田中ちひろ
京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。
著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。
日ごろは脳天気な私なのでなかなか信じてもらえないのだが、数ヶ月前から時々アレルギー(蕁麻疹)に悩まされ、病院でいろんな原因を探してもらったが結局ストレスによるものだと診断された。
蕁麻疹を引き起こすヒスタミンという物質をまずは抑える薬を飲むしかないといわれたが、実はこれは長期間飲むとうつ症状を引き起こすといわれ、先日エルボリステリーアを訪れた。
エルボリステリーア(ERBORISTERIA)、ハーブなどの薬草を調合し売ってくれる、東洋で言えば漢方薬局のようなもの。お店に入ると、まず、いろんな種類の薬草が混ざった不思議な匂いがする。天上まで届く棚にはいろんな大きさのビンが所狭しと並べられ、液体だったり、干草のようなものだったりその色もさまざまだ。横のコーナーでは、ハーブを使った石鹸やシャンプーがあり、その又横のコーナーでは 天然の蜂蜜やさまざまなハーブティーが試飲できる。
ヨーロッパでは中世以降、修道士らが教会に仕える一方、そういった薬草、ハーブの栽培及び研究をやっていた。時代を超えて受け継がれたそういった知恵は イタリアの家庭の中でもごく自然に入りこんで 人々の生活の一部になっているから興味深い。
1年ほど前、風邪で鼻が詰まって苦しくて眠れなかったときに、イタリア人の友達が暖房の上に水を入れた容器を置き、そこへユーカリのエッセンスを数滴たらしてくれたことがあったが、部屋中になんともいえない心地のいい香りが充満したかと思ったら、数分で驚くほどに鼻がすっと通りぐっすり眠れたことがあった。ユーカリのエッセンスは喉や鼻の粘膜にやさしく働きかけるという。
日本でもすっかりおなじみになったカモミールは、精神的にいらいらしているとき、不眠症、生理痛などによい。小さい子供の疳の虫にもこのカモミールを重宝していて、大抵どこの家にいっても、ティーバックか乾燥したカモミールの花がある。
またシャンプーの後に5から10分、このカモミールのお湯に髪の毛をつけて太陽にあたると綺麗な金髪になるというから、その用途は幅広い。
ラベンダーは心を安らかにし、せんじてお茶にすると、頭痛やしゃっくりをとめてくれるというし、虫さされのかゆみをとめるのはレモンの汁、或いはたまねぎをジューサーなどでつぶして出る液でもいい。
薬は自分で簡単に作ることもできるという。
たとえばイタリア人の家庭でよくお目にかかる OLIO DI IPERICO (イペリコオイル)は、洗礼のヨハネの花で作られる。洗礼のヨハネの花という立派な名前のこの草花は イタリアでは海辺近くの岩場からアルプスの谷間まで、道路わきでもごく普通に見られる珍しくもない草花だが、洗礼のヨハネを記念した6月24日ごろにその黄色い花を一斉に咲かせるということでそういう名前がついたそうだ。
この花を30グラムを100ミリリットルのオリーブオイルにつけてさらに10ミリリットル白ワインを混ぜ、太陽に15日間当てたあと、こされてできたこのオイルは やけど、切り傷、日焼けあとの肌の炎症や水ぶくれなど肌のトラブルには何でも効くという。
エラボリステリーアでハーブティーをすすりながら、アレルギー用の薬草を調合してもらった。
まずオオバコのエッセンス。内臓からきているかもしれないのでブルーベリーのエッセンスをそれにくわえる。
ちなみに花粉症にはそれとほかの植物のエッセンスを混ぜるという。
毎日30滴ほどそれを水に溶かして飲む。急速な反応はないかもしれないが、しばらく続けると体質が変わるし、何よりも副作用がない。
自然の神秘と過去から受け継がれた人々の知恵、そういったものの価値を実感したら、道端の花を見る気持ちも変わってくる。