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2009/5/31

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ、91年よりミラノ在住。三井住友保険会社ミラノ支店勤務の一方で、日本、イタリア、フランス等各国で 異文化間マネージジメント、コミュニケーション、NLPセミナー・トレーニングを行っている(www.global-excell.com)。執筆は「普段着のミラノ案内(晶文社)」をはじめ各種新聞雑誌コラム等多数。

 

2009/4/30

56. 「ドバイにて」

先日ドバイを訪れた。
アラブ首長国連邦、ペルシャ湾に突き出したアラビア半島の先にある小さいけれどとても豊かな国のなかの、これまた非常に豊かな町。
石油マネーで急成長を遂げ、今やシンガポール、香港に次ぐ世界第3の中継ぎ貿易地となった、この町は私にとって、長い間なぞに満ちた町だった。

年間7千万人が利用するというドバイ航空に早朝についた私は、まず税関で真っ黒なブルカ(アラブの女性の民族衣装)をまとった女性から通関検査を受けた。
通関の男性もまた、アラブの白いベールと白い長い服、そして頭には例の黒い輪をつけている。
「ああ、アラブの国に着いたのだ」、そんな当たり前のことにいまさらながら感動した。

ドバイは、やしの木の形をした人口島、パームアイランドとその豪華なリゾートマンション群、ヨットの形をした有名な7星ホテルや、世界一高いビル、最近では45度を超える灼熱の地にスキー場を創るなど、世界の注目を浴び続けている。
その豊かで超モダンなイメージと、目しか見せない女性たちや砂漠を行くらくだの姿、そしてモスクから聞こえる祈りの声といったイメージが、どうしても結びつかない。あまりにもギャップがある。
そんな私の疑問を覆すように、そこではすべてが、ごく普通に共存していた。

ところで、イタリア人がアラブの人、特にアラブの女性の話になると、非常に感情的になるのはどうしてなのだろう。
「カルチャー」に関するセミナーをいろんな国籍の人相手にする機会が多い私だが、黒いブルカはもちろん、アラブの男性の白い長い衣装とベールを見ただけで、警戒心を持ち、攻撃的になる人を今まで何人も見てきた。
今回の旅を一緒にしたイタリア人の友人もその一人だった。
彼女自身、これがはじめてのアラブの国の訪問だった。アラブ人の友人を持ったこともないという。つまり、本来なら「白紙」であるべき人が、知らないうちにこれほどまでの偏見を持っていたことに彼女自身が驚いた。

一般の日本人にとっては アラブの人々はまだまだ「遠い人」だろう。
イスラム教も、せいぜいTVでみるくらいのもので、ミラノのように、日常生活でその祈りに出くわすこともない。

それに対してイタリアは、中世以降、歴史的に何度も好ましくない接触をもち、また最近では、イタリアの労働市場を脅かす移民問題や、或いは極端なテロ報道がアラブの人たちのイメージをさらに悪くする。
つまり、「近くにいすぎる異質で、厄介な存在」ということが、いつの間にかみんなに刷り込まれているようだ。

「自分の目で見たわけでもない」、「本来なら未知でニュートラル」であるべきことが、知らない間に周りの人のこれまた無責任な感覚にゆがめられて、大きな偏見を生んでいる.....
私たちは、いったいどのくらいの偏見を持っているのだろう。
そしてまた、そのために「知る」チャンスや「出会い」のチャンスを逃しているのだろう。

3日間という短いたびの中で、できるだけいろんな日常の場へ出かけ、現地の人たちと話をし、人々を観察した。
スークの屋台で働く人たちやフィリピンやインドからの移民と世間話をしたり、アラブのビジネスマンはドバイの経済事情を延々と説明してくれた。

有名ブティックでカラフルな衣装を試着するブルカの女性、レストルームでブルカの下のかっこいいスーツを整える女性、真っ赤な口紅をベールの下につける女性。
家族連れや夫婦では子供の手を引き、面倒を見るのは男性のようだ。子煩悩の白い衣装のパパは、大きな荷物もすべて運び、さらに女性を守っている。初々しく手をつないで歩くカップル、若い女の子たちが、きれいなブティックの前でお気に入りを友達と比べあっている。高校生くらいの少年たちが、スターバックスの前でふざけあっている。民族衣装を身に着けて、男女は別々に行動しているが、そんなどこの国でも見るごく普通の光景に心が和んだ。

一緒に言ったイタリア人の友人の偏見が一つ一つほどけていく....

町で出会った人々が、老若男女を問わず口々にドバイを語ってくれた。
税金というものがほとんど存在しない。学校も病院もすべて無料。治安はよく、夜中に町を歩いても問題はない。町はごみも落ちていないし、清潔できれい。そして「ここはとってもいい国だ」と断言した。

世界のあちこちで起こる紛争や問題に、おそらく、宗教も民族も関係ないのだ。
人々は豊かであれば、違いを受け入れる余裕も持つのだ。
人口の80%が外国人というドバイで、人々が違う宗教、違う風習、違う民族と毎日ふつうに共存しているのが、その何よりの証拠だろう。

アフガニスタンやパキスタン、アフリカの各地、その他、紛争が続く土地はいまだたくさんある。
そこの治安に貢献するといって使われる軍事費のすべてが、もし、その土地を豊かにし、食べ物や教育や医療がすべての人に届くように使われれば.......そんな夢のような物語を思わずにいられなかった。

