月2回更新  2000/11/01

スローフード
 
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ファーストフードについて取り上げたからには、その反対のスローフードについてもご紹介しなければ公平でないだろう。

2週間前の大雨で大被害を被った北部イタリア。その成功が危ぶまれたが、無事10月25日から29日にかけての5日間、トリノのリンゴット見本市会場で「第三回サローネ・デル・グスト(「食のサロン」、或いは「味覚祭り」と言ったところ。)」が開催された。

つい先日の話で来訪者数やその内訳などの細かいデータはまだ出ていないが、98年に行われた前回よりも一段と大きく、又盛況であったことは間違いない。

見本市のご紹介の前に、この見本市の運営にあたっている「スロー・フード」について、簡単にご紹介したい。

1986年の話。北イタリアピエモンテ州の、ワインやトリュフなどで名高いランゲLanghe地区にあるブラBraという町で、美味しいものに目のない方々によって小さなアソシエーションが結成された。それがあっという間に内外の反響を呼ぶ。89年の11月にはパリで日本を含む9カ国のメンバーによりスローフード宣言が国際的な運動として正式に結成、署名されるに至った。

一体その目的は何なのか。宣言は大変短かく要約してしまうと、「近代化によって押し寄せて来た、ファストライフ(慌ただしい生活)、それによって現代人にもたらされたファ(−)ストフードに対峙するべく、本来の味覚やそれを楽しむことをしっかりと死守して行こう、そのために皆で協力しよう。」というもの。90年のヴェネツィアでの会議では、伝統の食や食材を守り、それらの国際的な相互理解を図るということが再確認された。

現在その運動は世界35カ国へと広がり、60,000人以上のパートナーが参加している。そこにあるものは、人生を楽しむためのフィロソフィーであり、食についての教育や農産物資源などに目を光らせ、また消費者教育も行うというもの。又正しい食のあり方を問うだけでなく、ツーリズムなどを歓迎しながらも、環境への配慮も併せて取り組んで行くという、トータルな運動でもある。出版なども食について、ただ美味しいものを探すと言うことでなく、様々な角度から積極的に掘り下げるなどの他、これらの目的のために全世界で幅広い活動が進められている。

サローネ・デル・グスト

そのスロー・フードが2年に一回のペースで行っている最大のプロモーション、或いは啓蒙の場で、お祭りでもあるのがこのサローネ・デル・グストというわけだ。こういう運動のもとに行われるものであるから、一般の人にも親しみ安いものになっている。他のいわゆるバイヤー向け、商談向けの見本市とは明らかに一線を画している。

展示参加者は500以上で、その多くがイタリアからのもの。が、海外からの参加も今回更に増え、60以上の展示ブースが彼らによって占められた。ワインのエチケットを見ても500銘柄ほどが非イタリアン。この祭典の国際性が目立つ。

印象に残ったものの筆頭が、この運動の大切なひとつでもある、「消えうせようとしている食材などの保護」に該当するものが一同に集められるコーナーが用意された点。伝統的なものを失うことなく見直そうと言うもので、全国各地から野菜や果物、肉類など、それらを今後も残していこうと言う91団体によってプレゼンテーションされた。

一般の人にも楽しめる理由はそのアイディアにもある。ワインはワインで一つの独立したブースを形成し、他サラミのサロン、チーズのサロン、デザートのサロンとそれぞれ試飲や試食が秩序立てて作られた。それぞれにステージがあり、その分野に関わる様々な催しやレクチャーなどが用意され、食事や味見をしながら知識を広げ、理解を深めることができるというもの。

ワインのコーナーでもグラスワインのテイスティングが一杯2,000リラから6,000リラまで分かれていて、1枚あたり2,000リラのチケットで必要枚数分で引き換えできるようになっており、予め渡された数ページに及ぶメニューから番号をたどって簡単に注文できる。来場者の多くが一般の人たちであるであるから、単純かつ明朗会計は好評であった。

この祭典でないとお目にかかれないもうひとつの催し。それが世界中からレストランのシェフや、食材やワインの生産者、エキスパートなどがそれぞれ小さなレストランを設け、レクチャーとともに食事ができるブースである。例えば、イタリアの地方にあるレストランのシェフが、その郷土料理と地元のワインを講義を交えて供するというオーソドックスなものに始まり、ピエモンテ州の白ワインと寿司の合わせ方、アイルランドサーモン対オーガニック養殖されたサーモンの対決とそれにあわせるシャンパン、ビールと生ハム、世界の偉大な赤ワインとパルメザンチーズの合わせ方、キャンティーの赤ワイン対フランスのシャトーものワインなどなど。日替わりで、かつトータルで140種類ほどのこうした企画は他では見れない。別料金だが平均して3万リラ(約1500円)程度であった。

スローフード自体が食品産業の規模的な発展を狙ったものでは全くない。「もう一度見つめ直して、生活や人生をゆったりと楽しもう、そのために食の分野から変えて行こうではないか。」という意気込みが強く感じられる一方、会場の隅から隅までアットホームで和やかな雰囲気が満ちていた。次回を楽しみにしつつ、運動自体の今後の大いなる発展を願っている。(A.Y)





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