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2009/6/30

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ、91年よりミラノ在住。三井住友保険会社ミラノ支店勤務の一方で、日本、イタリア、フランス等各国で 異文化間マネージジメント、コミュニケーション、NLPセミナー・トレーニングを行っている(www.global-excell.com)。執筆は「普段着のミラノ案内(晶文社)」をはじめ各種新聞雑誌コラム等多数。

 

2009/4/30

56. 「ドバイにて」

先日ドバイを訪れた。
アラブ首長国連邦、ペルシャ湾に突き出したアラビア半島の先にある小さいけれどとても豊かな国のなかの、これまた非常に豊かな町。
石油マネーで急成長を遂げ、今やシンガポール、香港に次ぐ世界第3の中継ぎ貿易地となった、この町は私にとって、長い間なぞに満ちた町だった。

年間7千万人が利用するというドバイ航空に早朝についた私は、まず税関で真っ黒なブルカ(アラブの女性の民族衣装)をまとった女性から通関検査を受けた。
通関の男性もまた、アラブの白いベールと白い長い服、そして頭には例の黒い輪をつけている。
「ああ、アラブの国に着いたのだ」、そんな当たり前のことにいまさらながら感動した。

ドバイは、やしの木の形をした人口島、パームアイランドとその豪華なリゾートマンション群、ヨットの形をした有名な7星ホテルや、世界一高いビル、最近では45度を超える灼熱の地にスキー場を創るなど、世界の注目を浴び続けている。
その豊かで超モダンなイメージと、目しか見せない女性たちや砂漠を行くらくだの姿、そしてモスクから聞こえる祈りの声といったイメージが、どうしても結びつかない。あまりにもギャップがある。
そんな私の疑問を覆すように、そこではすべてが、ごく普通に共存していた。

ところで、イタリア人がアラブの人、特にアラブの女性の話になると、非常に感情的になるのはどうしてなのだろう。
「カルチャー」に関するセミナーをいろんな国籍の人相手にする機会が多い私だが、黒いブルカはもちろん、アラブの男性の白い長い衣装とベールを見ただけで、警戒心を持ち、攻撃的になる人を今まで何人も見てきた。
今回の旅を一緒にしたイタリア人の友人もその一人だった。
彼女自身、これがはじめてのアラブの国の訪問だった。アラブ人の友人を持ったこともないという。つまり、本来なら「白紙」であるべき人が、知らないうちにこれほどまでの偏見を持っていたことに彼女自身が驚いた。

一般の日本人にとっては アラブの人々はまだまだ「遠い人」だろう。
イスラム教も、せいぜいTVでみるくらいのもので、ミラノのように、日常生活でその祈りに出くわすこともない。

それに対してイタリアは、中世以降、歴史的に何度も好ましくない接触をもち、また最近では、イタリアの労働市場を脅かす移民問題や、或いは極端なテロ報道がアラブの人たちのイメージをさらに悪くする。
つまり、「近くにいすぎる異質で、厄介な存在」ということが、いつの間にかみんなに刷り込まれているようだ。

「自分の目で見たわけでもない」、「本来なら未知でニュートラル」であるべきことが、知らない間に周りの人のこれまた無責任な感覚にゆがめられて、大きな偏見を生んでいる.....
私たちは、いったいどのくらいの偏見を持っているのだろう。
そしてまた、そのために「知る」チャンスや「出会い」のチャンスを逃しているのだろう。

3日間という短いたびの中で、できるだけいろんな日常の場へ出かけ、現地の人たちと話をし、人々を観察した。
スークの屋台で働く人たちやフィリピンやインドからの移民と世間話をしたり、アラブのビジネスマンはドバイの経済事情を延々と説明してくれた。

有名ブティックでカラフルな衣装を試着するブルカの女性、レストルームでブルカの下のかっこいいスーツを整える女性、真っ赤な口紅をベールの下につける女性。
家族連れや夫婦では子供の手を引き、面倒を見るのは男性のようだ。子煩悩の白い衣装のパパは、大きな荷物もすべて運び、さらに女性を守っている。初々しく手をつないで歩くカップル、若い女の子たちが、きれいなブティックの前でお気に入りを友達と比べあっている。高校生くらいの少年たちが、スターバックスの前でふざけあっている。民族衣装を身に着けて、男女は別々に行動しているが、そんなどこの国でも見るごく普通の光景に心が和んだ。

一緒に言ったイタリア人の友人の偏見が一つ一つほどけていく....

