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2002/09/03

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田中ちひろ

京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。 著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。 

 

26. 映画鑑賞



日に焼けた俳優たちの笑顔がまぶしい。艶やかに着飾った女優たちはいたるとこ ろでフラッシュを浴びる。
今年もまた世界中のメディアを騒がす人々とそんな彼らを一目みたいというファ ンたちが世界一美しい町に戻ってきた。
第59回ヴェネチア映画祭である。
今年は短編、長編、ドキュメンタリーなどすべてをあわせると143のFILMが参 加し、そのうちLEONE D'ORO(金の獅子賞)を競うのが21の映画(コンクール には参加しないが出展される映画がそれに加えて14)、PREMIO SAN MARCO (サン・マルコ賞)を競うのが18の映画となっている。
TVでは毎日審査される映画の一コマを放映し、監督や俳優たちが映画製作秘話や エピソードを語る。
審査委員たちが全部の映画を鑑賞し終わり、入賞作品を決定するのは9月8日だ が、その直後からミラノ市内でもすべての参加映画が上演される。 ミラノっ子の多くが連日いい作品を見逃さないように長蛇の列を作ってその鑑賞 に励む。

映画鑑賞。
アメリカの娯楽に徹したアクション物やハッピーエンドの恋物語から映画の世界 に飛び込んだ多くの日本人と違って、ヨーロッパの人々、ことイタリア人にとっ ての映画鑑賞は ただの娯楽というよりは文化活動のひとつという思い入れがあ る。
代表的なイタリア映画を思い起こしてみると、ネオリアリズムのころの「自転車 泥棒」や「LA DOLCE VITA」、イタリアが世界に誇る監督フェリーニの作品、 いずれも社会風刺、社会批判、あるいは人間のはかなさと素晴らしさ、見る人に 問い掛けられる疑問とリフレクション......イタリアではそういったものの素晴 らしさゆえに映画は人々に評価され愛された。
最近大ヒットしたロベルト・ベニーニの「ライフ イズ ビューティフル」もた だ愉快なだけの映画ではない。
つまりイタリア人の映画鑑賞というのは 文字通りただ映画を見るだけではな く、そのあとの各自が感想や批評を映画評論家さながらに語り合うこともふくま れているのである。
「よかったね」、「おもしろかった」だけでは通用しない。
あのシーンのあの台詞はこういう意味だと思うけどどう思う?あの背景には監督 のああいう主張があると思う。あのシーンをこういう風に撮っていればもっとよ かったのに、と話は映画の内容はもちろん、撮影技術、映像やカットの美しさ、 音楽の効果、そして俳優の演技のよしあし、ほかの映画との比較と限りがない。 したがって日本では映画館は若者だけの集まる場所だが、イタリアではいくつに なっても行くべき場所のひとつなのである。

ところでその映画が上演される場所、ミラノの映画館にはいくつか素晴らしいも のがある。
街中の映画館は大抵由緒ある建物の中に入っていて、できるだけ建物の美しいと ころは壊さずに改装されているが、天井や壁に美しいリリーフが施されていた り、階段もそれこそ映画に出てきそうな優雅な螺旋階段だったり..... 映画が上映される部屋も大理石の床、大理石の柱、美しいシャンデリアに赤じゅ うたんというのも決して珍しくない。
映画鑑賞がまだ一部の豊かな層にしか許されていなかった頃の名残なのか..... 確かにその美しさは映画が始まる前にまずその建物や部屋に感激することも少な くないほどである。
そしてそういう場所というのが関係あるかどうかはわからないが、観客はみんな カジュアルではあってもちょっとおしゃれに小綺麗にしている。もちろん演劇や コンサートではないので帽子にドレスなどという人はさすがにいないが、トレパ ン姿というのもありえない。
夜の外出ということも一役買っているにちがいない。ちなみにイタリアでは映画 は一番早い上演でも夕方6時ごろから、日曜祝日でも3時からで、一番込む時間 帯が夕食後の10時過ぎ開始の時間帯なのである。
そんな雰囲気や鑑賞後のディベートを楽しむためか、いくらDVD、ビデオが普及 し、家でソファーに横になりながら映画が見れるようになったからといって、イ タリア人は映画館行きをやめたりしないようだ。事実ビデオの普及で映画館入場 数が大幅に減るのではないかと心配されたが、イタリアに関しては去年一年でみ ると逆に増加しているという。

ところでここ数年、文化活動であるイタリアの映画鑑賞、実はちょっとしたアメ リカ映画ブームである。
アメリカ映画というと先ほどすこし述べたように、うまくできすぎた(いつも ハッピーエンド)中身の薄いものという定評がイタリアにはあって 見ないとい う人がいままで結構多かった。
文化的にも価値が高くないと思われていたのだ。そして最近はそのアメリカ映画 が大ヒットを重ねている。
ブームの理由はいろんなところで分析されている。
イタリア映画に対する投資が足りなくて質のいい映画が作れなくなってきている から、イタリア人が本来好んだ深みとメッセージのある映画がアメリカ映画の中 にも増えたから、或いは特殊撮影などの分野はアメリカ映画はやはりずっと進ん でいるから。
中には、イタリア人自身が、特に若い年齢層がアメリカ映画のような娯楽に徹し たものを好むようになったのは将来に夢が持てないからだとか、「そうでなくて もストレスの多い日常生活の中で、なにも好んで映画の中にまで問題を探しに行 く必要はないじゃないか」という悲しい社会論まで飛び出す始末。 新聞やTVで組まれるヴェネチア映画祭の特集にも「どうして今アメリカ映画 が..」というタイトルには必ずお目にかかるからおもしろいものだ。
怒られるかもしれないが、私に言わせれば....本当のところはイタリア人だっ て、インテリを自称する人たちだって、ただ純粋に「スパイダーマン」なんかを ずっとみてみたかった。
ただ文化活動という大前提が 単純な娯楽にブレーキをかけていた、そういうこ とではないだろうか?
「いや、本来僕の見るタイプの映画じゃないんだが...」と弁解しながらスパイ ダーマンを見に行ってしまうイタリア人のうれしそうな表情を見るたびになんだ かおかしくなってしまうのは私だけだろうか


 


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