田中ちひろ
京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。
著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。
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夜の鐘で過ぎ去った年を送り、新年が明けて、日本では心新たな門出を迎えたはずなのに、1月はじめのイタリアで、まだクリスマスツリーを見かけると、とても不思議な気がする。だが、「イタリアでは、キリストの生誕を祝うお祝いは、1月6日まで続く」ときいて納得した。
1月6日、エピファニア(EPIFANIA)、キリストの生誕を知らせる”不思議なほどに輝く星”に導かれて、東方の三博士が、キリストを拝みにはるばるやってきたのが、この日だと言う。
実際、クリスマスツリーと一緒に、教会や家庭に飾られる、プレセ−ピというキリスト誕生の場をあらわすたくさんの人形でつくる装飾(模型)も、この日に三博士の人形を入れてはじめて完成されるのだ。
星に導かれてベツレヘムの町へ入った三博士たちは 家々のドアを叩き、キリストがどこで生まれられたのかと尋ねてまわるが、誰も答えることが出来ない。キリストの誕生をユダヤ中が知っていると思っていた博士たちの期待を裏切って、キリストは町外れの小さな汚い馬小屋の中で、貧しい羊飼いたちだけに見守られてその生を受けるのである。やがて再び星に導かれて三博士たちはその馬小屋にたどり着き、金と乳香と没薬(もつやく)をキリストに捧げる。
ところで、1月6日、エピファニアの祝日にはもう1つ忘れてはならないキャラクターがある。
べファーナと呼ばれる魔法使いのおばさんである。
そばかすだらけの顔をして、ぼさぼさの長い白髪をした、お世辞にも綺麗とはいえないこのおばさんは、この夜、空飛ぶ魔法のほうきに乗って、子供がいる家すべてを訪れ、良い子にはトッローネと呼ばれるお菓子を、悪い子には炭を長靴下の中に配っていく。
実は、このべファーナおばさん、どこから登場してきたのか、いわれはもう一つ良く知られていない。
キリストとは本来、まったく無関係のキャラクターだが、東方の三博士が、ベツレヘムでキリストの居場所を尋ねて一緒に来るように誘われたにもかかわらず、忙しいからと断ったおばさんが、あとで後悔してキリストを町じゅう捜し歩き、とにかく出会う子供すべてに、もしやキリストかもと贈り物をしたという、いかにもこじつけっぽいエピソードまである。
いずれにしても、イタリアの子供たちはべファーナおばさんが大好きだ。大きな靴下を部屋の隅につるして、靴下の近くにはべファーナおばさんのために、ミルクやクッキーなどのおやつを用意して眠りにつく。
魔法のほうきにのって、空を飛んでやってくるというだけで、子供たちの想像の翼を限りなく羽ばたかせてくれるのだ。
ところで、魔法のほうきといえば、この冬はハリー ポッターが大人気だ。特殊技術で撮影した魔法のほうきを使っての「魔法学校」のスポーツ大会のシーンは大人をも夢中にさせる。ハリーポッターの著者は、離婚して生活保護を受けながら、子供を学校に送っていった帰りに、喫茶店でこの話を書いたというが、それがいまや世界中の人々を魅惑するベストセラーだというから、それもどこか魔法の技とも思えなくもない。
また、聖書の時代を生きた人々から見れば、インターネットで通信し、宇宙へも出かけていってしまう現代の生活は魔法に満ちたものに違いない。 そうやって考えてみれば、日々の生活、その一瞬一瞬は、心の持ち方一つで魔法に満ちたものになるかもしれない。
2002年が世界の人々にとって素晴らしい魔法に満ちた1年でありますように