町で出会った人々が、老若男女を問わず口々にドバイを語ってくれた。
税金というものがほとんど存在しない。学校も病院もすべて無料。治安はよく、夜中に町を歩いても問題はない。町はごみも落ちていないし、清潔できれい。そして「ここはとってもいい国だ」と断言した。

世界のあちこちで起こる紛争や問題に、おそらく、宗教も民族も関係ないのだ。
人々は豊かであれば、違いを受け入れる余裕も持つのだ。
人口の80%が外国人というドバイで、人々が違う宗教、違う風習、違う民族と毎日ふつうに共存しているのが、その何よりの証拠だろう。

アフガニスタンやパキスタン、アフリカの各地、その他、紛争が続く土地はいまだたくさんある。
そこの治安に貢献するといって使われる軍事費のすべてが、もし、その土地を豊かにし、食べ物や教育や医療がすべての人に届くように使われれば.......そんな夢のような物語を思わずにいられなかった。

 


2009/6/30

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


FIAT GROUP
フィアット・グループ
http://www.fiatgroup.com/en-us/Pages/default.aspx

経営破綻した米自動車大手クライスラーとの資本提携で合意し、CEOを送り込み、経営再建に取り組むことになり、一躍脚光をあびているイタリアのFIAT GROUP。同グループの歴史からビジネスの全貌、取り扱い車種など、スマートに編集されている公式サイト。





2009/6/30
編集後記
イタリアの「日焼け」願望 VS 日本の「美白」信仰

20年近く、イタリアと日本を行ったり来たりの生活を続けていると、無意識のうちにも、様々な生活スタイルや社会現象について「イタリアではこうだけど」とか、「日本もイタリアも似たりよったり」などと比較対象をする習慣がついてしまっている。

そんな中で、何年たっても、毎年夏が近づくと、日伊のあまりにも大きな違いに愕然とくるのが、「日焼け」に対する日伊の女性の両極端な対応といえよう。

イタリアでは6月に入ると、老若男女、「海に行くこと」が最も楽しい話題の一つとして浮かび上がる。夏休みの行き先について毎年あらゆる調査でトップは海に行くことである。最低1週間は海辺の町に滞在して、一日中のんびり海のある生活を楽しむのである。 7月ともなると、ミラノの街中でも若い女性も若くない女性も顔から腕から足までこんがり、あるいは浅黒く日焼けした肌をノースリーブ、胸元の大きくあいた服で見せびらかすように闊歩しだす。9月のはじめになるとそれは頂点に達し、「いい色ね。どこの海にいってきたの」というのが誉め言葉となる。「日焼けした肌」が一種のステータスシンボルになっているともいえよう。

実際、夏の海に行くと、あらゆる年代の人が来ている。カップルも家族連れも、友人グループも。スリムな人もいればお相撲さんのような体型の男女もいるがそんなこと気にしているようにはみえない。大好きな海に来たのだから誰もが嬉しそうだ。ただし、海に入り泳いでいる人は少し。大多数が、浜辺で日光浴に余念がない。カンカンデリの下、大きな日よけパラソルも並んでいるが、ここでも女性たちが争うようにパラソルからはみ出して直射太陽の下で体を焼いている。とりわけ、顔を太陽光で焼くのに余念がない。よりよく焼けるようにと顔や体にクリームをなすりこんでいる。海辺なのに麦わら帽子などかぶっている人はまずみない。折角の太陽の光を遮断してしまってもってのほかということなのだろうか。

方や、夏に日本に帰省すると、「美白」信仰が浸透し、年を追うごとにその信仰は強くなる一方だ。住宅地では、女性は誰もが帽子をかぶるか日よけ傘をさし、暑くても日に当たらないよう長袖のブラウスをはおったり、手袋をしたりして歩いている。すべて「美しい肌」を太陽から保護するためだ。洗濯物を干しにベランダに出る際も、日に焼けないように要注意。新聞、雑誌、テレビ、どこでも「美白ケア」と「紫外線対策」という文字を見ない日はない。太陽の紫外線は、シミ、ソバカス、肌の老化の原因、すなわち「女性の天敵」で、また皮膚がんの元ということで、それを避けるために誰もが痛々しいほどに真剣に万全の策をとっている。
海へ行くなんて、またまた日光浴をするなんて、日本の大人の女性の間ではまず想像もできない夏のすごし方である。

イタリアでこれまで何度も「そんなに日焼けして肌に悪いのではないの?」とたずねてみたが、まったく相手にされない。「皮膚がんになる恐れも高くなるのに」といってみても、「ふん?」という程度。逆に、「夏の間に太陽の光を浴びておくことが肌にもいいしカルシウムもとれるので骨にもいい。そして何より海辺でリラックスすることが心身の健康にいい。この瞬間があるから1年中元気でいられる」というのが 言い分のようだ。

イタリアの「日焼け」願望と日本の「美白」信仰。もちろん、イタリア人と日本人では肌の質も違うので、太陽光や紫外線からうける「肌のダメージ」も違うのだろう。それと人生の中で「太陽や海のある生活をエンジョイすること」を最優先とするのか、「美しい白い肌を護る」ことを重視するのかという選択の問題もあるのだろう。

ただ、ふと思うのは「皮膚がん」の問題はどうなのだろうということ。一度、イタリアと日本の皮膚がん発生率など専門家に聞いてみたいと思う。あんなに「焼いていて」イタリアの場合は日本と比べ皮膚がん発生率がとても高いのだろうか?それとも、一般の人がその点をあまり知らないところをみると大した率ではないのだろうか?

いずれにしても日本は世界の最長寿国。イタリアも世界で2-3位を占める長寿国。太陽で焼こうが、太陽を避けようが、寿命という観点からは、どちらも大差はないのかもしれない。


2009年6月30日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)


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