月2回更新  2000/9/15

イタリアビール業界 その2
 
- 


前回に引き続きイタリアのビール市場ついて。今回はメインの消費シーンである外食 産業の様子を取り上げて見たい。

生活変れば…..

面白い見方がある。ビール消費の拡大となった要因の一つが労働時間の変化にあると いうのだ。70年台頃から徐々にではあるが大都市、特にミラノなどの北イタリアで はお昼の時間にゆったりと家に帰ったりして優雅に食事をするという形が崩れてき た。日本のサラリーマンのようにかきこんで食べ、「昼ご飯に時間をかけるのは無 駄。」とまでは現在でも行かないが、それでも企業などの勤務体系ではどこも1時間 程度の食事時間というのが主流になりつつある。(北イタリアは特に。)ワインはイ タリア人にとって急いで飲むものでは無かったし、そもそも「食べながら飲むとすれ ば、」ある程度きちんとした食事にあわせるもので、さっと食べられるパニーノ Panino(イタリア風サンドウィッチ)の共にはならなかった。そこへビールがすっぽ りとはまった、と言うのだ。

話のついでであるが、パニーノテーカ Paninoteca(パニーノ専門店。通常はサラダ なども扱う。)も今イタリア中で当たり前のようにあるが、本格的に増え始めたのは 丁度その頃からだった。人間の生活パターンが変れば、それにあった店が増えること の典型であったわけだ。

話をビールに戻すと、この70年代には更にビッレリアBirreriaというカテゴリーが出 来上がってきた。これは一応ビール専門店であるがそんなにバラエティーもなく、又 前述のパニーノテーカと区別が出来ないぐらいのものであったらしい。当時はまだま だ中華料理店ですら一握りという時代で、そもそも「ゲルマン人のもの」であるビー ルを主体にした専門店が増えるということではイタリアの外食市場画期的なことでは あった。(注 少数ではあるが、イタリアにもビール製造業者はかなり古くから存在 はしていたことは明記しておきたい。)

確立期

80年代はビール専門店というカテゴリーが全国区で固まった時期である。もともとワ インその他に見られるように、凝り始めたら徹底的に本物を求める国民である。 「ビール」をテーマにした店は更に増え始めてきた。

まずはアイリッシュパブの登場。こちらは店の造りをアイルランドパブそのものにし たてて、本場のビールを中心としたラインナップを揃え始めた。(流石に食事はイタ リア人の好みにはあまりあわないらしく、料理まで本格的にあちらのものを提供する 店は現在に至っても多くない。)と同時に、ラテンアメリカ系のエスニックレストラ ンが徐々にではあるが、お目見えし始める。こちらは料理もさることながら、中南米 のビールなどが大きく出回るきっかけとなった。

更に90年代になると、パブについてもさらにスコットランド風、イギリス風と広まっ てくる。ついにはオーストラリア風やニュージーランド風と、とにかく別の新しいも のをという競争になって来た。70年代のビッレリア(パブのことも含んで現在も使う 言葉。)のような個性が無いものは消え、客の側でもビールの薀蓄を語り、好みの銘 柄を指定するのが若者を中心に一部当たり前になった。

過当競争の時代

書店を営む友人に言わせると、ビール関連の書籍が90年代に大変増えたという。しか しそれも少し落ち着いてきたようだ。全体的な消費はまだまだ伸びているものの、増 えすぎたビール専門店の経営は徐々に厳しくなってきているようだ。

ミラノのあるスコットランド風パブの経営者(正確に言うと「元」経営者。最近手放 してしまった。)が嘆くのは、「数が増えたこともあって、とにかく目新しさがない とすぐ飽きられる。又結局ビールは薄利だから食事で稼ぎたいのだが、もともとそれ らの国の食事はイタリアでは評判がよくない。そうかといって、パニーノやパスタを 出してしまっては“本物”のイメージを崩す」という悪循環という。又、ランチタイ ムを取り巻く環境は大きく過去変ったが、夜はそんなには変っていない。食事のイ メージが伴わないパブは、接点が見出せないでいる。「8時から10時は殆どガラガ ラ。その後の時間帯で稼ぎたいけれど、若者ばかりでお金にならない。生のバンド演 奏などは殆ど売上に貢献しないどころか出費が増えるだけで、今は殆ど少なくなった のでは。」という。結局食事はイタリアンで、適当にビールも出しますという可も泣 く不可もない初期のビッレリアにしておけば良かったとも言う。

実際今、外食産業においてビール販売量に大きく貢献しているのがマクドナルドやス ピッツィコSpizzico(切り売りピザや、サラダを主体にしたファーストフード)であ るという。 時代が変れば、消費のスタイルも“何度でも”変るのである。(A.Y)





|いたりあ食ビジネス短信バックナンバー|


このページに関するご質問は
e-mail: shoku@japanitaly.com へ、お問い合わせ下さい。