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2008/12/30

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ、91年よりミラノ在住。三井住友保険会社ミラノ支店勤務の一方で、日本、イタリア、フランス等各国で 異文化間マネージジメント、コミュニケーション、NLPセミナー・トレーニングを行っている(www.global-excell.com)。執筆は「普段着のミラノ案内(晶文社)」をはじめ各種新聞雑誌コラム等多数。

 

2008/9/30

54. 「闇の中の対話」

光ひとつ差さない真っ暗な闇の世界、都会にいればどんなに暗いと思っても目が慣れてくると多少の明暗や、何かの影がうっすらと見えるものだが、それすら許されない本当の闇、そんな世界を先日体験した。170年の伝統を誇るミラノの盲人学校で「闇の中の会話-dialogue in the dark」のツアーに参加したのだ。
ツアーは約1時間半、荷物をロッカーに入れてカーテンをくぐると、薄暗い入り口で白い杖を渡される。杖の使い方の簡単な説明をうけたあと次第に光が遠くなっていく廊下を進むと、まもなく本当に何も見えない闇の世界に到達した。あまりのインパクトの強さに身動きが出来なくなってしまった私たちを明るく迎えてくれたのはガイドのジュリアーノ。彼自身、目が見えない。自己紹介する私たち一人ひとりの肩や腕に触れながら力強い声で冗談を連発しては私たちの気持ちをほぐしてくれる。

「さぁ、僕に続いて」といわれ、その声の方向に恐る恐る足を踏み出す。白い杖で足の前方をしつこいくらいチェックして、もう一方の手は壁に沿わせる。他の人とぶつかっては謝り、声を確認しながら、一歩一歩が大仕事。皆が口々にジュリアーノを呼びながら大変な時間をかけてようやく庭にたどり着いた。
まず、床がじゃりになった。壁がなくなり、空をさぐった手が木の固い感触にぶつかった。ほのかな空気の動きが頬に感じられ、鳥のさえずりと水の流れる音が聞こえた。ジュリアーノが手をとって導いてくれる。「これが花、これが椰子の木の幹、ここからが木の橋....」
視覚が全く使えない分、他の感覚が必死で情報収集をする。普段使っていない感覚が目覚め始めたのか、一緒に参加した6人の声はすぐに聞き分けられるようになった。
じゃりが細かい砂になるのが靴を履いていても分かる。そばに誰かがいる気配、その人の服の肌触りでそれが誰なのかも分かるようになってくる。
そんな驚きに感動しながらも坂道が怖くて降りられない。ボートの乗りうつるといわれて杖の先が触れた水の音に一人の女性が叫び声をあげた。

感動よりも恐れが大きくなり始めるたびにジュリアーノが気づくのは偶然なのだろうか?大きな手でしっかりと肩を抱いてくれるだけで限りない安心感がひろがった。
漁師の家をおとずれ、市場に行く。市場の屋台にあるものを 手で触れてにおいをかぐ。「これはジャガイモ、これはレモン、でもこのレモンは少し古い!姿が見えなくてもそんなことまで分かる!」
すこし闇に慣れたのか、みんなの声も心持ち明るくなったと思ったら、今度はいきなり都会の真ん中に到達した。
こんなにたくさんの騒音があったなんて......
車の音、人の足音、クラクション、ざわざわとした雑踏など耳を覆いたくなるような無数の音とその情報の多さに圧倒され、歩道と車道の段差や無造作に駐車してある自転車やバイクがいかにおそろしいものかを実感し、次第にみんな無口になっていく......

