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2009/2/28

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ、91年よりミラノ在住。三井住友保険会社ミラノ支店勤務の一方で、日本、イタリア、フランス等各国で 異文化間マネージジメント、コミュニケーション、NLPセミナー・トレーニングを行っている(www.global-excell.com)。執筆は「普段着のミラノ案内(晶文社)」をはじめ各種新聞雑誌コラム等多数。

 

2009/1/30

55. 「肺炎」

ミラノに住むようになってかなりの年月がたつが、今年ほど寒くて、雪が多い冬ははじめてだった。
雪化粧の古いミラノの町並み、木々を覆う細かな雪、宙をまう柔らかなボタン雪、すべてが音をなくしてしまったような錯覚を楽しんだのもつかの間、雪に慣れていないミラノは交通マヒをはじめ、さまざまな問題に直面した。
しかし、そんな中でこの冬一番驚いたのは”肺炎”だったかもしれない。
毎年この時期になると必ずやってくる数々のインフルエンザ、今年はやれ、香港型だの、オーストラリア型と連日、インフルエンザに関する報道が伝えられるが、異常な寒さと湿気が原因なのか、かなりの多くの人がお年寄りでも子供でもないのに今年は肺炎にかかった。私の周りにも3人が40度以上の熱に連日うなされ、10日以上入院することになったのだ。

熱が少し下がるのを待ってお見舞いに行く。
診察を待つ人であふれかえる外来を抜けて、大きなエレベータと病院独特のにおいがする殺風景な白い廊下を進み、めざす病棟にたどり着く。
お見舞いができる時間は一応決められているものの、そのあたりの取り締まりは日本よりかなりルーズ。
おしゃべり好きのイタリア人だからなのか、少し元気になった人は 自分のベッドでゆっくりしていないので、見つけ出すのに一苦労。
違う病室に行って話し込んだり、売店まで散歩したりで、ベッドにいないことがほとんどだ。
詰め所のそばにある談話室は、まるで社交の中心であるかのようにいつも大変なにぎわいようだった。

それにしても、ここ数年でイタリアの病院は変わってしまった。
病院によって多少の差はあるものの、イタリア人の看護士さんがほとんどいなくなった。
この冬、3人の友達を訪ねて5回病院に行ったが、見かけた看護士さんの80%が、東欧、インドなど明らかに外国からの人たちだった。
入院している友達らが口をそろえて言う。
「彼女たちはやさしいし、プロなんだろうけど、なんとなく不安なんだよね。」
「偏見なのかもしれないけど、衛生に関する観念が違うなって感じることがある。」
「本当にこちらが話していることが全部伝わっているのか、分からないことがある。」
「食事の質も落ちたし、たとえばパスタがゆですぎだといっても、そのことを分かってもらえない。」
病院で唯一の楽しみといってもいい食事への不満は文化摩擦に繋がっていく。 

今や数少なくなったイタリア人の看護士の友人も、職場が変わってしまったことを心配する人の一人だ。
EUの拡大で東欧からの出稼ぎ看護士がここ数年、ものすごい勢いで増えたのだという。
看護士のようにきつくてつらい仕事は今のイタリアの若い人には流行らない。
病院側も外国人を雇ったほうが安くつくので 便利だというわけだ。
一応、資格を持っている人が採用されているはずだが、資格試験の水準や、許可書の配布に不透明なところが多いらしく、彼女自身が戸惑っているという。
一方で失業の問題を抱えながら、仕事を選ぶイタリア人。
コスト面で移民の採用に走る雇用側。
人道的な立場からその規制に介入する教会勢力と キリスト教徒票を前に改革を進められない政治家たち。
そしてその一方で加速する人口の老齢化と経済危機.....
イタリアという国が肺炎にかかっている.....

