフリッタのギネス記録が作られた。ピッツァフリッタとはナポリ発祥の、具を包んで揚げたピッツァのこと。イタリア全土でお目にかかれるわけではない。南イタリアでは屋台やピッツェリアの軒先で販売されていることが多い。喜劇俳優のトトと女優ソフィア・ローレンが共演したヴィットリオ・デ・シカ監督の「L’oro di Napoli(ローロ・ディ・ナポリ)」(1954年)という映画にピッツァフリッタが登場している。

ピッツァフリッタのギネス世界記録は全長5.25m。36名もの職人の手により作られたこのピッツァ、総重量115kg、製粉会社カプートの小麦粉を使った生地は90kg、リコッタ7kg、プロヴォラ7kg、チコリ(イタリア語ではチッチョロ=豚のくず肉)7kg、湯むきトマト2kg生地、揚げるためのオイルは800リットル用意された。

普通の大きさのピッツァフリッタ、中にモッツァレッラ、リコッタ、トマトソース、チコリが入る

6.第19回Campionato Mondiale della Pizza: サルソマッジョーレ

パルマ近郊のサルソマッジョーレで春に開催されるピッツァ世界選手権。ミス・イタリアの選考会場となることや高級温泉保養地としても知られる町である。表彰式にはミス・イタリアも登場する。この大会の主催はヴェネト州のPizza New spa。クラッシック、STG、フリースタイル、アクロバティック、プレゼンテーションなど13の部門に分かれている。イタリアは北から南まで、世界各国、誰でも参加可能。申し込み要項がはっきりしているため参加しやすいようだ。ただし参加費は約100ユーロ。今年2010年は500人もの参加者があった。日本からの参加者も多く、常連の方達も多いという。毎年素晴らしい成績を残している。

7.第5回Trofeo Citta’ di Napoli(トロフェオ・チッタ・ディ・ナポリ): ナポリ

毎年6月にナポリ市内で2日間開催されるピッツァ職人選手権。主催はマルゲリータレジーナ協会。STG、オリジナル、アクロバット、早伸ばし、ピッツァフリッタなど、7つの部門に分かれており、初日は競技だけが行われる。今年の参加者は50人であった。2日目は一般客も会場内に入ることができ、会場内に作られた薪窯を供えた5つのブースで、組合に加盟しているピッツェリアのピッツァを堪能できる。今年は各ブース300枚、合計1500枚のピッツァを焼いた。こちらの大会にも日本からの参加者があり、今までに、東京「da ISA」の山本尚徳さんが2007年・2008年に今大会史上初の2回連続優勝という快挙を成し遂げている。

8.第13回Pizza della Festa(ピッツァ・デッラ・フェスタ): サレルノ郊外

毎年夏にサレルノで開催されるカンパーニア州の大規模なイベントの内の1つである。第13回目になる今年はサレルノの隣町ポンテカニャーノにて開催された。9月4日〜12日の日程であったが、悪天候に見舞われ途中で強制終了にせざるを得ない日もあり、1週間延長して19日までの開催となった。ピッツァの薪窯を備えたブースが並び、サレルノ・サレルノ近郊のピッツェリアがピッツァを振舞う。敷地内のステージではコンサートや、地元住民のダンスなども披露される地域に密着した祭りである。主催者はViva Cittaという協同組合。
屋外の会場にピッツァを焼くブースが並ぶ (サレルノ郊外のピッツア・デッラ・フェスタ)

フェスタ開催の目的は職人によるカンパーニア州のピッツァを復興させると同時に、参加するピッツェリアの宣伝だけでなく、ピッツェリアが各自のピッツァやサービスによって販売促進できる場を提供することである。現にこのフェスタに参加することでさらに知名度を上げたピッツェリアもある。ところで、日本からも毎年参加者を募ってフェスタに参加しているグループがある。

日本風の小物でブースを飾ってアピール。参加者は、熟練のピッツァ職人や、これからピッツァの世界に足を踏み込もうという希望に満ちた方などさまざま、参加の動機もさまざまである。ピッツァの本場にて、現地で材料を調達し生地を仕込み、現地の人達にピッツァを提供することで、実力を試す、度胸を試す、ピッツァの味にうるさい現地の人からのダイレクトな反応、他の職人マエストロとの交流、地元民との交流、現地でのピッツァのあり方を肌で体験するなど、得ることが大きい。約1週間、20時頃から夜中の1時頃まで、途切れないお客相手にピッツァを焼き続けるというハードな体験は貴重な経験であろう。最終日が近づく頃には疲れでハイテンションになってくるという話を前もって伺っていたが、1日参加させていただいただけで容易に想像がついた。

9.終わりに

上記以外にもまだまだ多くのイベントがある、近いものでは9月最終週にはローマ近郊で選手権が行われる。さらに小規模なピッツァ祭りも各地で開催されている。ミラノ北部にあるマッジョーレ湖畔の町を訪れた際に、丁度ピッツァ祭りが開催されているというではないか、早速行ってみたのだが、テーブルとベンチが並び「切り売りピッツァと飲み物」がセットで販売されているだけで拍子抜けしたが、みんな笑顔でピッツァにかぶりついていた。ピッツァとは、美味しい・安い・早い・シンプル・体にいい・陽気な気分になる食べ物のようだ。



◆執筆者プロフィール
山本 薫 (Yamamoto Kaoru) 

三重県出身。金城学院大学短期大学部卒。 キリンビール株式会社勤務を経て、2000年からイタリア在住。フィレンツェ、ナポリ、サレルノにて語学留学。シエナ外国人大学主催イタリア語能力検定CILSレベルQuattro(C2)取得。イタリアソムリエ協会ソムリエ資格取得。イタリアの食品・ワイン見本市の企業通訳や食品・ワインの輸出サポート、ピッツァスクール・研修の手配(通訳含)、企業視察・見学、コーディネート等を行う。
HP:イタリア・デグスタツィオーネ http://italiadegustazione.web.fc2.com
BLOG:イタリアを楽しもう! http://infoitalia.exblog.jp

 

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