やがて、そんなみんなを励ますようにジュリアーノが私たちをバールに案内した。
表のドアを閉めると、店内のピアノの音が私たちのこころを包んだ。
杖と手の両方でテーブルと椅子を確認し、腰を下ろす。これまた盲人のウエーターが暗闇の中でひとりひとりに触れながら挨拶をし、その手にグラスを持たせてくれた。

ジュリアーノは生まれたときから目が見えなかった。
色やもののかたちを一度も見たことがない彼にとって、それでも色や形を表す言葉は世界をよりゆたかに彩る(!)大切な要素だという。
目の見える女性と結婚をし、7歳の子供がいる彼は日常生活を私たちと同じように過ごしている。
PCや携帯電話のメッセージも文字を音に変換するソフトで私たちと同じように使う。
地下鉄に乗って移動するし、マーケットで買い物もする。
日常生活でよく困ることは?という質問に 部屋の電気を消すのを忘れることと答えた。
冗談だと思って笑った私たちに、「ボクにとっては変わらないが、翌月の請求書は変わるんだよ」とはじめてまじめな声をだした。

盲人学校の仕事だけでなく、最近はラジオの仕事も始めたという。
暗闇のバールで、ハンディーキャップのある人はかわいそうとどこかで思っていた私たちは、その明るさと意志の強さに魅せられ続けた。
ジュリアーノの言葉がいまでも頭の中をこだまする。
大切なのは常に恐れに打ち勝つこと、常に自分を超えること。
あの力強い手と声は同時に限りなく優しかった。

 


2008/12/30

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


ヨーロッパ天気予報サイト
http://www.eurometeo.com/english/home

ヨーロッパ天気予報サイト、EURO WEATHERのサイト。イタリア主要都市の天気予報の詳細が3時間おきに表示されている。サッカーの試合のある日にはサッカー場のある都市の天候も載っている。



2008/12/30
編集後記
下院議事堂のクリスマスコンサート
清清しい山岳合唱の響き

クリスマスを直前に控えた12月21日の日曜日。午前中、何気なくテレビをつけると、素朴で美しい男性合唱の音色が聞こえてくる。何だろう?と画面を見ると「下院議事堂より中継」とある。
「下院主催のクリスマス『山岳合唱』コンサート」(Camera di Deputati, Il Concerto della Natale della Coralita' di Montagna)の中継であった。普段は議員先生たちの並ぶ議員席のブロックごとに、イタリア各地から招聘されたアマチュア合唱団の面々がそれぞれユニフォームを着て座っている。大半が男性で遠めに見ても年の頃は若くて50歳代、60歳代が中心で70歳代とみえる人も少なくない。そして国会質疑の行われる議事堂中央スペースが、コーラスの舞台だ。

アペニン山脈の羊飼いが羊の大軍を連れてトスカーナのマレンマ地方まで大移動する歌をレッジョ・エミリアの合唱団が歌っている。次はヴェネト州ベッルーノの40年の歴史を誇るドロミテ合唱団でジャンパー姿の男性合唱だ。世界中をトルネー公演しているとあって、羊飼いの孤独な暮らしや家族のもとに帰る喜びを高らかに歌うと議事堂内は拍手喝采となる。その次はスキー場で有名なチェルヴィーノ(モンブランのイタリア側)のグループ。第一次大戦中に国境で祖国を守るために戦ったアルプス山岳兵の歌を素晴しい和声で披露する。アブルッツォ州山岳部から来た合唱団はイタリア統一に身を捧げた兵隊のストーリーを歌う。そしてトレント合唱隊の歌は美しい山や自然への畏敬と感謝のメッセージ。

途中、リバティ様式の見事な議事堂内部や高い天井が映し出される。そうか、いつも与野党が対立して罵声や非難の応酬をかわしている場所はこんな美しい空間なのかと驚く。人間の声のハーモニーが高い天井に響き一流音楽ホールに負けない最高の音響効果を生んでいる。全国からの9チームいずれも無伴奏、シンプルなメロディで素朴なハーモニーで清清しい曲だ。労働のつらさと喜び、友情、家族、祖国愛、そして助け合いや連帯がテーマとなっており、共に歌う楽しさが自然に伝わってきた。難しい1年だった今年の年の瀬、心の洗われる一時となった。


2008年12月30日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)

***************************************************** 本年もJIBOをご愛読いただきありがとうございます。2009年もご支援・ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願いします。健やかな新年をお迎えください。 FELICE ANNO NUOVO 2009 !


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