月2回更新  2000/7/1

イタリアの「和食」最新情報!
 
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日本とイタリアを結ぶ「食」の掛け橋として、このイタリアでの和食ブームを見逃す わけには行かない。本欄でも折を見て現地和食業界の状況他、いわゆるイタリアン以 外の食についても最新情報をお届けして行きたいと思っている。

“禅”それは“Kaiten!”

その第一弾として、昨年秋にオープンしたミラノ大聖堂(Duomo)近くの「Zen Restaurant」の例を中心に、まずミラノ和食界で起こっている事をご紹介したい。

当店は和食系の食材輸入ではミラノで最大手の中国系の業者が中心となってオープン させた「イタリアの回転寿司第一号」。開店当初から長蛇の列ができ、現在も衰える 所を知らない。来店客の95%がイタリア人と、経営者の狙いは今までの所見事に 当った。夜の開店も8時と、和食店には珍しく完全に現地標準となっている。平均の 単価も特に他の和食店とさほど変わらないが、昼と夜併せてなんと400人から50 0人の来店が続いているというから驚きである。店内は回転寿司のカウンター席と一 般のテーブルとに分かれている。人気のカウンターは予約を受け付けていないため、 オープン30分前には店の周りをうろうろする人達がたむろし始める。

基本的にシステムは日本のそれと違いは無い。イタリア人には目新しいが、皿による 色分けで金額を計算。寿司以外の天麩羅刺し身などは、別途注文する。食材調達の問 題や現地の顧客の好みもあるため、日本人客には材料のバラエティーさに欠けるのは 否めない。が、狙いはあくまでイタリア人。彼らを満足させるため様々な工夫が凝ら されている。

例えば人気の高いマグロ。シチリア沖で取れるマグロは知る人ぞ知る最高級品であ り、日本の築地にも送られているもの。赤身もトロも、びっくりするようなものがミ ラノでも手に入るのだ。(もちろん、日本で幾らで売れるかは既にイタリアでも知れ 渡るところであり、現地でも相当の値段を出さなくては良いものは手に入りにくく なっている。)このマグロ(イタリア語では“トンノ”と呼ぶ)、イタリア人が生で も比較的好んで食べる魚の代表だが、そのままの赤身やトロの握りとして提供する 他、いわゆるネギトロにしたもの、野菜類や蛸、海老などを刻んでんでアレンジした 軍艦など、マグロをベースに常時5種類程を提供する。

他に現地の顧客に人気の鮭だが、こちらも同様のアレンジで品数を増やす。これに白 身や、蛸の寿司が加わり、天麩羅巻きや、鮭皮ロールなどの火の入ったものを取り入 れた巻物が加わる。更に、イタリアらしい工夫として、開店して小一時間ほどして流 れてくるタルトや果物類が面白い。これもついでで出すようなもので無く、どれもき ちんとした一品で結構な人気を呼んでいて、かなり売れているようだ。「カリフォル ニアロール(アボガド、海老など)とサーモンを食べるだけ食べて、いちごのタルト で締めくくるイタリア人が、結構いらっしゃいますよ。」とはカウンターの寿司シェ フ。現地人の嗜好の理解が無くては、簡単そうでなかなかできない商品提供だ。

和食とファッション性

Zenレストランの宣伝では無いので詳細はここまでにするとして、その成功の秘訣は 一体どの辺にあるのだろうか。オーナーグループの一人によると、成功の秘訣はその 「ファッション性」と考えているようだ。そこに行くことが「新しく、カッコイイ」 というイメージを定着させたこと。しかもヨーロッパで回転寿司の先端を行くロンド ンなどのように、「完全に異次元空間的で、ガンガンと音楽が鳴り響くような行きす ぎたものでは無く、あくまで内装や、働く職人には日本らしさと本物志向を徹底。保 守的、伝統的なイタリア人を気遣った。」と言う。

キリンビールや、月桂冠の酒、サントリーウイスキーもしっかり用意してあるところにもこだわりが感じ取れる。しかし、音楽は控えめなジャズを流し、サービスは若くてスマートなTシャツを着たイタリア人中心と、アクセントをつけるべき所は大胆に新しさを取り入れる。

もちろんだが、いらっしゃいませも無いし、かしこまったサービスも当店にはそぐわない。狙い通り客層は流行に敏感な若者や、ファッション関係のモデルやデザイナー、マスメディア関係者、それに新し物好きのミラノのお金持ちである。 最近では店内の空間を使って、若手の芸術家の発表の場を与える試みも始めた。「あ そこに行けば、何か楽しい。」が大事だそうだ。

新旧入れ替わり?

実は、ミラノの和食界では昨年から今年にかけて象徴的な動きがあった。従来型の和 食店の代表とも言えるサントリー、赤坂百人一首、そごうブレラが相次いで閉店した のである。それらと入れ替わるかのように、イタリア人客をメインターゲットにした “カッコイイ”“お洒落”な和食店がいくつもできてきている。ご紹介しきれないの が残念だが、結果として非日本人経営の、ローカル客ターゲットの店が急増してい る。

因みに現在、前述のZenにはミラノからだけでなく、ローマ、フィレンツェ、シチリ アなど、イタリア中からジョイントベンチャーや、フランチャイズの話が殺到してい るそうである。中にはイタリアでは誰でも知っているような大資本や、大手ホテル チェーンもある。

さらに盛り上げてくれる話題を一つ。世界中で大成功中の“NOBU”レストランがまも なく、高級ブティック街として有名なミラノのモンテナポレオーネ地区にオープンす る。しかもGiorgio Armaniと組んで。NOBUのオーナーの一人に、イタリアでも人気の ロバート・デ・ニーロがいることは有名だが、彼がアルマーニと組んでミラノの真ん中、 しかもその旗艦店の中に、世界で今もっともおしゃれな和食店ができると聞いて、わ くわくしないミラノっ子が果たしているだろうか。

この和食ブーム、とても一度でご報告できるものでは無いのが現状である。(A.Y)





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