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2011/3/31

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ、91年よりミラノ在住。三井住友保険会社ミラノ支店勤務の一方で、日本、イタリア、フランス等各国で 異文化間マネージジメント、コミュニケーション、NLPセミナー・トレーニングを行っている(www.global-excell.com)。執筆は「ストレスは捨てられる」(中経出版)、「普段着のミラノ案内(晶文社)」をはじめ各種新聞雑誌コラム等多数。

 

2011/2/28

61. アラブ諸国の異変に思う

チュニジア、エジプトの旧政権崩壊から まだ戦いの続いているリビアまで、アラブ諸国の動きが世界中の注目を浴びている。 政権が崩壊していないそのほかの国々でも その動きは飛び火して、デモや衝突を生んでいる。

アラブ諸国とは石油をはじめ、経済的な関係で繋がっているとは言うものの、日常生活においてその地の人々とほとんど接する機会がない日本と違って イタリアにいると彼らは 日常のごく当たり前の風景の中にいる。

イタリア人にとって もっとも手ごろにいけるバカンス地は チュニジア、エジプト。
ローマからなら飛行機で1時間、パリに行くよりよっぽど近いチュニスやカルタゴは 私にとってもヨーロッパに住んで最初に行ったバカンスの土地。 いつもよく行くケバブ屋さんや角のピッツェリアのオーナーはエジプト人。 私の使っている銀行の最大株主はリビア政府。。。
毎日の生活の中で、アラブの人たちを見ることなしに一日たりともすごせないくらい、ミラノでは彼らの存在は日常化している。

これを機に民主化を願う声、イスラム勢力の拡大を懸念する声、さまざまな分析や思惑をよそに 居場所のなくなった大量の人たちの様子が 日々報道されている。
彼らに行くところ、そして帰るところはあるのだろうか。

この種の状況を耳にするたびに 思い出す友人がいる。
イラン人の友人、マホメッド。
パーレビ国王が追放されたイラン革命のときにヨーロッパへ命からがら逃れた人の一人。
国王に近かったエリートとして父親が捕らわれたときに、家族が彼を逃がしたという。

イタリアの外国人大学で 多くの留学生に混ざって身を潜めていた彼が ひょんなことで私のベルギー人の友達と恋に落ち、ベルギーに移ってから もう何年がたつのだろう。。。
今では3人の子供の父親となり、救急車の運転手として働く彼は イラン革命以後 一度もイランの地を踏んでいない。

イタリアの南の島には 毎日大量の難民が船でたどり着く。
チュニジア、エジプト、リビアから今後到着する難民の推定人数は なんと2,30万。
収容所の数は足りず 他の地へ送られていく多くの人へのインタビューをみながらマホメッドの面影が ダブって見える。

生き延びるだけで必死だった。
ベルギーにたどり着く前も、イタリア、フランスと仕事を求めて転々とした。 住む国の言葉と ルールを必死で学んだが、同時にイランに残してきた家族が心配で仕方がなかった日々。

日本のような平和な国にいると、そんなことが自分に起こることは想像さえできない。
そして同時に、そこまで必死で生きることも もしかしたらないのかもしれない。

数年前、マホメッドと再会したとき、彼が話してくれた夢を今でも忘れない。

僕は妻に救われた。
彼女に出会わなかったら、今の自分はいなかった。。。


いつか、いつの日か
今のイランの体制が変わって
僕がイランに戻れる日が来るとしたら、
今度は僕が彼女を幸せにしてあげたい。
そして イランの素晴らしさを

僕の子どもたちに
生きていくための誇りのために
見せてあげたいんだ。。。

本気で生きる姿勢と
政府や体制などを抜きにした自分のルーツに対する誇り、
ともすれば忘れてしまう大切なことを 彼は私に教えてくれた。  

 


2011/3/31

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


イタリア証券取引所の公式サイト
http://www.borsaitaliana.it

ミラノに本部を持つイタリア最大の証券取引所「イタリア証券取引所Borsa Italiana S.p.A」のサイト。前身は1808年創立の「ミラノ証券取引所」で、1997年に証券取引所の民営化とともに設立され、2007年10月1日から、ロンドン証券取引所グループ配下に入る。





2011/3/31
編集後記
チェルノヴイリと福島とイタリア


何年も前から、ミラノではイタリアの経済金融新聞Il Sole 24 Ore(イル・ソーレ・24オ−レ)を年間購読し、毎朝配達してもらっている。しかし日本で今回の大震災の発生した3月11日直後は、こちらのTVも新聞も日本の話題ばかりなので、エディコラ(新聞販売店)に行って他の新聞も買い込み、日本関連の記事を読んでいた。同時にNHKや日本の新聞各紙のインターネットサイトをフォローしていたのはいうまでもない。遠くに住んでいると日本の動向が心配で、日本からの情報や映像に心が沈んでしまう毎日が続いた。

