月2回更新  2000/6/15

イタリアミネラルウォーター市場動向(躍進するもうひとつのMade in Italy)
 
- 


「最近10年、15年の話しですよ。こんなに水、水、と言い出したのは。」とは、親しいワイン生産会社の社長から最近聞いた話し。ボトル詰の水市場がここまでに大きくなり、又商品もこれだけバラエティーが出てくるなどとは想像もしなかったそうだ。ワインの作り手がそんなことを言うのも、近年の若い世代を中心とした嗜好の変化により、アルコールの消費が行き詰まり(特にワインは著しい。この点は別途レポートしたい。)、皆水ばっかり飲んでいる、という彼の商売上の苦悩も背景にあるからだが、それ程イタリアのミネラルウォーター市場は好調だ。あまり日本では知られていないが、量、品数ともに、名実ともに世界トップクラスのマーケットである。水源も多く、本来は地元の水道水が十分飲めた国である。数が多いのは当然の結果でもあるのだが、最近ではローカルな生産者もナショナルマーケットや、海外進出を企てる動きも出てきている。

伸びるマーケットとグループ化

イタリア全国で、ミネラルウォーターは実に230銘柄以上あるといわれる。国内だけで90億から100億gの需要があり、金額ベースでは98年度で約3兆リラ(約1600億円)の規模。国内だけでも年率3%程度の伸びを確保しているのだが、特に近年では中、南部での伸び率が顕著である。

平均価格が年々低下していることも背景にあるようだが、上記の社長が嘆くように、とにかく健康志向、アルコール離れに帰するところが大であろう。 いずれにしろこのマーケット、総人口が日本の約半分であることを考えると、相当の規模であることがわかる。イタリア人一人あたり、年間155gで、1.5gのペットボトルに換算すると約100本飲んでいることになる。

タイプ別では全体の3分の2が、いわゆる炭酸の入っていない「ナチュラーレ」。販売時の容器別で見ると、現在ではペットボトルが70%のシェアまで上がってきている。残りは配達、業務用を中心とした瓶詰めによるものである。

星の数ほどあるミネラルウォーターメーカーだが、実は主要銘柄についてはある程度のグループ分けができるのでご紹介したい。

まずはSan Pellegrino 社。実は現在、ネスレグループの子会社となっている。日本でも有名な「San Pellegrino」に加え、「Panna」「Vera」「Levissima」など含め、15のブランドを持つ。総国内販売シェアは28%を誇り第一位。続いてSan Benedetto社で、「San Benedetto」、「Cinciano」など5銘柄を持って20%のシェア。そしてItalacqua。こちらはDanone(ダノン)とビール会社のPeroni(ペローニ)で作るグループで、「Ferrarelle」、「Santagata」などでシェア12.1%で3位。以下4位が「Rocchetta」,「Uliveto」のCogediで5.5%。5位にVerga-Spumadorグループ、6位Nordaと続く。このように、特に90年代にはいり、合併や、多国籍企業による業界再編が相次いでいたが、この動きも一服した感がある。

差別化と宣伝

アルコール製品や、ソフトドリンクなどいわゆる「水もの」の生産者が宣伝に力をいれるというのは古今東西変わらないところではあるが、イタリアの水業界も宣伝に投資を重ねるだけでなく、かつ差別化のために工夫を凝らす。(90年代に筆者が始めてイタリアを訪れた際、水のテレビコマーシャルの多さに大変驚いたことを覚えている。)

ネスレ関連のSan Pellegrino社ブランドだけでも現在「Panna」「Vera」など計三種のコマーシャルに日に何度もお目にかかるが、はっきりとした戦略の違いが目に付き面白い。「Panna」は“体を生き返らせるもの”というキャッチフレーズで若さ、みずみずしさを強調。全裸の女神的な美女が幻想的な水のなかで浮遊しながらPannaを飲むシーンを映し出している。健康や、美しさを意識する現代の女性をターゲットに、「疲れた体のリフレッシュ」を繰り返す。

「Vera」についてはピュアな人生、ヘルシー生活ということで、正しい家庭生活をイメージした広告。家族の健康を気にする賢いママが選ぶことを期待している。

それとは別に、イタリア国内でも完全に名前もステータスも確立しているSan Pellegirnoだが、テレビコマーシャルは見ない。どこでお目にかかるかというと、新聞の見開き一面広告の他、いわゆる高所得者層を対象にした月刊誌、又は英字新聞など、ある程度相手を絞れる活字媒体にしばしば登場する。又、高級バール(コーヒースタンド)などのカウンターに並べたり、あまり押しつけがましくない販促品で、店内での宣伝活動を支援する方法をとるなど、ターゲットを限りながら、イメージを大事に維持することに注力している。

先にペットボトルの話題にも触れたが、容器にも工夫が凝らされる。San Benedettoがミレニアムボトルということでデザインを一新したのに始まり、従来は殆どが透明ボトル、或いは緑系統のもの(Rocchetta, Ferarelle)によるもので、ラベルは白を貴重に青系、薄い赤の文字やロゴというのが一種、規格のようなものとなってきたいたのだが、最近では青ボトルも投入される動きがある。大ブランドの一つであるRocchettaであるが、Brio Blue Rocchettaを追加。容器は濃い、派手な青で、新しさ、若若しさを強調している。

因みにレストランで販売されるガラスボトルにも青が投入され始めており、ミネラルウォーターの新しいスタンダードカラーになりつつあるようだ。ターゲットは男女ともに活動的、かつおしゃれ感を大事にする若者狙い。又他に、ボトルは色付きだがエチケットは逆に透明にするなど、ラベルにも従来と変わった試みが見られる。

水もやっぱりMade in Italy?

最後にL’acqua italiana(イタリア産の水)の輸出について、データを付け加えたい。
Ice(イタリア貿易振興会)による98年のデータであるが、トータルで前年比17.7%増、過去4年で、プラス120%と、こちらも驚異的に伸びている。金額ベースで約1700億リラ(約87億円)にまで到達した。

その中で面白い点として、フランス(前比31.7%)や、スイス(25.5%)、アメリカ(35.1%)など、自国に幾らでもミネラルウォーターがある国への輸出が急速に伸びているのである。これも「イタリア産」のもつイメージの魔力かと感心する。因みに、イタリア料理や、ワインがすっかり定着し始めた日本市場向けは97-98年度で115.2%と、倍以上の驚異的な伸び率を示している。

さて、冒頭に全国に230の生産者と書いたが、ある中規模の食品見本市で、サルディーニャ島の水のプロモーションをしていた青年と話しをしたことがある。熱心に説明するので、その製品は筆者の住む町のどこで買えるのか、と尋ねたところ、「まだ島にしかありません。」と一言。イタリア本土での実績もまるで無いのであるが、いきなり外国に売りたいというのである。ところが、この彼のこの発想は別に珍しいものではない。「イタリアはそれぞれが一つの国みたいなものだから、国内で売るのも海外へ輸出するのも結局似たようなもの。むしろ海外の方が先入観や、村意識などで邪魔されることも無いし、壁は低いですから。」と。

わかっていたことではあるものの、昨今,イタリア中小企業の活力が見なおされる傾向にある中、あらためてなるほどと考えさせられた次第。一地方の生産者が迷うことなく海外マーケットを狙う現実的な理由の一つであろう。ともあれ、メイドインイタリーは水の分野でも、世界で確実な地位を築きつつあるようだ。(A.Y.)





|いたりあ食ビジネス短信バックナンバー|


このページに関するご質問は
e-mail: shoku@japanitaly.com へ、お問い合わせ下さい。