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2008/5/31

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。 著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。 

 

2008/4/30

53. 「イタリアの中の中国」

最近中国の周辺が何かと騒がしい。
日本でもオリンピック聖火リレーは混乱となったようだが、ヨーロッパ、そしてイタリアでも中国関連のニュースが報道されない日はないといってもいい。

そんな中でイタリアと中国の関係に興味がわいた。
一般的にイタリア人に中国とイタリアとの歴史を聞くと、ほとんどに人が「マルコポーロが元の時代に中国にいったんだよ」という答えが帰ってくる。 そして学校では毛沢東のことを少し、そしていきなり現代の話になる。
それまで中国と日本の違いもあまりよく分かってなかった人たちが、最近ははっきり区別するようになった。

イタリアの移民の中で中国人は約12万人で5番目に多い。トップはルーマニア人、そしてアルバニア人、モロッコ人、ウクライナ人と続く。
もっともこれは正式に登録された移民の数だけなので、登録されていない人を含めるとその数は大きく膨れ上げるだろう。
全移民の中の約5%を占めるこの中国人たちだが、他の移民と決定的に異なる傾向がある。
他の移民たちのほとんどが、イタリアの企業、工場や或いは農地で雇われて働くのに対し、中国人は小さくても自分で経営する店や会社をもっていることだ。
そして他の移民たちどころか、イタリア自体をも上回る数字は女性の経営者の割合だという。統計によると、約2万といわれる中国人経営の商店或いは会社の35%が中国人女性による経営なのだそうだ。

今から15年ほど前、移民はまだまだ少なかった頃、それでも中国レストランだけはどんな小さな町にもあったので、その浸透度に驚いた。
そのころ住んでいたアパートの一階の倉庫のようなところに中国人家族が住んでいて、夜の2時になってもかばんを作る機械の音がやまなかったのを良く覚えている。

その後、移民の数がどんどん増え、中国が経済力をつけてくると同時に、ミラノでもチャイナタウンが拡大し、町のいくつかの地区には中国人経営の店がどんどん増えた。通りによっては イタリア人のお店よりも彼らの店のほうが圧倒的に多いところまで出てきた。
中国野菜が問題になれば、ピッツェリアに姿を変える。南米からの移民が多い地区では、中国料理だけでなく南米の料理も出す。ミラノでおすしのブームがおこれば、あっという間にSUSHI BARに早代わりする。
柔軟さというのか、儲けるためにはなんでもというのか、見方は人それぞれだが、生まれながらの商人であることだけはどうやら確かのようだ。
レストランだけではない。深夜まで開いている理髪店、イタリアの美容室が日曜日と月曜日が休みで、遅くても夜8時過ぎに終わるのに対して、中国人経営のお店は日曜日の夜の10時でも開いている。普通のお店で30ユーロくらいかかるカットは 5ユーロ。バールも増えた。インターネットのお店、いずれも年中無休。
キリスト教の安息日である日曜日は休んで教会のミサへと説き続けるカトリック教会とともに育ち、またバカンスを人生の限りない楽しみとして夢見続ける国民とは そもそも思考回路も行動パターンも何もかも違うのである。

さらに統計を見ていくと、それでも彼らが最も進出している業種はレストランや小売ではないそうだ。全体の45%が卸、そして輸出入、繊維、靴、家具、台所用品など、本来はイタリアが得意としていた業種なのだ。イタリアの競争力が落ちる。やっていけない企業や倒産する店がいくつも出た。
イタリアファッションの有名なブランドは、中国人の会社に下請けをだすか、値段は高くなってもあくまでメイド イン イタリーにこだわるかの選択に迫られ、ほとんどのところが 生き延びるためには前者を選んだ。
中国人の脅威に声を大にする人がどんどん増える中で、中国人抜きで経済が回っていかなくなる日が来るのかもしれない。
経済協力がどんどん加速していく一方で、イタリア人の中国に対する感情が揺れている。

イタリアのメディアが書く。これだけ多くの中国人がイタリアにいても その姿を見ることはほとんどない、と。
確かに、町を歩いていても、ショッピングをしている中国人を見かけることはほとんどない。映画館に行っても、レストランに行っても、また電車に乗っても海に行っても確かに中国人にはほとんど会わない。どうしてなのか?みんな朝から晩まで仕事をしているからだ、というのがイタリアのメディア説。
稼いだお金は中国本土へ送られてしまうのだろうか?子供たちを遊ばせる、旅をさせる、くつろぐことはチョイスにないのだろうか?
富は自由を、そして多くのチョイスを人に与えるのではなかったのだろうか?