3月も末になり、ふと周りをみると、部屋の隅に「イル・ソーレ」の3月11日以前の新聞が山積みになっているのに気が付いた。3月初頭は所要でバタバタしていて新聞も読んでいなかったのでそのままになっていたのだ。2011年3月11日を境に日本の運命も私の心も変わってしまったような気がして、ああ、3月11日以前はまだ日本の地震も津波も福島原発の脅威もなかったのにと、一時代前の平穏な日々を懐かしむような感じで、3月10日の新聞をぱらりと広げた。そのとたん、はっとしてしまった。

「原発大惨事25年後のウクライナへの旅」という見出しが目に入ったからだ。その下には「チェルノヴイリ EUの力で再生」とある。1面全体を使った特集記事である。3月11日以前は「平穏な世界があったのに」と思い込んでいた私の認識の甘さが恥ずかしくなる気がした。
記事の冒頭部分を以下に引用しよう。
「チェルノヴイリは、25年たった今、これから再生できるかもしれない。原発事故史上最も有名で最も深刻なこのチェルノヴイリの事故が、イタリアの原子力利用の歴史を変えることになった。1987年の国民投票でイタリアは原発を廃止することになった・・・・今、この場所をEU委員会、BERなど国際金融機関の力でソ連時代の遺産を消去しチェルノブイリを大きな『研究室』に変換する試みがされている」「本記事は1986年4月26日未明に勃発したチェルノヴイリの大惨事から25年たった今、はじめて外国人ジャーナリストに許されたチェルノヴイリ公式訪問の報告である…」

正直、もし今回の日本の震災がなかったら、「ああチェルノブイリから25年!」と見出しだけをみて読み飛ばしていたに違いない。当時のことはよく覚えていないが、日本にいたので深刻な大事件とはいえ遠い出来事という感覚のあったことも否定できない。ところが、多くのイタリア人にとってチェルノヴイリは決して遠い国の出来事ではない。チェルノヴイリから500キロの距離にあるイタリアでも、事故当時はチーズなどの乳製品や、肉や野菜、果物が放射能汚染されるなど農産物に被害を受け、また甲状腺ガンなど健康被害が今でも問題になっている。

このチェルノヴイリの経験があるためか、イタリアでは福島原発の動向にはマスコミも一般市民も非常な敏感である。「500キロ」という経験値があるためか、福島で何かあったら日本中が大変なことになると思っている人もいるようだ。さらに驚いたのは、イタリアのテレビで「福島で放射能汚染された空気がイタリアまで運ばれてきますか」という視聴者の問いに専門家が答える場面があったことだ。日本の人からみれば、「何をおおげさな」と思われるだろうが、それなりに本気の質問なのだ。原子力専門家が日本とイタリアの距離は1万キロ程度あって大変遠いこと、風の向きによるが、西回りでも東周でも地球のほぼ反対側にあり、イタリアにその空気が到達するころには心配する値は消えていると丁寧に説明し、無用な心配をしないようにとしめくくった。

ところで、イタリア政府は2008年5月に「原発再開」を宣言し、2013年内の再開にむけて強力に準備を進めていた。全面的に外国からのエネルギー源に依存しているイタリアでは電気代がヨーロッパ各国で一番高い状態が続き、さらに都市部の大気汚染も進み「クリーン・エネルギー」の原子力発電に頼ることで今後の環境政策やエネルギ―計画を進めようとしたものだ。産業界もこれ以上エネルギーコストがアップしては国際競争力に影響すると原発再開を支援した。一部「緑の党」などを除くと、野党も表立っての反対は示さなかった。フランス製の最先端原発設置を前提にほぼ順調に原発再開の地ならしが進められ、イタリア政府は2011年に原発候補地絞り込み作業を進めると発表していた。まさにその矢先に、今回の福島原発の問題が発生したのだ。当初は「これまでの計画に変更なし」と強固な姿勢をとっていたイタリア政府も、5月中旬に実施される地方選挙への影響を考慮し、「原発再開」案件を1年間凍結すると発表した。

チェルノヴイリから25年後の今、今度は「福島」がイタリアの原子力利用の歴史と政策を変えることになりそうだ。今年の4月26日はどんな日となるのだろうか。そのころ、福島の原発が少しでもいい方向にむいていることを祈るばかりである。


2011年3月31日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)


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