 


2009/5/31

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


TUTTOFOOD
ミラノ国際食品見本市
http://www.tuttofood.it/en/index.html

2年に1度、世界の食品関連企業が一同に介する国際見本市TUTTOFOODが、6月10日から13日まで、ミラノ見本市会場で開催される。前回2007年開催には世界33ヶ国から1,267社が出展した。同見本市は今年度からはパルマの食品見本市CIBUSとパートナシップを結んでいる。





2009/5/31
編集後記
2009年は「ミラノの日本年」
ーサムライ展から現代音楽・雅楽までー

5月末にパラッツォ・レアーレ(王宮)で開催中の「モネ展 - 睡蓮の時代展(monet : il tempo delle ninfee)を見に行った。もともとモネの絵は好きだし、日本の浮世絵の影響に焦点を当てた企画ということでその点にも興味があった。

展覧会会場に入って驚いたのは、最初の解説パネルが、松尾芭蕉の俳句で始まっていたこと!これは気合をいれて臨まねばと気持ちが引き締まった。会場には、モネが1890年にパリから約80kmの郊外にあるジヴェルニーに家と庭園を購入して移り、日本式庭園を造り育て愛し,1900年から1923年までそこで描いた睡蓮のある風景の連作20点が展示されている。同時にモネに影響を与えた北斎や広重などの浮世絵60点1800年代の日本の庭園の写真や絵画コレクションなど貴重な作品が展示されており、モネと日本庭園や浮世絵との関係が詳細に解説されている。
へえ、印象派を代表するモネがこれほどまでに日本の美的感性から決定的な影響を受け、彼の作品を代表する睡蓮を描いたとは・・・と心底びっくりした。会場内には多くの見学者がいて皆、きわめて真面目に作品を眺め解説文を読んでいる。もちろん見る限り99%イタリア人だ。

実は、同じパラッツォ・レアーレの別スペースでは去る2月25日から「侍SAMURAI 展」が開催中でこれも大変な評判を呼んでいる。これはイタリア初といわれる”サムライ”の世界に焦点を当てた展覧会。ミラノ出身の Koelliker 氏が日本在住中に収集した日本の「鎧(ヨロイ)」「兜(カブト)」のコレクションが多数展示されている。「侍の活躍した時代」を時代背景や文化・社会的側面など広い視点で紹介しようという意欲的な催しだ。
私も2月のオープニングの際に見に行ったが、熱心に見入る人々の姿に圧倒された。特にイタリアの子供たち(幼児から中学生)が夢中になって日本のカブトやヨロイを見学していること。イタリア人の女友達が4歳の息子を連れて見に行ったところ、その子供がすっかり気に入ってしまって、3時間も会場で楽しんでいたといっていた。

なお、この「モネ展」および「サムライ展」は、ミラノ市が2009年に主催している4つの日本文化展の第一陣と第二陣となる。9月には「蝶々夫人展」、さらに12月には桃山時代から江戸時代の作品を集めた「日本の傑作百点」が開催され「ミラノの日本年」のフィナーレを飾る。

この数年来、日本食や寿司で火のついたミラノの日本文化ブーム。これまでも市内各所で中小規模の文化展やイベントはいくつも開かれてきたが「日本文化愛好家」に向けたものが中心だった。 一般市民を対象とした、ミラノのシンボル大聖堂脇のメジャーな会場でのこれだけの「晴れ舞台」はあまり前例がない。

ふりかえってみると、1990年の初頭、ミラノに住みはじめたころは、経済や技術の進んだ国、仕事ばっかりしている国、JAPAN AS NO1と「一人勝ち」を誇っている国、そんなイメージの強かった日本。バブル崩壊やその後いろんなことがあって、そして今回の世界的経済不況。 「日本も大変みたいね」というのが、イタリア人の印象のようで、「大変なのはイタリアだけではないのね」という一種の親近感が底にあり、市民レベルの両国の距離がはからずも近づいてきているように感じる。草の根の日本文化が少しずつ浸透していることがその背景にあることはいうまでもない。

ところで、9月3日から24日まで、国際音楽祭MITO「音楽の9月」がはじまる。MITOはミラノ(Milano)とトリノ(Torino)の頭文字から合成した言葉。ミラノとトリノの両都市でクラシック音楽から現代音楽、ジャズまで実に200以上のプログラムが展開される。今年3年目の同音楽祭のテーマ国はなんと「日本」!MITOのパンフを見ていたイタリア人の友人が声をあげた。「これ一緒に見に行きましょうね!」 「何?」とパンフをみると「現代音楽」や「雅楽演奏会」を指している。「そんなの退屈だから勘弁して」と言いそうになったが何とか押さえた。「そうね........」と。
日本にずっと住んでいたら、雅楽をわざわざ聴きに行くなんて一生ありえないと思う。現代音楽もこれまでの経験では遠ざかっていたい世界だ。でも純粋な好奇心で目を輝かせているイタリアの友人に、見る前から完全否定してしまうのも大人気ない。日本からはるばるミラノにやってくる演奏家にも失礼なことだ。私も先入観なしの空の気持ちで臨んだら、もしかしたら雅楽にも現代音楽にも新しい発見があるかもしれない、と自分に言い聞かせた。でも正直いうとすぐに居眠りしてしまうおそれの方が大きいけれど。


2009年5月31日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)


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