月2回更新  2000/10/01

イタリアの「街角」食前酒事情
 
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ランチタイムのあとの閑散とした時間が過ぎ、夕方6時頃になると又バール(イタリア の立ち飲みバー)はバタバタと慌しくなってくる。カウンターには色とりどりのつま み類が次々と用意され、洒落たバールではスプマンテ(イタリアの発泡性ワイン)な どがカウンターの別のクーラーに冷やされる。カウンターの向こうではオレンジや、 レモンなどがスライスされ、きれいに並べられて出番を待つ。

この時間帯になるとバールに入ってエスプレッソを飲むという人はぐんと減って、か わりに食前酒が主役となり始める。バールのもう一つの稼ぎ時だ。6時からの2時間 ほど、次から次にお客さんが入ってくる。一人で静かに入って来る人、カップルでレ ストランに行く前の二人。仕事を終えた若いグループは賑やかに盛り上がっている し、これからオペラにでも行くのだろうか、着飾った初老の夫婦とさまざま。オー ダーも白ワイン、スプマンテ、ビール、その他食前酒類、カクテルなど様々だ。

もっと食前酒やカクテルを。

さてこの「その他食前酒」と書いたところだが、そのタイプにはリキュールに分類さ れるもの(カンパリCampari、アペロールAperol、チナールCynar、ズッカZucca、な ど)、ワインの派生商品ヴェルモットに区分されるもの(マルティーニMartini、チ ンザノCinzano、ガンチャGanciaなど)の2タイプがある。イタリアにはこの通り名 だたるものが多く、又それらを使ったイタリア名のついたカクテル類も沢山ある。が 昨今、国内消費は伸び悩みを見せている。

生産者やディストリビューターなどの業界も、商品そのものやそれを使ったカクテル について数々のプロモーションを行っている。大ホテルや高級のバールなどを除いて は、、需要はまだまだ掘り下げる価値が充分あるからだ。小奇麗に改装したバールな どでは若手をバーテンダー協会や、メーカー主催のコンテスト、スクールなどに勉強 に出させたりと、まずは従業員教育から始めている。(イタリアのカクテルについて は別の機会に取り上げたい。)

それとは別にバールなどでもっと深刻なのは、アルコール自体を飲まない人の増加で ある。ワイン離れはどこかで取り上げたが、こうなってくるとどれを飲んでもらうか ということよりとりあえず何か飲んでもらわないと、となってくる。とにかく数十万 件もあるバール。何しろマーケットが大きい。

飲まない人に飲んでもらおう!

バールで食前酒(ワインやスプマンテ、ビールなどは除く)を飲む場合のタイプ別の データがある。驚いたのだが5割近くがノンアルコールの食前酒をオーダーしている という結果が出ている。そして次が食前酒用の商品をソーダで割っただけのタイプが 4割(カンパリソーダなどその代表)で、いわゆるストレートのの食前酒オーダーは1 割強に過ぎないということだ。こうなってくるとアルコールを飲まない人が増えて困 るなどとは言わず、「アルコールを飲まない人がこれだけいるのにも拘らずバールに 繋ぎ止めている」、とプラス発想の考えをしたいもぐらいである。

別の角度から見ると、バールというのは男のたまり場みたいなところがあって女性の 本格的なバール史はあまり長く無い。急速に仕事をする女性が増えてきたこともあっ て、今では女性が一人でバールに入るのはもちろん当たり前だが、どうしても男性ほ どはアルコールを飲まない。これに加えて全般的なアルコール離れもあって、このま までは彼らにはバールで夕方飲むものが無くなってしまうという現実もあった。ソフ トドリンクや、フレッシュジュースなどをミックスさせたものでもよいが、これは店 にとってもコスト高。そうかといって価格に上乗せも難しい。顧客にとってもこれで は食前にお腹も膨れるというものだ。

そこでイタリアで大人気なのがクロード・クロディーノCrodo Crodino、サンビッテ ル・ロッソSanbitter RossoやドライSanbitter Dry、レコア―ロ・ジンジェリーノ Recoaro Gingerino(この部門の上位4銘柄)など、ノンアルコールのスペシャルドリ ンクだ。オレンジや赤みのかかったおしゃれな色。ソーダのきいたさわやかな飲み心 地、ほんのりと苦味もあって「食前」のための消費、バールでの消費に最適である。 (子供はあまり好きでない。)。おしゃれな一人分の小瓶入りで気が利いている。通 常、店ではオレンジやレモンとともにサービスされる。女性の圧倒的な支持を得てい るようであるが、見ていると男性の注文も結構ある。

「そこまでして食前になにか飲まなくても」、と思われる方も多いかもしれない。と ころがこちらの夕食の時間は比較的に遅い。待ち合わせをしながら一杯飲んで、最初 から楽しい気分で行きたいということもイタリア人らしい。ここでアルコールが嫌だ からといって手ぶらではあまりにも寂しいのだ。 イタリアならではの生活様式があって初めてこのタイプの分野の商品もあるわけで、 この「仕事と食事の間の微妙な時間帯」のあまり存在しない日本では需要はあまりな いかも知れない。(A.Y)





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