JAPAN-ITALY Business On-line
0 BUSINESS ON-LINEITALY NEWS

COFFEE

2008/4/30

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER

HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。 著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。 

 

2008/4/30

53. 「イタリアの中の中国」

最近中国の周辺が何かと騒がしい。
日本でもオリンピック聖火リレーは混乱となったようだが、ヨーロッパ、そしてイタリアでも中国関連のニュースが報道されない日はないといってもいい。

そんな中でイタリアと中国の関係に興味がわいた。
一般的にイタリア人に中国とイタリアとの歴史を聞くと、ほとんどに人が「マルコポーロが元の時代に中国にいったんだよ」という答えが帰ってくる。 そして学校では毛沢東のことを少し、そしていきなり現代の話になる。
それまで中国と日本の違いもあまりよく分かってなかった人たちが、最近ははっきり区別するようになった。

イタリアの移民の中で中国人は約12万人で5番目に多い。トップはルーマニア人、そしてアルバニア人、モロッコ人、ウクライナ人と続く。
もっともこれは正式に登録された移民の数だけなので、登録されていない人を含めるとその数は大きく膨れ上げるだろう。
全移民の中の約5%を占めるこの中国人たちだが、他の移民と決定的に異なる傾向がある。
他の移民たちのほとんどが、イタリアの企業、工場や或いは農地で雇われて働くのに対し、中国人は小さくても自分で経営する店や会社をもっていることだ。
そして他の移民たちどころか、イタリア自体をも上回る数字は女性の経営者の割合だという。統計によると、約2万といわれる中国人経営の商店或いは会社の35%が中国人女性による経営なのだそうだ。

今から15年ほど前、移民はまだまだ少なかった頃、それでも中国レストランだけはどんな小さな町にもあったので、その浸透度に驚いた。
そのころ住んでいたアパートの一階の倉庫のようなところに中国人家族が住んでいて、夜の2時になってもかばんを作る機械の音がやまなかったのを良く覚えている。

その後、移民の数がどんどん増え、中国が経済力をつけてくると同時に、ミラノでもチャイナタウンが拡大し、町のいくつかの地区には中国人経営の店がどんどん増えた。通りによっては イタリア人のお店よりも彼らの店のほうが圧倒的に多いところまで出てきた。
中国野菜が問題になれば、ピッツェリアに姿を変える。南米からの移民が多い地区では、中国料理だけでなく南米の料理も出す。ミラノでおすしのブームがおこれば、あっという間にSUSHI BARに早代わりする。
柔軟さというのか、儲けるためにはなんでもというのか、見方は人それぞれだが、生まれながらの商人であることだけはどうやら確かのようだ。
レストランだけではない。深夜まで開いている理髪店、イタリアの美容室が日曜日と月曜日が休みで、遅くても夜8時過ぎに終わるのに対して、中国人経営のお店は日曜日の夜の10時でも開いている。普通のお店で30ユーロくらいかかるカットは 5ユーロ。バールも増えた。インターネットのお店、いずれも年中無休。
キリスト教の安息日である日曜日は休んで教会のミサへと説き続けるカトリック教会とともに育ち、またバカンスを人生の限りない楽しみとして夢見続ける国民とは そもそも思考回路も行動パターンも何もかも違うのである。

さらに統計を見ていくと、それでも彼らが最も進出している業種はレストランや小売ではないそうだ。全体の45%が卸、そして輸出入、繊維、靴、家具、台所用品など、本来はイタリアが得意としていた業種なのだ。イタリアの競争力が落ちる。やっていけない企業や倒産する店がいくつも出た。
イタリアファッションの有名なブランドは、中国人の会社に下請けをだすか、値段は高くなってもあくまでメイド イン イタリーにこだわるかの選択に迫られ、ほとんどのところが 生き延びるためには前者を選んだ。
中国人の脅威に声を大にする人がどんどん増える中で、中国人抜きで経済が回っていかなくなる日が来るのかもしれない。
経済協力がどんどん加速していく一方で、イタリア人の中国に対する感情が揺れている。

イタリアのメディアが書く。これだけ多くの中国人がイタリアにいても その姿を見ることはほとんどない、と。
確かに、町を歩いていても、ショッピングをしている中国人を見かけることはほとんどない。映画館に行っても、レストランに行っても、また電車に乗っても海に行っても確かに中国人にはほとんど会わない。どうしてなのか?みんな朝から晩まで仕事をしているからだ、というのがイタリアのメディア説。
稼いだお金は中国本土へ送られてしまうのだろうか?子供たちを遊ばせる、旅をさせる、くつろぐことはチョイスにないのだろうか?
富は自由を、そして多くのチョイスを人に与えるのではなかったのだろうか?

