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2005/5/15

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER


HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。 著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。 

 

43. SUPER ENALOTTO

1-29-49-53-56-74 ジョーカーは67。イタリアのSUPER ENALOTTOと呼ばれる数字を当てる賭けで 今週ミラノから72,000,000ユーロの当たりが出た。
7千200万ユーロ、実際には700万ユーロそこそこのものが10個、一人当たり日本円にしてざっと9億5千万円の当たり。 

このスーパー・エナロットと呼ばれる数字の賭けはイタリアではサッカーの試合結果を当てるトトカルチョとならんで イタリア人が大好きな遊びである。
1から90まである数字の中から好きな数字を6つ選んで賭け 毎週水曜日と土曜日の2回 テレビで がらがらっと抽選機を回して当選数字が発表されるのである。
もちろん、6つ以上の数字を選んで賭けることも可能で、それなら当たる確率が高くなるはずだが、当然のことながら賭け金も上がる。
ちなみに今回の当選番号は ミラノの小さなBARのオーナーの息子がコンピューターでいくつかの組み合わせをあらかじめ10枚作った既製品、つまり、今回あたった人は 自分で番号を選んで用紙の上で数字を塗りつぶすことすらせず カウンターにぶら下がっていたその出来合いのものを 12ユーロ払って買っただけの人たちだった。

ところで 賭博とはいわなくても 賭け、というと日本ではあまり良いイメージがないが、イタリアではこのエナロット、ごく普通の人がごく普通にするもので、全くもってゲーム感覚で楽しめる。
たとえば、イタリアには平日の午前中、10時過ぎにいったん仕事を中断してBAR(コーヒーショップ)へコーヒーを飲むに出かける習慣があるが、トトカルチョやエナロットはこのBARで気軽にできるのだ。このコーヒーブレイクは基本的にカウンターでの立ち飲みなので コーヒーを注文しておいて 待っている間に横の小さなカウンターで用紙を取って数字を塗りつぶし コーヒーのお金を払うときに一緒にその用紙を専用の機械に通してもらうだけ。
実際私の同僚や友達もコーヒーを飲みにいくときは コーヒーのついでに1ユーロ(最低の掛け金は1ユーロ)、夢を買うには安い値段だ。
もうこれがすっかり日課で、10年以上もずっと同じ数字を賭けている人を何人も知っているが、そんなに大きな額ではないが、これが結構当たるんだそうで、そんなことがまたやめられない理由になっているとか。
イタリア国民あげての遊びといっても大げさではないこのエナロット、もちろんとても真剣にやっている人も多くて、どの番号がよく当たるかとか、どの番号が何週間出ていないかとか、ありとあらゆる分析を仕事にしている専門家もいるそうだ。

それにしても今回の9億5千万という額はあまりに桁外れの当たりなので、このニュース、あっという間にイタリア中を駆け巡り、当選番号を出したBARでは深夜までシャンパンを抜いての大はしゃぎとなった。 当選した10人のうちの一人は 57歳の機械工の男性で、テレビを見ながら当選を知ったときは気を失いそうになったらしい。
9億5千万の使い道は?との質問に、自分の生まれ故郷(南イタリア)に帰って海の近くに家を買うという。もともとこの7月に引退、年金生活に入る予定だったという彼は もうその予定で田舎に家を買っていて、だからこれは別荘なのだそうだ。それから弟の借金を返してあげて、で、車はフィアットからメルセデスに乗り換えるそうだ。あと 奥さんに何でもほしいものを買ってあげて 二人でいろんなところへ旅行して、で、残りは13年前に難病で無くした娘の看病をしてくれた病院に寄付する。年金で細々と暮らしていた老夫婦も当たった一人だというが、いずれもまじめに地味に働いてきた人たちだからなのか 周りの受け止め方も ねたみや羨望はあまりなく 本当に良かったねという感じで気持ちがいい。

ところで当選者の何人かは そのBARにありがとうと電話をしてきたというが、まだ名乗りをあげていない人のほうが多いので、ミラノっ子は皆 残りは誰なのかが知りたくて好奇心の塊になっている。
9億5千万円当たったらあなたはどうする?そんな夢見心地の会話が飛び交う中、あなたのまわりでだれかそっと姿を消したら、もしかしたらその人が運のいい当選者かもしれない....

 


2005/6/1

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


http://www.italymag.co.uk/
ITALY MAGAZINE ONLINE



英国人の運営する「イタリアのすべてを愛する英国人のための」人気サイトで People, Holiday, Style, Culture, Food などテーマは盛り沢山だ。



2005/6/1
編集後記
- セルジョさんの美容院 - 

イタリアに来て、はじめてミラノ市内の美容院に行ったとき、椅子から転げ落ちそうになるほど驚いたのは、美容師が髪をシャンプーしている水が耳の中にどんどん入ってきたときだ。「耳に水が」と言ったが、「ああ、そう?」というだけ。あやまるわけでも、耳の中を拭いてくれるわけでもない。
「大変な店に来てしまった」そう思って、次は別の店にいったがそこも同じ。シャンプー専門店というところをみつけ、淡い期待を持って入ってみても結果は同じ。3-4軒、店構えも価格も違う店にいってみて、結局イタリアでは美容師側も利用者側もシャンプーのたびに耳に水が入ることを、なんとも思っていないことに気付いた。

同じ呑気さは、カットをした髪がシャツの中に入ってもこれも気にしないこと。カットの際は、一応はビニールの前掛けを首のところからかけて、カットの後は大きな筆のハケのようなもので首や肩のあたりをサッサとはたいてくれるだけ。背中に毛が入ってしまってチクチクして、私が顔をしかめていても、「あーら、背中に入ってしまったの? 家でシャワーをあびてね」などといわれておしまい。

仕事場の近くにあるセルジョさんの美容院に月1度くらい行くようになって6年近くになる。セルジョさんは現在65歳。 15歳でミラノ市内の美容院で見習いを開始。夜の9時半から夜中の12時まで週2回の夜学に7年間通って、美容師の教授資格のあたるマエストロMaestroの免許をとった。マエストロになるためには、古代エジプト時代の髪結いの型から、古代ローマ、中世、ルネッサンス、近代、現代とすべての時代の髪型を理論と実践で習得したという。
5年間の見習いの後、20歳ではじめて自分の美容院をあける。12年後の1972年9月に現在の場所に新しい店をあけてこの9月で満33年になる。美容師人生、合計すると今年で50年になることになる。

セルジョさんの店は明るい。おしゃれで気配りのきく奥さんがレジをして、予約を受け付け、店員や見習いの女性達をうまく仕切っている。いつも大勢の女性客であふれていて笑いがたえない。 今日も、隣に座っていた中年の婦人、セットの終わったブロンドの髪の下に満面の笑みをこめて、私に、携帯の画面に映っている初孫の写真を見せてくれた。周りの美容師もみんなで覗き込んで、「なんて可愛いの!」とほめあっている。

セルジョさんに、美容師のマエストロの学校では、「シャンプーする時には耳に水をいれないように」なんていうことは習わなかったの?ときいてみたいと思っていた。だけど、そんなことどうでもいいように最近は思えてきた。 もしかしたら世界中でそんなことを気にするのは日本人だけかもしれない。

2005年6月1日
JIBO編集室
大島悦子


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