月2回更新  2000/8/1

日本人コック - イタリア料理修行今昔
 
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今回は、日本のイタリア料理の発展に「表に、裏に」重要な役割を果たしてきた「日本人コック」さん達について、イタリアサイドからスポットをあてて見たい。

日本のイタリア料理は本物

食に関しては保守的と言われるイタリア人。日本のイタリア料理について、時折聞かれることがある。そんな時に、「東京地区だけでも数百のイタリアンレストランがある。」と言うとオウム返しに「そのうちイタリア人がやっているレストランはどれぐらいあるのか。」と聞いて来る。ここで私は単に「殆どが日本人経営で日本人のコックさんが作っている。」と簡単に答えないことにしている。「殆ど日本人だが、毎年沢山の日本人が、本場の味を勉強しにイタリアに来ていることを知っていますか?」と。そして日本のかなりのレストランに本場での修行経験のある人達がいることや、長い人では数年に渡って勉強していることを説明すると、「それは素晴らしい。やはり日本人は違うね。」と言ってくれるのである。

今やテレビや雑誌でも引っ張りだこのあるシェフが、80年代に北イタリアで修行していた頃、当時はまだ少なかった日本人コックさん同士の情報交換の場として「日本人会」をひっそりと結成した。この会は今でも続いているのだが、当時はほんの数人の集まりだったらしい。因みにこの会はもちろん会則もなにも無く、本当に参加者の熱意だけを便りに、年に1〜2回のペースで、その都度次回の開催者を決めて分担して連絡し合い、時にはバールで、ある時は誰かの修行しているその店の定休日を借りて行ってきた。修行できるレストランなどの情報交換のみならず将来を語ったり、イタリア料理についてのそれぞれの考え方をぶつけ合ったりして来たという。

あっちこっちにライバルが

何度かこの会へ出席し、今も北イタリアで修行を続けているコックさんに話しが聞けた。「今でもはっきりとはわかりませんが、少なく見積もっても200人〜300人ぐらいはイタリア全国で頑張っている日本人コックさんがいるはずです。」この会の発祥が北イタリアであり、場所的な問題から連絡取り合える範囲は北部にどうしても限られてしまうそうだが、「ちょっと探すだけで近隣地域に何人もの人達がいることがわかる。」そうだ。最近ではワインブームもあってソムリエの勉強をしに来る人が増え、叉コックさんでも料理だけでなくワインも勉強してから帰るという傾向にあるという。叉「女性が増えました。住みこみなどでは部屋の問題が出て来たりするのですが、皆逞しくやっているようですね。やる気があれば女性も男性も関係ないでしょう?」とのこと。

「以前は5年、10年というような、『主』(ぬし)のような方がぽつぽついたんですが、最近は1年、長くても2年という方が殆どだと思います。叉、何回かにわけて半年ごとに地域を決めて戻ってくる方もいます。」やはり日本におけるイタリアンが、開拓期が過ぎて安定期に入っており、修行スタイルもそれに合わせるように変わって来ているのかもしれない。「今は日本でもイタリアの食材や、流行などについて色んな情報が手に入ります。以前は行って見て、ある程度の時間をかけないと何もわからなかったからでは。」

修行の後は

「以前のように、修行して帰ればとりあえずのポストとある程度の収入が待っていたという時期は過ぎたようです。今では『紐付き』、つまり日本のお店から一時的に休みをもらって帰る場所だけはなんとかあるというのは良い方でしょう。でも帰ったら他の人に抜かれてしまっていた、などという話しも聞きますね。一番盛り上がった時期(95年前後とのこと。)などには、渡航、滞在費用も半額とか全額日本のオーナーに見てもらって尚且つ1年、2年と滞在するというケースもありました。」。確かに彼らのおかげで業界も大きく、且つ自信をもってイタリアンと言えるレベルにまで育ったとも言えるのだが、マーケットとして見ると、逆に「数が増えすぎてしまい共食い状態になってしまった。」こともあるのかも知れない。

ミラノ近郊の高級レストランのオーナーシェフ曰く「一体そんなにやって来て、それだけの数のレストランが日本にあるのかとずっと疑問だった。」日本の料理雑誌にも何度か登場したことのある彼は、日本のイタリア料理熱には圧倒されていると言う。彼のお店での日本人修行経験者は過去30人以上にもなるそうだ。

その他の現実としてイタリアでは移民の問題もあるため、修行に来るコックさんが正規のビザを入手するのが困難という状況もある。最近では学校などの形式で、各当局の承認のもとに修行のお手伝いをする機関などもあるが、長期間の対応はしきれないのが現状のようだ。「はっきり言ってしまうと、昔はある意味で牧歌的なところがあって別にビザがあろうとなかろうとそんなにびくびくすることは無かった。」(前述のコックさん。)今では労働ビザ無しでは(学生ビザがあっても)断られてしまうケースも多いという。修行の身はいつの時代でも楽ではないようだ。(A.Y)





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