その昔、アメリカで知り合った中国人の友人が言った言葉がよみがえる。
「世界の多くの人がたくさんチョイスを持つことが自由だと信じている。たくさんチョイスをもって選べることがいいと思っている。でも、世界にはチョイスは迷いを呼ぶから、ないほうがいいと思っている人がいるんだよ。」と

自分の尺度で人の幸せは計れないのは百も承知で、やはり多少のチョイスを認める寛容さを求めてしまうのは私だけではないだろう。
チベット問題しかり。

 


2008/4/30

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


イタリア統計局ISTATの公式サイト
http://www.istat.it/english/


イタリア統計局 ISTAT (Istituto nazionale di statistica )は1926年に創立され、イタリアの社会、産業、生活にかかわる多岐にわたる統計収集分析、国政調査などを行っている。本サイトから英文の統計資料や出版物などの検索が可能。イタリア統計局ISTATの公式サイト




2008/4/30
編集後記
全納税者所得額をインターネットで公開
イタリア国税庁の「英断」に賛否両論の渦

イタリアに住んでいると驚くことには限りがない。社会も政治も犯罪もファンタジーと創造性に富んでいて何でもありの国イタリア。ちょっとやそっとのことでは驚かない私もさすがに今回はあっと息を呑んだ。百戦錬磨のイタリアのマスコミも仰天した。

4月30日の水曜日、翌日の5月1日はメーディーで祝日という朝、イタリア国税庁が2005年度のイタリア全納税者申告所得額リストをインターネット上に公開したのである。誰もがインターネットにアクセスさえすれば有名人やVIP, 俳優やサッカー選手、政治家、企業経営者をはじめ、近くの商店主、アパートの隣人や会社の上司の申告所得額を閲覧することができるのだ。
公開に踏み切った国税庁は、「納税制度の"透明度"を上げることが目的」と主張。「そもそも税務署への所得申告額は"公開情報"であり、現在でも申請手続きをすれば誰でも他人の申告額を閲覧できる。インターネット上に公開したデータは本日イタリア全国の地方税務署や市町村に配布したリストと内容は同一。インターネットの公開は税務データへのアクセスを容易にしただけであり法的に問題ない」というのが国税庁およびそれを管轄する経済省の姿勢だ。

オンライン公開後、該当サイトへのアクセスが集中して大騒ぎになる中、お昼すぎになって、「ガランテ・プライバシー」が「待った」をかけた。この「ガランテ・プライバシー」とは国会で指名された個人情報・プライバシーデータ保護を保証するオンブスマンのような役務。「プライバシー保護という観点から"公開方法"について疑問がある」として閲覧停止を要請。そのため、国税庁サイトへのアクセスは不可となったが、時遅し、すでに全納税者申告リストファイルは多くの人がダウンロード済みで、閲覧できる海賊サイトが続出。アルマーニってあんなに所得が高いの? え?あの有名人があれしか所得がないの?

国民からも賛成・反対の意見が続出。要は「プライバシーの保護」か、「知る権利の尊重」かという話になる。テレビ番組や新聞社のインターネット上アンケートなどで賛否を問うと、一般読者からの反応は賛成派が多数だ。
賛成派で最も多いのは「ガラス張りにすることで脱税行為への牽制になる」という意見。一方、反対派は「誰が金を持っているのかを公開すると、誘拐の対象になる」「商店などが、マフィアや暴力団から金をまきあげられるなど脅しの対象になる」として犯罪に悪用されるので危険・不安という見方だ。 「子供が学校で親の収入を知られてしまう」ことを心配する声もある。さらに議論は保育園入園の優先順位にまで及ぶ。質素な暮らしぶりの勤め人の申告額より、羽振りのいい商店主の申告額が驚くほど少ないため、保育園に優先的入園し、しかも保育料もずっと低いことも露出。「サラリーマンの税金はガラス張りなのに、自営業はうまくやっている」という日本と同様の議論がここでも繰り広げられる。
一方、「金持ちはどうせ、所得をうまく外国に運び出して財産を運営しているのでそもそも申告所得額なんて形だけのこと」という冷ややかな見方もある。

ところで何とも不思議なのがデータ公開のタイミングである。4月25日の開放記念日、5月1日のメーディと祝日が続き、各自にポンテ(連休)をとって休暇気分が漂っている時期。しかも、4月13日、14日の総選挙の後、新政権発足のための組閣作業が進行中で、旧政権の終了直前の時期。この案件今後どのような展開をみせるとしてもその責任体制がどうなるのかも謎だ。イタリアの不思議は尽きることがないようだ。


2008年4月30日
JIBO編集室
大島悦子 (Etsuko Oshima)


TOP

ご質問・ご意見は/e-mail:jdesk@japanitaly.com
www.japanitaly.com
(C)Japan Plus Italy Co.,Ltd All right reserved.