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2004/12/01

HOTなエスプレッソITALY WEB SITE編集BACK NUMBER


HOTなエスプレッソ 



田中ちひろ

京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。 著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。 

 

41. 色、言葉、そして文化

つい先日 ミラノの地下鉄の構内で、電気か何かの配線工事をやっている横をとおりすぎ、その配線の色の美しいことに驚いた。
いわゆるライラック色と呼ばれる薄い紫、きれいなレモン色、やさしいオレンジ、そしてレモン色と同じトーンの薄い緑が2色になっている線。
配線をする人たちにとって何の線か区別がつくように線の種類によって色分けされているのはおそらくどこでも同じだろうが、どうせ壁の中に隠れてしまう電気の線にまで こんなにきれいな色を使ってしまう、そんなところがもしかしたらイタリア人の色に対するセンスなのかもしれないと唸ってしまった。

色、日常生活のどこにでも当たり前にあふれているこの色というものは 実は私たちひとりひとりの物の見方や感じ方に大きな影響を与えている。
色彩の豊かな国に住む人々の色彩感覚は寒くて暗い地方に住む人々のそれと全く違う。
色や光は 人々の色に対するセンスだけでなく、そこで生まれる芸術はもちろん、人々のエネルギーや文化を大きく左右する。
たとえば、アフリカの民族衣装の色鮮やかさ、また日本では絶対考えられないような色あわせに驚くとき、そしてまたそういった色が実に彼らによく似合うことに感激するたびに、色と人、文化の関係はやはりその土地でその文化に生きてはじめて身に付くものなのだろうとつくづく思わされる。

色をあらわす言葉の豊かさや、また何に関する色彩の表現が豊かであるかを考えてみるとひとつの文化を垣間見るようでおもしろい。
たとえば赤。赤、紅、朱、緋、....夕焼けの空やもみじの色の微妙な移り変わり、或いは新緑から夏の盛りの緑まで.....日本語はなんといっても自然や天候に関する言葉や色の表現が実に繊細かつ豊かである。
言葉にしても同じ。例えば雨。大雨、豪雨、にわか雨、霧雨、地雨、春雨(はるさめ)、村雨(むらさめ)、時雨(しぐれ)、梅雨、五月雨(さみだれ).....ただ雨の種類や降り方だけでなく、どの季節に降るのか、暖かい雨なのか冷たい雨なのかなどでそれぞれ呼び方が違ってくる。そしてそれぞれの言葉が日本人のこころにある一種の感情を引き起こすことを考えると、その奥深さに感動すら覚えてしまう。
北極圏に行くと雨は雪になるが、そこに住むエスキモーの言語には、雪を表す言葉が30以上あるという。家を建てる雪、食べられる雪、危険な雪など。そして逆に雪という総称はないというから興味深い。
一方、イタリアでは、雨は多いか少ない、あるいは強いか弱いだけになる。

ではイタリアで豊かなのはなんだろう、そんなことを考えていると 季節がらふとワインを思い出した。
イタリアといえばフランスに負けないくらいワインの文化は奥深い。
ワインの色をあらわす言葉はいったいどのくらいあるだろうか。
まず、白ワイン。白ワインには 紙のような白(bianca carta)、少し緑がかった白(verdolino)、藁のような淡黄色(paglierino)、金色かかった黄色(giallo dorato)、琥珀かかった黄色(giallo ambrato)という基本5色がある。
一方、赤ワインは深紅或いは緋色(porpora)、 蝋の赤(cerasuolo)、 ルビー色(rubino)、ざくろ色(granato)、オレンジ色(aranciato)の5色。
そこへ光度をあらわす言葉として きらめくような、透明な、ベールのかかったような、少し濁った、不透明な、の5段階がつき、華やかさとして 輝くような、明るい、 はっきりした、鮮やかな、さわやかな、あいまいな、平べったい、 色あせた、生気を欠いた、の尺度が加わる。 それだけではない。さらには色合いの強さをあらわす言葉として、深みのある、濃縮したような、 鮮烈な、 軽い、 青さめたような、色あせたの形容詞......
つまりひとつのワインの色は、透明度があって、輝くような華やかさの、濃縮したようなルビー色となるのである。
もちろんそれが発泡酒なら、さらにそこへその泡の細かさ、軽さ、速さ、滑らかさなどが付け加えられ、ようやく視覚的にはどういうワインなのかが見えてくる。
もちろんこれで終わったわけではない。ひとつのワインを深く語ろうと思ったら、今度はそこへ香りに関する形容詞、そして味覚に関する形容詞がこれまた視覚に関する形容詞に負けないくらい つかなければならないのである。