ところで、今回肺炎にかかった友人のひとりは52歳の女性だったが、彼女を訪ねておどろいた。
5人部屋に入れられた彼女と同室の人は76歳、83歳、94歳、104歳だった。
シニョーラ ジョーバネ(Ms. Youngの意味)と呼ばれた彼女は苦笑しながら、彼女たちの関心ごとについて聞かせてくれた。
94歳の彼女は、ペディキュアをするのが大好き。ただ、検査のたびにとりなさいと看護師さんから叱られている。
83歳と76歳は、少しステキな男性医師の回診のある日はパジャマを着替える。
そして104歳の彼女は、2日に一度のシャンプーを決して欠かせないのだそうだ。

肺炎にかかったイタリアが、それでも輝きを失わない、そんなしたたかさを垣間見た気がする.

 


2009/2/28

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


ミラノ万博「EXPO2015」の公式サイト
http://www.milanoexpo-2015.com/

2008年3月31日に「EXPO 2015ミラノ万博開催」が正式決定してもうすぐ丸1年。すぐに発足すべき同EXPO運営会社の発足が遅れに遅れ、2009年2月末現在まだ会社の設立すら出来ない状況が続いている。開催準備の大幅な遅れに関係者の間で懸念が広がっているが.....



2009/2/28
編集後記
経済危機とサンレモ音楽祭の大人気

毎年2月に北イタリアのリグーリア州の海辺の小都市サンレモで開催される「サンレモ音楽祭」の名は日本でもかなり知られている。イタリアを代表するこの音楽祭「SANREMO 09」は今年第59回目。日本の紅白歌合戦と似た要素を持つ国民的行事である。

大晦日の一夜だけの紅白とちがって、「サンレモ」は5日間、毎晩21時から24時過ぎまで国営テレビRAI1で連夜、生中継される「大音楽祭」。さらにその他の時間帯でもニュースでもあるいはRAI2でもRAI3でも関連番組が組まれる。RAIの威信をかけての「サンレモ漬け」の期間だ。この数年は「マンネリ」「低視聴率」「曲がり角」などこれも紅白に似た厳しい批評を受け続けてきており、正直、ウンザリしていたのは私だけではないようだ。

ところが、2月17日(火曜)から21日(土曜)まで開催された今回のサンレモ音楽祭、どんな希望的予測もかなわないような「1人勝ち」に近い視聴率を記録し、大盛況のうちに閉幕した。私も「ああまた」と達観して見たところ、思わず引き込まれてほとんど毎晩見てしまった。こんなことはじめてだ。

その秘密は何だろうか。成功の背景には直接・間接に「経済不況」があるというのがもっぱらの分析。不況で節約志向の毎日、外に遊びに行かず「茶の間」で家族一同サンレモを楽しむ、そんな家庭が増えたためと、新聞では評している。

それもあるけれど、私見では、サンレモの内容自体が今の社会の気持ちをうまくとらえていたことが大成功の理由ではないかと思われる。

まず、男性司会者のバランス感覚溢れた進行のうまさが評判になったが今回はサブ司会も男性タレントがつとめるという異例の組み合わせ。例年であれば「花を添える」サブ司会は美人女優と決まっていて最高級ブランドのドレスを5日間に20着以上も「お色直し」していたが今回は時節柄を反映してかその種の豪華さは影をひそめた。演出もシンプルで音楽が主役、文字通り音楽を競い楽しむ音楽祭のイメージを強く打ち出した。

そして何よりも「イタリアらしい歌」への「回帰」。今回披露された歌が暖かみのありメロディの美しい曲に溢れていることも成功の要因ではないかなと思われる。凝った歌やロック、難しい曲、独りよがりの曲は今年は影をひそめた。複雑な社会的テーマを扱ったものもあるがけして攻撃的ではなく心に素直に入ってくる歌、自然に感動が溢れる曲、一緒に歌いたくなる歌が多いのだ。
特に、大きなメガネをかけたアリーザという新人女性が歌い新人賞を受賞した「シンチェリタ(誠実さ)」は大喝采をあびた。会場のアリストン劇場のトイレで大勢の人が口ずさんでいたというから、人気は本物だ。

先行き不透明な今を、不安をかかえながら生きている人も少なくない。だからこそ、ぬくもりや感動を求め一体感を味わえるひとときや歌を人々が求めていたのではないか。


2009年2月28日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)


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