田中ちひろ
京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。
著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。
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今年も、もうクリスマス。毎年夏のヴァカンスが終わってから、クリスマスまでの時間があまりにも早く過ぎるのに驚いてしまうが、その一方で、町中の通りが、クリスマスのイルミネーションで飾り立てられるのを見ると、なぜか、心がうきうきしてしまう。
12月にはいると、とにかく忙しい。デパートや商店は、日曜日も開店し、普段は静かな日曜日も、町中が、クリスマス・ショッピングに忙しい人々でごったがえす。忘年会という発想こそないが、あちこちでクリスマスパーティーと称して、食べたり飲んだりするのは、世の東西変わりはないようだ。
ところで、ミラノの12月には、実は、クリスマスの前にもうひとつ大切な日があるのである。それは、12月7日、聖アンブロージョ、ミラノの守護聖人の日。
この日、ミラノは祝日。もともと国の祝日である8日とあわせて、ミラノでは、会社も学校も、毎年連休となる。若い人の中には、この連休を利用して「初スキー」に出かける人も多いが、生粋のミラノっ子の友人たちは、「やはりこの大切な日はミラノで過ごしたい」という。
12月7日、朝早くから聖アンブロージョ教会の前で「オ・ベイ、オ・ベイ」(ミラノ方言 オオ・ベッローなんて美しいんだの意味)と呼ばれる盛大なマーケットが開かれる。このマーケットの特徴は、一般市民でも数日前に登録さえすれば何でも好きなものを売ることが出来る点で、いらなくなった鍋のふたやガラクタなど、並べられているものをひやかして歩くだけでも、なかなか楽しい。
また、ミラノでクリスマスツリーが飾られるのも、この日である。
それを知らなくて、11月の末にクリスマスツリーを出した私は、「ミラノでは伝統的に7日でなければだめなのだ」と諭されたことがある。
なんでも昔は、仕事が休みの男性が、街角やバールで男同士のおしゃべりに花を咲かせている間に、女性と子供たちが、やっぱり各家庭で集まって、クリスマスツリーを飾るというのが、習慣だったのだという。共稼ぎの夫婦が増えて、生活のスタイルが変わってしまった今でも、しかし、この7日というのだけは守られているようだ。
クリスマスのショッピングをし、クリスマスカードを書いて、このシーズンのケーキ、パネットーネを食べ始めると、さあ、いよいよ、この日のハイライト、ミラノが世界に誇るスカラ座の初日が開幕となる。
この日はあらゆる分野で、その年に特に活躍した人々が、招待される。
リカルド・ムーティ指揮のオペラ、招待客の顔ぶれ、衣装など絢爛豪華な様子が人々の注目を浴び、招待客を見るために、スカラ座に行く人も少なくない。
イタリアではクリスマスは家族で祝うもの。
地方から出てきた多くの人が、ふるさとに帰る日を指折り数え始めるものこのころからだろう。