その昔、アメリカで知り合った中国人の友人が言った言葉がよみがえる。
「世界の多くの人がたくさんチョイスを持つことが自由だと信じている。たくさんチョイスをもって選べることがいいと思っている。でも、世界にはチョイスは迷いを呼ぶから、ないほうがいいと思っている人がいるんだよ。」と

自分の尺度で人の幸せは計れないのは百も承知で、やはり多少のチョイスを認める寛容さを求めてしまうのは私だけではないだろう。
チベット問題しかり。

 


2008/5/31

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


ポステ・イタリアーネ Poste Italiane の公式サイト
http://www.poste.it/en/

民営化後、以前と比べかなりサービスの改善したポステ・イタリアーネ(イタリア郵便)。郵便サービス、金融サービスの内容が簡潔に掲載されている他、各種記念切手のオンライン販売も行っている。



2008/5/31
編集後記
久しぶりのトレヴィーゾで

この5月には、不思議な縁で2回も北イタリアヴェネト州のトレヴィーゾに行く機会があった。トレヴィーゾ市は人口8万5千名ほどの水辺の美しい落ち着いた小都市で、トレヴィーゾ県はイタリアでも有数の輸出志向の強い中小企業の集積した地域として知られている。2007年のデータをみても、トレヴィーゾ県の総輸出額は100億ユーロでイタリア全体の輸出額の5%を占めている他、年間GDPは260億ユーロを上回り、一人当たりGDP額は30218ユーロでイタリア全国平均を17%上回る数値を記録している。

今月一度目の同地域訪問は、5月6日から8日まで、ヴェネツィアで開催された第20回日伊ビジネスグループ会合に参加した時のこと。メインテーマは「イノベーション」。2日間にわたり20セッションを越える盛り沢山のプログラムの後、3日目にトレヴィーゾ産業連合主催で行われたトレヴィーゾの産業視察に参加した。超高層ビル用の特殊耐震構造のガラス窓枠等を開発しているPermastellisa Group、車両故障内容の自動診断システムメーカーのTexa社、そして世界企業ベネトンの本社を訪れた。
二度目のトレヴィーゾ訪問は、5月下旬に、日本の産業団体からの依頼で弊社がコーディネートさせていただいた企業訪問の際だ。
都合、数社の中小企業を訪問することとなったがいずれも、技術や製品の革新に対する強い意欲と市場開拓に積極的な姿勢が共通しており元気を与えられるすがすがしさを感じた。

そして本当に久しぶりに訪れたベネトン本社。トレヴィーゾから5分ほどのポンツァーノという小さな町に本社をかまえ、経営企画、企画開発マーケティングの統括や世界5000ケ所以上の販売拠点への物流管理もこの町で行っている。私にはベネトン本社というと忘れられない思い出がある。
1992年ごろのことだろうか。イタリアに住むようになって2年もたたない頃だ。Process Architecture という建築関係専門出版社で法政大学の陣内秀信教授が監修された「ヴェネト:イタリア人のライフスタイル」という書籍の編集チームの一員としてヴェネト州の産業風土の取材を担当させていただいた。その際、ヴェローナ、ヴィツェンツァ、パドヴァなど同州の主要都市で経済界各分野の方々に取材したがトレヴィーゾでは当時のベネトングループ総括ルチアーノ・ベネトン氏へ10分程度のインタビューをする機会を得た。
いくつか用意してきた質問の後、最後にふと「企業の規模が国際化してきた時に大都市ではなくこのような不便な土地に本社をおくことに問題はないのですか」と率直な質問をしてしまった。すると「もし、イタリアの国内市場だけを相手にするならば、国内の中心地に本社をかまえる方がメリットがあるかもしれない、だが、世界各国を相手にするとなると、どこが中心地であるかなど、誰が決められるだろう、ここが世界の中心かもしれない」とこともなげに答えてくれた。
東京で育ち、東京で仕事をしてきて、大事なことは何もかも大都市東京が中心と思ってきた私にとって、ベネトン氏の発言は頭の芯にドシンと響く衝撃的な内容だった。そしてイタリア社会や産業、特に中小企業の姿を見る、私の視点を大きく開いてくれた。

日伊ビジネスグループの視察団を歓待してくれたルチアーノ氏の息子で現代表のアレッサンドロ・ベネトン氏の挨拶をききながら、10数年前、16世紀のフレスコ画の飾られた役員室での新鮮な驚きを思い出していた。その後のベネトン社の世界的進出についてはいまさら言う必要もないだろうが、トレヴィーゾで今月訪れた中小企業の経営者の方々に今、同じ質問を投げかけたらどんな答えが返ってくるだろうか。


2008年5月31日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)


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