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2008/6/30

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。 著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。 

 

2008/4/30

53. 「イタリアの中の中国」

最近中国の周辺が何かと騒がしい。
日本でもオリンピック聖火リレーは混乱となったようだが、ヨーロッパ、そしてイタリアでも中国関連のニュースが報道されない日はないといってもいい。

そんな中でイタリアと中国の関係に興味がわいた。
一般的にイタリア人に中国とイタリアとの歴史を聞くと、ほとんどに人が「マルコポーロが元の時代に中国にいったんだよ」という答えが帰ってくる。 そして学校では毛沢東のことを少し、そしていきなり現代の話になる。
それまで中国と日本の違いもあまりよく分かってなかった人たちが、最近ははっきり区別するようになった。

イタリアの移民の中で中国人は約12万人で5番目に多い。トップはルーマニア人、そしてアルバニア人、モロッコ人、ウクライナ人と続く。
もっともこれは正式に登録された移民の数だけなので、登録されていない人を含めるとその数は大きく膨れ上げるだろう。
全移民の中の約5%を占めるこの中国人たちだが、他の移民と決定的に異なる傾向がある。
他の移民たちのほとんどが、イタリアの企業、工場や或いは農地で雇われて働くのに対し、中国人は小さくても自分で経営する店や会社をもっていることだ。
そして他の移民たちどころか、イタリア自体をも上回る数字は女性の経営者の割合だという。統計によると、約2万といわれる中国人経営の商店或いは会社の35%が中国人女性による経営なのだそうだ。

今から15年ほど前、移民はまだまだ少なかった頃、それでも中国レストランだけはどんな小さな町にもあったので、その浸透度に驚いた。
そのころ住んでいたアパートの一階の倉庫のようなところに中国人家族が住んでいて、夜の2時になってもかばんを作る機械の音がやまなかったのを良く覚えている。

その後、移民の数がどんどん増え、中国が経済力をつけてくると同時に、ミラノでもチャイナタウンが拡大し、町のいくつかの地区には中国人経営の店がどんどん増えた。通りによっては イタリア人のお店よりも彼らの店のほうが圧倒的に多いところまで出てきた。
中国野菜が問題になれば、ピッツェリアに姿を変える。南米からの移民が多い地区では、中国料理だけでなく南米の料理も出す。ミラノでおすしのブームがおこれば、あっという間にSUSHI BARに早代わりする。
柔軟さというのか、儲けるためにはなんでもというのか、見方は人それぞれだが、生まれながらの商人であることだけはどうやら確かのようだ。
レストランだけではない。深夜まで開いている理髪店、イタリアの美容室が日曜日と月曜日が休みで、遅くても夜8時過ぎに終わるのに対して、中国人経営のお店は日曜日の夜の10時でも開いている。普通のお店で30ユーロくらいかかるカットは 5ユーロ。バールも増えた。インターネットのお店、いずれも年中無休。
キリスト教の安息日である日曜日は休んで教会のミサへと説き続けるカトリック教会とともに育ち、またバカンスを人生の限りない楽しみとして夢見続ける国民とは そもそも思考回路も行動パターンも何もかも違うのである。

さらに統計を見ていくと、それでも彼らが最も進出している業種はレストランや小売ではないそうだ。全体の45%が卸、そして輸出入、繊維、靴、家具、台所用品など、本来はイタリアが得意としていた業種なのだ。イタリアの競争力が落ちる。やっていけない企業や倒産する店がいくつも出た。
イタリアファッションの有名なブランドは、中国人の会社に下請けをだすか、値段は高くなってもあくまでメイド イン イタリーにこだわるかの選択に迫られ、ほとんどのところが 生き延びるためには前者を選んだ。
中国人の脅威に声を大にする人がどんどん増える中で、中国人抜きで経済が回っていかなくなる日が来るのかもしれない。
経済協力がどんどん加速していく一方で、イタリア人の中国に対する感情が揺れている。

イタリアのメディアが書く。これだけ多くの中国人がイタリアにいても その姿を見ることはほとんどない、と。
確かに、町を歩いていても、ショッピングをしている中国人を見かけることはほとんどない。映画館に行っても、レストランに行っても、また電車に乗っても海に行っても確かに中国人にはほとんど会わない。どうしてなのか?みんな朝から晩まで仕事をしているからだ、というのがイタリアのメディア説。
稼いだお金は中国本土へ送られてしまうのだろうか?子供たちを遊ばせる、旅をさせる、くつろぐことはチョイスにないのだろうか?
富は自由を、そして多くのチョイスを人に与えるのではなかったのだろうか?