フランスでは11月第3木曜に解禁になるボジョレー、ヌーボーが有名だが、イタリアではそれより少し早く解禁されるNovello、今年のできはなかなかのもので、特に赤は何年か寝かせるとかなりの価値が期待できるという。
このさき何かと飲む機会の多い季節、色と言葉が醸し出す文化にうんちくをたれながら、長い夕べにイタリアワインはいかが?

 


2004/12/01

ITALY WEB SITE 
英語で楽しめるイタリアの注目WEBサイトの紹介


http://www.teatroallascala.org
ミラノ・スカラ座 


全面的修復事業を完了したミラノのスカラ座の公式サイト。
2004年12月7日の「プリマ」(スカラ座の初日)より、本年度のオペラーシーズンがスタート。



2004/12/01
編集後記
-  ミラノの街角から 「全国食品募金デー」
Giornata Nazionale della Colletta Alimentare  -

11月末の土曜日、近くのスーパーに買い物に行くと、入口で黄色の「チョッキ」を身につけたボランティアの人から黄色い小さなポリ袋と、同じく黄色の小さなチラシを渡された。何かの広告かしらと、あまり気にせず、買い物をすませてレジを待つ列にまわると、私の前に並ぶ人たちが、この黄色の袋に缶詰や瓶詰めをいれて、一緒にレジにわたしている。

「これって何ですか」と前の女性にきくと、先の小さなチラシをみせてくれて、この中から選んで、寄付するのよ」 あわててチラシをみると 「あなたのように自由に買い物ができない方のために寄付をしてください」と書いてあり、「油」、「ベビー用食品」、「ツナ缶あるいは肉缶詰」、「トマトや豆類の缶詰」の4種類の食品が指定されている。各自がこの範囲で食品を選び黄色の袋にいれて、自分の買い物と一緒にレジをすませて、ボランティア係員にわたす。するとその場で食品は種類別に仕分けしてダンボールにつめられ、全国の福祉施設やホームレス、生活貧窮者用食堂に直送されるという仕組みだ。

きいてみると、この催しは今年で16年目、毎年、11月最終土曜日に実施されている。今年は、イタリア全国約4000店舗にのぼるスーパーマーケットで、10万人ボランティアスタッフの手により実施され、寄付先は全国6800ケ所にのぼる。受付ける食品は缶詰、瓶詰め、乾物類で、「いたみやすい食品」や現金は受付けない。

店内には該当する食品が「超特価」で山積みになっている。私は、オリーブオイル1本と、トマトの水煮缶詰、チェーチ(ヒヨコ豆)缶詰とツナ缶を選んで黄色の袋にいれ、再びレジの列に並んだ。無意識のうちに選んだけれど、これがあればトマトとツナのスパゲッティ、チェーチのスープができる。どれも私の好物だ。これらの缶詰や瓶詰めが、暖かい食事として提供されるわけで、なんだか嬉しくなった。


本年もJIBOをご愛読いただきありがとうございます。皆様幸多き新年をお迎え下さいますよう願っております。 来年もどうぞご支援・ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いします。

2004年12月1日
JIBO編集室
大島悦子


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