その昔、アメリカで知り合った中国人の友人が言った言葉がよみがえる。
「世界の多くの人がたくさんチョイスを持つことが自由だと信じている。たくさんチョイスをもって選べることがいいと思っている。でも、世界にはチョイスは迷いを呼ぶから、ないほうがいいと思っている人がいるんだよ。」と

自分の尺度で人の幸せは計れないのは百も承知で、やはり多少のチョイスを認める寛容さを求めてしまうのは私だけではないだろう。
チベット問題しかり。

 


2008/6/30

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


MITO Settembre Musica
トリノ・ミラノ国際音楽フェスティバル Torino Milano Festival Internazionale della Musica
http://www.mitosettembremusica.it/en/


来る9月1日から25日までミラノとトリノを舞台に開催される国際音楽フェスティバル。両都市の強力なパートナーシップで運営される同フェスティバルは今年2年目。期間中、100以上の会場でクラシック、ジャズ、ポップス、ロック、エトニックなど230に及ぶコンサートが繰り広げられる。


2008/6/30
編集後記
「冷たいお茶」と日伊の温度差

6月中旬すぎまで、この時期にしては200年ぶり?という長雨・低温が続いた後、 6月下旬になって急にミラノに「真夏」がやってきた。日中の温度は30度以上、湿度も上がり日本の猛暑を思い起こさせるほどの天候だ。こんなある日のお昼、ミラノ市内の日本食レストランで出してもらった「冷たいお茶」には感動した。冷蔵庫で冷たく冷やした冷茶用の日本茶、それに透き通ったきれいな氷がいくつか入っている。見るだけでも涼しく、外の暑さを一瞬忘れるひとときだ。
日本にいたら、当たり前の「冷たいお茶」の1杯に至福の喜びを感じたのは、考えてみるとイタリアには「冷たいものは冷たく、熱いものは熱く」というカルチャーが日本ほどは普及していないためかもしれない。「お茶」は論外として、ビールやミネラルウオータにしても夏だからといって「キリリと冷やした」ものを期待するのは難しい。

それは、イタリアの人が面倒だから、あるいは不精だから、冷たくしない、あるいは熱くしないというのではないようだ。私の観察ではイタリア人の舌が日本人よりは「猫舌」で、強く冷やしたものや熱いものもあまり好まないというか受け付けないように思えるからだ。
たとえば、イタリア人に、お味噌汁や吸い物などを日本風に「熱く」してだすと、はじめてのイタリア人は、舌を火傷しそうになり驚きあわてる。食事でコンソメスープなどを飲む習慣がないし、ミネストローネも日本人からみるとやや温か程度のものをどこでもだしてくるので、熱いものを飲むという習慣がなく、従って舌も慣れていないようだ。

逆に、日本人旅行者がイタリアのバールに行って、カプチーノを注文すると、でてくるカプチーノの「生ぬるさ」に誰しも悲しそうな顔をする。「たまにくる外国人旅行者だからこんなものしか出してくれないのだろうか」と思う人も少なくないようだ。私も当初は戸惑った。そこでわかったことは「熱いカプチーノ」と言う程度ではダメなのだ。「ボッレンテ」(沸騰している)と指定して初めて、日本人の考える「熱いカプチーノ」をだしてくれるのだ。

この日伊の「温度差」は、料理や飲み物の温度にとどまらない。真夏なのに時期はずれの話で恐縮だが、バスの湯の快適温度も日本人とイタリア人では大きく異なるようだ。頻繁に通っているスポーツクラブに「ジャクジーバス」や「テルメ」と呼ばれる大きな浴槽等があるのだが正直いって湯の温度が「ぬるくて」閉口する。夏はともかく、秋・冬にはこんな浴槽に入っていたら風邪を引きそうと思って早々に引き上げるのだが、多くのイタリア人が幸せそうに長々とつかっているのをみると、多勢に無勢、彼らには適温なのだろうと我慢するしかない。

この違い、習慣や文化が原因なのか、生理的に何か違うファクターがあるのか、一度専門家の意見をきいてみたい。


2008年6月30日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)


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